聖戦士伝説 ~カ・オスの聖戦士~   作:早起き三文

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51話 リーンの光

「リーンよ……」

 

力を使い果たしたシーラは翼を消失して、空中から落下を始めた。

 

「シーラ様!!」

 

脱出挺であるシュットを駆るマフメットが、地へ落ち行くシーラの身体を受け止めた。

 

「グラン・ガランへ!!」

 

光の翼を生やした護衛のオーラバトラーがマフメットのシュットを護衛する。

 

「フェイ……」

 

気を失ったシーラを抱えながら、マフメットはちらりとズワウ・スのコンバーターに取りついているセキトゥハの姿を見た。

 

 

 

「コモンがまやかしのリーンを発顕するなど!!」

 

ジャコバ・アオンは歯噛みしながら、ノヴァ砲を搭載した巨大戦艦の内の一つ、ラウのゴラオンへと乗竜を差し向けようとした。

 

「逃すかよ!!」

 

ショウのヴェルバインがジャコバ・アオンの前に立ちふさがろとする。

そのショウ機に背後から一匹の竜が体当たりを仕掛けた。

 

「しまった!!」

 

竜を切り捨てながら、ショウは遠ざかっていくジャコバ・アオンの姿を目の端に捉える。

そのショウの横を可変したジェリル機が駆け抜けていく。

 

「ジェリル!!」

 

ジェリル機は目にも止まらぬ早さでジャコバ・アオンを追撃していく。

 

凄まじい速度でショウのヴェルバインを振り切ったジャコバ・アオンはラウの旗艦、オーラ・ドレットノートであるゴラオンに急接近した。

 

「ふんっ!!」

 

護衛のオーラマシンを剣で叩き潰しながら、ゴラオンの主砲、オーラノヴァ砲に視線を向ける。

 

「この際であるよ!!」

 

ジャコバ・アオンの口から術が叫ばれ、竜の群れがゴラオンを取り囲む。

 

「むうぅ……!!」

 

ゴラオンの艦長であるフォイゾン王は退艦命令を出すべきかどうか迷った。迷いが命取りであった。

 

ゴォアアォ……!!

 

白銀の竜達がゴラオンを火炎で包みはじめる。

 

「全乗員!! 退艦せよ!!」

 

言いながらも、フォイゾンはその命令が間に合わない事を悟った。

 

「このけったいな大砲を潰せば!!」

 

ジャコバ・アオンの乗騎である竜から輝く焔がゴラオンのノヴァ砲に降り注ごうとしていた。

 

「やらせるかよ!!」

 

リーンの奔流をほとばせながら、ジェリル・クチビのジャンヌ・ダルクがジャコバ・アオンの竜に体当たりをする。

 

ジュアアアァ……!!

 

ジャコバ・アオンの竜がジャンヌ・ダルクの爆発の光に包まれ、絶叫を上げる。

 

「おのれぇ!!」

 

ジャコバ・アオンは激しく術を唱え、どうにか爆発の光をかき消そうとする。

一旦上昇し、戦線を離れるジャコバ・アオン。

 

「ジェリル!!」

 

艦長席から立ち上がり、フォイゾン王は特攻を行ったジェリルの名を叫ぶ。

 

「何故に儂の娘はいつもぉ!!」

 

フォイゾンは天に向かって吼えた。

 

 

「おい!!」

 

機体にリーンを生やしたアの国のパイロットが近くでズワウ・スのコンバーターの破壊作業を行っているゼルバインへ話しかける。

 

「何だよ!!」

 

「てめえのオーラバトラーにはそんなに予備弾があんのかよ!!」

 

「ねえよ!!」

 

ゼルバインのパイロットはコクピット内を見渡す。残弾ゼロ、燃料ゼロ、システムオールレッドアラート。

 

「じゃあなんで!?」

 

「てめえも同じだろう!!」

 

「ちっ!!」

 

赤く警告ランプが点滅するレプラカーンの機内でアのパイロットは舌打ちしながら、コンバーターの破壊作業を続けた。

 

 

「いける!!」

 

リーンの加護をうけたセキトゥハの絶大な火力がみるみるうちにコンバーターを削りとっていく。

焔の羽も消滅し、攻撃に専念できるようにもなった。

 

「このまま押せば……!!」

 

その条件がフェイに油断を生じさせた。

 

「ナのオーラバトラー!!」

 

誰かがフェイに向かって叫んだ。

 

「あん!?」

 

フェイに向かって上空から一機の戦闘機が接近してくる。

戦闘機の知識がある者が見れば、その機体が旧日本軍の自爆兵器であることが解るであろう。

 

ズォアアァァ……!!

 

戦闘機の特攻を受けたフェイのセキトゥハが地上目掛けて落下していった。

 

「フェイィ!!」

 

グラン・ガランからその様子を見ていたマフメットが絶叫した。

 

 

 

「まさか、俺がリーンの戦士になろうとはな……」

 

バーンは血を吐きながら苦笑する。

 

「しかし……」

 

飛竜の攻撃から破壊作業中のガラリア機をかばい、致命的な損傷を受けたバーンのズワァースは落下を始める。機体からリーンの光が失われる。

 

「すまないな、ガラリア……」

 

ガッ!!

 

「行くな!!」

 

「ガラリア……」

 

ガラリアのイシュタールに腕を捕まれたバーン機はそのまま力なくガラリア機にぶら下がる。

 

「あたし達を置いていくな!!」

 

「あたし達だと……!?」

 

「おそらく、男の子であるよ……」

 

「そうか……!?」

 

バーンは口の血を拭う。目に光が戻る。

 

「そうであるか!!」

 

バァア……!!

 

バーンのズワァースから再び力強くリーンの翼が広がった。

 

 

「ぬうう……!!」

 

上空からリーンの加護をうけたオーラマシンの群れを見ながら、ジャコバ・アオンは唇を噛み締める。

 

「コモンと地上人共めが……!!」

 

ジャコバ・アオンは呻きながらも、その顔に冷静さを取り戻したようだ。

 

「やむを得ん」

 

乗竜の首を撫でる。

 

「切り札を使う」

 

ジャコバ・アオンとそのドラゴンは天へと一旦帰還した。

 

 

「退ぞけたか……?」

 

撤退していくジャコバ・アオンの姿を見ながら、ショウは疑問を隣のマーベル機へと訊ねる。

 

「どうかしらね……」

 

マーベルは未だに攻撃を続けているドラゴン達の姿を見ながら、ショウに答える。

 

「楽観はできないか……」

 

二機はひとまずは残りのドラゴンの駆逐を行おうと、機体を向けた。


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