聖戦士伝説 ~カ・オスの聖戦士~   作:早起き三文

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50話 クロス・ファイト(後編)

「解ったぞ」

 

ショットはブリッジへ駆け上がり、マリア将軍に分析結果を伝える。

 

「ズワウ・スのコンバーターだ」

 

「三基のコンバーター?」

 

マリアはブリッジから見える巨大なズワウ・スの背面にそびえ立つコンバーターを見る。

 

「あれがあの巨体を支えている」

 

「あのドラゴン共もか?」

 

「可能性は高い」

 

「そうか……」

 

マリアは全艦に通信を入れた。

ショットはその姿を見ながら、再びハンガーデッキへと降りていった。

 

「この策が失敗したときの事も考えなくてはな……」

 

ショットは再び資料を分析し始めた。

 

 

「コンバーターを破壊しろとはいえ……」

 

バーンは襲いかかる羽を振り払いながら、ズワウ・スの背面へと回る。

 

「チェオ!!」

 

バーンはズワァースからその巨大なコンバーターの付け根へと火器を集中させる。

 

バォフゥ……!!

 

「効かぬか?」

 

綿を叩くような音と同時に、ズワァースの火器による攻撃が消散する。

バーンは剣でも切りつけてみるが、付け根に触れる直前に何か別の力が働いて、剣が強く弾かれた。

 

「弱点ゆえに、防御されているのか……」

 

バーンは付け根を攻撃することを諦めて、コンバーターに攻撃を仕掛けた。

 

「コンバーターは無敵ではないようだな」

 

すでにズワウ・スのコンバーターに取りついていたガラリアのイシュタールから通信が入る。

 

「傷ついてはいる……」

 

ガラリア機のオーラショットにより、僅かに損傷がコンバーターに見られた。

 

「気の長くなる事だな……」

 

バーンは苦笑しながら、コンバーターを攻撃し始める。付近の両軍のオーラマシンも破壊工作に加わり始めた。

 

 

 

 

「女王!!」

 

戦陣へと躍り出たシーラはその巨大な翼でフォラリオの駆る竜を次々と屠っていく。

 

「女王が前線にでるなど!!」

 

必死でシーラに追従していくナの国のオーラバトラー隊。

 

「天の者達に勝つためであるよ!!」

 

シーラは鬼神のごとく羽を振り回す。

 

「何ゆえ!?」

 

「天の者達の血が!!」

 

シーラの翼の旋風が暴れ狂う。

 

「我の翼の光輝を増す!!」

 

「一人で戦に勝てるものですか!! 女王!!」

 

「皆に聖戦士の力を与えられる!!」

 

「はぁ!?」

 

ナの者達にはシーラの言っていることが理解できない。

 

「我を信じや!!」

 

シーラの怒声がナの者達を打つ。

 

「全く……!!」

 

「隊長……」

 

「仕方あるまいよ……」

 

シーラを幼い頃から見ていたナのオーラバトラー隊の隊長は彼女の言っても聞かない性格をわかっていた。

 

「全機、どうにかして女王をお守りしろ」

 

「しかし女王の翼が邪魔を……」

 

「少しは手前で考えろ!!」

 

隊長機はコンバーターを噴かして、シーラの前方に付こうとした。

 

 

 

 

「ノヴァはズワウ・ス本体には効かぬか……」

 

ノヴァ砲の低出力による射撃結果の報告にドレイクは呻く。

 

「だが、焔の羽には有効打が与えられる」

 

同じくノヴァでの試射を行ったフォイゾンからの通信に、ドレイクは頷いた。

 

「ズワウ・スの両羽を落とすか?」

 

「コンバーターを狙っては?」

 

「今では、取りついているオーラマシン隊が巻き込まれる」

 

ドレイクは険しい顔をして呟く。

 

「どちらにしろ、羽が邪魔で射線がコンバーターに届かない」

 

「ではやはり羽をか……」

 

フォイゾンの言葉にドレイクは答えた。

 

「ゼットからの分析結果では、あれもズワウ・スめの機体出力を上げているようだ」

 

「分かった」

 

フォイゾンは指示をゴラオンに出し始めたようだ。

 

「羽を撃ち落とせば、コンバーターの破壊も容易になる」

 

「うむ……」

 

フォイゾンとの打ち合わせを終えて、ドレイクは艦の外を見る。

 

「竜の数が増している……」

 

ドレイクは深い溜め息をついた。

 

 

 

キィーン……!!

 

戦場の高高度では数多のオーラファイター隊とフェラリオが駆る地上の戦闘機部隊との激戦が続いていた。

 

「地上のオーラマシンが!!」

 

トモヨ機が複葉機を撃破する。

その隙を狙い、ジェット機がトモヨのマハカーラへ電光を放つ。

 

ギィーン!!

 

その電光をナの騎士あるレンがキャノンで迎撃する。

 

「ジリ貧だ!!」

 

トモヨが悪態をつく。

 

「いや、勝ち目はある!!」

 

「どこにだよ!?」

 

トモヨは天の裂け目からこぼれ落ちてくるドラゴンの姿を指差しながら怒鳴り返す。

 

「数で圧殺される!!」

 

「リーダー機だよ!!」

 

「ああん!?」

 

レンはナールヘッグの機首でリーダーとおぼしき前進翼機を指す。

 

「あれが中心に奴らは動いている」

 

「確かかよ!?」

 

「俺を誰だと思っている!!」

 

「おめぇはコモン最強の騎士だと評判だったな……」

 

トモヨはつまらなそうにレン機に向かって呟く。

 

「聖戦士達を信じろ、クの騎士」

 

「そうするかい……」

 

二機は上方でコンビネーションを取りつつ、ジェット前進翼機を囲んでいるトッドとアレンの機体を見上げた。

 

「面白きや!! 面白きや!!」

 

黒騎士ナックル・ビーは計器類を手当たり次第にいじる。

彼女は操縦桿が戦闘機を制御している事しか知らない。計器類が何を指すのかも理解していない。

しかし、それでも戦闘機の操縦に支障はないようであった。

 

「くそぅ!!」

 

全方位に放たれるミサイルをかわしながら、トッドは焦燥する。

 

「チキン野郎!!」

 

「んだよ!!」

 

アレンにトッドが苛立ちを隠さずに怒鳴る。

 

「俺がオトリになる!!」

 

「それだけであの弾幕がかわせるかよ!!」

 

「カミカゼだよ!!」

 

「おい!! ふざけんな!!」

 

アレンのスーパースターが無謀な突撃を仕掛ける。

 

「愚かしや!! 愚かしや!!」

 

ナックル・ビー機からバルカンが放たれる。

 

「ヒュー!!」

 

アレンは地上の戦闘機を元に作り上げられたスーパースターのオーラジェットエンジンを全開にする。

神業のような機体操縦でナックル・ビー機からの射撃をかわす。

 

「何とする!?」

 

電光がスーパースターを包み込むように襲う。

 

「ぐうぅ!!」

 

スーパースターの尾翼が吹き飛ぶ、アレンはスピードを落とさずにナックル・ビー機に体当たりを敢行する。

 

ガッ!! ガガガッ……!!

 

「兄さん!!」

 

スーパースターは半壊しながらも、後方へフラフラと飛んで行く。

ナックル・ビー機の動きが極めて不安定になった。

 

「よくも!!」

 

トッドのガラバから最大出力のオーラキャノンがナックル・ビー機に直撃した。

 

「口惜しや」

 

ナックル・ビー機が爆散した。

 

 

 

「如何せよと!?」

 

残りのフェラリオの戦闘機群が動揺を始めた。

 

「如何せよと!?」

 

フェラリオの駆る二機の戦闘機が操縦を誤り、衝突する。

 

「かかれ!!」

 

トモヨが配下のマハカーラ隊に号令した。

ナとラウの機体も攻勢に出る。

 

「兄貴……」

 

トッドはどうにか飛行できるだけの状態になっているアレン機へと接近する。

 

「死に損ねたな……」

 

アレンは胸の十字架をコツコツと叩きながら、トッドに言葉を返す。トッド機からワイヤーがスーパースターに巻き付く。

 

「機体のエンジンの出力を落とせ、兄貴」

 

「ああ……」

 

「引っ張ってやるよ……」

 

手を繋ぎあう兄弟は戦いの趨勢が決まり始めた高高度の上空から機体を降下していった。

 

 

「こんだけ攻撃してもだめかよ!?」

 

フェイのセキトゥハから凄まじい火線がズワウ・スのそびえ立つコンバーターへ向けて放たれる。

 

ブォア……!!

 

ズワウ・スのコンバーターに取りついているオーラマシン群に向けて、白銀の竜が炎を吹きかける。

取りついているオーラマシンが次々と落下していく。

 

「ちぃ!!」

 

マーベルのビルバインがオーラマシンを襲っている竜達を撃墜していく。

それに続き、機動力に優れているオーラバトラーが破壊作業を行っている機体を襲おうとしている竜や焔の羽を迎撃している。

 

「王に剣を本当に向けるとはな……」

 

「ごちゃごちゃ言うな!!」

 

猛烈なズワァースの火力をコンバーターに集中させているザナドを守っているアイリンから檄が飛んだ。

 

 

「勝てない……!!」

 

ジャコバ・アオンと戦うヴェルバインに加勢したジェリルが唇を噛み締める。

 

「所詮は垢のごとき聖戦士ぃ!!」

 

ジャコバ・アオンの大剣が唸りを上げて、ヴェルバインに加勢してきたオーラバトラー群を叩き落としていく。ジェリルのジャンヌ・ダルクが間一髪でその剣撃を防ぐ。

 

「雑魚さえいなければ!!」

 

ジャコバ・アオンと同時に焔の羽や他のフェラリオとも戦わねばならない状況にショウは歯噛みする。

 

「ズワウ・スの焔の羽の周囲にいる部隊!!」

 

ゴラオンから通信が入る。

 

「即座に退避せよ!!」

 

「支援砲撃か!?」

 

ズワウ・スの周辺のオーラマシンが避難を始めた。

 

 

「ノヴァ砲!! 発射である!!」

 

パァファ!! パァ……!!

 

ドレイクのウィル・ウィプスから信号弾が上空に放たれ炸裂する。

ウィル・ウィプスの中心の巨砲から光が放たれる。

 

バアォォォォォアア……!!

 

ウィル・ウィプス、そしてゴラオンからノヴァ砲の凄まじい閃光がズワウ・スの焔の羽に衝突する。

 

ブシュアァァ……!!

 

ズワウ・スの焔の羽が消滅する。

 

「おのれ!!」

 

ジャコバ・アオンが配下の数機のフェラリオがその閃光に巻き込まれたのを見て憎しみの目をむけた。

 

「あのマシンからやるか……!!」

 

ゴラオンに目をやったジャコバ・アオンはふたたび術を放ち、増援を召喚する。

 

「ドラゴンが無尽蔵だ…!!」

 

上空からも落ちてくる竜の姿を見ながら、ショウはコンバーターから光の翼を発生させ、ゴラオンに向かうジャコバ・アオンを追撃しようとした。

 

 

 

「力が蓄えられた」

 

シーラは空中に静止し、フェラリオと飛竜の血にまみれた翼を展開させる。

 

「全機、我を守れ」

 

ナの国の部隊がシーラの周囲を警戒し始めた。

シーラの翼から離れた羽が凄まじい勢いで戦場へ舞い踊る。

 

 

「あれは……!?」

 

アヴェマリアの艦首で戦場のスケッチを描き続けていたエレは突如として表れた、光輝く羽を持つ人間へと目を向ける。

 

「ナのシーラ女王……?」

 

エレはスケッチブックにその姿を描き始めた。

 

 

 

「機体出力が……?」

 

トカマクは自機のヴィーヴィルの出力が自動的に上昇しているのを感じていた。

 

「エンジンの出力は異常はないぞ……?」

 

同じ現象が起きている隣にいるエフアからも疑問の声があがる。

 

 

 

「翼……!?」

 

マリアは全軍のオーラマシンから大小様々な光の翼が発生しているのに目を疑った。

 

「リーンの翼……!?」

 

かつて地上人である彼女自身も発顕させたことがあるその翼を見て、タラップをかけ降りた。

 

「ショット!!」

 

「何だ!?」

 

「リーンだ……」

 

「何……」

 

二人は艦の甲板へと駆け上がった。


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