聖戦士伝説 ~カ・オスの聖戦士~   作:早起き三文

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40話 ニュークリア・オーラ・バトラー

ウォン…… ウォン……

 

不気味なエンジン音を響かせながら、漆黒の一機のオーラバトラーが空を飛ぶ。

 

「ズワウ・ス……か」

 

いかなるオーラバトラーとも似ても似つかない、異形、そう異形のマシンである。

 

構造的にはオーラバトラーのそれではあるが、乗ってみればその異質さに身をすくめるであろう。

この機体のコクピットに身が呑み込まれるような感覚がするのだ。

 

ウォン…… ウォン……

 

背中には三基のオーラコンバーター、あまりにも巨大で機体との均衡がとれていないそのコンバーターから呪詛のごとき駆動音が聞こえる。

 

「ラウの国境……」

 

シュンジはラウの国境に築き上げられた砦を見ながら静かに呟く。

 

「ズワウ・スのテストである」

 

遠目にラウの国のオーラマシンを見やりながら低く呟く。

 

「リを国の為に、あの砦の者達には生け贄になってもらう……」

 

シュンジはズワウ・スの肩から歪な形のオーラソードを取り出した。

 

「リの国の為であるよ……」

 

シュンジは再び呟いた。

 

 

 

 

シュオォ……!!

 

手に持ったカ・オスの剣から波動が発せられる。

 

ズゥ!!

 

国境の砦の外壁が崩れ去る。

 

……ババッ!!

 

崩れた砦からラウの国のオーラバトラーが出陣してくる。

 

シュウウ……!!

 

ラウの国のオーラバトラー「ボゾーン」からミサイルが飛ぶ。

シュンジは避けようともせず、ズワウ・スを前進させる。

 

スゥ……

 

ミサイルがズワウ・スの手前で爆発する。

ズワウ・スには傷ひとつない。

 

ババッ!! ババッ!!

 

ナの国の実験機であったビルバイン、それの量産型である「ゼルバイン」の部隊が接近してくる。

シュンジはその機体の一機に腕に装備されているオーラショットを発射する。

 

ガッアアアァ……!!

 

赤い光を放ちながらオーラショットが飛ぶ。

その火線はゼルバインを簡単に破壊しただけにとどまらず、後方のボゾーンまでも破壊する。

 

バッ!! バッ!!バッ!!

 

ラウの国の方向から新たなオーラバトラーがやってくる。救援であろう。

 

「勝てる……」

 

シュンジはカ・オスの剣を正面に構える。

コンバーターの出力を上げる。

 

オーン……!!

 

鳴り響く駆動音とともに、カ・オスを一閃させる。

 

ギィーアアァア……!!

 

凄まじい音とともに、輝くオーラの波がラウのオーラバトラー群に接近する。

 

ガシャア……!!

 

前に出ていた数機のオーラバトラーが粉砕される。

ラウのオーラバトラーの内、二機が離脱する。おそらく報告に戻るのだろう。

 

「フン……!!」

 

シュンジはオーラショットで残りのラウの機体を駆逐する。

 

「フフ……」

 

シュンジは含み笑いをする。

 

「これならば、ドレイクが同盟を反故にしてリの国へ襲いかかっても撃退できる」

 

シュンジはそう言い、ズワウ・スをリへと帰還させた。

 

 

 

 

その巨体に似合わないスピードでリへの帰路を行くズワウ・ス。

 

「もしかすると……」

 

シュンジは呟く。

 

「リを守るだけではなく……」

 

シュンジはそこまで言って、首を振る。

 

「何を考えているんだ、俺は……」

 

リの王者であるシュンジは黙りこんだ。

 

オン……

 

カ・オスの剣が鳴った。

 

「ズワウ・スか……」

 

シュンジの顔に再び笑みが浮かんだ。

 

 

 

 

「シュンジさん」

 

リへと帰還したシュンジをフィナが出迎える。

 

「どこへいっていたんです?」

 

「ただのテスト飛行だよ……」

 

シュンジはそう言い、城へと向かった。

フィナはその姿をじっと見つめている。

 

「シュンジさん……」

 

フィナは自分の目から何故か涙がこぼれそうになるのを感じた。

 

 

 

 

「国境の砦が?」

 

ラウの国の国王であるフォイゾンは部下からの報告を聞く。

 

「異形のデーモのごとき機体であったと」

 

「ふぅむ……」

 

フォイゾンは兵を下がらせ、考え込む。

 

「確約したドレイクやビショットの手の者とは考えづらい」

 

「では、南の小国群であると?」

 

傍らにいたラウの地上人であるジェリル・クチビがフォイゾンに言う。

 

「一番可能性が高いのはリの国であるな…」

 

フォイゾンはジェリルの顔を見ながら呟いた。

 

「かの国とは一応不干渉では……」

 

「有名無実であるよ」

 

フォイゾンはそう言い、溜め息をつく。

 

「王の孫娘であるエレ殿がかのシュンジ王と懇意の仲だというのにな」

 

ジェリルは不満そうに言う。

 

「ふぅむ……」

 

フォイゾンは軽く唸った。

 

 

 

 

「ズワウ・スが?」

 

「ああ、ラウの国境を攻撃した」

 

「確かか?」

 

「俺とエフアの目は良い方だ」

 

ケムの国の客人騎士である地上人、トカマク・ロブスキーはそうショットに報告した。

 

「シュンジ王か?」

 

「それ以外にないだろう……」

 

ケムの女老将軍マリアにショットは答える。

 

「……」

 

ショットは沈黙する。

 

「ショット……?」

 

絵を描いていたエレが怪訝そうに訊ねる。

 

「非核三原則」

 

「ん?」

 

トカマクがショットに聞き返す。

 

「日本の法律だ」

 

「核兵器の所持などを禁ずる……」

 

マリアがそう呟く。その言葉にショットは頷く。

 

「核兵器とは?」

 

エレがトカマクに小声で訊ねる。

 

「地上の最大の武器だ」

 

トカマクが同じく小声でエレに答えた。

 

「素晴らしい法律だ」

 

ショットは目を閉じながら頷く。

 

「人類の英知が核を制御できる可能性を感じさせる法律である」

 

「フム……」

 

「俺は核兵器じみた兵器を作る気はない」

 

マリアに顔を向けて、そう呟くショット。

 

「だか、ズワウ・スは……」

 

ショットは険しい目をしながら唸る。

 

「オーラ・ニュークリアなのかもしれない」

 

「……」

 

皆が沈黙する。

 

「何で、シュンジ王にそのオーラ・ニュークリアを与えたのです?」

 

エレが責めるようにショットに詰め寄る。

 

「……」

 

ショットは答えない。自分でもわからなかったからだ。


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