聖戦士伝説 ~カ・オスの聖戦士~   作:早起き三文

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27話 フェラリオ(前編)

「地上人」

 

「ん?」

 

トッドにアイリンが話しかける。

 

「その本は?」

 

「見たいか?」

 

トッドはニヤニヤしながらアイリンに読んでいた本を渡す。アイリンは無表情で読む。

 

「おどろかないな……」

 

トッドはつまんなそうに呟く。

 

「別に……」

 

「いいおっぱいだろ?」

 

どうやら地上で買い込んだアダルト本らしい。アイリンはジュースを飲み続ける。

 

「読む前から顔に書いてあった」

 

「あっそう?」

 

「男の裸の本はないのか?」

 

「ええ……!?」

 

トッドは少し顔を赤らめながら、近くにいるリの国のエースであるザナドに顔を向ける。

 

「助けてくれ!!」

 

「しらねえよ!!」

 

ザナドは怒鳴る。本を拾い上げたエフアが中身を読む。

 

「地上人!!」

 

真っ赤になりながら、エフアはトッドを怒鳴り付ける。

 

「こんの反応を期待してたんだぜぇ!!」

 

「助平がよお!!」

 

クの国の女性騎士「トモヨ・アッシュ」がトッドを小突く。

 

「いてえな!?」

 

「あたしもザナドの野郎に蹴られた!! マシンで!!」

 

「うっせえ!!」

 

ザナドは笑う。

 

「俺には関係ないだろ!?」

 

トッドはバッグからどんどんアダルト商品を取り出す。

 

「地上人ぉぉん!!」

 

エフアは泣き出してしまった。

 

「よこせよ!!」

 

ザナドが本を分捕る。

 

「みてぇんだろ!?」

 

「検閲だぜぇ!?」

 

ザナドはそう言い、ぺらぺらとめくる。

 

「ガッファファファ……!!」

 

トモヨが大笑いする。

 

「……」

 

リの騎士「アイリン・ツー」はそれを見て軽く笑った。

 

 

 

 

ラース・ワウの郊外である。

エルフ城改修のため、ドレイクはここにはしばらく帰ってきていない。

もう肌寒くなってくる頃である。紅葉がまぶしい。

 

 

 

 

「なにやってんだ、あいつらは?」

 

丘の上で騒いでいるトッド達の姿を見ながら、地上人の技師ゼット・ライトがラーメンを食べながら顔をしかめる。

 

「さあ……」

 

リのシュンジ王はラーメンをすすり続ける。

 

「屋台なあ……」

 

ショット・ウェポンは水をのんでいる。

 

「もう、食べたのですか?」

 

フィナが目を丸くする。

 

「日本でよく食べていた」

 

「だから、ラース・ワウに伝えた?」

 

「評判は上々だ」

 

ショットは遠目に見える建造中のアの巨大戦艦を見ながら楊子で歯をすする。

 

「巨大戦艦な、いつ頃出来る?」

 

ゼットはショットに訊ねる。

 

「突貫工事でも二年はかかる」

 

「戦争はできない?」

 

「小競り合いはあると思うが」

 

シュンジの問いにショットは酒を注文しながら喋る。

 

「昼間ですぞ?」

 

リの騎士団長ザン・ブラスがからかう。

 

「仕事がないんだ」

 

ショットはそう微笑む。

 

「シュンジ王」

 

「許す」

 

ザンも酒を飲み始める。

 

「おめえら!!」

 

「ゼットさんも飲んでるでしょう!?」

 

「てめえも飲むか!?」

 

「バカ!!」

 

フィナに酒を勧めたゼットは割り箸を投げつけられる。

 

「フフ……」

 

シュンジも酒に手をつける。

 

「みんなして……!!」

 

フィナがおちょこに酒を入れるように店主に頼む。

 

「ポップ・レッスの事を思い出します……」

 

フィナが赤い顔をして、シュンジの肩にとまる。

 

「ガロウ・ランの所から来たのか……」

 

ショットが追加の酒を注文する。

 

「ええ、そこで地上人を呼びました」

 

「誰を……?」

 

「ショットさんです」

 

「まさかに……」

 

しかし、ショットの目は笑っていない。

 

「呼びましたよ」

 

フィナが顔を伏せて言う。

 

沈黙が屋台を覆う。

 

「なぜ、呼んだ」

 

ショットは酔いがさめてしまったようだ。

 

「みたでしょう?」

 

「何を?」

 

「解るはずです」

 

「……」

 

シュンジもゼットも、ザンも黙っている。

 

「すまない、俺は喋りたくない」

 

ショットは一方的に言い、屋台を出ていった。

 

フィナは顔を伏せたままだ。

 

「帰りましょうさ……」

 

ザンがシュンジたちに声をかける。

 

 

 

 

 

「ケムの国へ?」

 

「そうだ」

 

ショットはシュンジにそう答える。

 

「何故だ? マリア殿か?」

 

「まさかに……」

 

ショットは苦笑しながら話を続ける。

 

「仕事がないんだ」

 

リの王城「トルール」の前でショットは肩をすくめる。

 

「ドレイクからスパイを頼まれたか?」

 

「それもある」

 

ショットはリの国の機械の館を見ながら答える。

 

「ゼットがいる、アは大丈夫だ」

 

「そうか……」

 

「ジャバとも会ってくれ」

 

「ジャバ?」

 

「俺と一緒に地上から降りてきた奴だ。昔からの知り合い」

 

「ふん……」

 

シュンジは秋の夕暮れの寒さ身をすくめながら答える。

 

「わかった、機会があれば彼に会う」

 

「女だ」

 

「女の癖に男の名前か?」

 

「本人の前ではその事を言うなよ」

 

「だめか?」

 

「殴られる」

 

その話を聞いていたエレがバッグから本を取り出す。

 

「その話」

 

エレはシュンジからもらったロボットマンガをペラペラとめくる。

 

「これみたいですね」

 

美少年につけられた女の名前をバカにした男の運がなくなっていくエピソードである。

 

「俺も運がなくなるか?」

 

シュンジはお気に入りのそのマンガの表紙をみる。

 

「リを亡ぼすなよ?」

 

ショットの言葉にシュンジはニッっと笑う。

 

「ショット」

 

「ん……?」

 

「今日は泊まっていくか?」

 

「助かる」

 

ショットは頭を下げる。

 

「エレもケムに?」

 

「好奇心の塊なんだよ、彼女は」

 

ショットはエレの頭をなでながら微笑む。

 

「大きくなられましたな……」

 

「ありがとう、シュンジ王」

 

「絵も上手く……」

 

「なりましてよ?」

 

エレはコトコトと笑う。

 

「やはり、后にどうだ?」

 

ショットがニヤニヤ笑う。

 

「ふぅん……」

 

シュンジが唸る。

 

「構いませんわ」

 

「エレ……」

 

「伽もできましてよ?」

 

「小娘が……!!」

 

シュンジは破顔する。


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