「礼であるよ」
いきなりリの国へやってきたショット・ウェポンはシュンジに一機のオーラバトラーを見せた。
「ズワァース」
ショットが黒いオーラバトラーの名前を言う。
「何の礼だよ」
「地上のマンガの……」
「何を……」
シュンジは苦笑する。
「エレが喜んでいる」
ショットは嬉しそうに言った。
「子供じゃないか」
「可愛い子だ」
「ロリコンかい?」
「私の趣味は知っているだろう」
「ああ…… マリア殿……」
シュンジはリの隣国のケムの女将軍であるマリアの事を思い出した。
「似てるんだ、エレは」
「誰に?」
「死んだ妹にな」
ショットは少し遠い目をしながら語る。
「子供のころ、俺たちは強制労働をさせられてな……」
「そうかい……」
ショットの目を見ながら、シュンジは気になっている事を訪ねた。
「実際にはどういう気だ、このオーラバトラーは?」
「実験機だよ」
ショットはズワァースを触りながら言葉を続ける。
「これが成功すれば、俺は最強のオーラマシンを完成させられる」
「んん……?」
シュンジはショットに話を促す。
「リの国にやってほしいと……?」
「アの国の連中ばかりでは、公平なデータが取れんのだ」
「だからバーンやガラリアを省いたと」
「そうだ」
ショットは力強く言った。
「シュンジ王」
帰るときに、ショットはシュンジにあるものを見せた。
「ん……!?」
封筒の中には何かマンガの絵が書かれていた。
あまり上手くはない。
「エレが書いた」
「ははっ……」
シュンジはその絵を机に置いた。
「后はとらないのか?」
「なにを……」
「エレはいい子だろう?」
「おい、ショット殿……」
シュンジは困った顔をショットに見せる。
「ラウの遠縁だよ、彼女は」
「だから、子供だって……」
「政略結婚ならあり得る歳だ」
「ふん……」
ショットはそれ以上は口を出さずに、ラース・ワウへと帰っていった。
「俺がですかい? 王?」
若い騎士が驚きの声を上げる。
「そうだ」
シュンジはズワァースのパイロットとして目の前に立つ男を選んだ事を告げた。
「ナラシ隊長とかもいるし……」
「ナラシからは許可をとった。推薦もあった」
ザナド・ボジョン、若手の騎士である。
気鋭であり、先輩のエフアや地上人のトカマクを追い越してリの騎団トップの腕前に登り詰めた青年である。
平民上がり。
「へへ…… へ…」
ザナドは頭を掻きながら、受領書にサインをした。
「奴は大丈夫ですかい?」
ザナドが立ち去ったあと、大臣であるオウエンが小声で話す。
「良い奴だよ」
「聖戦士の感ですか?」
「まさかに……」
「ナラシ隊長、ありがとうございます!!」
ザナドはオーラバトラー隊隊長のナラシにそう礼を言う。
「王の前では礼節を忘れるなよ」
リの国一の美丈夫、騎士ナラシはそうザナドに言い、肩を叩く。
「ふふ……」
ナラシは部屋を出ていったザナドを見ながら、王の思い切った人選を褒めたい気分になった。
「うらやましいか、地上人?」
ザナドはトカマクをからかいに行く。
「別に……」
トカマクは苦笑いをしながら、ズワァースを見上げる。
「調子にのるなよ、ガキ!!」
古参の女性騎士であるエフアがそうザナドに怒鳴る。
「怒るなよ、美人先輩……」
そういいつつも、ザナドの得意顔は崩れない。
「ヴィーヴィルね、アルダムよりもましか?」
ケムの国から購入した量産型オーラバトラー「ヴィーヴィル」をみながら、リの女性騎士であるアイリンはトカマクにたずねる。
「俺はまたアルダムにこいつを吸収させたい」
「アルダムは好きか?」
「フィーリングにあう」
トマカクはそう言い、アイリンの顔を見る。
平凡な顔ではあるが、目付きの鋭い娘。
「じゃあな、先輩達!!」
ザナドはそう言い、ヨルムーンガントのハンガーを出ていった。
「生意気な奴」
アイリンは冷たく毒づく。
トマカクは苦笑しながら、アルダムの調整に入っていった。
近くではオーラボンバーであるタンギーの姿がある。
「タンギーの出力は?」
オーラボム隊あらため、オーラボンバー隊のリーダーであるラージャがパイロットに訪ね回る。
「上げやすくなっておりますな……」
パイロットが答える。
「整備士達に旨い物でも手配しよう、な」
ラージャは傍らの特殊警備隊の隊長であるバラフに笑いかける。
「ジームルグ、領内の警備にも役にたってるよ」
バラフは眼鏡を拭きながら元同僚のラージャにそう告げる。
「改良型も?」
「レーダーがすごい」
バラフは入口にいる密偵長を勤めるガロウ・ランのサーラに気づく。
「サーラ」
サーラはバラフに地図と報告書を渡す。
「最近、ガロウ・ランがまた悪さを始めている」
サーラはそう言い、地図を広げる。
「アの国とか、各国でも確認されている」
「何故?」
「わからんが…… 何か変だ」
サーラは豊満な胸に手をおきながら、鋭い目で空を見る。
「雰囲気がガロウ・ランに似ていない」
「ほう…… 違う穴(ガロウ・ランの棲みか)の事ではなくてか」
「うーん……」
サーラは唸る。
「偵察機を貸して欲しい」
「ジームルグか?」
「出来れば良い奴を」
バラフはラージャにオーラバトラーの輸送機であるジームルグを貸してほしいと頼みに行った。