豪雪である。
銀景色の中、エルフ城がお伽噺のお城のように美しく映える。
「エルフの城は我慢強いねえ」
トッドが寒さに震えながら話す。
「いやいや、エルフの城の者、フラオン王なども息抜きはしているさ」
クの国のビショット王がトッドに答える。
「どうやってさ……」
「城には抜け道がたくさんある」
「おいおい……」
トッドが呆れる。
「ドレイクは真面目に戦争をやる気があるのか?」
「あるさ」
ビショットはなかなかタバコを火がつかないのにイライラしているようだ。
「俺にもくれないか?」
「ライターはあるか?」
トッドは空軍時代から使っているライターをビショットに手渡す。
「いいもん持ってるな……」
ビショットはタバコを二本付け、片方をトッドに渡す。
「城から抜け出して遊びに出た者に酒でも奢れば、少しは内実が聞けるさ」
「計算ずくか?」
「兵糧攻めが全く不可能であるからな、仕方がない」
ビショットは雪を見上げながらため息をつく。
「弱いタバコだな……」
「健康志向だよ」
「ふん……」
トッドは天幕に入ろうとした。その背中にビショットから声がかかる。
「ドゥミナントを撃退したようだな、ん?」
ビショットはトッドに微笑む。
「相手が相手だったからねえ、やる気が実力以上の物を出してくれたさ」
トッドは天幕の脇にあるヤカンからコーヒーを淹れる。
「聖戦士ねえ……」
トッドからコーヒーを受け取ったビショットはトッドに向かってこう言った。
「聖戦士が国を作ったという話は無いそうだ」
「シュンジがいるだろう?」
「あ、いや違う」
ビショットは手を擦り合わせながら話を続ける。
「聖戦士が作った国が長続きすることは無いそうだ」
「ヘェー?」
「歴史学だよ」
ビショットは再びタバコを吸おうとする。さっきとは違うタバコだ。
「シュンジは頑張っているぜ?」
「だよなあ……」
トッドに新しいタバコを渡しながら、ビショットは頬に手をあてる。
「聖戦士が自分の国を喰うそうだ」
「皿に乗せてか? 哲学的にか?」
「両方だよ」
ビショットはフッーと煙を吐く。トッドは何か背中に寒い物を感じた。
「鬼じゃねえかよ」
「デーモだよ」
「デーモ?」
「鬼の事だよ」
トッドははぐらかされたと思い、ムッとした顔をする。
「苦いタバコだな……」
「甘いタバコもあるぞ?」
「マニアか? 王?」
「趣味人だ」
ビショットはニカッと笑うとクの国の輸送艦「ジングルベル」を指差した。
「でかいのを作っている」
「フーン?」
「ドレイクもラウのフォイゾンも作っているらしい」
ビショットはまたタバコに火を付ける。
「ヘビースモーカーだな」
「だから、軽いタバコだよ」
「意味ないだろう?」
トッドは笑うと、頭に積もった雪を払いながら、ビショットに訪ねる。
「リの国は長くないって事かい?」
「さあて…… 歴史は繰り返すらしいからなあ……」
「ジャパニーズ……」
トッドはリの国の王を心配した。