聖戦士伝説 ~カ・オスの聖戦士~   作:早起き三文

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18話 ゼラーナ轟沈

夕闇の迫るなか

リの新旗艦である「ヨルムーンガント」とアの国の新造艦である「ローマンス」

そして、ケムの戦艦「ゼェスキリスト」がゼラーナの前哨基地へと迫る。

 

「敵はゼラーナだけかな?」

 

「まさかに」

 

マリアがシュンジに答える。

 

「ナの奴らもいるだろうさ」

 

ガラリアは「勇猛果敢」と日本語で書かれたシャツを着て、呟く。

 

「ガラリア……」

 

「なんだよ、シュンジ王」

 

ガラリアは愉快そうにシュンジを見つめる。

 

「お土産なんぞ、家に仕舞っておけ」

 

「いいじゃないか

騎士の在り方を示しているのだろう? この言葉は?」

 

「地上の水は旨かったか?」

 

「ああ」

 

ガラリアはうなずきながら、地図を見渡す。

 

「ナの国のオーラシップ」

 

駒を指しながら、シュンジは言う。

 

「出来るだけ沈めたい」

 

「だな」

 

マリアもうなずく。

 

「シュンジ王」

 

リの騎士であるエフアが部屋に入ってくる。

 

「すでに、ゼラーナの基地は目視できます」

 

「そうか」

 

シュンジはエフアに答える。

 

「リの騎士よ」

 

ガラリアがエフアにTシャツを見せつける。

 

「騎士が着るべき肌着だよ」

 

エフアが微妙な顔をする。シュンジは苦笑いをする。

 

「シュンジ王、何か言ってやれ」

 

マリアがシュンジをニヤニヤ見ながら話す。

 

「そうですよ、シュンジさん」

 

フィナが軽く笑う。

 

「苛めるなよ……」

 

シュンジは女たちに囲まれて、居心地が悪くなりながら、部屋を出ていった。

 

 

 

 

ブリッジからゼラーナの基地を見渡す。

夕陽に照らされた基地はオレンジ色に輝き、美しく思えた。

 

「ゼラーナ……」

 

すでに宙に浮かんでいるゼラーナ。

まだダンバイン達の姿は見えない。ゼラーナの後方にはナの国のオーラシップが二隻見える。

 

ハンガーに降りたシュンジは待機しているパイロットとメカニックマンたちに作戦内容を伝える。

 

「ではシュンジ王」

 

昇格した新人騎士がシュンジに目を会わせる。

 

「敵の地上人は全て王一人であたると?」

 

「そうだ」

 

「我らの力が不満でありますか?」

 

クの国から購入したオーラボンバー「タンギー」を率いる兵士の部隊長が抗弁する。

 

「ゼラーナを侮るなよ、お前たち」

 

シュンジは厳しい顔でクルーを見渡す。

誰かが唾を飲み込む音が聞こえる。

 

「しかし……」

 

先ほどの昇格騎士がシュンジになお抗弁しようとする。

それを一睨みで沈黙させるシュンジ。

 

「ここでは確実な勝利を目指す。俺一人で聖戦士を相手にし、駄目な時はガラリア殿とマリア殿の力を借りる」

 

シュンジは有無を言わせぬ口調でそう言った。全員が敬礼する。

 

「全員、作業にかかれ!!」

 

クルーが散ったあと、シュンジは自機であるアルダインに乗り込んだ。

 

「今日で終わらせる」

 

シュンジはそう一人誓った。

 

 

 

 

素晴らしいほどの橙色に輝く空へシュンジ達の部隊、アの国の部隊、ケムの国の部隊が展開していく。それにあわせて、ゼラーナ達からオーラマシンが発進されてくる。

 

「やはり、先陣を駆けるかい、ショウ君?」

 

その言葉が終わらぬうちにシュンジのアルダインへ一騎のオーラバトラーが突進してくる。猪突猛進ではあるが、その機体に何度もシュンジは煮え湯を飲まされている。

 

「ダンバイン!!」

 

「シュンジか!!」

 

ダンバインの身体に対して、アルダインのカ・オスの剣が撃する、剣でそれを防ぐショウ。ギッ!!

 

「剣の形で威嚇をするか!!」

 

「そうともよ!!」

 

ギィンン!!

 

「ショウ君! 日本刀かい!?」

 

「日本人だからな!!」

 

「素浪人のくせによ!!」

 

ダンバインの手にある日本刀形のオーラソードを笑いながら、シュンジは歪な剣を振るう。ギンッ!!

 

「旧式が!!」

 

「外装だけだよ!! シュンジ!!」

 

「お互い様だな!!」

 

引いたショウがオーラソードを凪ぎはらう。

衝撃波がアルダインのコクビットを襲う。バッバッ!!

 

「一閃する!?」

 

「こんな芸当もある!!」

 

上昇したダンバインが剣を突き出す、剣の先から光照が奔る。

 

「くそっ!!」

 

間一髪でそのオーラ・ビームをかわしたシュンジはオーラ変換器のパワーを上げ、ダンバインに肉薄する。

 

ガァキキキイイイィィ!!!

 

すさまじい音とともに交差する二つのオーラソードからオーラの光が飛び散る。夕日の残光が帳となる。

 

「なんだよ!?」

 

ショウが驚き、ダンバインがアルダインの頭上を旋回する。

 

「シュンジ!! 何をした!?」

 

「なにぃ!?」

 

ダンバインのバランスが崩れる、コンバーターを噴出させながら、後退するショウ。

 

「奇っ怪な剣の力か!?」

 

どうもショウ機に異変が起こっているようだ。

シュンジは追撃をしようとする。

 

ビューンンッ!!

 

オーラの光線が飛んだ。

 

「マーベル機!!」

 

「ショウ!!」

 

マーベルのビルバインは変形したその余波を借り、アルダインに迫る。

 

「だめだ!! 引け!! マーベル!!」

 

ショウが何故かあわててマーベルを止める。

 

「マーベル!?」

 

シュンジはマーベル機に正対する。

 

「あ、駄目です! シュンジさん!!」

 

「ええっ!?」

 

フィナが何故かシュンジの服を引っ張る。

 

ギンッ!!

 

ビルバインの剣がカ・オスの剣と重なる。

 

「駄目だっていっているでしょう!!」

 

フィナが珍しく怒鳴り散らす。

 

「なんだよ!?」

 

シュンジはマーベル機にバルカンで牽制をかけながら後退する。

 

「どういうこと!?」

 

「マーベル!! 下がってくれ!!」

 

シュンジとショウが同じタイミングで怒鳴る。

毒気が抜かれたように距離を置く二機。

 

「フィナ!!」

 

シュンジはフィナに怒りの声をあげる。

 

「ごめんなさい!」

 

フィナが泣きそうにシュンジに謝る。

見ると、ダンバインとビルバインは後退していく。

 

「フン……」

 

シュンジはそれ以上フィナを責めずにゼラーナに向けて取りつく。

 

他の艦はまだ戦闘中であるらしい。

遠くのバストールやケムの量産機「ヴィーヴィル」の姿を見ながら、ゼラーナへ接近する。

対空砲火を軽々とかわしながら、ゼラーナの尻へと取りつく。

 

「ゼラーナ!!」

 

シュンジはゼラーナのエンジン部分に剣を押しながら通信を入れる。

 

「このまま、着陸しろ」

 

「シュンジ王か?」

 

無線から若い男の声がする。

 

「そうだ、ニー・ギブンか?」

 

「ゼラーナの艦長、ニー・ギブンである。お初にお目にかかるな」

 

「ニー・ギブンよ、このまま基地へ向けて着艦せよ。さもないと撃墜する」

 

「わかった」

 

ニーからそう返事があった。

シュンジは口から肺の気を抜いた。

 

油断であろう。

 

ボォグァアア!!

 

シュンジの近くの外壁が爆発を起こし、アルダインは後方へ大きく吹き飛んだ。コンバーターをフルにして体勢を整えるシュンジ。

 

「計ったな!!」

 

シュンジはアルダインを前進させようとする。その時。

 

ボッポッボッ……

 

沈むゼラーナから多数のシュット(小型のグライダー)が蜘蛛の子のように飛び去っていく。

なかにはウイングキャリバーの姿もある。

 

「嘗めたな!?」

 

「シュンジ王!!」

 

ガラリアのバストールから通信が入る。

 

「新手だ!!」

 

バストールが指差した方向、夕日が煌々と輝く方向にオーラシップとオーラマシンの姿がある。

 

「ラウの国かも!?」

 

マリア将軍のヴィーヴィルからそう声が聞こえる。

見れば、脱出したシュットたちはそのオーラシップへ向けて飛行している。

 

「夕方の蚊トンボめ!!」

 

タンギー部隊の誰かから声があがる。

戦闘中であったナのオーラマシン部隊も、その夕日を背にした艦隊へ撤退していく。

 

「ラウと戦うのはまずい……」

 

ローマンスか? ゼェスキリストか? どちらかの船からか艦長の声が聞こえる。

 

「しばらく警戒しつつ、現状維持……」

 

シュンジはヨルムーンガントの艦長へそう伝えた。

 

沈んでいくゼラーナを見ながら、シュンジは勝ちの実感をつかめずにカ・オスの剣を叩いた。


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