聖戦士伝説 ~カ・オスの聖戦士~   作:早起き三文

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16話 野王と聖王

ドレイク軍の量産型オーラバトラー「ドラムロ」がアの国エルフ城のオーラマシンに取り付く。

そのまるっこい図体に似合わず、ドラムロの機動力は高い。

旧式のオーラマシンでは歯が立たない。

 

ズッ……!! ズッ……!! ズウッ……!!

 

ドラムロのオーラコンバーターの音と同じにアの国の旧式のコンバーターの音が重なる。

 

ブゥロロロッ……!!

 

上空からナの国製オーラバトラー「ボチューン」ドラムロに向かって襲いかかる。

 

ガッ!!

 

どちらにも分などない、互角……とは見えるだろう。

 

ガルルルッ……

 

ドレイク勢側のウィングキャリバー「バラウ」がドラムロを支援する。

 

どちらにも分がないとなれば、数が多いもの、連携を考えるものが勝つのは道理であろう。

この春になってようやくドレイク勢、エルフ城包囲網側が優勢になってきた。

 

「タンギーな、助かるよ」

 

ドレイクは同盟国であるクの国の王ビショットにそう声をかける。

 

「兵達には厭戦気分も出ておりますでな……」

 

ビショットは憂うつそうにドレイクに答える。

 

「慰安部隊は?」

 

「サーカス設備がナの馬鹿者に壊されてしまいましたからなあ」

 

ビショットは苦笑する。

 

「奥方様はサーカスが好きでしたな」

 

「古いことを……」

 

ドレイクは離縁した妻のルーザの事を思い出した。

 

「離縁したならば、私にもチャンスがありますに」

 

「寝取る気か?」

 

「離縁でしょう?」

 

「ハッハッ……」

 

ドレイクはこの青年王の年上好みを思い出した。

 

「リムル殿は……?」

 

「俺が蹴落としたロムン・ギブンの息子にくれてやったが、どうもミイラ取りがミイラになってしまったようだ、な」

 

ドレイクは愛娘の顔を思い浮かべる。

 

「ギブン家は……?」

 

「ナか、ラウか、はたまたハワやケムか…… 強力なバックアップがあるようだ」

 

「ゼラーナとやらですか?」

 

「うむ……」

 

ドレイクは辺境の国ハワの名前を言って、別れた妻であるルーザの事を思い出した。

絶世の美人ではあったが、とにかく我が強く、辟易したものだ。

故郷のハワに帰ったルーザの顔を思い出そうとする。

 

(それでも、いないと寂しいものなんだな、妻というものは)

 

ドレイクは我ながら気が弱くなっていることを自覚しながら、ビショット王に目をやった。

 

(このマザコン王が)

 

ドレイクは内心そう思いながらも

それでもドレイク軍のオーラバトラーに匹敵する性能の機体である「ビアレス」

そしてオーラボンバー「タンギー」を開発したこの若者を高く評価している。

 

「儂が倒れたあと、コモンを牛耳るのはこやつかもしれんな」

 

持ち場へ戻っていくビショットを見やりながらドレイクはそう呟いたあと、もう一人、若き王がいたことを思い出す。

 

「生意気なリの聖戦士殿め!!」

 

ドレイクは笑いながら皮袋の酒を口につける。

 

「タンギーね……」

 

重武装ウィングキャリバーとでも言うべきそのオーラボンバーの活躍を遠目で見ながら、ドレイクは背後に声をかける。後ろには青年騎士が一人。

 

「バーン、テストパイロットへの格下げの気分はどうだ?」

 

「冗談じゃありませんよ、全く」

 

バーンはブツブツ言いながらドレイクに新型機のテスト報告書を手渡す。

 

「勝手な戦線離脱だろう?」

 

「災害みたいなもんですよ」

 

地上へ行った時の出来事をドレイクが目を輝かせて聞いてた事をあえてバーンは言わずにエルフ城へ目をやる。

 

「ブブリィな、使えるか?」

 

「ガラリアは嫌がっています」

 

「あの女はスタンドプレーが癖になっているからな、性分は直らん」

 

「レプラカーンは届きましたよ」

 

バーンはもう一枚、報告書をドレイクに渡す。

 

「ショットはなにか最近、一つ博打を打ちたがっているみたいですな」

 

「何か出来るものやら……」

 

「テレビでも作ってほしいものです」

 

「バカいうな……」

 

完全な地上被れになったバーンを軽く睨みながら、ドレイクは報告書を読み続けた。

 

 

 

 

「聖王はあなたの名前を聞いております」

 

ナの国の謁見の間に侍従の声が響く。

 

「レン・ブラス、かつてリの国の騎士でありました」

 

厚い銀糸のカーテンに隠れたナの聖王の影をレンは見上げる。

 

「レン・ブラス、貴方をこのナ国の騎士として認定します」

 

カーテンの前の簡易な玉座、そこに座るナの国の王女「シーラ・ラパーナ」がレンの肩に剣を置く。

 

「もし、リ国が前線に出た場合、お前は無断で敵前逃亡をする権利をあたえる」

 

レンの顔が堅くなる。

 

「ただし、それ以外の者との戦闘の際

お前には常に二倍の戦果を求める」

 

シーラが厳かに言い放つ。

 

「ハッ!!」

 

ナの国の騎士、レン・ブラスは力強く答えた。

 

 

 

 

「聖戦士殿!!」

 

レンはナの国の聖戦士、アメリカの地上人「アレン・ブレディ」の姿をみて近寄った。

 

「レン! ひとまずはお前に御祝いの言葉を!!」

 

ナの国のウィングキャリバー「ドゥミナント」に寄りかかりながら、レンに笑顔を浮かべる。

 

「地上のマシンか……」

 

レンはドゥミナントをしげしげと見る。

 

「まったく、よ」

 

アレンが苦々しげに愛機を見る。

F22という戦闘機を改造したドゥミナントを見ながら嘆息する。

 

「これじゃ、ステルスもなにもあったもんじゃない」

 

「どうせ、もともとバイストン・ウェルでは対して役に立たないでしょう?」

 

「地上の騎士としてのプライドの問題!!」

 

背後に増設されたオーラジェットエンジンの不格好さに辟易しながら、コクピットに入り込むアレン。

 

「シュンジ王は?」

 

「こいつならやれると思うぜ?」

 

「俺はリとの戦いに行けない」

 

「良いご身分だ……」

 

アレンは少しやっかみながら、ドゥミナントのエンジンを動かした。

 

「ご武運を!! ゼラーナにも気を付けろよ!!」

 

「おう!! あいつらはニホンみたいなもんだよ、もう!!」

 

「なんだい!? それは!?」

 

「完全に信用出来ないって意味!!」

 

ドゥミナントはどのオーラマシンとも異なるエンジン音を立てながら、静かに発進していく。

 

「遠い国になったもんだな……」

 

レンはドゥミナントを見送りながら、ナの国の天空城「グラン・ガラン」へと踵を返した。


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