聖戦士伝説 ~カ・オスの聖戦士~   作:早起き三文

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13話 魂の川

「ショウ、ではあれはディズニーみたいな物と誤魔化せれば大丈夫だな?」

 

「ああ、頼むよ、親父」

 

ショウは父親のシュンカ・ザマにそう告げる。シュンカは電話でおもちゃ会社に連絡をとる。

 

「お袋は……?」

 

「寝込んでいるわ……」

 

シュンカの秘書であるヨーコがショウに返事を返す。

 

「仕方がないか……」

 

ショウはため息をつく。

 

「そりゃあ、仕方がないわよ」

 

マーベルはハンバーガーをかじりながらショウを慰める。

 

「ショウの友人の方々、狭い所だかゆっくりとしていってくれ」

 

シュンカはそう言い、事情説明(ウソで固めた内容ではあるが)市役所に向かう。

 

「良い所のお坊っちゃんなんだな、ショウは」

 

トッドは先程から洋画を見ている、そのテレビにバーンが釘付けになっている。

 

「テレビか、ショットが言っていたのはこれか」

 

バーンはテレビのリモコンを弄りながらボタンを押す。トッドが怒ってリモコンを取り上げる。

 

「ガキだよ…… 全く……!!」

 

ガラリアはテレビよりもショウの家、日本の家が興味深いようだ。

 

「富士山から?」

 

シュンジはフィナからオーラロードの開き方を教えてもらっている。

 

「この高い山から……」

 

フィナは地図に線を書きながら、シュンジに説明をする。

 

「シズオカを突き抜け、海に出ます」

 

「出てどうする」

 

「海の上から空に上がり、天の海に入ります」

 

「はあ?」

 

シュンジは理解ができない。

 

「ワーラー・カーレンの事じゃないか」

 

ガラリアがシュンジに説明をする。

 

「いや、だからそれはコモンの話だって……」

 

「いえ、地上にも天の海はあります」

 

フィナが自信たっぷりに話す。

 

「信じられるのか? その嬢ちゃん?」

 

トッドが「セカンド・マイル」を見ながら首だけシュンジ達に向ける。

 

「あたしはフィナの言っていることが解る」

 

ショウのフェラリオ、チャムがフィナの隣に座る。

 

「トッド、私は別のテレビが見たい」

 

バーンがトッドとチャンネル争いを始める。それをアイスを食べながらマーベルは情けない顔をして二人を見る。

 

「少しはシュンジたちを見習ったらどうなの?」

 

「裏切り者の地上人よ、私はこの地上の旅はバカンスだと思っている」

 

セーターに着がえてラフな格好のバーンは悪びれる様子もなく、カップラーメンを食べ始めた。

 

(バーンはこんなに楽天家だったのか?)

 

シュンジはいつもの凛々しいバーンとのギャップに少し驚いている。

 

「すまないな、お袋が使えなくて……」

 

ショウは少し怒ったように皆を見渡す。

 

「気にすんな、ジャパニーズ。お袋さんは大事にしてやんな」

 

トッドはチャンネルをバーンに渡して、届いたピザを食べ始めた。

 

「地上には優れた美術品が多いのだな……」

 

ガラリアは盆栽や書画が気に入ったようだ。

 

「ショウ、これは持って帰っても良いか?」

 

ガラリアが壁の掛け軸を指差して訪ねる。

 

「だめだ」

 

ショウの機嫌はかなり悪い。

 

「だか、これはお前の父上が書かれた物だろう?

あたしはお前の父上の冷静な態度が気に入ったのだ」

 

ガラリアがまだごねる。

 

「オーラバトラー六機では容易にオーラロードが開けると……?」

 

「はい」

 

フィナはハッキリと告げる。

 

「善は急げか?」

 

「はい、でないとオーラロードが閉じます」

 

「ふん……」

 

シュンジは握り飯を食べ終わると、皆に説明を始めた。

 

 

 

 

「バーン、そんな本を持って帰ってどうするのだ?」

 

「無論、お館様に見せるのさ」

 

バッグ一杯の映画雑誌を重そうに持ちながら、ショウの問いにバーンは答える。

 

「楽しそうですね」

 

「何が?」

 

フィナはシュンジに語りかける。

 

「バーンさんもガラリアさんも」

 

「動転しているだけではなくって?」

 

マーベルが口を挟む。

 

「バイストン・ウェルでは戦争ばかりで、疲れてたんですよ、きっと」

 

「そうそう」

 

チャムもフィナに同意する。

 

「このニホンか、平和だもんな。空気も人も」

 

チャムはそう言いながらショウの肩へ止まる。

 

「ジャパニーズだもんな」

 

トッドがビアレスの調子を調えながら、コクピットから答える。

 

「ガラリア!! お前は泥棒か!?」

 

「良いだろう!? 戦利品であるよ!!」

 

どうもガラリアは掛け軸を勝手に持ってきてしまったらしい。ショウが怒っている。

 

「コモンにとってはここが魂の安息所……」

 

「そうですよ」

 

シュンジにフィナが答える。

 

 

 

 

ウィングキャリバーに変形したビルバインにダンバインが乗る。

バストールにビランビーを引っ張ってもらい、シュンジのアルダムはトッドのビアレスに引っ張ってもらう。

 

「あんたが一番足を引っ張っているんだぜ、ジャパニーズ」

 

トッドはコクピットの中で本屋に行って買い込んだアダルト商品の品定めをしながらシュンジに悪態をつく。

 

「面目ない」

 

シュンジは素直に謝る。

 

「シュンジには責任はないのでなくて」

 

鼻の下を伸ばしているトッドにマーベルやガラリアの態度は冷たい。

 

「ビランビーも旧式だからな」

 

「だったら、その無駄な本を捨てろ!!」

 

「そっちこそ!!」

 

バーンとガラリアが怒鳴りあう。

 

「このビルバイン、不良品だわ」

 

「バーガーの食い過ぎでは?」

 

「落ちたいの? ショウ?」

 

「いや……」

 

マーベルのビルバインがオーラロードの先陣を切る。

 

「オーラロード……」

 

「魂の道です」

 

シュンジの呟きにフィナが答える。光り輝く虹に乗って、六機のオーラバトラーは海へと渡る。

 

「楽なもんだな」

 

「気を張る必要はありませんよ」

 

シュンジは自宅から持ってきたマンガを読みながらマシンの自動操縦に身を任せる。

 

オーラバトラー達は海から一気に上昇して天へと昇る。どこまでも青天が続く空。

 

「本当だ……」

 

確かにそこに海があった。いや、海と言うよりは川である。魂の川。

 

その川に流され、戦士達はしばしの眠りについた。


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