「運が良いのだな」
ショウが林の中から話しかける。
「良いものか」
シュンジはキャンプ用のテントをアルダムにかける。
「これで見えなければ良いが」
「ジャパニーズだよ、目は悪いさ……」
「おやめなさい、トッド」
マーベルがトッドを睨む。
「良い布地だな、さすがは地上の物だ」
「あたしは気に入らないね」
バーンがキャンプ用品をしげしげ見ているのを、ガラリアは皮肉げに見る。
「地上の物は全て金属の臭いがする」
ガラリアは鼻をつまみながらバストールへカバーをかける。
「シュンジ、お前はこんなに所に一人で住んでいたのか」
ショウがシュンジの家を見渡す。森の中の一軒家。舗装された道路もない。
「しかも、俺の家の近所だったとはね」
ショウは苦笑いを浮かべる。
「俺の家は狭い、食べ物もない。ショウ君の家へ行っていいか?」
「良くはないが、それしかないだろうな……」
ショウはため息をつきながら承諾する。
「終わったぞ、地上人」
バーン達がオーラバトラーに隠蔽用のカバーをかけ終えたらしい。
「案内しろ、地上人」
バーンがショウに偉そうに命令する。
「バーン、ここではあんたは騎士でもなんでもないんだぜ!」
ショウが毒づく。
「ああ、そうであるな、地上人」
「フィナ! 行くぞ!」
シュンジがシュンジの家へ入ったきり出てこないフィナとチャムに声をかける。
「春画がみつからないぞ!」
「ベッドの下は探したか、チビちゃん」
家捜しをしていたチャムにトッドが変なアドバイスを送る。シュンジは頭が痛くなってきた。
「あたし達はバイストン・ウェルに帰えれるのかねえ……」
ガラリアがため息をつく。
「帰ってもらわなくては困るわ、一生エイリアンとして生きていくつもりであって?」
マーベルがガラリアの側に近寄る。
「腹が減ったぞ、地上人」
「草でも食ってな!!」
空腹を訴えるバーンにショウは怒鳴る。
「地上界ですね」
フィナが飛び回る。
「まあ、そうだ」
シュンジが無愛想に答える。
「シュンジさんは嬉しくないんですか?」
「あんまりな、良い思い出もないし……」
シュンジは憂鬱そうに返事をする。
「ジャパンのメシかよ……」
トッドが歩きながら嫌な顔をする。
「納豆は御免だぜ」
「私も……」
トッドとマーベルがぐちぐちと言う。
「ひどい味だな……」
シュンジの家にあったカロリーバーを歩きながら食べているガラリアは愚痴をこぼす。
「そうか?」
バーンは気に入ったようだ。
「お、味が違うぞ!!」
バーンはカロリーバーの味の違いが嬉しいようだ。
「もうすぐで着く、あんまり食べ過ぎるなよ」
ショウはうんざりした顔をして家の方向へ指を指す。舗装された道路に入る。
「道は隅っこを歩けよ」
「馬車が通るのか?」
バーンが一人で合点をする。
「そんなもんだ」
ショウはもういちいち説明をしない。
「早いな、あのピクジー!!」
車にガラリアが驚く。飛び出そうとする彼女をあわててトッドが腕を引っ張る。
「もう服から出てもいいか?」
チャムがショウの服の中から声をあげる。
「もうちょっと待ってくれ」
ショウは服の中のチャムにそう言う。無用の混乱をさけるため、シュンジもフィナを服の中へ入れている。
「これは俺にも解る、ここにコインを入れれば選択した飲み物が出てくるのだろう?」
バーンが自動販売機の前で立ち止まる。うるさいのでショウはバーンにカードを渡してやった。
「違うのか?」
「その紙で買える」
ショウの機嫌はバイストン・ウェルに帰るまで直らないのであろうか。
「ショウ君はバイストン・ウェルに帰りたいのか?」
「どうとか言うよりも、こんな奴らをニホンに置いとく訳にもいかんだろう!」
「怒鳴るなよ……」
シュンジは耳を塞ぐ仕草をした。
「お袋にあいたかったぜ、全く」
「私も……」
「アメリカ人!!」
ショウがまた怒鳴る。
「ゴホッ!!」
バーンは炭酸飲料にむせたようだ。