「聖戦士王殿には貧乏くじを引かせてしまったな」
ドレイクがシュンジの顔を見ずに話す。
「いや、引かせ過ぎた」
ドレイクは言葉を繰り返す。
「私の不徳の成す所です」
シュンジはうつむき加減にドレイクに言った。
「充分な補填はしよう」
「人命は取り返せません」
シュンジはドレイクにそれだけはハッキリと告げた。
「お甘い」
ガラリアがぼそりと呟く。
「やめろ、ガラリア」
バーンがガラリアをたしなめる。
ガラリアは不機嫌そうにセンテリオンの客室から立ち去っていった。
「ガラリアを許してやってくれ、シュンジ王」
バーンがシュンジに謝る。
「いえ……」
「ガラリアは手柄をあなたに取られて悔しいだけなのさ……」
バーンが眉をひそめながら小声で言う。
「ナの国の部隊は残り少ない」
「まだ、ゼラーナがいる」
「そうであったな」
バーンは自分の総髪を撫で付ける。
「では、シュンジ王、私たちはリへ戻ります」
ザン団長がシュンジに敬礼をする。
「すまない、俺の不徳の為に……」
戦死者の遺髪をザンに渡しながら、シュンジはうなだれた。
「戦の習いです、気に病まないでくださいや」
ザンはそう言うと踵を帰してリィリーンへ乗り込んでいった。
「シュンジさん」
「ん?」
リィリーンとその回りのリの国の部隊を見送りながら、フィナが声をかける。
「残るのは?」
「見届ける意地かな?」
シュンジは客となってドレイク軍旗艦であるセンテリオンへ入っていった。
「ゼラーナかい?」
「そうらしいな」
バーンが答える。
リの国の部隊の半壊から一月が経ち、センテリオンの独特な振動音にも馴れたころ、ゼラーナが姿を現した。
「ナの国の新型が確認された、油断できない」
「俺も出ろと?」
「決着をつけたいのですよ、いい加減」
バーンは総掛かりででると宣言した。
バーンに連れられてハンガーへと降りる。
オーラマシンのハンガーの広さははリィリーンの三倍はあるようであった。ガラリアの姿がみえる。
「バストールか、出るのか?」
「ああ、シュンジ王」
ガラリアは無口にバストールの調整を始める。
シュンジも自分のアルダムのコクピットに潜り込む。
「ナの国部隊はすでに壊滅している」
バーンが乗機のビランビーから通信を入れる。
「あとは雑兵とゼラーナのみだ」
「つまりゼラーナを落とせば……」
「そう言うことだ」
バーンはビランビーをセンテリオンから発進させた。
続いてガラリア機、そしてシュンジ機が発進する。
「シュンジ、出る!!」
サァ…!!
虹の嵐という異常気象がエルフ城周辺に発生している。実害はないらしいが、不思議な光景だ。
シュンジは気合いを入れてセンテリオンから飛び出した。
虹が乱舞する光景の中、ゼラーナの姿を確認する。
「ジャパニーズ」
トッドがクの国のオーラシップから飛び出した。
「クの国に?」
「ビショットさんが防御用に一人、腕のたつ奴が欲しかったんだそうだ」
「ふぅん……」
シュンジはゼラーナから出てきたダンバインの姿を確認する。
「あれは……!?」
謎の赤いオーラバトラーが空域を漂っている。F22ではない。
「あれがナの国の新型らしい」
バーンから通信が入る。
「聖戦士か?」
「裏切り者のマーベルらしいな、どうも」
ガラリアが嘲るような声を上げた。
「なんでも、鳥に化けるらしい」
「鳥? ウィングキャリバーかな」
ガラリアはその質問に答えず、バストールのエンジンを調整し続ける。
「安定しない……」
それはシュンジも思っている事であった。シュンジのアルダム――アルダムⅡ――はバストールのオーラ増幅器を改良して搭載している。
「メーターが暴れているな……」
フィナが不安そうな顔をする。そのフィナに安心しろと声をかけるシュンジ。
ダンバインが接近してくる。酷く不安定な動きだ。
「どうした、ショウ君!?」
「ちっ……」
ダンバインと剣が合わさる、メーターが大幅にぶれる。
「ガタがきたか?」
どうやらダンバインも同じ状態らしい。ショウの苛立つ声が聞こえる。
見ると、敵の新型機と交戦しているバーンとトッド機からもコンバーターから変な色の煙が出ている。全く損傷を受けていないのにだ。
「不良品か? ビルバインは?」
マーベルの機体からもあちこちから煙が出ている。
「引くか? バーン殿?」
「……」
バーンは無言で答えない。
「シュンジさん」
「ん?」
ひどく気迫がない戦場で、シュンジは気だるくフィナの顔を見た。
「オーラロードです」
「はぁ?」
シュンジはなんの事かわからず、間抜けな声を出した。
虹が各機のオーラコンバーターに吸い込まれていく。
「ん……!?」
シュンジがコンマ何秒かで異変に気付いた瞬間……
六機の戦士達のマシンが姿を消した。