聖戦士伝説 ~カ・オスの聖戦士~   作:早起き三文

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10話 F22

先手はエルフ城からであった。

 

「オーラマシン部隊接近中!!」

 

リの国の旗艦であるリィリーンのクルーが叫ぶ。

 

「シュンジ王、出ますか?」

 

「ああ」

 

シュンジはザン団長に艦の事を頼むと、ハンガーへと降りていった。

シュンジの姿を見て、敬礼するリの戦士達。

 

「ナラシ、エフア。迎撃隊に参加せよ」

 

「ハッ!!」

 

騎士達が直立する。

 

「ラージャは?」

 

「すでに出ている、シュンジ王」

 

トカマクがオーラボム部隊の隊長であるラージャの報告をする。

 

「俺は居残りか」

 

「頼む、トカマク」

 

ハンガーに並ぶアルダムを見渡しながらシュンジはトカマクにそう言葉をかける。

 

「せっかくの新型アルダムがな」

 

「いずれ参戦する機会もあるさ」

 

エフアがそうトカマクに慰めの言葉を与える。

 

「機体でも磨いていましょうや、地上人」

 

同じく居残りのボアンがトカマクに笑いかける。

 

「俺にもオーラ力はあるっていうの」

 

トカマクのぼやきを聞き流しながら、シュンジはジームルグ隊と連絡をとる。

ハンガーの後方、少し離れた場所にウィングキャリバーが接近する。

 

「いくぞ!! フィナ!!」

 

フィナがシュンジのパイロットスーツのポケットに潜り込む。

リの国の王族の正装をアレンジしたデザインの革のスーツの装飾が輝く。

 

アルダムのコンソールをチェックしながらジームルグに飛び乗る。

システムオールグリーン、新型オーラ増幅器、オーラエンジンともに良好。

 

「アルダム! シュンジ・イザワ、出る!!」

 

 

 

 

シュンジのアルダムを乗せたジームルグが朝焼けの空を駆け上がる。

リィリーンの周囲にはオーラボムであるスジャータが展開している。

 

「オーラボム隊は防衛陣形を保て!! ナラシ、エフアはしばらくリィリーンの周囲を旋回!!」

 

コクピット側面の古くさい伝声管から了解の声が響く。ドレイク陣営、ケム、ハワからも機械化部隊が展開していく。

 

「クの部隊は!?」

 

「予備戦力だってよ!!」

 

トッドのビアレスから返答があった。

 

「バーン達は!?」

 

「いきなりこんなに展開しているのはリの国だけだって!!」

 

見ると、ケムからもマリア機は展開していない。

 

「俺はバカかな……!?」

 

「気を落とさないで下さい……」

 

フィナが気を使ってくれる。

 

「ドレイクに恩でも売りなよ!! シュンジ王!!」

 

トッド機はウィングキャリバー「ズロン」に乗りながらはるか上空にいるようだ。

無線の声が聞こえづらい。

 

「シュンジさん! 太陽の方向!!」

 

太陽と呼ばれる朝のオーラの光に照らされるようにエルフ城からの部隊が展開される。

 

「ナの国のマシーンか!?」

 

ウィングキャリバーに乗っている見知らぬオーラバトラーを見ながらシュンジは叫ぶ。

 

ドレイク陣営の旗艦「センテリオン」から強烈な火線が走る。

同時にドレイク軍戦闘艦「ブル・ベガー」からも砲火が飛ぶ。

 

シュッ!! シュッ!!

 

敵のマシンは軽やかにその火線をかわしながら、エルフ城包囲軍に迫る。

 

ボフッ!!

 

上空からフレイ・ボムのシャワーが降り注ぐ、それをもろに浴びて敵のオーラバトラーがウィングキャリバーから落ちる。

 

シッ!! ディ!!

 

強烈な日差しの朝焼けの空を切り裂くようにトッド機がエルフ城側の部隊に襲いかかる。

敵のオーラバトラーは即座に対応してトッドを迎え撃つ。

 

ガッ!!

 

トッド機が敵の機体と切り結ぶ。

 

「ナの国の力か!!」

 

想像以上に出力が高いその敵機を観察しながら、シュンジはジームルグを駆る。

 

ザッ!!

 

すれ違いざまに敵機を切り捨てると、シュンジは旋回して追撃を与えようとした。

 

バッ!! バッ!! バッ!!

 

激しい振動音と共にシュンジ機に接近する機体、ピンク色に塗られたその機体は素早く剣を繰り出す。

 

キンッ!!

 

甲高い音と共にシュンジ機の剣がその一撃を弾く。

 

「シュンジ王!!」

 

「マーベル・フローズン!?」

 

ゼラーナの女聖戦士は再び剣を突き出す。

見れば彼女の機体はジームルグに取り付いている。

 

「ナの国に移ったか!!」

 

「旧式のアルダムタイプなど、このボチューンの敵ではない!!」

 

カンッ!! ガッ!! ガッ!! ガッ!!……

 

ジームルグの上で剣と剣が重なりあう。

風を切るジームルグの上で何合も剣が合わさったあと

シュンジはボチューンにキックを放つ。ズンッ!!

 

「何の!!」

 

「しぶとい!!」

 

いまだジームルグから手を離さないマーベル機を見ながらシュンジは叫ぶ。

 

「ショウ君は!?」

 

「教えると思って!?」

 

ボチューンの腰から火線が走る、バルカンがアルダムの装甲をたたく。

 

カン!! カッ!

 

「効かない!?」

 

「所詮はドレイクから掠め取った技術!!」

 

「棚に上げる!! 自分のやったことも省みない、バカな男!!」

 

ボチューンは腰からグレネードを取り出そうとする。

 

バフッ!! オオオッ!!

 

上空から大きな影が覆い被さる。

 

「何だ!?」

 

「シュンジさん!!」

 

ドゥルルルル……!!!

 

バルカンが上空から降り注ぐ。

ジームルグはとっさに急旋回する、その反動でマーベル機の手が離れる。

 

「王!!」

 

「やるじゃないか!!」

 

シュンジはジームルグのパイロットを褒めると、先程の影に目をやった。

 

「金ピカのウィングキャリバー!?」

 

その黄金のウィングキャリバーは凄まじい早さでリィリーンに接近する。

 

「リィリーン!!」

 

エフア機とナラシ機が応戦する。

二機のミサイルをかわしながら、その機体はすれ違いざまにスジャータを沈める。

 

「くそっ!!」

 

シュンジはどうにかそのウィングキャリバーについてゆこうとする。

 

「トゥエンティトゥー!?」

 

無線からトッドの声が聞こえる。

 

「何だって!?」

 

シュンジが叫ぶ。

 

「トゥエンティトゥーだよ!!」

 

「何言っているんだ! お前は!?」

 

シュンジは苛立ちながらそのウィングキャリバーの動きを追う。

 

「オーラレーダーに写りづらいか……!!」

 

シュンジはアルダムのミラーからその機体に照準を定める。ミサイルを斉射。ズォ!!

 

ドゥルルルル……!!

 

バルカンを鳴らしながら、そのウィングキャリバーは旋回する。

バルカンにドラムロが撃ち落とされる。ミサイルが追い付かない。

 

「尋常に!!」

 

シュンジはその機体と正対できた。

 

「!!」

 

シュンジはその機体を見て言葉を失った。

 

「ジャパニーズ!! 戦闘機だよ!!」

 

トッドがどうにかそのウィングキャリバー、いや、戦闘機に追い付こうとする。

 

「F22!?」

 

「知ってるのか!? ジャパニーズ!?」

 

「マンガで見た!!」

 

「オタク男達め!!」

 

マーベルが嗤う。

 

「だまれよ!! アマ!!」

 

トッドは相当苛立っているらしい。

 

「あんたがリの国の聖戦士かい!?」

 

戦闘機のパイロットが通信を入れる。

 

「地上人か!!」

 

「アレン・ブレディ!!」

 

「ふざけるな!!」

 

トッドが叫ぶ。

 

「知り合いか!?」

 

「憎たらしい先輩だよ!!」

 

トッドはウィングキャリバーをそのF22に接近させる。

 

「金色の戦闘機ってのは、あんたは馬鹿か!?」

 

「地上じゃ、こんなことはできまい!?」

 

「そうだろうともよ!!」

 

トッドがビアレスの手斧を投げつける。斧は戦闘機の主翼にぶち当たる。

 

「おおっと!!」

 

「沈みな!!」

 

トッドは戦闘機にフレイ・ボムを斉射しようとする。しかし。

 

ズォ!!

 

戦闘機は急速にスピードを上げ、戦線を離脱する。

 

「オーラ器機の調整実験はこれぐらいやれば十分だな!!」

 

F22、地上の戦闘機はエルフ城のはるか彼方へ飛び立っていった。

 

「くそっ!!」

 

トッドが怒りの叫びを上げる。

 

「地上からもろとも召喚された……!?」

 

シュンジはジームルグのパイロットと打ち合わせをしながら考える。

 

「資本主義の結晶め!!」

 

トカマクがF22が飛び立った方向を見ながら罵る。

 

「トカマク!?」

 

「出てなければ船は落ちてたよ!!」

 

リィリーンの周囲にはおびただしいボチューンの残骸が広がっている。

それに重なるように数多くのスジャータが落ちている。そしてアルダムも。

 

「ボアンは……!!」

 

「即死だった…… あのじいさん」

 

どうやらナの国の部隊はリィリーンを集中攻撃していたようだ。

部隊を展開させたのがまずかったのか、単なる偶然か。

 

「シュンジさん……」

 

「……」

 

シュンジは血が滲み出るほど、強く唇を噛んだ。


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