原作の裏側で。   作:clp

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本話は、原作者が執筆した「アンソロ1」最終話から妄想を膨らませて書きました。
微妙にネタバレがあるのでご注意下さい。



斯くして、彼の前に最初の敵が現れる。

 もくもくとタバコの煙が立ち込める店内で、黙々と雀卓に向かう男がいた。

 

 昨日からずっと打ち続けているので髪はぼさぼさだし、無精髭もうっすらと生えている。だが徹夜をしても肌に皺ができないのは若さの証だろう。他三人の手牌や捨て牌を眺めるその眼はどす黒く濁っていて、しかし同時に爛々と輝いていた。

 

 上家(カミチャ)が手番を終えるのを待ちかねたとでも言うように、せかせかと牌の山に手を伸ばした男は、それを戻す途中でぴくりと動作を止める。

 親指が、牌の表面をぬるりと動いた。

 

 何とか間に合った。

 そう心の中で呟いた男は、そのまま牌を表向きに置くと手牌を倒した。

 

「悪いな。(ハク)自摸(ツモ)のみでラストだ」

 

 清算を終えて、少なからぬ額を受け取った男は、それらの紙幣を無造作にズボンのポケットにねじ込んだ。

 尻をずるずると動かして身体を椅子に沈み込ませながら、大きく安堵の息を一つ。

 

「じゃあ俺は、午後の授業に行くから……」

 

 そう断りを入れて立ち上がろうとしたところで。

 

「貴方はこんなところで何をしているのかしら?」

 

 すっかり聞き覚えてしまった声が耳に届いた。

 

 

 やれやれと思いながら、わざとのろのろした動作で椅子から立ち上がった。

 そしてゆっくりと、店の入り口のほうへと身体を向ける。

 

 掃き溜めに鶴という言葉を地で行くように、そこには凛として立つ見目麗しい女性がいた。

 少女と呼べるほど幼くはないけれど、両腕を組んで仁王立ちしている彼女からは瑞々しいまでの若さと生命力が感じられる。

 

 この二ヶ月弱でとうに見慣れたはずなのに、気を抜けば思わず息が漏れそうになるほどに、その顔はとても……。

 

「忌々しい奴だな、毎回毎回。いくら授業のお供が欲しいからって、俺を探して回るのは外聞的にどうなんですかね?」

「あら。私はお昼をゆっくりと頂いてから、この雀荘までのんびりと歩いて来ただけよ?」

「ちょっと待て。俺の行動が筒抜けすぎるだろ。つーか、ここに来るって誰にも言ってなかったぞ俺は?」

「貴方って、行動がとても読みやすいのよね……」

 

 ほら、とっても忌々しい。

 それって俺が単純だって言いたいんですよね流石に才女は違うなーと、そんな軽口を叩いた日には倍率ドン更に倍で逆襲されるに決まっているので口には出さないけどな。

 

「んで、人の心を読むのに長けた雪ノ下家の御令嬢が、俺に何の用ですかね?」

 

 ざわっと店内が沸いたのに、目の前の美女は眉一つ動かさない。

 自分に害を及ぼせるはずもない虫けらが何を騒ごうとも、彼女は気にも留めないのだろう。

 俺も一緒に虫けら扱いしてくれたら良かったのだが、今更それを言っても始まるまい。

 

「貴方が言った通りよ。午後から教授の授業があるのだから、早く仕度を済ませなさい」

「へいへい。んじゃトイレに行ってくるから、先に外に出てろ」

「……トイレの窓から逃げないでしょうね?」

「どこの借金取りの発想だよ……。つーか今すぐ行ったら時間が余るし、トイレぐらいゆっくりさせてくれ」

 

 ふむ、と納得顔で頷く様は年相応に可愛らしいのに、頭の中ではろくでもない事を考えているに違いない。

 

「いいわ。どうせ貴方の行き先なんて、考えればすぐに分かるもの。階段を下りた所で待って……」

「もう十二月だからな。三軒先の本屋に入って待っててくれ」

 

 言葉を遮ってそう告げると、返事も待たずに便所に向かった。

 わざとらしく息を吐いてから踵を返す彼女の気配を感じ取りながら、俺は後ろ手に扉を閉めると鍵をしっかりかける。

 

 ポケットから札束を取り出して、音が外に漏れないように静かに数えた。うん、確かに。

 ゆるゆるのジャケットの内ポケットから封筒を取り出して、今日の稼ぎをそこに加えてから元に戻す。

 そして両手を上に向けて大きく伸びをした。

 

「ふーっ、さすがに疲れたな。……ついでに用を足して行くか」

 

 じょぼじょぼと生理現象を済ませながら、俺は全ての発端となった二ヶ月前の出来事を思い出していた。

 

 

***

 

 

「ぬくぬくだにゃー」

 

 可愛い女の子のつぶやきだと思った?

 残念、俺でしたー。

 

 そんな馬鹿げたセリフを思い浮かべながら、教室の机に突っ伏した俺は今まさに微睡みの世界に旅立とうとしていた。

 

 まだ十月だというのに今日は何だか肌寒い。

 こんな日に外で時間を潰すのは愚の骨頂、午後の授業が突然休校になったのをこれ幸いと、俺は使われる予定だった大教室に来ていた。

 

「せっかくの暖房を無駄にするよりは、俺が有効活用してやろうってなもんだよな」

 

 今からなら一時間半は眠れるなと。そう思いながら全身の力を抜いたところで。

 

「あら。誰もいないなんて珍しいわね」

 

 泰平の眠りを覚ます声が聞こえた。

 

 

「……今日は休講だぞ?」

 

 俺の存在には気付いていないような口ぶりだったので無視しても良かったのだけど、下手に居座られると貴重な睡眠時間が削られてしまう。

 そう考えた俺は仕方なく上半身をむくっと起こして、面倒くさそうにそう告げた。

 

「っ……吃驚(びっくり)ね。気配がまるで感じ取れなかったのだけど、貴方ってゾンビか何かなの?」

「さあな。ま、もし俺がゾンビでも、お前を仲間にしたら口うるさくて面倒そうだから襲わずにいてやるし、だからとっととどっかに行ってくれ」

「なるほど。いま流行りのキョンシーなのね?」

「人の話を聞いてねーな。違うっつーの」

「じゃあチャンスー?」

「おい。広東語読みを普通話読みにしただけだろ?」

 

 よくできました、とでも言いたげに頷く彼女はとてもチャーミングで、つい今しがた毒舌を披露してくれた女と同一人物とは、にわかには信じがたい。

 

 けれどもこの外見は世を偽る仮の姿。

 この大学に入学以来、告白という名の玉砕行為に出た連中の怨嗟の声を数多(あまた)耳にしてきた俺にとって、こいつの真の姿を見通すなど容易いことだ。

 

「念のために言っておくのだけれど。この程度の会話すらなく告白されても、きっぱりと断る以外に何ができるのかしら?」

「あー、まあ……それはそうかもな」

 

 彼女の言い分に納得してしまったので、俺は素直にそう返した。

 それよりも……今この子、俺の思考を完璧に読んでなかったか?

 

「完璧に読むのはまだ無理ね。母の域まで早く到達したいとは思っているのだけれど」

「だからお前、さっきから完璧に読んでるだろがー!!」

 

 頬にかすかに手を当てて「そうかしら?」なんて口にしながら、すっとぼけた表情を浮かべる彼女からは小悪魔じみた魅力が伝わって来るのだが。

 今は思わず声を荒げてしまったけど、そんなのに引っ掛かるほど俺の人間強度は低くはない。

 

「貴方は完璧と言うけれど、分かることしか分からないし、分からないことは分からないわ。それはそうと、貴方が間接的に耳にした怨嗟の声は、随分と誇張されている気がするのだけれど?」

「だからなんで間接的に聞いたって分かるんだよおかしいだろ!?」

 

 訂正。こいつは俺程度の人間強度でどうにかできるレベルじゃない。

 だからいっそ感情的に応対して、早くこの場を去って貰おうと考えていると。

 

「ところで、休講の理由は何なのかしら?」

 

 はい、分かってましたよ。

 俺の浅知恵なんてお見通しですよねーと、内心で悪態をつきながら口を開く。

 

「ほら、あの教授って関西出身だろ。んで昨日、タイガースが二十年ぶりだかで優勝したから……」

「ああ、これだから関西人は……。きっと吊り橋を渡りに行ったのね」

 

 額に手を当てて呆れ顔を浮かべる時すら絵になるのだから、やはり素材の良さは半端ない。

 先程からの(主に俺への)毒舌とは少しだけ響きが違って、むしろ「関西人」という言葉に親しみの感情すら乗せている気がしたので首を傾げていると。

 

「ほら、いつだったか前期の授業中に宣言してたじゃない。高所恐怖症のくせして、タイガースが優勝したら日本最長の吊り橋を渡ってやるって」

「マジか……。つーか、本業が優秀な教授ほど変な性格してるよな。篠沢教授とか」

 

 さっきの自己申告にあったように、こいつでも分からないことはあるんだなと思いながら。

 俺にまで親しげな口調になっているのに、どうやら自分では気付いていないようなので、却ってこちらがドキドキしてしまう。

 なので、お嬢様には通じないであろう話題を振って煙に巻こうとしたところ。

 

「と言っても、篠沢教授に全部の責任を負わせるのは違うと思うのだけれど?」

「ははっ、確かにな。てか、お前もクイズダァビィとか見るんだな」

 

 やばい。裏目に出たかもしれない。

 てっきり、はてと首を傾げられて話が終わると思っていたのに。

 

 少し悪戯っぽい目つきで「篠沢教授に全部」なんて言い出したり。

 俺の指摘を受けて、心なしか照れたような仕草を見せられたり。

 そうした意外な姿を目の当たりにして、胸がどくんと跳ねるのを感じていると。

 

 いつの間にか目の前にまで近づいていた彼女は、少しだけ距離を開けてわざとらしく溜息をついてから。

 

「女性に向かって『お前』と言うのは失礼ではないかしら。私は……」

「知ってる。雪ノ下のお嬢さんだろ?」

 

 慌てて食い気味に答えたのに、今回は()()完璧に読まれていたみたいで。

 

「ええ。でも貴方のことだから、名前までは知らないのでしょう?」

「まあ……な」

「いくら興味が無いからって、それを露骨に態度に出すのは良くないわよ。では改めて、私は雪ノ下──よ。よろしくね、──くん」

「はあ……まあ、お手柔らかに」

 

 心臓がばくばくと音を立てている。

 幸い向こうはその理由には気付いていない様子なので、首の皮一枚で助かったと胸をなで下ろしていたのだけど。

 

 いずれにせよ、俺はその後の人生で何度となく呼ぶことになる彼女の名前を、こんなふうにして知ったのだった。

 

 

***

 

 

 手を洗うついでに顔も洗って、手櫛と水で少しだけでも髪を整える。髭を諦めるかわりにシャツの着こなしを改めてズボンのベルトを締め直して、それから俺はトイレを後にした。

 そのまま店の出口まで足を運んで、マスターに一礼してから外に出る。

 

 階段を下りながら身だしなみを再度点検してみたのだが、普通のお店に入っても追い出されるということはないだろう。ましてや大学の授業なら何の問題もない。

 けどヤニ臭いのは自分でも気になるなと袖口をくんくんしながら、俺は視線を遠くに向けて書店の中をのぞき見た。こう見えて俺は視力が良いのだ。

 

 そして俺は、その場に呆然として立ち尽くす。

 

「……あれって、虎の図鑑だよな。きらっきらの目つきで写真を凝視してるんだが、どうせならもうちょい可愛い動物をだな。つっても虎ってパンダと同じでネコ目(食肉目)だから、可愛い猫を見てああなってるんだと考えれば、何とか、うん、いや、無理だな。虎に憧れる女とか普通に怖いわ」

 

 娘ができたら可愛い動物が好きになるように英才教育を施そう。

 虎とかを愛でるようになってしまえば手遅れだし、パンダとかもあれ熊だろって感じでやっぱり怖い。

 だから娘には普通に犬とか猫を好きになって欲しいなと考えながら、俺はわざと大きな音をたてて書店内へと入っていった。

 

「あら、早かったわね」

 

 流れるような動作で図鑑を書棚に収めてからこちらに向き直った彼女は、俺をその先に立ち入らせる事なく、目の動きで出口を指し示した。

 犯行の現場をばっちり目撃したとも言い出せず、俺は大人しく回れ右をして外に出る。

 そのすぐ後ろから彼女が続いた。

 

「あの関西人の授業には出るって分かってるだろ。いいかげん信頼っつーか、徹マンぐらい大目に見てくれない?」

 

 歩道を並んで歩きながら、三年目の浮気を詫びる亭主のようなセリフを口にしてみると。

 

「そのかわりに、貴方はどれだけの授業をサボっているのかしら?」

「事前通告はしただろが。つか取ってない授業に参加してくるお前が……」

「いいじゃない。ちゃんと予習をしてレポートも出した上で欠席しているのだから。それ以上の何かを授業できない講師に価値など無いと思うのだけど」

 

 うわー、辛辣ぅー!

 

 一瞬だけ講師に同情しそうになったけど、よくよく考えたら無能なそいつのせいで俺が付きまとわれる羽目になってんだよなあ。俺が取ってるのは単位だけが目的の楽勝科目がほとんどだから内容には期待すんなって言ってるのに聞く耳を持たねーし。

 

 挙げ句の果てには俺の出席率が悪すぎるって下宿にまで迎えに来やがったからな。

 こちとらお嬢様に出す座布団どころか足の踏み場も無いって言ってるのに強引に上がり込むし、そのくせ今日は休講になったから俺を連れ出すのは勘弁してやるとか言い出すし。だったら来るなっつーの。

 

 まあ部屋があっという間に片付いたし、冷蔵庫の残り物だけで作ってくれた料理は絶品だったし、こいつって何でもできるよなあと、あの時はさすがに感心したけどな。

 あのあと駅まで送った時に、本音では二度とうちに来んなって言ってやりたかったのに、結局言いそびれたせいで何度こいつに叩き起こされた事か。

 

 サボる科目を宣言したおかげで、この一ヶ月は平穏だったけどな。

 そろそろ寂しくなって来たなんて、そんなこと俺は微塵も思ってねーぞ。

 

「ねえ、聞いてるの?」

「ああ……いや、すまん。ちょっと考え事してたわ」

「もう。大学の授業が一コマいくらか一度計算してみなさい、って言ったのよ」

 

 辛辣な口ぶりを耳にして顔を上げると、冷ややかな眼差しが出迎えてくれた。そのまま彼女はちくちくと何やら言い募っている。

 

 もちろん理は彼女にあるし、サボる理由を明かしていない俺が悪いとしか言い様がないのだけど。裏を返せば、こいつに明かせない理由があるのだからどうにもならない。

 

 信号の前で立ち止まった俺は、すぐ隣からの糾弾の声に心地よさすら感じながら。さっきの続きとばかりに、こいつと一緒に過ごしたこの二ヶ月を思い返していた。

 

 

***

 

 

 一週間後の教授の授業で、俺と彼女は再び相(まみ)えた。

 

「今の説明では、特定の条件下での反応をカバーできないと思うのですが?」

「なるほど。雪ノ下くんの指摘を、他の諸君はどう思うかね?」

「私に遠慮せず、みんな思った通りに発言してくれて良いわよ。そうね……そこの彼の意見を聞いてみましょうか」

 

 嫌な予感はしたんだよなあ。

 だから急病になりたくて、昨夜は醤油の量を倍にして卵かけご飯を食べたのに。途中からは念を入れて、のりたまもたっぷり追加したのに。

 ぷち贅沢って感じで、あれは旨かったなぁ……と現実逃避をしていると。

 

「予習をしていない君には答えられないだろうね」

「貴方……そうなの?」

「理解度も高いしテストの点も良いんだけど、やる気の問題だけは本人次第だからね」

 

 助け船を出されたのか一刀両断にされたのかは意見が分かれるところだが、教授のお口添えのお陰でこの日はそれで済んだ。

 

 とはいえ、これにて一件落着と片付けるのは俺のプライドが許さなかった。

 こう見えて俺は意外と負けず嫌いなのだ。

 

「仕方ねーな。俺の本気を……見せてやるか!」

 

 下宿に戻ってトイレできばっていると妙にテンションが上がってきたので、俺は決め台詞と排泄物を後に残して大学の図書館へと赴いた。

 

 

 そこからの一週間は、まるで世界ふしぎ八犬伝に臨む白柳さんのように、あるいはクイズ面白セミナーに臨む鈴本さんのように、関連書籍をとにかく読み漁った。……嘘。ごめん。あの二人の勉強量は異常すぎて俺には無理ですごめんなさい。

 

 ま、まあ比較対象が悪かっただけで、俺なりに労力を費やしたのは間違いない。

 その証拠に、次の授業では堂々と自分から手を挙げた。

 

「やればできるのに、貴方ってやる気をお母さんのお腹の中に置き忘れて来たんじゃないの?」

「ああ、それは知らなかったな。じゃあ取りに行ってくるから、今から実家に帰らせて頂きます」

「君たちの会話は関西人顔負けだね。専門の話が中途半端になったけど、どうせ他の子は理解できないからさ。来週じゃなくて今から僕の家で続きをするのはどうかな?」

 

 授業が終わってからも二人でやりあっていると、教授が思いがけない提案をしてきたので。

 

「いえ、とても大事な忘れ物が実家にあぎゃあああ」

「もちろん、喜んで」

 

 奥様の手料理をご馳走になりながら、この一週間で得た知識が頭の中で有機的に結びついていく楽しさを体験した。

 あとついでに、耳がひりひりと痛むのも体験した。

 

「家の者に迎えに来させるから、駅まで送って欲しいのだけど?」

 

 六甲おろしを歌い始めた教授を、奥様が慣れた様子で寝室に連れ去って。

 その際に電話を貸して欲しいと言って席を外した彼女は、戻って来るなりそう言った。

 

「まあ、夜も更けて来たからな」

 

 面倒くさそうにそう言ったものの、こいつは俺に襲われる可能性を考えないのだろうかとふと思った。

 あからさまに警戒されるのは嫌だけど、全く警戒されないのも何だか癪に障る。

 

 つまるところ俺は、常に上から目線で接してくるのを業腹に思っていたのだろう。

 だからこいつと対等に渡り合うためなら一週間を図書館で過ごしても平気だったし、突ける隙があるのなら何とかして見付けてやろうと思っていた。

 

 

 教授の家を辞して駅までの道をぶらぶら歩いていると、シャッターの下りた入り口の横に明かりが灯っていた。

 

 近寄ってみるとそこは宝飾店で、きらきらと輝くネックレスがいくつかガラスの向こうに飾られている。値段的にはお手軽な品々だと言えるのだろうが、もちろん大学生がぽんと出せる額ではない。

 

「こういうの、お前なら何でも似合うんだろうな」

 

 見栄えという意味で口にしたのだけど、彼女ならこの程度の額は簡単に出せるのだろうと僻むような気持ちがあったことも否定はできない。

 

「どんなに似合っても、着ける機会がなければ無意味だわ。貴方も少し考えれば分かるでしょう。特別なパーティーの席でもないのに私がこんなのを着けていたら、他の人になんて言われるのかを」

 

 言わんとしている事は即座に理解できた。

 要するに「女を武器にしている」と、男女を問わず非難されるのだろう。

 彼女の美貌には、才能には、出自にはとても敵わないから。

 だからこそ男も女も、彼女の足を引っ張れる機会は決して見逃さない。

 

「そういうのって、大人の世界だけかと思ってたんだがな」

「学校なんて社会の縮図そのものよ。もっとも、大学はさすがに違うのではないかと、これでも少しだけ期待していたのだけれど」

 

 綺麗なアクセサリーを美人が身に着けるという、そんな当たり前で簡単な事こそが、彼女にとっては一番難しい。

 ならば彼女はこれまでの人生で、どれほどの我慢を、諦めを重ねて来たのだろうか。

 

 ショーウィンドウからそっと目を逸らして、駅に向かって歩みを進める彼女。

 思っていた以上に小さなその背中に追いつこうと、俺は決意を秘めて足を踏み出した。

 

 

***

 

 

 意識を現在に戻した俺は、信号を渡って少し歩いた先で、大学とは違う方向に足を向けた。

 

「あの教授の授業はサボらないと、思っていたのだけれど?」

「そんなに時間は掛からないから大丈夫だ。俺を信じて先に行ってて良いぞ?」

 

 ここからは一つ一つの会話が勝負になる。

 別行動を選ぶことが、俺を信じているという証になる……なんて詭弁にこいつが惑わされるわけもなく。

 

「徹底的に授業をサボって雀荘通いをしていた貴方を、誰が信じると言うのかしら?」

「まあ、正論だな。できれば気楽に単独行動をしたいんだが?」

「授業は今日でお終いだし、その後はいくらでも解放してあげるわよ」

 

 ははっと溜息を吐いてから先を急ぐ。

 こいつの勘の良さとか頭の働きを決して侮ってはいけない。

 俺の目的に気付かれる前に、逃げ道を全て潰さなければ。

 

 程なくして、いつか見た宝飾店の姿が俺たちの視界に映り込んできた。

 今は営業中なのでシャッターも下りていない。

 

「貴方、もしかして……でも、理由が……?」

「そのな。少し前から、俺はちょっと面倒な女と付き合っててな」

「……そう。初耳ね」

「どう話せばいいのか分からなくてな。それに、別にそういうのを報告し合うような仲じゃないだろ、俺とお前って?」

 

 不意に消え去ってしまいそうな、そんな儚げな姿を見せたのはほんの一瞬だけ。

 それの意味するところが分からなくて、意識がそちらに引き摺られそうになるのを必死で堪えた。

 それよりも今の俺には、果たすべき行動がある。

 

「そうね。でも、そう言ってくれれば、無理に付いて来ることも無かったのだけど……」

「いや、それでな。ここまで来たんだから、選ぶのを手伝ってくれると助かるんだが?」

 

 なんという詭弁を弄しているのだろう。

 

 俺の財力などとっくに把握済みの彼女は、そんな(俺にとっては)高額なプレゼントを自分が貰う理由など無いと考えるはずだ。

 それに、俺の心の奥底に宿る()()感情だけは決して知られまいと、それだけは死ぬ気で隠し続けて来たので、俺の話を素直に受け取るはずだ。

 

 もしも()()を知られていたら、俺はピエロとしか言い様がないのだけど。

 意外にまっすぐなその心根と、もしバレていたなら何かを仕掛けて来るはずだという謎の信頼感と。そんな曖昧な根拠に俺の全部を懸けながら、彼女の眼をしっかと見据える。

 

 こいつ以上に面倒な女なんて、この世に二人といないに決まっているのに。

 

「ごめんなさい。私には……っ!?」

 

 今にも走り出しそうな気配を感じて、思わず彼女の手首を掴んでいた。

 こんなにも強い拒絶反応を示されるとは予想外だったけど、もとよりチャンスは今日の一度だけ。

 

 それに、別に俺は大それた事を考えているわけではないのだ。

 住む世界が違うのは分かっているし、だからこそ彼女の心に、ほんの小さなものでも良いから爪痕を残しておきたいだけだ。

 

 何かを諦めてほしくない。

 その気持ちさえ伝われば、後のことなんてどうでも良いのだ。

 

 だから俺は腕力に訴えてでも、彼女の逃げ道を塞ぐ。

 彼女を連れて店内に入って、そして事を成し遂げる。

 

「頼む。これを頼めるのはお前だけなんだ。俺にはお前しかいないんだわ」

「っ……分かったから。だから手を離してくれるかしら?」

「離した途端に逃げたりしないよな?」

「貴方じゃないんだし、約束は守るわよ。私は逃げないわ」

「トイレの窓からも?」

「ええ、トイレの窓からも」

 

 ふっと笑いあってから、そっと手を離した。

 それから俺は彼女を先導するようにして、宝飾店の中へと入っていく。

 

 

「そちらの女性……に似た女性に似合う、アクセサリーですね?」

 

 お店の人はさすがにプロだからか、俺の企みなど一瞬で見破られてしまった。というかそれが普通だろう。

 

 むしろこの期に及んで、「嘘っぽいと思うかもしれないのだけど本当に私じゃないのよ」と恥ずかしそうに、しかしそれを口に出せるわけもないので控え目にアピールしている彼女が、とても愛おしい。もとい。痛ましくて心底から申し訳ないという気持ちになる。

 

 それに、こんなにチョロい側面があったとは、ますます愛おしさが、じゃなくて、い、い、(いとけな)い一面も最高、じゃなくて変な奴に付け込まれないように立ち居振る舞いを再考して貰わないといけないぞって自分でも何を言ってるのかさっぱりだな。まあいい。

 

「表に出ていた商品と似たものですと、この辺りかと」

「そうね。でもこれだと……」

 

 お店の人も彼女も、しっかりと俺の予算まで読み取ってくれたみたいで。だから飾られていたネックレスと奥から出してきて最後まで残った二品にさほどの差はなかった。

 品物よりも先に金額を見てしまう、美的センスに欠けているどうも俺です。

 

「手伝うとは言ったものの、この先は貴方が選ぶべきだと思うのだけど?」

「まあ、三つまで絞り込んでくれたわけだしな」

 

 上から見たり横から見たりと散々首を動かしたものの決め手が見付からなくて。

 だから俺は、ずるい手かもしれないけれど、ネックレスを見ているふりをしながら彼女の視線をこっそり追った。そして。

 

「やっぱり、最初のやつにします」

「表に出ていた、こちらの商品ですね?」

「それです。支払いは現金一括で、これでちょうどだと思うのですが……お札を数えて貰えますか?」

「はい。ではこちらの封筒はお返しします……ええ、確かに。お包みはどうなさいますか?」

「ええと、あ、その前にちょっと彼女に着けて貰って良いですかね?」

 

 役目は終わったと思って気を抜いていたのだろう。

 珍しくぼーっとしていた彼女が目を見開いて、気のせいか「これ以上は勘弁して」と言っている気がしたのだけど、今日だけはとことんまで行かせて貰う。

 

 店員さんと二人がかりで煽てて宥めて賺して拝んで泣き付いて土下座して……って最後の二つはさすがの店員さんも付き合ってくれなかったんだけど、ようやく彼女が件のネックレスを着けてくれた。

 

「本当に良くお似合いですよ」

 

 そう言って手鏡を俺に渡した店員さんはそのまま椅子から立ち上がると、「あ、そういえば」とか呟きながら店の奥へと引っ込んでしまった。

 

「ほら、鏡で見てみろよ。派手にきらきら光ってるけど、お前の存在を更に輝かせてると俺は思うぞ。つーか天地がひっくり返ってもお前には及ばないような連中が何を言って来たところで、お前が気にする必要は無いだろが。せっかくの美人なのに、似合いのアクセすら着けられないなんて、どうかと思うぞ」

 

 徹夜明けの謎テンションで一気に言い切ると、何だか暑いなと手で顔を扇ぎながらそっぽを向いた。

 すぐに隣から、始めはぼそぼそと、やがて力強い声が聞こえて来る。

 

「でも……いえ、そうね。これからは私も、着けたいと思った時には遠慮なんてしないわ。だから貴方も、このネックレスをちゃんと彼女さんに渡し……」

「それな、お前にやる」

 

 言葉を遮って端的に伝えると。

 

「……は?」

 

 理解が追いつかず二の句を継げない彼女の表情をなんとしてでも見たいと思ったので、少し照れくさかったけど首を戻して目線を送る。

 ぱっと目が合った瞬間に企みが全てバレたみたいだけど、ここまで粘れたら万々歳だ。

 

「俺には彼女なんていないし、お前ほど面倒な女なんて……まあ、付き合ってるって言っても単なる同級生だし、別に分不相応なことを言い出す気も無いんだが、その、なんだ。この二ヶ月は割と楽しかったしな。ちょい早いけど来週には馬小屋で生まれたどっかの誰かの誕生日があるし、飽きたら売るなり捨てるなり好きにしてくれて良いから、あれだ。とりあえず、貰ってくれると助かる」

 

「貴方は……私に何が言いたいの?」

「何って、別に俺は」

「それを聞けないのなら、これを受け取るわけにはいかないわ」

「何って……ちっ」

 

 頭をがしがしと掻いてから、頬が少し熱くなっているのを自覚しつつ口を開く。

 

「さっきもちらっと言ったけどな。俺はお前に、何かを諦めてほしくないんだわ。特に、意味の分からない同調圧力とか、その類いにはな。だから、何なら俺を理由にしてくれても良い。着けてくれないと死ぬとか言われたから仕方なく、みたいな……」

「私がそんな事を言うわけないでしょう。貴方は……他の人とは違った見方をしてくれると、思っていたのだけれど。結局は、私を見ていないという点では同じなの……」

「違うっつーの。お前の暗黒面まで含めて、俺ほどしっかり見てる奴なんて他にいてたまるかっつーの。だから俺が言いたいのは、やる気になればお前はどんなふうにでも出来るだろって。理由をでっち上げても正面から論破しても何でも良いけどお前なら、お前が普通に本気を出せば、つまらない連中に押し潰されずに自分を主張できるはずだろ?」

 

 お互いに相手の言葉を遮って自分の主張を押し付ける。

 それはやっぱり、ごく普通の男女の付き合いには程遠いように感じられて、なのにこの上なく楽しくて。

 

「じゃあ、貴方に貰ったから、貴方が着けて欲しいとせがむから着けていると……そう言っても良いの?」

「ああ、それぐらい別に……えっと、あれ、えっ、それって?」

「貴方が煽てて宥めて賺して拝んで泣き付いて土下座までするから情に絆されて着けていると、そう言っても良いのね?」

「ちくしょう、ついさっき自分から進んで実行したことだから反論できない……」

 

 あれっ。こんな筋書きじゃ無かったはずなのに、何だかとっても雲行きが怪しくなってきたぞ。

 

「なら仕方が無いわね。今日はこれを着けたまま授業に出るとして、最後にもう一つだけ確認しておきたいのだけれど?」

「このまま授業に……うぐっ。俺に止める手立ては、無い、な。ちっ」

 

 せめてもの抵抗とばかりに、わざとらしく現状確認をしたり舌打ちを繰り返して時間を稼いでみたものの。どうせ引き延ばしたところで誤魔化せる相手ではないのだから、さっさとゲロってしまうに限るな。

 

「確認ってどうせ金の話だろ。お前の推測どおり、これを買う金を調達するために授業をサボりまくって雀荘に通ってた、が正解だ。一ヶ月ちょいであの金額を稼ぐ方法を、他には思い付かなくてな。ついさっき希望額に届いたから、お前が雀荘まで来てくれて助かったわ」

 

「何か狙いがあるのだとは、薄々勘付いていたのだけど。まさか私の為とは思いもしなかったわ。貴方って、私が思っていた以上に私の事が……」

「ちょっと待て。雀荘に来たり下宿まで押しかけたり、お前って俺が思っていた以上に俺の事が……」

「そんなわけ無いでしょう?」

「そんなわけ無いよなあ?」

 

 他に誰もいない店内で睨み合っていると、彼女の胸元からきらきらした光が差してくる。

 彼女が少し身動きをするたびに、それは控え目になる時もあれば強烈に存在を主張する時もあり。優しい光を出すかと思えば眼を刺すような強い光を出すこともあり。

 それでいて、もう既に彼女の一部となり果てている。

 

「じゃあ、そろそろ授業に行くわよ。……すいません、これ着けて行きたいので包装はいりません。また寄せて貰いますね」

「あ、色々とありがとうございました。助かりました」

 

 彼女が声をかけると、店員さんが奥から出て来た。

 気のせいなら良かったのだけど明らかにニマニマしているので、とても居心地が悪い。

 

「はい。じゃあ、お幸せに」

「そんなのじゃないですよ」

「そんなのじゃないわ」

 

 はからずも声が重なってしまったせいで、俺たちは頬が熱を帯びているのを感じながら慌てて店の外に出る。

 

 そして、どちらからともなく顔を合わせて頷き合って。

 それから俺たちは二人並んで大教室へと移動した。

 

 

***

 

 

 あと数分で授業が始まるからか、既に多くの席は埋まっていた。

 それでも最前列は空いていたので窓際の席を目指して歩いて行くと、普段は最前列中央に陣取るはずの彼女がなぜか俺の後を着いてくる。

 

 今までとは違って、当たり前のように俺の隣に座る彼女に戸惑っていると。

 こちらを向いて「何かしら?」とでも言いたげにちょこんと首を傾けて。

 

「何か……あ、大事なことを伝え忘れていたわ」

「ほーん。それって、お前にしては珍しいな」

 

 話がまるで読めないので頭を捻っていると。

 

「十月末に、教授の家にお呼ばれしたでしょう。それのお礼に、今度は私たちが教授をお招きする形で食事をしたいと思うのだけど」

「それって、今日の夜って事か?」

「ええ。雀荘に通う意味もなくなったのだし、なら貴方に予定なんてないでしょう?」

 

 何か反論したいところだけど、実際その通りなんだよなあ。

 

「まあ良いけどな。ただ、あんま高い店は勘弁してくれよ」

「それなら大丈夫よ。私の家にお招きする予定だから」

「ああ、それなら……って、はい?」

 

 さらっと凄いことを言われたので理解が追いつかず二の句を継げないでいると。

 

「教授は私の両親と付き合いが長いから、お招きの話をしたら二つ返事だったわよ」

「えっと、いやそれ初耳なんだけど?」

 

 未知の情報が倍率ドン更に倍で増えてるんだけど、どういうこと?

 

「とはいえ貴方の参加は嬉しいのだけど、その服装は……スーツとか持ってる?」

「おいこらそれぐらい持ってる……けど、ちょっと待て」

 

 おっかしいなー。

 ついさっきまでは俺がこいつの逃げ道を潰しまくっていたはずなのに、今度は俺が逃げ道を潰されまくってない?

 

「なら良かったわ。いざとなれば買い揃えてあげても良いとは思っていたのだけれど。ちょうど来週には大工の息子の誕生日があるのだし、私はそれでも良いわよ?」

「いや、待て。待って下さい。とりあえずスーツは自前ので、っていうか、そもそもの話として、欠席ってわけには……」

「却っ下」

「ですよねー」

 

 ちょっとだけ働き出した頭で情報を整理すると……。

 こいつは最初から、今日の予定に俺を嵌め込むために行動してたって事だよな。

 まあ、見事にしてやられたのは確かだけど、でも。

 

「でも、お前にしてはなんか回りくどいやり方だよな」

「だって、こうでもしないと貴方、逃げるから。先手を打っておかないとね」

 

 そう口にする彼女は、まるで恋する乙女のように瞳をきらきらと輝かせていて。

 けれどもそれは純粋無垢なものとは程遠く、可愛らしい打算をふんだんに滲ませているのは蠱惑的なその微笑みからも明らかだ。

 

 というか、教授と両親が顔見知りって事は……まさか?

 

「なあ。教授の家に行った時、なんで家まで迎えに来て貰わなかったんだ?」

「そんなの、決まってるじゃない」

 

 俺に駅まで送らせるために。

 それを確信した瞬間に、総毛立つような思いがした。

 

 俺は、もしかしたら、とんでもない女と関わってしまったのかもしれない。

 必死に小知恵を働かせて、こいつから一本取ったと得意がっている間に。

 俺の逃げ道は密かに少しずつ潰されていたのだ。

 

 なんて恐ろしい、なんて怖い女なのだろう。

 けれどそんな彼女のことが、とても可愛くて心底から愛おしいと思えるのだから、俺にはもう逃げ道なんて無いのだろう。

 

「じゃあ、今後ともよろしくね」

「ああ……よろしく」

 

 どうして俺なんかのために、こいつがこんなに面倒くさい事をするのかは正直よく分からない。

 けれど……死ぬほどめんどくさいところが、死ぬほど可愛い。

 




こちそうさまでしたっ!

最初は六月の話を書こうと思っていたのですが、もう誰かが書いてるだろうなーと思いつつプロットを練っていたら、なぜかこんなものが出来上がりました。

また何か思い付いたら再利用したいと考えていますので、その時は宜しくお願いします。


追記。
脱字を二つ修正して改行を二つ加えました。(3/28)
それと本話を更新前に、短編→連載中に変更しました(5話までは行きそうに思えたので)。とはいえ中身は以前と変わらず更新激遅(というか原作の刊行に連動した)短編集です。
誤字(意外→以外、二の句を告げない→二の句を継げない)を修正しました。(12/31)


さて、注意点を二点ほど。

まず、お互いに「相手の逃げ道を潰しているうちに自分の逃げ道を潰されていた」という構成なのですが、「してやったり」とは違って「してやられる」展開は正直あまり評判がよくありません。けれども原作の八幡もこの人も「してやられる」喜びに目覚めている様子が窺えますので、ちょっとその点が気に入らないなって方も大目に見て下さると嬉しいです。

それから、本作に出てくる80年代ネタは時代考証を詰めきれていません。例えばタイガースの優勝(1985年)とキョンシーを有名にした「霊幻道士」(日本公開は1986年)とか、その他のネタも時代が前後しているかもですが、こちらも大目に見て下さると助かります。

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