ここはどこだ。俺は玉座についたはずだ。
「お目覚めですね。」
目の前から声がした。見ると古びてはいるが竜血の騎士装備を纏ったものと、青年がたっている。
「ここはどこだ。」
「あなたの知らない世界です。」
‥‥ふざけている様子ではないな。記憶の世界ともまた違うようだが‥‥。
「順を追って説明します。よく聞いてください。」
説明を聞き終えた。中々おかしな話ではあったが死人の記憶の中へといくほうがおかしな話だ。理解はできた。
‥‥ならば、やらねばいけないことがある。
「理解した。ならば一つだけ頼みがある。」
「そうですか、主人、聞いてください。」
そういうと、青年の方が前へと出る。ほぅ、なかなか堂々とした立ち振舞いだ。悪くない。
彼の目の前に、二本の大剣を突き立てる。
青年は分からなかったようだが、後ろの騎士は理解できたようで、少し驚いているのが雰囲気でわかる。
「‥‥これは?」
「‥‥俺の恩人とその家族の遺品だ。今じゃなくて良い、直ぐじゃなくて良い。‥‥絶対にこの二人を召喚してくれ。」
自己満足かもしれない。彼女は望んでいないかもしれない。‥‥それでも、あの忘却に怯える彼女を救いたい。できるならば、俺が間に合わなかった彼も。
「‥‥わかりました。では、いつか必ず。」
「ああ、よろしく頼むよ。」
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その後、私たちは情報を交換し、ロスリック市街や墓地をより強化することができた。私の知識だけでは限界があったため非常にありがたい。
そして、騎士が二人いて紛らわしいので、私を【アッシュ】絶望を焚べる者を【ファーナム】と呼ぶことにした。
彼の出自は覚えていないが、昔からこの装備を持っていたらしい。そのため、この鎧の名で呼ばれた方が違和感がないということらしい。
さぁ、二人に増えて出来ること、呼び出す亡者達の知識なども増えたことで、主人が魔力で呼び出せる魔物の数がうんと増えた。
それに、彼はMPこそ少ないものの驚異的なLPを持っていたため、そちらによる強化もできる。
ということで、まず、墓地を彼の知識の中にある【不死廟】と混ぜた。
といっても、グンダの後ろの扉を彼が知っている【王の扉】を取り付け、その扉を開けることができる指輪を不死廟の奥に配置した。
これは、すでにグンダの討伐を成功させた者たちにも適応され、不死廟の探索を始めているが、呪術者や、墓守達の相手にてこずっているためなかなか進めなくなっている。
そして、そこを治めていた【王盾ヴェルスタッド】は知能がない場合たいした脅威でもないと言われたため、彼が言っていた【ヴァンクラッド王】を再現した上で、【煙の特大剣】をもたせ、さらにだめ押しにファーナムが持っていた王の鎧を着せた。
ファーナムは「これを倒せる奴が仲間にいれば心強かっただろうな。」といっていた。
聞いてみると、時間はかかるが、彼なら倒せるということだ。
そして、ロスリックだが、彼が「こいつらに上から打たせれば良い。」と、LPで【アーロン騎士長】を呼び出した。
どうやら、彼は自分の世界にいた敵をLPで出せるようなので、やり方を聞くと「白霊召喚の感じだな。」というので、悪戦苦闘していると、何とかできるようになった。
これによってソウルを改造せずとも召喚できるようになったのでモブはこの方法で呼び出すことにした。
なお、アーロン騎士長にはいくつかの建物の上から、侵入者が見えたら矢を放つように指令を出した。
ロスリック騎士達とあわせて、かなりの難易度になった。
さらに、グンダ、ボルドをみた彼が
「ふむ、オルフェニクスの技か。ならばこれでも使え。」
と言って【竜騎兵】を数人配置した。これによってグンダのエリア直前の広場の亡者が二体の竜騎兵になったため、凶悪な難易度になった。
自分でいうのもなんだがひどい。
ロスリックがこんなだったらきっと私はもっと早く亡者になっている。
そんなこんなで取り敢えず一通り改造したところで、主人のもとに手紙が届いたという。
なぜこんなところに手紙が来るのかと驚いていると、どうやら、ダンジョンマスターは全世界に十数人いるらしく、そのなかでも【火塔】と呼ばれるダンジョンのマスターから、今度会議をする旨が届いたようだ。
これには一人でいく必要はないということなので私が護衛と観光でいくことにした。ファーナムはここを守るとのことで留守番である。
何をするのかは知らないが外を見るのは初めてだしとても楽しみだ。
さぁ、早速会議の場所へと出向こう。目的地は【冒険者の都ルーク】である。
【不死廟】
ドラングレイクにおける全ての死者を納めた巨大な霊廟。かつて最初の死者を祀っていたこの霊廟は死者に永遠の安息を、冒涜者達に無限の苦痛を与える。
かの地の墓守は最初の死者の祭祀であると言われている。そしてこの地に眠る全てのものを平等に闇の中へと封じ込める。