槍が刺さってから数百年が過ぎた。獣には苔が生え、蔦が絡まり本当の岩にしか見えなくなった。
そして獣は忘れられ、木だけが地上に出ていた。
木は人の中で徐々に神格化されていった。その木の下に国ができ、争乱がおき、国が滅び、また国が起こる。
その死者達のソウルを吸い、獣はぐんぐん成長していった。人はもう覚えてはいなかったが、大戦の生き残り達は獣のことをよく覚えており、これを倒そうとした。
獣のソウルは古竜のそれに似始めていた。しかし、イザリスがそれを止めていた。あれは息子だと、私にとっては欠けがえのない息子だからどうか殺さないでくれと。
今なら絶対に従いはしないだろうが当時はイザリスがそこまで言うならと、皆引き下がった。
そしてまた数百年が過ぎた。獣が変化を起こした。成長を遂げた獣はついに目を覚ましたのだ。槍の吸収力を越え、ついに目を冷ました獣を見て、人々は口々に
【霧の魔物】と呼んだ。
木の力を逆手にとり、生存に必要なソウルすら奪っていったのだ。そして、餌を逃がさないために無色の霧を生み出した獣はついに当時大国とされていたひとつの国を飲み込んだ。
そこで、グウィンは遂に獣を封印する決断をした。
霧は神の力を蝕むことがわかっていた。だからグウィンは当時我やニト、イザリスのもとにいた魔術師達を呼び封印をさせた。そして変質させた楔石を渡し、その力で封印を永久のものとした。
その石が【要石】と呼ばれ、封印を施した魔術師達を【要人】と呼ぶようになった。
要人はその力を悪用されぬように記憶や感情をある程度消され、要石は神に被害がでないように当時友好的だった五つの国と、巨人の国に送られた。
最後に、獣を封印した地域を誰にも眼の届かぬように時空間をずらす魔法を使って消し飛ばした。
‥‥そしてその数年後、獣の残していった魔力が暴走し、要石の存在する五つの地域を獣のいる次元へと引きずり込んだ。
巨人の国には当時ニトが居たためギリギリのところでなんとかなったが、巨人の国の要石は崩れてしまった。
そして我々の知る世界には、獣と要石は存在しなくなったのだ。
それからまた長い長い月日が流れた。イザリスは実験に失敗し苗床となり、デーモン達が産まれた。
‥‥そしてあの獣の波動がこちらへと届いた。
研究対象として砕けた要石の欠片を持っていた。その欠片が振動したのだ。それは封印が解ける兆しだった。
我は独断で火守女を向こうへと送り込んだ。我々を除けば最も封印術にたけた人種だ。
黒衣の女は快諾してくれた。しかし向こうへいくには代償が必要だ。封印に通すための代償が。
‥だから我は火守の一族の眼を、奪った。世界を永久に越えるためには巨大な代償が必要だった。
そのため、黒衣の一族は途絶えたのだ。
ここまでが我の知る要石の物語だ。
ここからは我の推理の話だ。
恐らくだが火守女は役目を果たしたのだろう。そして向こうの世界で獣と対峙した。だが、火守女が封印にたけているとはいえ獣の封印は我等と要人、要石の三つがあってようやく成功したものだ。
封印したならば火守女の命もつきただろう。
次にこの要石の破片だが、砕けたのは【巨人の長の要石】だけのはずだ。しかしここにあるのは違う。
‥‥そうだな、恐らく【小国の王の要石】だろう。この模様はそれに近い。
要石が砕けたとき、その封印がほころび、封印の礎にしていた怪物が甦る。
つまり、これがここにあると言うことは【ファランクス】【我が残したゴーレム】【王の近衛騎士の一族】の三体の封印が解かれているはずだ。
そして獣もまどろみから覚めかけている。
‥‥‥あと3つの要石の内2つが砕ける、若しくは封印が解けてしまっている場合、獣は目覚めるだろう。
シースの新作
【月光竜】
月光蝶みたいな竜。イメージとしてはモンハンのタマミツネに月光蝶の羽。能力的には結晶ブレスを吐くヘルカイト。