【ダクソダンジョン】─快適な生活のために─   作:古い底の王

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不死隊譚② 日常と昇格試験

「店主、久しぶりだな。」

 

八百屋の店先にぬっと顔を出す顔の見えないボロボロのコートを纏った青年。普通なら通報されるところだが、

 

「おっ、リーダーさんよくきたね!いつもの野菜と肉かい?」

 

「あぁ、それと差し入れだ。依頼がうまくいったのでな。」

 

「お?これは酒か!いやぁありがたいね。ほれ、これも持っていけ!」

 

「ありがたい。ではまた。」

 

「あいよ!毎度ありー!」

 

と、店先で果物をもらえるくらい馴染んでいる。さらに道を歩けば

 

「おじさん、あげるー!」

 

と少年に石を貰い、

 

「おや、終わったかい、お疲れさま。」

 

おばちゃんと話し、

 

「リーダーさんこないだの件だけどさ‥‥」

 

衛兵達にアドバイスをし。

 

と、すっかり馴染んだ不死隊のリーダーであった。交流をはかりながら宿へ変えると、既に3人は宿の部屋でゆっくりと過ごしており

 

「あ、リーダー。串焼き買ってきたか?」

 

「ほれ、鳥十本、魚三本、ミックス5本。」

 

「おおー!完璧!サンキューリーダー!」

 

と、早速かぶりつく剣持ちの不死隊。

 

「この間頼んでおいたものは?」

 

「木の矢20ダース、鉄の矢8ダース、【火炎属性魔術の魔法書(初級編)】でいいよな?」

 

「ええ、それです。有難うございます。」

 

で早速本を読み出す弓持ちの不死隊。最初は前衛二人だったのだがもともと魔術が得意だったこともあり、この世界では魔術師として活動している。

 

「‥‥リーダー、俺のは?」

 

「あぁ、これだろ?」

 

「‥‥ありがとう。」

 

リーダーが取り出したのは普通のファンタジー小説。この男幽鬼だからか、そもそもこういう性格なのか、気がつくと暖かな窓の辺りで静かに読書をしている。暗くなると机に幽鬼のトーチをおいて読書をするのはどうかと思う。

 

そんなこんなではや一月。町になれてある程度だらだらと過ごしている彼等にギルドから指令が下る。

 

 

 

「‥‥試験とは?」

 

「皆さん結構着々と功績を増やしているのでそろそろDランク位までなら上がれるんですよ。それでDランクなると色々とできることも増えるのでどうかと。」

 

「ほぅ、なにをすればいいのかな?」

 

「そうですね。‥‥‥今でしたらこれですね。」

 

そう言って見せられた紙には

 

【求む、息子の家庭教師。日給 銀貨5枚】

 

とかかれていた。

 

 

─────────────────────────

 

 

「ここだな。」

 

帰ったリーダーが皆にこの事を伝えると皆OKと言うことなので早速受けることにした。家庭教師というのも勉強などではなく、武術ということらしい。

 

「失礼致します!ギルドから派遣されて参りました!」

 

リーダーが声を張り上げると大きな屋敷から数人のメイドが出てくる。

 

「お待ちしておりました。家庭教師の件でございますね?」

 

「はい、それでどなたにお教えすればいいのでしょうか。」

 

「なかで説明いたしますので、どうぞこちらへ。」

 

案内されるがまま着いていく四人組。応接間にと押されたので座って待っていると

 

「お待たせいたしました。当主の【スチュアート・ヘンリック】ともうします。お見知りおきを。

それで、依頼の件ですが。私と私の息子を鍛えてほしいのです。」

 

「‥‥というと、あなたに戦術指南をすればよろしいと?」

 

「我々は商人をしているのですがね。長旅をするならある程度の護身術が必要と思いまして。それで冒険者のかたに教えてもらおうと思いましてね。」

 

「‥‥ならば高いランクの人の方が良いのでは?」

 

「いえ、あくまでも護身術ですので。あまりお金を掛けるわけにもいきませんしね。」

 

ということらしい。細かい予定を積めていくと。明日から午後に来て、一ヶ月ほど教えれば完了ということだ。さて、どうしたものか。

 

 

帰ってから皆で何を教えるか話し合う。

 

「大剣術はいらないだろうしな。やはり、パリィや受け流しの技術か?」

 

「だろうな。大剣を護身で使うなど意味不明だ。小剣の技術でいいだろう。」

 

「では簡単な魔獣も教えましょうか。あれば便利です。」

 

「‥‥‥では気配の読み方、消し方、松明の使い方。」

 

「‥それは教えられるのか?」

 

「‥問題ない。」

 

という事で、予定が決まった。明日からは忙しそうだ。

 

 

─────────────────────────

 

13:00~14:00 大剣使いによる体術講座

 

「あー、まずは走ってもらうが。そうだな‥‥10分で庭を5周できれば合格だ。それだけできりゃ小鬼くらいなら逃げ切れる。」

 

これは二人ともある程度はできた。父親は34,息子も14程度とまだ若いため体力はある。それでも父親には少しきつかったようだが。

 

「うっし、じゃあ筋トレするぞー。」

 

こんな感じで90分はすぎていった。

 

14:10~16:00 魔術師の魔術講座

 

「ではまず【照らす】の魔法を覚えましょうか。ポイントは【暖かい火】ではなく、【明るい光】をイメージすることです。熱が多いと光は弱まりますし、近づけません。攻撃するのでないのならば熱はなくていいのです。」

 

これは息子の方が全体的に得意であった。父親が【照らす火】【発火】を覚えている間に【ソウルの矢】【音送り】【フォース】【回復】【毒の霧】を覚えていた。

調子にのった魔術師が【致死の水銀】を教えようとしたところでリーダーが大剣の鞘で殴り飛ばして強制終了となった。

 

 

16:10~17:00 幽鬼による隠密講座

 

意外だったのは幽鬼は口数は少ないもののポイントを分かりやすく噛み砕いて教えることによりサクサクとおしえていっところだ。これにはリーダーも驚いていた。

 

「‥気配と言うのは、呼吸や、足音。なにか生活をするときに人が出す痕跡だ。 ‥これをどうやって抑えるかで、有事の際、逃げやすさが、段違いだ。」

 

そう言って彼は屋敷のなかでかくれんぼをした。簡単そうだが、木製ならば足音はなるし、臭いや、足跡ものこる。

 

そういった一つ一つを細かく指摘することで二人とも終わる頃にはかなりいい感じになっていた。

 

 

17:10~18:00 リーダーによる小剣講座

 

「大切なのは力を受け流すことだ。受け止めていると、疲れるし、剣は消耗する。降られる武器にたいして50~70°の角度で受け流せ。」

 

買ってきた小さな両刃の短剣を持たせ、構えから動きを教える。流石にリーダーというべきか、きちんと教えるべき所を押さえている。これも数日である程度形になり、パリィ、受け流し、さらに案山子相手の致命の一撃もそこそこ当たるようになった。

 

 

 

こんなかんじで、一月がたち、一介の商人を下手な冒険者や兵士よりも鍛え上げたところで終了となった。もちろん依頼は成功であり、彼らは皆Dランクになった。

 

そして今回の実績からギルドの教官の仕事をうけ、たまに銀貨数枚程度でさまざまな武器の使い方を教えることになった。

 

 

 

‥‥‥‥この約半年後、息子がこっそり魔術師に弟子入りし、数年後に【暗殺魔術師】として有名になってしまうのはまた別のはなし。

 

 

 

 

 

 




暗殺コラボ

皆さんお馴染みの【致死の水銀】【見えない体】【】【隠密】【猛毒の霧】のセット。ボス相手に凶悪な威力を叩き出すこれを使いこなした商人の息子は護衛なしでもどこへでも仕入れにいくことでゆうめいになった。

(実は魔術師からこそっと【語り部の杖】を貰っている。)

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