「おーい、町を見つけたぞ。」
「なに!やっと見つかったかー。よし、早くいこうぜ!」
「だな!‥‥金はこの金貨使えるかね?」
「‥‥分からんが行くだけ行こうか。」
あの後森から抜けた彼等は大剣を倒して切っ先が向いた方に進むというなんとも言えない方法でさ迷っていた。
しかし奇跡的に町を見つけ、ほっとして町へと向かっていく。皆少し楽しそうだ。
入り口の前についた彼等は困っていた。
「この金貨でなんとかならんかね?」
「そんなこと言われましても‥‥なにか身分証はありませんか?」
そう、入場税が払えないのだ。本来ならば銀貨二枚。農民でも払えるような額なのだが無一文の彼等にはいくらだろうと関係なく入れないのだ。
しかし、久しぶりに町を見たい彼等は粘る。
一旦入り口から離れて座り込み四人で価値のありそうなものはないか話し合う。
「‥‥さて、作戦会議だ、どうやって入ろうか。」
「俺は緑花草とか松脂ぐらいしかないぞ。‥‥剣草ではいるのは無理だしな。」
「俺も似たようなものだ。ククリなんかだしたら捕まりそうだしな。」
「‥‥幽鬼はなにかないか?」
と聞かれた幽鬼はカバンを無言で漁り始める。なにも言わず三人にじっと見られている幽鬼は心なしか少し焦っているようにも見える。
そんな幽鬼が突然動きを止める。
「お、何かあったのか?」
聞かれたのでゆっくりと取り出す。それは、
「‥‥これで‥‥いけるか‥?」
【ジークの酒】であった。それを見てリーダー格がなにか思い付いたように頷く。
こいつら門番を酔わせるつもりである。
「なぁ、門番。」
「 あぁ、相談は終わりましたか?」
「これでどうだ。」
「‥‥いや白昼堂々酒渡されても困るんですが。」
「そう言わずに、今ならこの【太陽のメダル】もつけるから。」
「やめてくださいよ。辺り人たくさんいるのに賄賂と酒貰ってとおしたら首になっちゃいますよ。」
「そこをなんとか!この通り!」
ついにリーダーが土下座を始める。こいつらにはもはや不死隊のプライドなど皆無である。
「‥‥はぁ、お前ちょっと見ててくれ。俺はこいつらをギルドに預けてくる。」
「‥‥お前も大変だな。今度おごってやるよ。」
「助かるよ。」
ついにおれた門番は巡回中の衛兵に門衛の仕事を変わってもらい取り敢えず身分証だけでも貰うようにギルドに案内する。
この騎士はこれで今月5回目の職場放棄であり既に15%の給料カットを宣言されている。どこまでもお人好しの門番であった。
妙な格好の連中を引き連れた門番は五分ほどして足を止め、全員に奥の受け付けに事情を説明するように言ってさっさと帰っていく。
「いらっしゃいませ。本日はどのような御用件でしょうか。」
「‥‥む、いや、門番にここに行けと言われたのだがどうすればいいのだ?」
「‥‥はい?‥‥あぁ、そう言うことですか。では取り敢えずここの説明をします。」
妙なことを言う男を格好からどこかの国の敗残兵かなにかだと辺りをつけて説明を始める。
事務的な説明だが、腐ってももとはそこそこ精鋭のファランの不死隊。きちんと理解し全員で冒険者登録をし、そのままパーティーを組む。
そして取り敢えず今晩の宿代を稼ぐために簡単な依頼をいくつか受けてまたそとへと出ていく。
受けた依頼は【薬草採取】と【スライムの捕獲】であつた。
さてここで問題が発生する。彼等にとって【スライム】とは下水道にいる汚泥か【エルドリッチの欠片】である。【薬草】とは緑花草か苔玉である。
だがしかしそんなものはいない。この世界における薬草とは【体力をある程度回復し、傷も切り傷位ならば治す草】であり、スライムとは【緑か青のプヨプヨしたゼリーの生きてる奴】である。
全く知らない彼等だったが頭の回転の早いリーダーが解決策を産み出す。
「よし、取り敢えずさっきの門番のところで話を聞こう。」
「あんたらまたですか‥。」
げんなりした表情で溢す門番。さっきの行進は結構目立っていたため聞き付けた上司に今月の給料にボーナスが付かないことを宣言されている。
「うむ、薬草とスライムについて情報をくれ、報酬はさっきの酒だ。」
「‥‥はぁ、わかりましたよ。」
ということで分かりやすく説明する。すると理解したらしく頭を下げ、酒を渡してその場を去っていく。
取り敢えずもらった酒をどうしようか迷った末腰のベルトに結びつけた彼は、その姿を上司に見られてしまい遂に給料が20%カットになり口から魂が飛び出た状態でその日の仕事を終えたと言う。
「おお、あったぞ。これで薬草はOKだな。」
「よし、ではスライムを捕獲しにいこうか。」
ということで、森を抜けて近くの湿地帯へと来た一向。
そこでなぞの事態に陥る。
「アッハッハッハ!リーダーそれ最高だぜ!」
「フグッ!‥‥か、可愛いペット‥クッ‥ですねっ‥。」
「‥‥むぅ。」
なにを思ったのかリーダーがスライムになつかれてしまい帽子の所にスライムがへばりついている。
歴戦の戦士である彼もこうなっては形無しである。
その滑稽な姿と言えば幽鬼すら肩を震わして笑いをこらえている。
「‥‥ついてくるか?」
問いかけるともちろん!というようにプルプルと震える。仕方がないので
「‥じゃあせめてこっちに乗れ。落ちるぞ。」
と言って肩の金具のところに設置する。そして、依頼にあった通りの別のスライムを捕獲して帰るとまたしても門番に止められる。
「‥‥あー、なつかれたってことでいいですかね?」
「‥‥そのようだ。入ってもいいだろうか。」
いつもの方は口から魂が飛び出ているので、もう一人の方が話す。
「まぁ、別に問題ないですよ。‥‥両手に掴んでる方もですか?」
「いや、こっちは捕獲依頼だ。」
「‥‥今度から袋かなにかに容れてくださいね。」
「了解した。」
そうして普通に入っていったつもりだったがすれ違い様に笑われ子供に「あのおじさんスライム乗っけてる!」と言われ、受け付けでも笑われた彼は非常に不機嫌になっていた。
なお、宿代は少し足りなかったのでじゃんけんで負けた幽鬼が地面にトーチをさして胡座をかき外で一晩を過ごした。
その姿はとても哀愁が漂っておりまさに【幽鬼】のようであった。
と、このような形で不死隊組の初めての町での一日は過ぎていった。
なんか凄い書きやすかったです。
この世界では不死隊はほのぼのとコメディ要因です。気が向いたら不死隊譚投稿すると思います。
【スライム】
湿気のあり、いい感じに日が当たる所に現れる魔物。基本的にはかなり弱く、攻撃方法は体当たりのみである。
プルプルと震えるだけで、餌は水と草なため、そこそこ裕福な家ではペットで飼っていることが多い。
そのためこの世界では三大ペットとして【スライム】【クライバード】【ホアー】となっている。
※クライバード=日が上ったら起きて叫び、昼になると叫び、日が沈むと叫ぶとにかくうるさい鳥。よく目覚ましとして飼われている。
※ホアー=小さな馬に鹿の角が生えたような生物。そこそこ早くて力もあるがどうしようもなく頭が悪いため子供の遊び相手くらいにしか使えない家畜である。大体一つの自治体に数匹ほど飼われている。