一ヶ月後 そして彼等は再会する
視察か終わってから大体一月がたち、遂に新たな召喚ができるようになった。
──そう、ファーナムが待ち望んでいた彼女だ。
何時ものように召喚陣の前に立つ。
ファーナムに目配せすると、彼は一振りの大剣を取り出す。それは薄墓の国──かつてのミラの国にある騎士団の正当な剣、そしてファーナムに残された彼女の遺品でもある。
かれはその剣をまるでガラス細工を扱うように慎重に主へと渡す。
「‥‥任せる。頼む。彼女を解放してくれ。」
「承りました。では、召喚します。」
そういうと召喚陣が輝きだす。
待ち望んでいた時が来たが、それが叶うのは案外一瞬のことであり、当人からすれば永遠にも等しい一瞬である。
──輝きが収まったところで、目を向けると、そこには老人のようなマスクを着けた女性が立っていた。
「‥‥‥ルカティエル‥」
女性は周囲を驚いたように見渡すと、ファーナムを見つけて顔を緩ませる。
「‥あぁ、貴方か。これはいった‥!」
そして、ファーナムは限界に達し、彼女を抱き締める。
「な‥な!?いや、お、おい、ここここんなところでなにを!」
マスクで見えないが、動かせる所をじたばたさせて抵抗を試みる彼女だが、ファーナムは全く離さない。よく見ると、抱き締めた体が震え、兜のスリットから嗚咽が聞こえる。
「‥‥その、なんだ。‥‥おかえり。」
そう言われた彼女は、動きを止め、静かに抱き返す。
「‥‥ただいま。」
その辺で私と主は静かに部屋を出ていった。このまま居るのは無粋というものだ。
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──大体、二時間ほどして二人が部屋から出てくる。ルカティエルは警戒を解いており、マスクも外している。
凛とした雰囲気の綺麗な女性だ。
ファーナムは今までの張り詰めた雰囲気がだいぶ落ち着いたようだ。
初めて兜を外しているところを見た。‥‥ふむ、野性味を帯びているがかなりのイケメンだな。まぁ予想通りの雰囲気だな。
「今はファーナムと名のっているんだな。彼に話はあらかた聞いた。どうやら、私は呪いに呑まれたようだな。助けてもらった。礼を言う。」
「なに、気にするな。そちらの旅はお伽噺のようなものだが、大変な旅だったんだろう。」
「‥あぁ。そうだな。‥‥ところで、せっかく呼ばれたからには私も何かした方がいいかと思うのだが、何かすることはあるか?」
と、聞かれたので少しふざけて
「そうだな、よし、ファーナムの世話をしてくれ。なに、我々のことは気にする‥‥ぬおっ!」
頭のスレスレを投げナイフが飛んできた。ファーナムめ、冗談の通じないやつだな。‥‥いや、照れ隠しか?
「ぬあっ!」
今度は両手で投げてきた。ニヤけていたら本気で怒ったようだ。
「悪かった!悪かったって!‥‥‥そうだな、ファーナムと二人で改装の案を考えてくれ。」
「ふむ、そうか、わかった。では取り敢えずドラングレイクを思い出しながら色々と話し合ってみよう。」
「あっ、ファーナムさんの部屋の隣に部屋を作っておいたので、ルカティエルさんの部屋にしてください。」
「‥‥むむ、わ、分かった。隣だな。」
ちょっと顔を赤くしてルカティエルとファーナムはそちらへと向かっていった。
居なくなった後にチラッと主を見ると、ニヤリと笑ってサムズアップをしてきたので、こちらも笑って返す。
「主よ、素晴らしい仕事だな。」
「いやぁ、新婚さんのサポートは程ほどに‥ですよね?」
フフフと二人で笑って、また次の階層の案を考えていく。
やれやれ、あの二人を守るためにもしっかりとした迷宮を作らねばな。
──気付けば、早くも一年近くたち、外には穏やかな春の気配が訪れていた。
なんとなく、呪いがなかったらこんな感じの性格かな?と思って凛としたちょっと可愛い感じの女性にしようとしました、うまく表現できてれば幸いです。
‥‥リア充爆発すればいいのに(ボソッ)
この章はほのぼのしつつも格好いい、可愛い連中を出します。カップルとしてなん組か出したいのですが、いいカップリングあったら
「こいつらオススメだよ!」
と、感想にお願いします。