ハイスクールD×D サイヤと奏でる悪魔の軌跡   作:厄丸

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第22話 サイヤと涙と哀れみと

三人称vision start

 

 

「……」

 

「な、なんなんだ……お前はなんなんだァ!!!」

 

コカビエルが震えながら訴える、真っ黒な羽で自分を守るように覆いながら後ろに後退する

 

「……」

 

()()、その一瞬だけコカビエルは瞬きをする、次に目を開いた時には・・・

 

「ガハッ……?!

 

「え……?」

 

コカビエルやリアス達には瞬きに一瞬で腹に一発入れられたように見えるだろう

 

「にい……ちゃん……!」

 

しかし起きた一誠の目には一発どころではない

 

()()

 

その一瞬で計十発入れられてるように見える

 

「クソが!死ね人間!!!」

 

コカビエルが槍を作って投げようとする、しかしオルスにとっては遅すぎる

 

「おりゃあッ!!!」

 

バキンッ!と音がして槍がへし折られる、瞬間移動にも見えるそれは常人の目には消えて見えるだろう

 

「悪あがきが過ぎるぞ……コカビエル!」

 

「何故だ!!!なぜ堕天使である俺が下等な人間なんかに!!!」

 

「下等な人間を怒らせた結果がこれだ……貴様は絶対に殺す」

 

煌々と光る黄金の気を纏いながらオルスは言う、それを見て合流した木場、ゼノヴィア、イリナも目を見開いている

 

「あれがオルス先輩……?それにあの髪の色は……」

 

「あの人間には恐ろしいほどの圧力を感じる……私でも手合わせは願い下げだ」

 

「あのゼノヴィアが嫌と言うなんて……でも私でも分かるわ、あれは普通じゃない」

 

普通とじゃないと言われれば当然だろう、本気でキレているオルスは別世界では伝説の戦士と言われるほど強力な力を持っている存在なのだ、たとえリアスが滅びの力を放とうとしても放つ前にやられるだろう

 

「テメェらの茶番にはもうウンザリだ……挙句の果てには何も関係のない一誠にまで……」

 

「関係ないだと?笑わせるな!神滅具を所有している時点で死ぬことは確定しているんだよ!!!」

 

その一言で更に周りの殺気は濃くなる

 

「確定……?なら神滅具の持ち主を殺すことが出来るお前も死ぬことは確定しているな、だから殺す」

 

オルスにはその言葉は届かない、全ては時限爆弾を起動させてしまった人外が悪い、慈悲はない

 

 

三人称vision fade-out

 

 

木場vision start

 

 

僕はあの状態のオルス先輩を見たことがある、いや、正確には違うだろう。

あの合宿の時にイッセー君と一緒に感じた力を色濃く感じる、あれがオルス先輩に眠っているサイヤ人の力なのだろう……

 

「まぁ……それでもあなたのことは許さない、パルパー・ガリレイ」

 

「ヒィイイイイイイイイイ!!!」

 

パルパーはオルス先輩をみて逃げ出そうとしている、逃げ足だけは早いと思っていたけど上の方から檻のようなものが降ってきた、こんなことをできるのは僕の知っている中で1人しかいない

 

「オルス先輩……ッ!」

 

「……」

 

オルス先輩はこっちを見ない、しかしーーー

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

「オルス先輩……本当に……本当にありがとうございます……!」

 

目元に涙が浮かんできた……でも今は涙を流すときじゃない

 

「や、やめろ!私が死んだらどうなるか分かっているのか!!!」

 

「あなたが死んだら……?そんなの知ったこっちゃない、あなたは僕の復讐の相手であり同胞たちの仇だ、むしろ死んでくれたほうがいい」

 

何故だろう、先ほどまで禍々しいほどの殺意に蝕まれていたはずなのに凄く清々しい気分だ、きっとそれはオルス先輩のせいだろう、いや、オルス先輩のおかげと言った方がいいかもしれない

 

「僕は今とても感謝している、あなたにまた会わせてくれたことも、自分のことを放っておいて他人の心配ばかりしている先輩にも……そして……こんな復讐のことしか考えられない僕を拾ってくれた部長にも!!!」

 

そのためにも僕は今の僕を超えないといけない……!

 

 

木場vision fade-out

 

 

オルスvision start

 

 

……木場の近くから強大な光の力を感じる、どうやらあいつも進化をするようだが……そんなことは今の俺には関係ない

 

「これで終わりだコカビエル」

 

手のひらをコカビエルに向けて自分に溢れる気を一気に収束させる、見た目はバレーボールぐらいだが……どうやら今の俺はクリアなことを考えられるようだ、それもあそこに溢れる光のせいか・・・?

 

 

オルスvision fade-out

 

 

木場vision start

 

 

バキンッ!と音がしてオルス先輩の作った檻が壊れる。

本来なら壊れるはずがないその強固な檻が壊れたことには驚きだが今の僕にそれを理解するような判断力は追いついていない……

 

だって……だって……!

 

「これは……みんな……!?」

 

なんて温かい光なんだろう……きっと……いや、これが今の君たちなのだ、そうだろう?みんな……

 

「僕は今まで……今の今までずっと考えていたんだ!!!僕だけが生きてていいのかって……!僕よりも強く思っていた子がいた……僕よりもずっと夢を見ていた子がいた……!そんな子たちよりもずっと劣っている僕が生きてていいのかって……!!!」

 

『良いんだよ』

 

『ずっと私たちのことを思っていてくれた』

 

『今まで忘れないでいてくれた』

 

『僕たちは知ってるよ』

 

『イザイヤが誰よりも優しいってこと』

 

『私たちは知ってるよ』

 

「みんな……!」

 

みんなが笑って見てくれている

僕に力を与えてくれている

あぁ……僕はなんて幸せ者なんだ……!

 

『~♪~~♪』

 

「これは……聖歌……?」

 

僕が人間だったころみんなで歌った歌

みんなで希望を忘れないようにって口ずさんでいた歌

本来なら悪魔である僕はダメージを受けてしまう、でも今回は、今回だけは僕に今まで以上の希望と勇気を与えてくれる……!

 

『僕らは一人じゃダメだった』

 

『だけどみんながいれば大丈夫』

 

『怖くなんてない』

 

『聖剣を受け入れよう』

 

『怖くなんてない』

 

『神がいなくたって』

 

『私たちがいる、そして今は仲間がいる』

 

『僕たちの心はいつだってーーーーーー』

 

 

 

 

 

「うん――――ひとつだ」

 

みんなの光が僕の中に入ってくる。

あんなに鬱陶しかった光が今は本当に心地よく感じる。

 

 

 

 

 

「いこうみんな……僕は二度と迷わない……ッ!!!」

 

その瞬間、僕の周りは大きな光に包まれた

 

 

木場vision fade-out

 

 

オルスvision start

 

 

どうやら木場は自分の限界を超えたらしい、やっと過去の自分に別れを告げることが出来るようだ

まぁ……今の俺には関係ない

 

「これで終わりにしてやる、今までの自分の行いに後悔しながら死んでいけ」

 

「くそが……!負けるか……俺が貴様なんざに負けるかぁああああああああ!!!」

 

あのクソカラスが光の槍をこれ以上にない程の数を作り投げてくる……

 

 

 

 

()()()()()

 

 

 

 

 

「なん……だと……ッ?!」

 

「ふん、その程度か雑魚が。何が戦争を引き起こしてぇだ、人間にここまでボコボコにされちゃあ歴史に書かれている堕天使が形無しだな」

 

本当にあっけない、こんな奴に……こんな奴に一誠は……ッ!!!

 

「死ね」

 

俺はこんな奴は容赦しない、くたばりやがれ死にぞこないが

 

 

オルスvision fade-out

 


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