とある姉妹の艦隊日和   作:紫音提督

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《過去を騙る》
とある姉妹の艦隊日和2話です
胸糞注意です。


とある姉妹の艦隊日和2

       ー3年前ー

 

 雨の中走っている少女がいた、その少女は傘を忘れたのか雨具を使っていなかった。

 

「は〜……ツイてないなぁ……こんな雨が降るなんて聞いてないよ…」

 

 朝は1日晴れると言っていた天気予報が恨めしい。

 

「今日は友達とどっか行って遊ぼうと思ってたんだけどなあ……まあ流石にもう何かあるとは思いたくないなあ……」

 

 今日は1日厄日だったのだろう。遅刻し、日直は手伝わされ、雨にも降られた。

 

「もう帰って寝ようかな……」

 

 少女は黒髪に付いた雫を落としながらそう独り言を付いていた、すると

 

「すいません、立花紫音さん…でしょうか」

 

 黒服に変な帽子を被った人が声をかけてきた。

 

(なんだろう…?変な帽子被ってるけど…まるで軍じ…)

 

「あの…」

 

「は、はい…私が立花ですけど…」

 

 私がそうだと答えると黒服は電話で誰かと話を始めた。

 

「…わかりました、はい、必ず」

 

「あ、あの…何なんでしょうか…」

 

「………貴女には私達についてきてもらいます」

 

「えっ…それってどういうことで…」

 

 ガバッ!、男はハンカチで私の口を押さえてくる。

 

「モガっ!た、助け……」

 

 ーそして私の意識は落ちていった。

 

        ー???ー

 

「ここは………?」

 

 目が覚めると何か仰々しい機械が並んでいる施設の様な所だった。

 

「な、なに…ここ?それに……」

 

 それに私の四肢は鎖で繋がれていた、まるでテレビの

中のキャラの様に……

 

「どうなって……」

 

 声が聞こえてきた、男の声だった。

 

「お目覚めか、モルモット」

 

「………誰」

 

私は敵意を隠さずに目の前の人物が誰なのかを聞いた。

 

「……海軍所属、元帥の神原だ、覚えておけ『モルモット』」

 

 相手は私を見下してあくまでモルモットとして扱うつもりのようだった。

 

 それにしても海軍の元帥…?元帥ってのがどんな扱いかは知らないけどこんなことをできるはずがない……

 

「なんで私を攫ったりしたの」

 

「深海棲艦に対抗する兵器を創る為さ!」

 

「深海棲艦…アンタは何を言ってるの…?」

 

「チッ!五月蝿いなあ…お前は自分の立場がわかってないのか?」

 

 ガスッ!私の腹に蹴りが入る。

 

「ゲホッ!」

 

「お前はどうせ実験用のモルモットなんだよ!静かにしてろよ!」

 

 ガスッ!ガスッ!ガスッ!

 

 何発も何発も蹴りを喰らわしてくる。男は私の頭を踏みながらも気が晴れたのかこちらの質問に答える。

 

「まあいいや、深海棲艦ってのは海からやってくるゴミの事さ!そして君は艦娘と言う名の生きた兵器になるのさ!」

 

「グアッ……」

 

 声が出ない、なんだ、なんでそれで私がこんな目に遭うんだ……理解できない…

 

 男はそんな私を見て何が言いたいのかわかったらしく。

 

「ああ、君が兵器になる理由か?それなら簡単さ!君は『艦魂』を持つ事のできるキャパシティが普通じゃあなくてね、普通なら艦魂を持つ事なんてできないしそれが出来るのが艦娘なんだけどねえ、アレですら1つ持つだけだ。けどお前は違ぁう!全ての艦魂と深海棲艦の艦魂すらをも受け止められる身体の持ち主だからさ!………まあ君の精神は壊れて無くなるだろうけどね?」

 

「う…うわぁ…………い、嫌だ…嫌だよぉ!」

 私の精神は壊れてしまった、自分が無くなると聞かされて相手に反抗出来るほど私は強くなかったから。

 

         ー現在ー

 

 誰も口を開かない、それもそうだろうね…私が攫われた話も驚いたのかもしれないけど問題はその後……艦魂を複数持っていると言ったからだよね…

 

 元々人間で艦魂を持ち、その教育を受けている彼女達からすれば私がこうやって生きているのが奇跡なんだもんね…

 

「みんな、みんなは艦魂については知ってるよね?」

 青い顔だった彼女達だったけど頷いてくれた。

 

「私達の力の源、私達の魂の前世…私達は彼女達の残した魂を使って身体能力や艦装を使う事が出来る……」

 

 陽炎が答えてくれた。

「うん、そしてそれは同時に艦の記憶でもある、死んだ仲間達、沈んだ思い出そんな黒い記憶の吹き溜まりでもある。そしてそれを持つためには身体に適合させなきゃいけない」

 

 そう元々、艦魂は艦の怨念なのだ。それを上手く使いこなす技術が開発され怨念が具現化した深海棲艦に対抗している。

 

「……なんで姉さんは『あんな記憶』を受け止められたの……?」

 

 彼女達もあの黒い記憶は見ている、だからこそわからない。なぜあの記憶を見続けて精神が無事でいられたのか。

 

「……じゃあ次はその事についても語るよ」

 

 騙ろう、あの記憶の事も、今の記憶も


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