とてとてと縁側を歩く足音が二つ。
片方が私でもう一方は・・・私の口からはとても言えん!//
「さて、貴様にはこれから試練を受けてもらう」
私は立ち止まって振り返り・・・かっ彼に話しかける//
「し、試練ですか?」
驚く彼のその顔もまたかわいい。
「あぁ、そうだ。私と婚儀を結びたいのなら、我が主との対話が必要だ」
ついつい照れて高慢な口調になってしまうのが自分として情けなく思える。
しかし、その態度に気圧される彼もまた愛しく思える。
「まぁ、話すだけならなんとかなりそうです・・・」
侮ることなかれ若人よ、哀しいかな言い寄る男はホイホイスキマに放り込むような御方と全うな対話なぞできるはずもない・・・もしもの時は私が守らないと///
そうして暫く歩き、我が主が待つ部屋に到着する。
「藍は下がっていていいわ真面目に話したいの・・・」
そのいかにも本気ですよと言うようなオーラを身にまとわせ、私に退出するように言う主。
しかし、私は式神なのだ、言われれば下がるしかない。
「分かりました・・・またあとでな」
一瞬目線をずらし彼にエールを送る。
それに答えるように彼は頷いてくれた。
さとりてこの胸の不安は消えるはずもなく、わだかまり続ける。
となりの部屋をうろうろし続ける。
その内うろうろにそわそわが足され、そののち、うろうろにそわそわそしてあわわわが足され私の思考がてんわやんわし始める。
頭の中に回り続けるのは彼の安否と、話し合いの結果。
だが第一に彼の安否が大切なのだ。
壁に耳をつけ隣の音を探るが、うまく聞こえずくぐもる声しか聞こえない。
しかし、四半刻を過ぎた頃に音が途切れ、聞こえなくなり、主のお茶をすする音しかしなくなる。
そして暫くして隣の障子が開け放たれ、中から喜色満面の彼が顔を出す。
その手には、婚儀を許すという旨が書かれた書を持っていた。
その筆跡はどう見ても我が主のもので、何度も見ている私は間違えない。
「やったよ!藍!勝ち取ったんだ!」
ひどく興奮した彼の顔もまた美しく、可愛らしい。
「ほっほう、なっなかなかほねっがあるんだな」
喜ばしさのあまり飛び付きたくなる衝動を理性が抑え、言動を照れとプライドが書き換える。
しかし、それを呆れたように見て、ため息をする主が一言こちらに向かってアドバイスをしてくる。
「もっと素直になりなさいよ!この純情娘め!」
アドバイスの域を越えたヤジは不思議と私の緊張感をほぐした。
「ほら、あんたももっとぐいぐいいきなさいよ!」
彼の背中を押し、私に追い討ちをかける主。
「なぁ、お許しが出たんだ・・・その、なんだかな、改めて言うけど・・・・僕と結婚してくれないか藍?」
こんな満面の笑みで言われれば私の理性は決壊しプライドはへし折れた。
「勿論ですよ!」
このとき思いっきり抱きついた。