先に謝っておきますよ。
「幽々子様の初恋って何時なんですか?」
ふと気になったという風に私の思い出を聞いてくる妖夢。
「そうね~あれは何時の事だったかしら?」
私はあの頃を語り始めた。
あれは今から800いや900年前?まぁいいわ、私にとってあれはつい昨日みたいなものよ。
私って生前は名家の娘なんだけどね、その当時は私みたいなのは同じくらい格式が高い家の方じゃないと結婚できなかったし、恋することすら叶わなかったわ・・・
でも、禁じられるからこそ燃え上がる恋もあるじゃない?
・・・そうよ、そのまさかよ。
私も恋に落ちたのよ、身分違いの恋にね・・・
ちょっとした出来心だったんだけどそのままズブズブと嵌まっていっちゃってね。
えっ!?相手はどんな殿方なのかって? 今日の妖夢は、やけに食い付くわね・・・
・・・まぁ、いいわ・・・・・で、どんな殿方なのかってことでいいのよね?
・・・うーん言い表しにくいわね。
キリリとした目元に意思の強そうな凛とした目をしていてね。
そんでもって仕事は真面目にするけど、少しお調子者なのよね~
職業?・・・そうねぇ確か妖夢と同じ庭師だったはずよ。
そんなに驚くことかしら?
まぁ、そんなわけでね・・・私は彼に惚れちゃったのよね。
相手はどうだったか?
きっと彼も私のこと好きだったんじゃないかしらね?
・・・なんでわからないのかって、それはそんなことを言ってしまって誰かに聞かれたら私も困るし彼にだって命の危機よ。
使用人が主人の娘をたぶらかした何てなったら、彼は石抱きや鞭打ちで許されるか私にもわからないもの。
だから彼は死ぬまで私を好きとは言ってくれ無かったわ。
それでも私は幸せだったわ。
縁側に座って彼の仕事を眺めたり、仕事終わりにお話したりと、いろんなことを彼と出来たもの・・・幸せじゃない何て言えないわ。
えっ?そのあとのこと?
・・・あぁ、私が西行妖を鎮めたあとのことね。
残念な事だけど、その時には彼も死んでいたわ。西行妖によってね・・・
彼は死に誘われてしまったの、西行妖の誘う死の妖気によってね。
その日は少し冷えた日だったわ。
最近何か向こうから呼ばれていると彼は言ってふらふら~っと何処かへ消えてしまったの。
それから数日は彼のことが心配で心配で堪らなかった、だけど彼は帰って来なかった。
そんなある日私は彼とは別の使用人に、西行妖の話を聞くの。
・・・どんな話だったのかって?
それは妖夢にはまだ早い話だから先に進めるわ。
そんな膨れっ面したってダーメ・・・あらこのほっぺたぷにぷにしてて気持ちいいわね・・・
・・・まぁ、そんなのは置いといて、私はその使用人が言った話が彼が消える前に言っていた話が酷似していて怖くなって西行妖の元へ向かったの。
向かった先には西行妖の犠牲者で一杯だったわ。
そして私は、そのなかで彼を見つけてしまったの・・・
そこからは、妖夢も知っての通り私が自分の命を使って封印したのよ。
・・・結局添い遂げられなかったですねですって?
いーえ妖夢、私は今も彼と一緒にいるわよ。
死ぬ直前に彼の手を握ったの、だから今も西行妖の下で私の体と彼は眠ってるわ♪
さーて昔話はおしまいよ。
妖夢~おやつは何があるの~?
妖夢がおやつを探しに台所へ向かっていった直後、私の隣の空間が歪む。
「いいお話だったわね~・・・ところでそんな話一度も聞いたことないわよ?」
幻想郷の賢人で私の友人の八雲 紫が非難の目を差し向けながら憎まれ口を叩く。
「あら、聞かれなかったものだから知ってるのかとばかりに」
そう言って私は大袈裟に肩をすくめる。
「それは、皮肉かしら?」
からかわれたと思った紫は目を細める。
「どうかしらね?」
そう言って私は台所に向かって大声で、お茶を追加するよう叫ぶ。
「有名な家の娘何でしょ?はしたないわよ」
お返しとばかりに皮肉ってくる紫に対しちょっと苛つきつつ言葉を返す。
「あら、神隠しと裏金作りが趣味の○●○●歳の方には言われたくないわね♪」
澄まし顔の裏で冷や汗を流している紫を見てカラカラと笑う私の視界の端に、彼が笑顔で笑っているのが見えた。