セシリアに生まれたオリ主がなんとかして一夏を落とそうとするけど中の人が違う面々のせいでなかなか落とせないIS 作:キサラギ職員
「これは……くそっ……
ISに対抗するにはISしかないというのは常識であるが、では肝心のISが起動しなかったらどうなるか。
答えは単純である。IS学園の防空網を構築していたIS全てがダウンし、機能停止状態に陥っていた。不具合などではないことは明らかだった。機種固有の問題でもない。遠隔操作によって、ISのコアがロックされていたのだ。
独自の改造を施したIS『Hi-ν』も同様だった。起動することができなくなり、二機のISが悠々と進行してくるのを食い止めることさえできない。
「生徒会長に指示を仰ごう!」
「おかしい! 生徒会長室がもぬけの空だ!」
「うそっ………生徒会長! どこへ行ったんですか!?」
学園の生徒を纏める権限を持つはずの簪は、その場にはいなかった。指示することを放棄したのだろうか。我々はどうすればいいのだろう。生徒が不安に駆られ走り回っている。
迎撃に出ようとT字型のネックレスを翳した千冬は、コアがロックされていることに気がつき愕然とした。
この段階でこの暴挙に及んで得をするのは、亡国機業こと企業連しかありえない。それと同時に、彼らの目論見がようやく理解することが出来た。
「インターネサイン技術を使って世界を制覇するつもりか! こんなやり方しかできないと言うのか、奴らは!」
千冬は味方のISが空から落ちていくのを見ながら、
「織斑先生! どこへ!」
同じく、ISが起動できず迎撃に上がれない山田が走ってきた。二人は並んで格納庫へと急ぐ。
「ISがだめなら、通常兵器で迎撃するんだよ!」
「無茶を………!」
「確か実習用に準備されていたエクステンデッド・オペレーション・シーカー《EOS》が一台あったはずだ。それで持たせる!」
たとえいくら千冬が巧みだとしても、EOSとISではそもそもの土台が違う。特殊にカスタムされているEOSならまだしも、実習用のお古では答えは火を見るより明らかだ。
しかし、やらないよりかはマシだった。山田はすぐに頭を切り替えると、腰のホルスターから拳銃を抜いた。
「援護はお任せを」
「任せた!」
空襲警報。迎撃に上がった戦闘機に絡みつく赤い閃光があった。
「ははははは! ベイルアウトなんてさせるわきゃねぇーだろぉ!?」
狂犬染みた声を上げて、IS『アルケー』を駆る女スコールが戦闘機に追いすがるとあっという間に膾切りにする。
応酬として放たれるミサイルをファングで叩き落せば、バスターソードをライフルモードに変更して片っ端落としまくる。
空中に咲き誇る爆発の花を背景に、アルケーが銃を演技掛かった動きで照準した。
「ひひひひ! ははははは逃げろ逃げろぉ~?」
そして、眼下を逃げ回る生徒たちにライフルを撃ち、あるものは殺し、あるものは吹き飛ばし、あるものはわざと外して遊ぶ。
「I'm a thinker...」
歌いながら眼下の施設にチェーンガンとアサルトライフルを撃ちまくるのは、『リザ』を駆るオータムであった。歌いながら、IS学園の防御設備に弾丸の雨を降らせて機能停止に追い込んでいく。
無論、相手が人間であろうと容赦なく撃つ。ある生徒は胴体が弾け、ある生徒は吹き飛ばされぴくりとも動かない。対IS装備を人間に撃てば、人は耐えることなどできないのだ。
虐殺の現場と化した中で、本音は涙を流していた。
「こ、こんなことって………」
人が次々死んでいく。応戦することもできないまま。見知った顔もあった。それも、死んでいく。
ISが使えなければ戦うこともできない自分が憎い。本音はのんびり屋だった。太陽と日向ぼっこが好きな年頃の娘だった。戦場を知らぬ彼女がいきなり人の死を前にして、動揺しないはずがなかった。
「……!」
オータムがライフルを本音に向けた。にやりと壮絶な笑みを浮かべ、わざと引き金に指をゆっくりとかけ直す。
本音はその場から動けなかったが、平素は緩められている頬を引き締めて、正面から睨み付けた。
「本音! 逃げなさい!」
「おねえちゃ……わっぷ!?」
虚が走ってくると、本音を抱きしめて走り出そうとした。足がもつれ、二人が転ぶ。
オータムはしかし、団子状態で転がった二人を見てますます嬉しそうに笑うだけであった。
「生徒会長を呼んで! 簪さん! 簪さんはどこ!?」
「わからない。クソッ! あの赤い奴、あの二人を狙ってる!」
上がる悲鳴。オータムは引き金に指をかけ、心底楽しそうに別れを告げようとした。
「あばよってんだ!!」
爆発。同時に、地下格納庫からのエレベーターシャフトからミサイルが飛んでくると、複雑な機動を取りながらオータムに向かう。
「何? ちっ、ファングがあんだよオラァ!」
アルケーのラックから一斉にファングが放たれるや、ミサイルを片っ端撃ち落していく。その時間にも爆発的な火炎に飲まれたエレベーターは高さを上げていく。
腕組をした、カスタム・EOSが姿を現した。背面にマントを装着しており、隅から燃えて黒い煙を吐いていた。
右腕にガトリング砲。左腕にリボルバー。背面に武装格納用のコンテナ。頭部は一つ目のカメラアイ。胴体に当たる部位は透明なカウルがあり、開いていた。
ISスーツを着用した少女が、カウルに足をかけ、機体と同じように腕を組んで佇んでいた。
EOS――――狼のエンブレムのそれが、燃えるマントを脱ぎ捨てて、武器を構えた。その間、少女は身じろぎもしていない。
「待たせたわね……………生徒会長、更識刀奈………ここに参上したわよ!」
拡声器も無いのによく響く声で言えば、上空で武器を撃つ手を止めている二機に対し扇子を突きつける。
「パーティーに乗り遅れてしまって申し訳なかったわね! 混ぜなさいよ!」
「はっ、たかがEOS如きが歯向かうってのかよ! 面白ェ……死ねや!」
莞爾と笑う刀奈に対し、二機が襲い掛かる。
縦横無尽にファングが走り抜け、ビームを放つ。
『リザ』からハイアクトミサイルが一度高度を上げてから、急激に高度を下げて迫った。
「早撃ち勝負なら負ける気がしないわね!」
刀奈がカウルの中に納まると操縦桿を握った。頭部パーツがせり下りて来ると、カメラアイが一段と強く発光した。
30mmリボルバー“ピースメイカー”が唸りを上げる。六度発光し、ハイアクトミサイルを全て空中で叩き落す。
「Foooooooooooooo!!!!」
右腕に新しい武器が握られる。こちらも同じようにリボルバーだった。それを銃声が一発に聞こえるほどの超連射にて、ファングの半数を落とす。音速で戦闘機動をしている物体を、同じように音速のもので落とす。理屈から言えば可能だが、それを人間業でやってのける相手がいるなど、襲撃者二名は想像していなかった。
理屈ではないのだ、魂が叫んでいるのだ。
考えるな、感じるのだと。
「OK!!!! Let's party!!!!!!!!!!!」
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EOSとISが同等の戦いを繰り広げている中、その二人だけは静かだった。
とある格納庫の隅。制服を着た女子生徒二名が作業に没頭していた。遠くから響く戦闘の音にも動じず、せっせと手を動かしている。
「ラウラ、電力引っ張ってきたよ。これで足りる?」
「ありがとう。チャージに時間がかかるが何とかやってみせる」
シャルロットと、ラウラだった。
二人は同じく機能停止状態に陥っているIS『R.E.X』の武装を取り出すことに成功していた。それは、レールガンであった。大気圏を突破し、衛星軌道上に物体を投入できる威力のそれは現在、砲身と発射装置をISから外した格好でクレーンに吊られていた。
ラウラはレールガンの端子から伸びたコードを繋いだパソコンを一心不乱に打ち続けていた。
シャルロットは、どこからか持って来たケーブルを発射装置に繋いでいた。
「このレールガンは……通常とは違う系統で制御されている。企業連の操作もこのレールガンには届かない。そもそもR.E.Xは核攻撃を受けた際に単独で生存し、報復することも設計に入っていた。だがまさかこんな形で使うことになるとはな」
「でもR.E.Xが使えないってことは……」
「手動でやるしかないだろう」
ラウラは言うと、砲身を握らせる予定のEOSを見遣った。整備部が学習のために分解していたもので、カウルさえ付いていない。スケルトンだった。
「手動照準はお前に手伝って貰うことになる」
「わかった。任せて」
シャルロットはラウラに頷くと、一人拳を固めた。