セシリアに生まれたオリ主がなんとかして一夏を落とそうとするけど中の人が違う面々のせいでなかなか落とせないIS   作:キサラギ職員

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ポイントくれ(乞食)


58話 学園祭!

 IS学園学園祭には、今まで以上の警備が導入されている。

 衛星による監視はもちろん、各種企業が実戦に投入している衛星兵器、沖には軍艦が停泊し、周辺一帯はドローンと、軍隊所属のIS乗りが固めている。私服に着替えた軍人も校内を歩き回っているし、“彼ら”もまた準備についていた。

 国連に所属し、各国に配備される特殊部隊員。普段は一般人として暮らすスリーパーエージェント。

 教室に入ると気軽そうに手を挙げる。

 

「よう、一夏」

「弾か」

 

 五反田弾、職業エージェント。表向きは学生は、学園祭にチケット無しで入っていた。

 そんな裏事情を知るはずも無い一夏は、なぜここにいるのかという当然の疑問を抱いた。現在彼は休憩中で、女の子に囲まれてあれこれと黄色い声を浴びせかけられるのに飽きて使われていない教室にいた。

 

「どうやって入った?」

「ん? ああ、親父の仕事のつてでチケット貰ってよ。蘭も来てるぜ」

「そうか」

「気合入れて化粧してたから会ったら褒めろ」

「なぜだ?」

「この朴念仁の唐変木め後ろから刺されても知らないぞ」

 

 久々に―――というわけでもないが、いつ会っても織斑一夏という人間は変わらない。蘭が一夏に恋心を抱いているのを知っている兄貴分としては、応援したい気持ちあったが、難攻不落の要塞に違いないと半ばあきらめの気持ちもあった。

 

「休憩中だろ? 店回ろうぜ」

「ああ」

 

 弾がそう提案すると、執事服のままどこか疲れている一夏が返事をした。出歩けばキャーキャー言われるせいである。どちらかといえば寡黙な男にとって、動物園のパンダはつらいものがある。

 教室から出て歩くと、即座に発見されてしまう。まあ執事姿のまま歩いていれば目立つのが当たり前である。

 

「その格好はなんだ、執事か何かか」

「ああ。ご奉仕喫茶なるものをやっている。ご奉仕ってなんだ?」

「知らんが、どんなことをやらされているのかは想像できたよ、ご愁傷様一夏」

「代わってくれ」

「はっはっはっ。ご冗談を」

 

 真剣な表情でせがむ一夏に弾は朗らかに首を振った。

 

「あ~織斑君後でお店にいくからね!」

「執事服……レア画像レア画像……」

「ちょーカッコイイ!」

 

「人気があるようでございますねぇ一夏さん」

「動物園の動物みたいなものだぞ」

 

 などと二人でぶつくさ話しながら歩いていると、たまたま美術部のクラスが目に入った。ただ歩いてすごすのも面白くないと入ってみると、いきなり箱のようなものを押し付けられたではないか。

 

「芸術は爆発だ!! ということで爆弾解体ゲームやってまーす!」

「織斑君だ! 執事服着てる!」

「隣の子友達かな? アリかも」

「はーいレッツスタート!」

 

 美術部部長の腕章を付けた女子が声高らかに宣言をした。

 途端に箱についているタイマーがスタートして、残り時間が減っていく。男二人は作業机へと箱を持っていくと顔を見合わせた。

 

「何最近の学校ってのは爆弾解体までやらせんの? こわっ」

「やれないなら俺がやるぞ」

「取り合えず隔離して、周囲を覆うところからスタートしたいけどこれ偽者だからなあ。カバー外して液体窒素信管に流し込んで凍結処理してから解体っていいたいけど、ないらしいな」

 

 すらすらと解体手順を言い始める弾に、一夏が不審そうな顔をする。

 

「詳しいな」

「………ま、まあそういうゲームがあるんだよ。それで」

「まずカバーを外す。ドライバーを頼む」

「了解」

 

 男子二人、まるで本職か何かのように解体を始める。カバーを外しセンサーを無効化してと、テキパキと行動をしていく。さながら医者か何かのような手つきで工具を使う一夏の横で、弾は道具を渡してアドバイスに徹している。

 

「おかしい。こんなコードがあるはずがない」

「どれどれ、あーお約束ってやつだな。こういう爆弾解体ものは大抵青か赤のどっちかを切るってことになってるんだわ。現実の爆弾じゃこんな線ないもんなぁ」

 

 最終段階。赤いコードと青のコードが現れて一夏が首を捻る。映画のお約束を知らないらしく、眉間に皺を寄せていた。

 弾がそれを見るなりははんと喉を鳴らす。コードを指で引き出して、切断しやすくした。

 

「どっちがいい?」

「さあ。好きなほう選べよ」

「青にする」

 

 一夏が青を切ると、ビーッと大音量を立ててパネルに失敗の文字が躍ったのだった。

 

「……納得いかない。こんな線は本物の爆弾には存在しない」

「あきらめろって、本物の爆弾じゃないからな」

 

 一夏が眉間の皺を深くして爆弾もどきをにらみ付けている。一夏は時折、子供っぽさを発揮することがあるのだった。

 二人は参加賞の飴玉をからころと口の中で転がしながら歩いていた。

 

「そういや鈴の奴、どこにいるんだ?」

「一年二組で飲茶(やむちゃ)をやってるらしい」

「ははん、で、チャイナドレスで女漁りか」

「男漁りの間違いじゃないのか」

「いや合ってる」

「??」

「にぶちん野郎め………じゃ悪いけど退散させてもらうわ。用事があるんでな」

 

 弾はひらりと手を振ると、一夏から離れていった。向かう先は決まっている。生徒会長室―――の資料が保管されている場所だ。普段は誰も入ることがないそこへ、当然の如く歩いていき扉を開く。

 

「それでは貴方がエージェントだと?」

 

 入るなり剣呑な声が弾を出迎えた。眼鏡をかけた堅物そうな容姿。ヘアバンドをした、女性的な豊かな体型をした女性。布仏虚(のほとけうつほ)が窓際に立っていた。

 

「そういうことだ、更識家の側近さんよ。用件は一点だけだ。あんたたちのお嬢さんは生きている」

「………安心しました。機を伺っているということですね?」

「さあね」

 

 弾は肩を竦めると現在保護中の少女の姿を思い浮かべていた。

 保護中というにはバイタリティに溢れすぎていて、同僚が対応に困っているのだった。世話係りだけにはなりたくないと心に思うくらいには。

 

「あるいは何か考えがあるのか………」

 

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 弾と別れた一夏は、休憩時間終了と同時に自分の教室に戻っていた。

 

「一夏ー! 三番テーブルでゲームしたらオーダーを四番に持っていって!」

 

 忙しくて目が回りそうだった。アルバイトなら経験がある一夏でも、ここまでの修羅場はあるまい。次から次へと皿が出てくるカフェテリアレストランよろしく、仕事が矢継ぎ早に繰り出されるのだった。

 厨房の応援に入っているシャルロットが一夏に盆を渡すと、そのままくるりと厨房に引き返していく。

 こんなことならばもう少し油を売ってくればよかったと一夏は死んだ目で働いていた。

 ピークタイムを過ぎたのか、客足がまばらになってきた頃。

 材料を切らしてしまったのと、昼休み休憩もあって一時的にお店を閉めようということになった。

 

「計算違いだったなあ……買出し組はメモ忘れないで行ってねー! 領収書忘れずに! あ、織斑君。もう一回休憩行っても大丈夫だよ。今日がんばってくれたしね」

 

 クラスのしっかりものこと鷹月静寐(たかつきしずね)が一夏に声をかけた。

 次の瞬間メイド服をきっちり着こなして、しかし仮面を被ったブシドーが一夏の横に駆け寄ってきて止まった。

 

「よし一夏! 結婚しよう!」

「しないが」

「剣道部に行こう!!」

「構わないが……」

 

 箒に遅れて執事姿のセシリアが息を切らして駆け寄ってきた。髪の毛の乱れを指で直すと、一夏に前のめりになる。

 

「一夏さんテニス部と合気道部と水泳部とあとあと!」

 

 お嬢様らしからぬ体力の持ち主のセシリアは、自分の(一応所属している)部活全てに連れて行って過ごそうと鼻息荒く前のめりになった。

 

「坊主。私と映画部とダンボール愛好会の出し物に行こう」

 

 眼帯にメイド服(拳銃ホルスター付き)というイロモノの格好をしたラウラまで出てきて、一夏はいよいよ困惑の色を隠せなくなってしまった。

 というかダンボール愛好会ってなんだよというツッコミを入れるものはこの場にはいなかった。

 ヘルプを求めてシャルロットを見ても『ふぁいと』と拳を突き出されるだけで終わってしまう。

 最後に鷹月の方をみると、箒、セシリア、ラウラを見回した上でうーんと喉を鳴らし腕を組んで考え込み、時計を見てから言った。

 

「三人分まわってきても大丈夫だよ」

「よっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!! 行くぞ一夏ァァァァ!!」

「あっ、箒さんはしたないですわよ! お待ちに、おまっ、待てぇぇぇぇ!!」

「元気がいいな箒は。若いことはいいことだ」

 

 言うなり箒が口元をにやりとさせるや否や一夏の手を握り締めて、走り始めた。その脚力たるや一夏が引きずられてしまうほどであった。

 後からセシリアが最初は女性的なフォームで、途中から陸上選手のようなフォームに切り替えて全力で追いかけ始めた。後からはザッザッザと軍人のような綺麗なフォームでラウラが追いかけていった。

 


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