セシリアに生まれたオリ主がなんとかして一夏を落とそうとするけど中の人が違う面々のせいでなかなか落とせないIS 作:キサラギ職員
「織斑一夏………」
事実上の更識家頭首となった更識簪は、一人廊下を歩いていた。メガネ型のウェアラブル端末で自身と一夏とセシリアの交戦記録を確認していた。
セシリアはどう戦っていいのかわからず困惑しているようだった。武器を使う手つきもぎこちない。今まで見たことがないレーザーライフルを使っていることから碌に慣らしもせず実戦投入したことがわかった。脅威度で言えば、並といったところだろう。
対する相棒の脅威度は計測することすらバカバカしくなるほどだった。こちらのパルスキャノンの弾道を見切った上で、わずかばかりに存在する銃身の過熱後の放熱時間を利用して接近し、ブレードを振るってくる手際のよさ。イグニッションブースト使用中に違うスラスタユニットでさらにイグニッションブーストを作動させリロードタイムを短縮するさしずめクイックブーストを使う技量の高さ。セシリアの誤射がなければ危なかったかもしれない。
考え事をしながら廊下を歩く姿は、誰にとっても近寄りがたい威圧感に満ちていた。
考える内容は一般人にとっては厳しいであろう。あらゆる手段をもって自分の目的を遂行しようという意思に満ち溢れているからだ。
「実力は本物……正面からの排除は難しいかもしれない」
簪は、悔しいことに、自分でも打倒できるかは怪しいという結論を出していた。
ならば正面からでなければいい。死なぬ人間など存在しないのだ。手段はいくらでもある。そして、更識家はそれを実行するだけの力がある。
「覚悟ぉぉぉっ!!」
と、急に横合いから竹刀を持った女生徒が襲い掛かってきたではないか。
簪は視線を落としたまま、スカートをかすかに肌蹴させた。腿にかかっていたホルスターからテーザーガンを抜き一発。
「あばばばばば!」
ビクンビクン痙攣しながら崩れ落ちる女生徒をよそに冷静にテーザーのカートリッジを交換。
「もらったああああ!」
「名誉のためにいいいい!」
「だーいすんすーん!」
「まるで火に……なんだっけおらぁぁぁ!」
全身甲冑の騎士もどきが急に沸いて出てきたかと思えば、模擬剣で斬りかかっていく。
ショテール二本持ちもいれば槍持ちもいた。
「……」
テーザーをぶっ放す。また一人倒れる騎士もどき。
簪が動いた。剣を奪うと鈍重な騎士達の間をすり抜け、足を払い、的確に打撃を与えて動きを奪っていく。
狼のような身のこなしで次々刺客を討ち取っていく簪を囲むようにして、弓兵の群れが出現した。隊長もとい部長らしき女生徒がその光景を見ていたが、おもむろに言った。
「弓を撃ちなさい」
「え? でも味方にあたっちゃいますよ」
「いかんか?」
いかんでしょ。みんなが思わずにいられない中でしかし無情にも決断は下された。
雨あられと降り注ぐ弓矢。地面に倒れたせいか鎧が歪んだせいか身動きが取れない騎士もどきがボコボコにされ元気よく悲鳴を上げる。
「痛い痛い!」
「管制塔援護しろよおおおおお!」
混沌とした戦場。簪は騒ぎに乗じてその場をあっという間に逃げ出していた。
「部長! 生徒会長がいません!」
「この騒ぎを利用して逃げたのね流石だわ……」
お前のせいじゃないのという視線をよそに部長たる女は涼しい顔をしていた。
廊下を走りながら簪は思う。これもあれも、あの姉が生徒会長である自分を倒したら次期生徒会長なるルールを勝手にでっち上げたせいだと。
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「いいですこと箒さん。まずは通常のモードで……」
「了解
「ああああああああ!!??」
俺の言葉もむなしくしょっぱなから黄金色に光りつつ残像を残して迫ってくる箒さん。
刹那トランザムは使うなよ!
ひいひい言いながら左右に機体を振る俺を飲み込まんばかりのビーム斬撃とレーザーが飛んでくる。威力は月光とか俺のカラサワと比べたら大分控えめだが、射程といい攻撃範囲といい天地ほどの差がある。俺が一発撃つ間に相手は十発は撃ってる。総火力ではお話にならない。
逃げる俺を追いかけるというか一瞬にして背後に回りこんでくるグラハム・箒。リアルで無数の残像しか見えない速度で動いているので、対処するとかしないとかそういうチャチな話じゃねぇ。もっと恐ろしいぐあーっ!?
「明鏡止水だセシリア! 心を研ぎ澄ませ! かわせるはずだ!」
「できたらやっていますわ!」
シールドにレーザーが直撃。俺は空中で見事に吹っ飛ばされた。手足を振ってモビルスーツよろしく姿勢制御。後退をかけながらカラサワをチャージして、敵を探す。
「いっけーセシリアやっちゃえー!!」
「大丈夫かなぁセシリア」
紙メガホン片手に俺を応援してくれる鈴音と、その横で体育座りでハラハラしているシャル。
俺は、俺たちはアリーナで戦闘訓練をやっていた。
なんでこんなことをやってるかと、ようは連携力を鍛えておこうぜということである。秋には大会があるらしいし、敵の襲撃もいつあるかわかんないからだ。付き合った期間こそ短くても原作の面々とはもう親友と言える間柄になっているし、一番IS付き合い(という表現で正しいかは知らん)も長いからだ。
「お行きなさいビット!」
BT兵器ミーティアシャワー起動。おとめ座の十八番近接格闘に入られる前に対処する。複雑に動かすことができないなら、俺を基点に鳥かごのように配置して入られないようにする!
動かした数は合計八発。追従させることがやっとだし、戦闘機動なんて取れやしない。
「うっ、うぅぅぅっ!?」
黄金色に輝く無数の影が迫ってくる。どれが本体か本気でわからないから困る。ハイパーセンサー上では超高エネルギーの物体が無数に存在することになっているが、かといってハイパーセンサーを使わずに目視だけでやろうとすると、残像と、あと金色の線がデストロイモードよろしく迫ってくるようにしか見えなくなるんだよなぁ。
などと思っている俺は、配置したミーティアシャワーの近接信管の作動範囲を見切った上で踊るように飛び込んでくるおとめ座の一撃をモロに食らい吹っ飛ばされた。
ふう。シールドがなければ即死だった(瀕死)。
「落ちろ! 落ちろっ! 落ちろッ!! 落ちなさいよっ!」
緑髪っぽい、主人公っぽいセリフを、言うというのか!?(富野節)
近接信管の範囲に入ってくれない、入っても相対速度が早過ぎて反応できないとかおかしいと思う。
「坊主、入られてるぞ」
むしゃむしゃとカロリーメイトを食いつつ観戦していたラウラがぼそりと呟いた。
何に入られたかって? そりゃ間合いだよ。
俺は眼前にいた箒目掛けカラサワをぶっ放した。それが残像であることに気がついたときには既に遅く、頭上からブレードを胸元から股間にかけて振り下ろしてくる箒の攻撃を受けてしまっていた。あっこれ逆シャアで見たぐあああーっ!?
シールドダウン。慣性そのままに吹っ飛ばされ地面に埋まる。
俺はとまんねぇからよ……のポーズになったのは偶然に違いない。
すいませんちょっと狙いました。
「うぅぅ……」
「すまない! つい興奮して鞘走ってしまった! 篠ノ之箒一生の不覚……ッ!! 本当にすまんっ!!」
「もう……箒さんったら」
箒がすぐ横に着陸してくると爽やかな笑みとともに手を差し伸べてきた。こういうところがあるから憎めないんだ。
俺は手をとって立ち上がった。ちなみにISは着陸と同時に強制解除されている。
「コンビネーションよりも前にそのデカブツの調整をしたほうがいいとは思うが……まぁ、それも含めて組み手をしよう。坊主、私と
いつの間にかカロリーメイトではなく蛇の串焼きをむしゃむしゃしながらラウラがやってきた。ねぇその蛇本当に普通の蛇? ねぇ本当に普通の蛇なの? 食ったら怒られるやつじゃないの?
「望むところでしてよ!」
俺は頬についた砂を手のひらで払うと、握りこぶしを固めたのだった。
特訓はまだ始まったばかりだからな。