セシリアに生まれたオリ主がなんとかして一夏を落とそうとするけど中の人が違う面々のせいでなかなか落とせないIS 作:キサラギ職員
化粧よし! 香水よし! ISオッケー! アリーナ予約オッケー!
俺が一人化粧台で気合いをいれているのには訳がある。放課後に一夏とコンビネーションを確認するための訓練をしようということになったからだ。
まあコンビネーションよりフュージョンをだなと考えていると、部屋の鍵が開かれてルームメイトのシャルロットが疲れた顔であらわれた。中性的な顔立ちがげっそりしている。
「あ、セシリアただいま。どこかに出かけるの?」
「お帰りなさい。ええ、少々用事がありまして」
「一夏?」
鋭いな。俺が鈍いのか?
俺は頷くと、飲み物やらタオルやらを詰め込んだカバンを肩に引っ掛けて立ち上がった。
シャルロットはといえば呻きながらベッドに倒れ込んでいた。
きっと、ラファールの改造をやっているのだろうな。デュノア社の後ろ盾を全て拒絶しているせいで資材はない機材もない専門家もいないわで酷い有様らしいけど。何度やめるように言っても聞いてくれないから困る。
夏休み中も暇さえ見つけてやっていたらしく生活リズムが崩壊してたんだよなあ。直させたけど。
「そっか。ちょっと疲れたから寝るね……」
「制服が皺になってしまいますから脱いで畳んでからにしてくださいましね。起きてからでいいですからご飯も食べませんと体に悪いですわ」
「はーい」
シャルロットが気の抜けた声をあげて制服を脱ぎ始める。これて戦闘になるとエキセントリックな言動をあげてニュータイプ撃ちとかし始めるからギャップがすごいよなあ。
部屋を出た俺はアリーナに急いでいた。学園祭前だけあって学内は浮ついた雰囲気に包まれている。こういうの嫌いじゃないよ。
「あーせっしーおはよー」
「のほほん……いえ本音さん……その虫は一体全体!?」
廊下でのほほんさんに遭遇した。私服姿で、太陽マークの長袖セーターにスカートと気楽な格好だった。たわわな胸元が強調されている。ふむ、これは参考になる……!
でも今は、そんな事はどうでもいいんだ。重要な事じゃない。
のほほんさんが抱えている棘を四方八方に生えた虫?のような物体のことだ。足をわしゃわしゃさせている。ほかの生徒たちは余りの不気味さに見るや否や悲鳴を上げる腰を抜かすと相当なもんだった。俺も見たことがなければ女みたいな悲鳴をあげていただろう。あ、俺女だった。
のほほんさんは虫を抱きしめたままにこにことしていた。
「なんかねー校庭の隅っこでうろうろしてたから餌あげたら懐いたんだ~かわいいでしょ」
「そ、そうですわね」
可愛いか? のほほんさんの美的センスがよくわからん。食堂でご飯に味噌汁と漬物と卵を混ぜた物体Xを啜ってるのを見たことがあるけど……。
「んでね、なんかね、この子をこうして被るとね!」
嬉々として太陽虫を被るのほほんさん。太陽虫がぺかーっと光る。
「太陽ばんざ~い! わはははは」
両手を掲げてYの字になるのほほんさん。
いかん! これはいかん! そっちのルート突入はだめだ! 3に繋がらなくなる!
俺はとっさに虫?を鷲掴みにすると頭からはずした。わっしゃわっしゃと蠢く虫。俺の手から逃げようと必死である。
これってUMAじゃね? 研究機関に送れば学名にセシリアって付くんじゃね? てかダクソ世界からこっちに姿そのままきちゃった貴重な例じゃね?
とか思ったけど、今はどうでもいい。とにかくこやつを引き離さないと!
俺は腰に手を当てて、反対側の手の人差し指を振ってみせた。
「だめですわ! いいこと! もといたところに捨ててきなさい!」
「えぇぇ~」
「いい!?」
「はぁ~い」
「
俺は虫をのほほんさんに返してやった。相変わらず暴れまくる虫。絶対に懐いてないわ。
とぼとぼと歩いていくのほほんさんの背中を見て、俺はふと疑問に思ったことを聞いてみることにした。
「ところで本音さん。ロングソードと盾は見たことがありますけど、雷の槍を投げられたりはしませんこと?」
「オッ! いい質問ですね~」
ふっふっふとのほほんさんはのほほんとした笑い声を上げた。拳を掲げて何かを投げる仕草をしてみせるも、袖が手にかかっていてカッコが付かない。ていうかあざとい。
「できるよ! 名付けてグレート・ライトニング・スピアー! 倉持技研が手伝ってくれたんだよ。ばちっときてどーん! 竜だって落としちゃうくらいつよいんだよ~」
やってみせよっか? と何やらISをいきなり起動し始めそうだったので、俺は首を振った。下手に起動させると振る首がなくなったりするので。
「いえ結構ですわ。本当に太陽が好きなんですわね」
「偉大なたいよーをたたえよ~! むぎゅーしてあげるね~」
ほわわーとか謎の効果音を呟きつつ抱きしめられた。悪くはないな。虫がいなければ最高だった。
手を振り校庭のほうに去っていくのほほんさんを見送った俺は、ほっと胸を撫で下ろした。
これなら発狂して襲い掛かってきたりはせんだろ。ウン。
アリーナに到着した。早速俺は更衣室に入って髪の毛を後ろで結ぶと服を脱いだ。あらかじめISスーツを着込んでいるので脱ぐだけで準備の大半は完了という寸法よ。
通信が繋がった。一夏だった。
『遅かったじゃないか』
『一夏さんが早すぎるんですわ。約束の時間の一時間前に入室しているみたいですけれど』
『一時間前行動は社会人の基本だと鈴音が言っていたが』
『一夏さん、それ間違ってますわ。からかわれてます』
相変わらず律儀な男である。原作以上の朴念仁・鈍感・難聴であるが、こういうところは原作を感じさせる。
っていいたいけど原作のは忘れっぽすぎる。こっちのもコロっと重要事項を飛ばしたりせんよな!?
俺は取り合えずカフス型になっているブルー・ティアーズを起動すると、空中を浮遊しながらアリーナへと入っていった。既にIS『ダークレイヴン』を装着した一夏が空中で待っていた。顔の見えないバイザー式なので、棒立ちしているだけでも不気味だ。
「コンビネーションを確認するといったが、シミュレーションでは確認できるのはあくまでシミュレーション上でのことだけだ。実戦的な要因を含ませたい」
「といいますと?」
「新生徒会長が接触してきた」
来たか。この世界の簪はどうにも人間性が掴めない。まんま大統領な生徒会長と正反対とすると副大統領だけど性格が暗いというか冷静過ぎるし。
一夏が視線を上げた。赤いISスーツを身に纏った簪がゲートを潜って現れたではないか。赤い閃光が迸る。
「あ、あぁ……」
俺は言葉も出なかった。
特徴的な翼のような大型のバーニアユニット。両肩の外側から下方に伸びるバインダー。頭部から生える角のようなセンサーユニット。流線型を多用した全身は、真紅と黒そして金に塗装されていた。
エンブレム『9』。
「俺たちの戦闘における連携を確かめるためには誰かの協力が必須だ。生徒会長の更識簪ならば、ちょうどよい相手になると思ったんだが」
通信。俺たちの会話を聞いていたらしい簪が、ウェアラブルグラスを指でとんと押し上げた。
『誰であろうと、私を超えることなど不可能……』
あぁ………生徒会長は学園で最強ってそういう……。
俺がごくりと生唾を飲んだ瞬間、IS『TYPE-9 Seraph』なるデータがハイパーセンサー上モニタに表示された。
セラフが禍々しいまでの翠緑の光を纏う。黄金色の電流が空間を狂ったように走った。
「戦闘開始だ」
「えっ、ちょっ、いきなりですの!?」
言うが早いか一夏がイグニッションブーストをかけて突進した。俺はあっけに取られてしまったが、ヤケクソ気味に新型のカラサ……X000を量子変換で呼び出した。
どう見てもプライマルアーマーなバリアを纏ったナインボールさんもとい簪の顔がバイザーによって覆い隠された。
「ターゲット確認。排除開始」