セシリアに生まれたオリ主がなんとかして一夏を落とそうとするけど中の人が違う面々のせいでなかなか落とせないIS 作:キサラギ職員
「インターセプター!!!」
俺は大声を張り上げながらインターセプターを展開すると敵であるラウラに向けて突っ込んだ。武装の名前を言いながら量子変換するのが初心者向けなんざわかってるよ。かっこいいじゃん。あと気分の問題だ。
ラウラのR.E.Xは飛行能力を排したIS。空中戦に徹すれば一方的に攻撃できる。そう思っていた時期が俺にもありました。核弾頭射出・迎撃用と思われる大型レールガンと自由電子レーザーさらに30mmガトリングまで使われると、逃げることができない。スターライトMKⅢを最大出力で撃っても装甲を貫けない。飛ぶ能力をオミットしただけはある。遠距離火力だけなら随一だろう。俺はいつの間にか接近戦を強いられていた。
スターライトMKⅢを速射モードにして弾をばら撒きつつ、左右に体を振りながら接近。右手に握ったインターセプター(見た目は某対艦刀)で突撃をかけた。
イグニッションブースト! ストライクガンナー・スラスターが唸りを上げた。
「おっと」
「あっしまっ!?」
あっさりと身を捻ることでかわされてしまい、軽くトンと手を叩かれる。丁度手の甲とは反対側へ。インターセプターは重い。握り手にかかる重量はかなりなもので、ラウラに軽く叩かれただけで手から剣がすっぽ抜けた。
咄嗟に距離を取ろうとした。R.E.Xの自由電子レーザーが宙をなぎ払う。イグニッションブースト直後で体勢を立て直せない。エネルギーが持っていかれた。
「くっ、この程度!」
「距離を離さん方がいいぞ坊主。コイツのレールガンの威力は把握済みだろう」
「誰が坊主ですか! 誰が!」
ラウラがおっとりとした声で忠告を投げかけてくる。チューンという甲高い音を上げて音速の数倍の速度でプラズマ化した弾丸が放たれ、俺のシールドエネルギーをごっそりと持っていく。これでも威力は対ISを想定してチャージ速度を重視した「控えめ」である。何せ第一宇宙速度以上の速度で弾道を射出できるのだから。
「こんのっ! 落ちなさい!」
「それはしてやれないな」
俺がスターライトmkⅢを構えようとして、既に懐に潜り込んでいるラウラの顔を発見した。
近すぎて動けない俺は、膝をぶち込まんと腰を捻った。右足中段蹴りを繰り出す。
ラウラが蹴りを腕で払い、一歩を踏み込んでくる。左足膝を蹴って姿勢を崩した俺を、AICで拘束。前のめりに地面に叩きつける。
くそ! 隙がない! 遠距離はレールガン。中距離はレーザーとガトリングたまにミサイル。近距離に寄ればAICでゲームのラグでも発生してるんじゃないかクラスのCQCを食らう! 飛べないなんて、ラウラからすればハンデにもならん。
地面の味はそれはもうマズイものだったよ。
「~~~~!」
俺が悶絶している隙に腕を掴むと関節を固めてきた。当然動ける筈がない。
絶対防御? 効果ないよ。関節技とかIS想定してないし。
「ギブ! ギブアップですわ! ラウラさんギブっ~~~いたたたたたっ! 痛い!」
「ん~聞こえんな」
「ギブアップ!!」
俺がひいひい悲鳴を上げて暴れていると、ラウラさんはそんなことを言ってくるのだった。
「いたたた……」
ところ変わって食堂。
夏休みが明けて俺たちは無事IS学園に戻ってくることができていた。まあ、校舎は鉄筋やら鉄板やらで補強されていたりやたらスプリンクラーと防火壁ができていたり校庭に地対空ミサイルが鎮座していたり警備員がサブマシンガン装備だったりとまあ、そんな具合だ。むしろこんくらいして当然じゃないのかとかは突っ込まないでおく。原作は警備が軽すぎるんだよ。うん。
で、今日は九月三日。二学期初の実戦訓練でラウラと組むことになった俺はものの見事にCQC投げを食らい関節技でギブアップさせられていた。いや
「はあ……せめてスターライトmkⅢの威力がもう少しあれば……」
確かBT粒子砲で地上から衛星を狙撃する砲があった気がするけど、それを担いでいくのは無理がある。やれなくはない。やると、ヘリよりも遅く、戦闘機よりも柔らかい飛べるだけの大砲が完成するだけで。
俺は食事のため持ってきていたコップの水面を睨みつけて頭をひねった。
「いえ、待って………わたくしのブルー・ティアーズのストライクガンナーパッケージを発展させて………重装甲かつ大火力しかも高速で動けるようにすれば……」
ミーティアシャワーを大量に搭載する為にミサイルコンテナをつけて、防御のためシールド装置に、超大型のレーザー砲に……。
もわんもわんと妄想が広がっていく。デカイコンテナを両肩にというかコンテナに埋まるかのようなソレに乗った俺。長い銃身にはこういう使い方があるんだ! って……。
「デンドロビウムじゃありませんか!」
「なんのこと?」
「うひゃあああっ!?」
俺が一人ノリツッコミをしていると、横から声がかかった。驚きの余りガタっと椅子を蹴っ飛ばしながら立ち上がってしまった。
にこにこと笑う姿。猫のような優美な目をしたツインテール。
ずずずっとラーメンを啜ってもごもごして俺のほうを見てくる。
「聞いたけど模擬戦でがっつり腕を固められたんだって? ISで関節技って初めて聞いたわよ。折られたりしてないわよね」
「ええ、さすがにそこまでは。腕は健在ですわ」
一応軍隊にいたこともあるので軍隊仕込みの格闘技も心得はある。だがまさかISでやってくるとは想定外過ぎた。シャル相手にかけてるのを見たことがあるけど、自分がやられると対処ができない。今度ラウラに聞いて勉強しよう。
俺は自分の腕が無事なことを示そうと力瘤でも見せるように腕をぐっと上げて見せた。
「オムレツでお待ちの番号札六番の人~」
「はい! 今参りますわ!」
そこで呼び出しがかかったので、札を持って受付まで言って定食を受け取って席に戻ってくる。ホカホカのオムレツ。
俺が戻ってきて手を合わしかけて十字架を切ると、ものの数分でラーメンを平らげて湯のみのお茶を嗜みつつ片手で頭を支えた姿勢の鈴が待っていた。早いな相変わらず。
「それ」
「はい?」
鈴がそのままの姿勢で問いかけてくる。
「足りるの?」
「た、足りますとも!」
バレバレなのは知ってるよ! お腹空くんだもんしょうがないだろ!
あっ、そういえば鈴の作った酢豚は絶品だったなぁ……じゃなくて!
「ふーん。嘘つくの下手糞よね~せっしーって」
「誰がせっしーですか! あぁそうですとも。人並み以上に食べますけど、それがどうかしたんですの!?」
「ん~? 一夏に言っちゃおっかなぁ~あいつどんな顔するかなぁ~」
「鈴さん!」
俺が拳を固めて肩を怒らせると、にやにやと笑っていた鈴がその笑いをより深くした。
「冗談よ冗談。ところで前あげた酢豚どうだった? 腕によりをかけた芸術品と自負してるんだけど」
「おいしく頂きましたわ!」
俺がぷんぷんと怒っていると、鈴がおもむろに振ってきた。
「そんなにおいしかったなら毎日でも作ってあげてもいいわよ」
……あっ、これフラグって奴だな! 見える! 俺にもフラグが見える!
俺は立ち並ぶ選択肢を確認するとクイックセーブした。できればいいのになぁ、現実。悲しいかなセーブもないし回想もないのだ。ロードもないしな。現実ってクソゲーだわ。
「毎日はちょっと……」
「残念ね……じゃ、毎日イギリス料理?」
「そういうことではなくて」
「えーせっしー何が好きなの? ゴマ団子とか作ってあげよっか。おいしいわよ」
「ゴマ団子! ……引っかかりませんわよ鈴音さん」
ゴマ団子一瞬反応しかけたが、すぐに仕切りなおす。
俺が助け舟を求めて周囲に目をやると、またというか学食の周囲を伺いつつ盆を持って徘徊しているいい男がいた。幸いなことに現在箒はいない。これは……運命だ! まだ私は戦える!
といいたいところだがこの俺の視界に全力で入り込んでくる娘をなんとかしないとイカン。
などと俺が悶々としていると、一夏の方から歩いてきたではないか。盆にはさばの味噌煮定食。原作同様舌の渋い男である。
「あっ一夏さんっ! こっちの席が空いていますわよっ!!」
俺が席から腰を上げて手を振ってみると、一夏はあたりを警戒しつつやってきて座った。
「箒は来ていないよな……?」
「えぇ、ご安心を。見てませんわ」
今のところね。箒のことだからすぐにでも出現しそうなんだが。
俺が早速話題を切り出そうとした途端に、同じテーブルに腰掛けるものが一名。カツレツ? のような定食を乗せたお盆を持ってやってきた。眼帯に銀色のロングヘア。ラウラだった。
「探したぞ。さ、一緒に食べようか」
「構わないが」
「ラウラさん……う、うぅどうしていつも邪魔が入るんでしょう」
俺はがっくりと肩を落として食事をするのだった。
「そういえばせっしーって次トーナメントがあったら誰と組むの?」
「えっ? トーナメントなんてありました?」
突然鈴音が話を振ってきた。トーナメントなるものは最近ない。思えば原作ってトーナメントやら競技やらをやる度にゴーレムとかの敵が殴りこんできていたような気がするなあ。
トーナメント。俺は、ふと気がつくと既に無くなっているオムライスをスプーンで掬おうとして掬えないことに気がついて、スプーンを置いて紙ナプキンで口を拭った。
「ん? ないけど、今度生徒会長変わったじゃない? なんだっけ、あの……」
鈴音が首を捻る。まあ、接点もないし初めて見たんだろうな。
俺は助け舟を出した。
「簪さん」
「そう! 簪って子に変わったわけだけど、あの子見た目に寄らず戦いが好きとかって噂でトーナメントをやるとかなんとかって話を聞いたのよね」
それは初耳だ。しかし、姉の刀奈はどこに消えたのか。嫌な予感しかしないが……。
「ペアを組むとしたら俺は誰と組んでも相性が悪そうだ」
一夏がぽつんという。原作の白式は
一方こっちの一夏はある意味で既に完成しているといえていい。ブレーダーにとって遠距離武器や追加装備はただの重りにしかならない。まして運用しているのが壱式月光剣という直撃イコール即死の武器なら形態変化の必要性もない。ビーム光波も飛ばせるしな。運動性は本人が素で追加スラスターとか関係無しにクイックブーストを使いこなしてるからいらないし。
「強いて言うなら坊主のISはエネルギー補給について考えるべきだな。そうした点では、箒のワンオフアビリティーでエネルギーを受け渡すこともいいだろう。それか、シャルロットのISからバイパスで貰うか。私のような防御主体遠距離ISとも相性がいい。ようはコンビネーションの問題だ」
「コンビネーション。考えたことはなかったが」
「実戦ならば、空母に着艦するなり
ラウラがあくまで冷静に意見を語る。それからカツレツをもむもむと口に含んで咀嚼する。頭を振ったり大声を上げたりというわかりやすい動きはしてくれなかったが、表情が緩んでいるので『うますぎる!』状態なんだろうなと思う。
「クックック………やはり一夏と私は惹かれ合う定め! 邪魔するぞォ!」
「ごめんねセシリア。途中で捕まっちゃって……」
などと話している横からカツ丼(超大盛り)定食を抱えた箒と、箒に襟首掴まれているシャルロットがやってきた。
箒はどすんと椅子に座った。シャルはおずおずといった様子で椅子にお尻を置く。
「なぜ箒さんここがわかりますの!? 発信機!?」
「勘だ! 次にお前はなぜシャルロットまでと言う」
「シャル……ハッ!?」
「あの戦を潜り抜けた我々はまさしく一心同体。轡を並べるものならばともに釜を囲んで食らうが道理!」
俺の思考が読まれている……!? まさかスタンド攻撃を!
……落ち着こう。俺は胸を上から擦ると、豪快な勢いでカツ丼を食う箒を見つめた。気まずそうにシャルロットが俺の顔をうかがってくる。
(ごめん。捕まった)
(知ってますわ……)
無言のコミュニケーションが成立した。俺ははらはらと涙を流した。心の中で。
「やはり一夏の相方はこの篠ノ之箒以外には考えられないようだな!! 機体の相性からして全てがそう物語っている……白と赤! 男と女! 結ばれるためにあるのだ!」
「そんなことありませんわ! わたくしだって、一夏さんが近距離でわたくしが遠距離だから相性だって抜群のはずですわ!」
「えーせっしー遠距離言うほど得意かな~ステゴロ得意そうじゃん。ジュードーとか習ってたでしょ、絶対」
「鈴音さん!」
「うむ。確かにセシリアお前さんは遠距離狙撃よりも近距離を好んでいる節がある。スコープも余り覗き込まんしな。どちらかといえば近距離向けだ」
「ラウラさんまで!」
「だがあの臨海学校での指示はよかった。いいセンスだ」
「あ、ありがとうございます……じゃなくて! わたくしと一夏さんはいいコンビになりますわ! ねぇ!」
だんだんと収拾が付かなくなってきた俺は快刀乱麻な答えを期待して一夏の方を見やった。
箸で魚をほぐしながら言ってくれた。
「じゃあ今度組んでみるか」
俺は意識を失いかけた。天にも昇る気持ちというやつだ。
その後は食事をおしまいにしてアリーナへ行くことになった。午後も実習で大忙しだからな。
Q.ラグ?
A.メタルギアでいうCQCキャンセルやら空気投げやらをAICでやってる感じ。AIC使用のCQCは傍から見るとバグってるんじゃないのかなみたいな動きで投げられてる。
基本的にラウラとしてはズルしてるみたいで好きじゃないらしい。