セシリアに生まれたオリ主がなんとかして一夏を落とそうとするけど中の人が違う面々のせいでなかなか落とせないIS   作:キサラギ職員

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一夏・シャルVSラウラ・箒 戦


28話 激戦の果てに

 

 「あの時は済まないと思ってるよ。水に流してくれると嬉しい」

 

 俺はIS『MK.Ⅱ』を装着したシャルロットの隣に浮いていた。別に気にしてはいない。女なんだろと指摘しただけで殴りかかってきた程度で怒る理由など存在しない。なぜ怒ったのか未だに分からないが。もしかして下着の入っている鞄の口が半開きなのを指摘したのが悪かったのか? 下着ごときで怒るものなのか? 女って生き物はよくわからない。

 俺は眼前の敵――箒とラウラを見つめていた。箒のあの仮面はなんなのだろう。取れと言っても取らないあの仮面。なにかをされたのではないか。俺が不甲斐ないばかりに助けることができなかったあの戦いの後に。いずれにせよ、勝たねばならない。もう誰も助けられない人が出ないように。自分自身の力で。

 

 「ああ。最初から全力で行く。俺は箒を、デュノアはラウラを狙ってくれ」

 「了解! 頼りにさせて貰うからね」

 

 試合開始あと五秒、四秒、三秒、二秒、一秒、始め。

 

  俺と箒が同時に宣言した。

 

 「織斑一夏!」

 「篠ノ之箒!」

 「ダークレイヴン!」

 「心鉄!」

 「……出る!」

 「行く!!」

 

 俺はラウラと箒が放ってきた射撃を回避するべくブースタを吹かして低空をジグザグに機動した。箒が射撃しつつ接近してくる。らしくない。射撃よりも近接を好むはず。様子見か? 牽制か? 

 

 「弾種変更、散弾!」

 

 シャルロットが散弾を使いラウラにバズーカで攻撃を仕掛けた。事前の調査でラウラ機は対IS戦闘を得意とはしていないことが判明している。動きを止めつつ様子を見るつもりらしい。

 俺は、箒が右手で構えているアサルトライフル『焔備(ほむらび)』をかわそうとして、命中弾を貰った。

 

 「読まれている?」

 「愛だよ!」

 

 意味不明な返答をしてくる箒へ、右ブレードをなぎ払いビーム光波を放つ。かわされる。すかさず左を放つ。これもかわされる。ならば、寄って、斬る。最大出力。接近しようとする俺に箒がにやりと笑い両手にブレードを出現させると、大上段に振りかぶりながら疾駆した。

 

 「遅い!」

 「私の方が速いッ」

 

 両腕のブレードを作動。バツ印を描くように宙をプラズマで切断する。

 

 「ぐっ!?」

 「なんとぉぉぉっ!!」

 

 あろうことかバツ字の中央ギリギリプラズマ炎をかするような位置取りでくるりと肢体を返しつつ上を抜ける軌道を通り右足で俺の顔面にドロップキックをかましてきた。俺の使っているブレードは超至近距離用のプラズマ銃のようなもの。エネルギー・チャージまでの時間すなわちリロードが存在する。リロードまで、後数秒。

 

 「はあっ!」

 

 俺は一息に箒の足を掴んで投げた。同時にスラスターとPICを全開にして壁に向かって蹴っ飛ばす。

 吹き飛んだ箒に追撃を仕掛けるためリロードが完了したブレードを右、左の順で振るう。爆発。だめだ、地面を銃で撃ち緩めたところで舗装ごとはがして足で蹴っ飛ばして即席の盾として空中に置いたらしい。砂煙を縫い箒が俺に突撃を仕掛けにきた、かと思えば身を翻して回避機動に入った。黄色のビームが宙に迸る。

 

 「そこ、落ちろよ!」

 「私と一夏の間に入るか!」

 

 シャルロットの援護射撃だった。ビームライフルを制圧射撃よろしく撃ちまくっている。直後シャルロットは表情を変えて左手にビームサーベルを握り、獲物を見つけた猛禽類のように急降下をかけた。

 

 「情熱的な恋愛もいいが目の前に集中してほしいもんだな」

 

 ラウラが待ち構えていた。左手に実体盾、右手にバルカン砲を構えている。IS『R.E.X』はどうやら対ISを想定していないらしい。ISというのに、飛ぶことができないらしいのだ。全てを装甲と、別の兵装システムに割いているらしい。つまり遠距離戦闘に徹すればエネルギーを削り続けられる。というのに、シャルロットは近接を仕掛けに行った。頭に血が上っているらしい。迂闊な奴だ。

 俺がシャルロットに無線を飛ばそうとすると、眼前に頬を赤く染めた箒が現れた。

 

 「ほかの女のことを考える余裕があるのか!?」

 「チッ」

 

 熾烈な一閃が俺の機体を掠めた。続けざまに振るわれる攻撃をブレード本体で凌いで受け流し、左手ブレードの応酬を食らわせる。掠めたか。直撃ではなかった。シールドを抜き装甲を溶かしただけで終わった。浅い、まだだ。

 シャルロットが斬りかかった。ラウラの盾が両断された。

 

 「落ちろよ!」

 「どうかな?」

 

 続く第二撃目は攻撃のため前のめりになっていたシャルロットの頭をラウラが後頭部を地面に軽く押しただけで不発になった。シャルロットが前方前回り受身を取って尻餅を付く。

 

 「こなくそっ!」

 

 シャルロットが立ち上がってブレードを振るおうとして、既にラウラに奪われていることに気が付きライフルを構える。が、既にラウラの間合いだった。ワンツースリーのパンチパンチキックのコンボに惑わされてライフルを奪われ、マガジンを外され隅に投げられていた。

 対人格闘術か? 軍隊で教わる動きに似ている。格闘術をIS用に改良しているのか? ISは人型兵器だ。パワードスーツなのだから、人に順ずる動きしかできない。対人格闘術を適用しても不思議はないが、やっている人間は初めて見た。

 

 「それでも! ……何!?」

 「こんなインチキ使いたくはなかったが諦めてくれ」

 

 ラウラが軽く手をかざしただけでシャルロットのMK.Ⅱが空中に磔にされた。重厚な脚部パーツで回し蹴りを放つ。脚底部パイルバンカーが作動。不自然なまでの速度で吹っ飛んでいく。

 あれが噂に聞くAIC(アクティブイナーシャルキャンセラー)か。慣性停止結界の本質である慣性制御を利用して瞬間的にトップスピードに達する『投げ』『打撃』を発揮しているらしい。かかったら最後、静止から最大速度までほぼゼロ秒で吹っ飛ばされる。シャルロット機は地面を水切り石のように跳ねて壁に埋まり見えなくなった。

 

 「………」

 

 ラウラのIS『R.E.X』が胸元下部の自由電子レーザーを砂煙に照射。止めといわんばかりにバルカン砲を撃ちまくる。

 俺は援護に入ることができなかった。どこまでしつこく視界に入り込んでくる幼馴染のせいで。昔からとにかくしつこかったが、戦闘でもしつこい。視界から外れるのが許さないと言わんばかりに。

 右、左、突き、回転斬り、踊るような猛攻撃。ゴリゴリとシールドエネルギーが消えていく。隙を狙わねば倒すことはできない。まだだ、凌げ。俺は額から伝う汗が鼻先に垂れるのを感じていた。

 

 「何!?」

 

 ラウラの驚愕の声。俺が振り返るよりも早く、閃光が走った。

 ラウラ機が消し飛んだ。砂煙を縫い放出されたエネルギー波に装甲もろとも飲まれて絶対防御が作動し、地面を転がっていく。

 

 「もっと早く反応しろ! もっと僕の動きに……!」

 

 シャルロットが息も絶え絶えに立っていた。

 装甲は、全損に近い状態。シールドエネルギーも底を尽き、ブレードもバズーカもシールドさえ失ったMK.Ⅱが立ち尽くしていた。全身に電流が走っていた。失われた装甲がハニカム型に浮き上がり再生されている一方で、装甲が溶けて蒸発している箇所もある。まさか、あれは形態移行? 本来想定していない進化を起こしたせいで、自壊しているようだった。だが俺の目には、シャルロットに機体がついていけていないようにも見えた。

 シャルロットが俺を見て首を振った。エネルギーが尽きたのかその場に倒れ込む。

 俺は箒が正面で静止して武器を投げてきたのを見た。緩慢な投げだった。近接型ブレードを握り、その意図を探ろうとして顔を正面から見据えた。

 

 「一対一だ。お互いに一太刀で終わるエネルギー量と見た」

 「ああ」

 

 『パージします』

 

 俺は両腕の壱式月光剣をパージして投げ捨てると、箒が渡してきた近接型ブレードを握った。右手に握り、切っ先を正面に構える。向かう先には箒の額があった。

 箒が腰溜めに近接型ブレードを構えた。

 アリーナの観客席がうるさかった。俺たちの戦いに興奮しているらしい。知ったことではなかったが。

 

 『       』

 

 OSにノイズが走った。まただ。このダークレイヴンは時折挙動がおかしくなるときがある。セシリアと戦ったときのように動きが止まる、とまではいかないが、機能が狂う時がある。技研に見せても首をひねるばかりで対応はしてくれなかった。

 ハイパーセンサーは良好。ブレードを構えたままスラスタの角度を調整。一太刀で終了させるには、装甲のない部位を狙い絶対防御を作動させエネルギーを奪い去るしかない。俺と同じことを箒も考えていると見ていい。

 会場が静かになってきた。そのほうがやりやすい。

 会場のどこかで誰かが唾を飲む音がした。ハイパーセンサーがそれを捉えた。合図としては、十分すぎた。

 

 「オオオオオオッ!」

 「ハアアアアアッ!」

 

 激突。刃と刃が炸裂。俺は箒の刃を退け一太刀浴びせかけていた。

 

 「見事……」

 

 絶対防御作動によるエネルギー切れ。機能停止した箒の機体が膝をついていた。

 俺が勝った。




IS『R.E.X』
弾道弾防衛及び大気圏外から攻撃を仕掛けてくるISへの対抗策として開発されたというIS。
だがその本質はAICによる鉄壁の守りと、量子変換領域に核を含む大量破壊兵器を搭載し、専用のレールガンにより探知の難しいステルス化された大量破壊兵器を発射するというものである。
ドイツ軍により開発されたということになっている。
反面対IS戦闘能力に乏しく機動性運動性共に劣悪である。

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