セシリアに生まれたオリ主がなんとかして一夏を落とそうとするけど中の人が違う面々のせいでなかなか落とせないIS 作:キサラギ職員
俺は体を折り曲げた姿勢を崩すと、床に寝転がった。息を整えるため吸っては吐いてを繰り返す。
短パンとシャツは汗でビショビショ。少しやりすぎたようだ。
「はぁっ……はぁ……はぁ………」
トレーニング終了。やはり運動はいい。頭の中がすっきりする。断じて現実逃避ではない。
クラス代表決定戦は終わった。次はクラス対抗戦だ。原作だと鈴音と一夏が戦うことになる。こっちでも、まあ、同じような展開だった。
しかし、鈴音が乱入してこなかったのが気がかりだ。クラス代表にならないつもりなんだろうか。
ちなみに連絡先を交換した鈴音からあれこれとメールが飛んでくるようになった。良くも悪くも同年代は大人しいいいとこ育ちのお嬢様ばかりの間で育った一人娘の俺である。どうでもいい話題で盛り上がるというのも、楽しいものだと思った。
俺は自室でシャワーを浴びると私服に着替えて食堂に向かった。
「あっセシリア! ご飯一緒にいかない!」
いかないかではなく、断定した言い方のいかないかが聞こえてきたので振り返ると、訓練終わりなのかISスーツを着込んだ鈴音が両手を後ろにまわした体勢でいた。
ISスーツは高機能なため制服の下に着込んでいる生徒も多い。下着としても優秀なのだ。体の線が出てしまう欠点もあるが、女性ばかりの学園ならば恥らうこともない。唯一の例外織斑一夏を除けばだが。ちなみに俺はISスーツでうろうろはできない。恥ずかしいからな。やるとしたら最低限ジャージくらいは着るさ。
俺は横に並んで歩調を合わせる鈴音を見ながらも、夕飯に何を食べるか考えていた。
「ええ、もちろんですわ」
「私授業やらISの調整やら本国のお偉いさん方の相手でくったくたでさぁ。お腹がくっついちゃいそう。そっちのクラスの代表って誰に決まったんだっけ?」
「こちらは一夏さんですわ。あの織斑千冬さんの弟さんですわね」
「へぇぇ……昔は
食堂についた。俺は食券機の前でうーんとうなり声を上げた。カレー大盛り。ラーメンに餃子。トンカツ。その他もろもろ。若いっていいよね。年を食うとね食えなくなるんだ。正確には食うと後日響いてくるんだこういうメニューが。がっつり食うのは人気が少ないときと決めている。ドン引きされる量を流し込むセシリアとか見たくないだろ?
悩んだ末に俺は洋風定食をチョイス。鈴音はラーメンを選んだ。空いている席に向かって二人で歩き始める。
「………今日はいないか」
一夏があたりを窺いながらやってきていたところだった。使い古しのジーパンにシャツ一枚。鍛え抜かれた体の線がありありと見えた。
口ぶりからして待ち伏せを警戒していたんだろうな、箒の。
「お前………
一夏が視線を回して俺らを見つけた。目を見開く。相変わらず表情の読みにくい奴だが、本当に驚いている時は見ていればわかる程度のリアクションをしてくれる。リン。すなわち鈴音のことだ。
鈴音が気さくに手を振ってみせた。
「おっす一夏。ちょうど一年ぶりくらいだけど名前覚えててくれたんだ。えらいえらい! その通りよ。私こそが中国代表候補生!」
「俺の頭は鳥かなにかか?」
一夏がむっとした言い方をして反論する。手には食券が既に握られていた。あらかじめ人気の無い時間帯にまとめて買うことで箒と遭遇する可能性を少しでも小さくしようという意図があるのかもしれない。
「………一緒に食う……か?」
「はい!」
「ったり前じゃない! つもる話もあるし」
俺がじっと一夏を見つめていると、一夏はあきらめの声で空いている座席に歩き始めた。
一夏の隣に俺。一夏の正面に鈴音が腰掛ける。
「IS使えるってニュースに出てたけど“報道しても”いいようになったのね」
「まあな」
一夏がその話題はしたくないと言わんばかりに魚の解体に移った。
やはりというか、この世界歴史が大分違うらしい。初めてISを起動させたタイミングがもしかしたら誘拐された後の空白期間だったのかもしれない。親しい仲だった鈴音はそのことを何かのタイミングで知ったのだろう。幼馴染っていいなぁ。ずるだよ、ずる。
俺はごほんと咳をすると、二人の顔を交互に見た。
「失礼。一夏さん凰鈴音とはどのようなご関係なのでしょうか?」
「昔なじみというのか? 幼馴染か。昔近所に住んでた友人だが」
「そ、幼馴染。こいつが家に引きこもってインスタント食ってるのを見かねて引きずり出して手伝いさせてその代わりにまかない食わせてたのよね」
やっぱり大分関係性が違うように思えるなあ。羨ましい。
「インスタントではないレーションだ。中華鍋のお陰で筋肉がついたわけだが」
「でもうまいうまい言って食ってたじゃない」
「ぐぅ」
ぐうの音は出るらしい一夏。悔しげな顔。レア顔ゲットだぜ。こういう顔もできるのか。
「伸びるし冷めるし硬くなるし匂いは飛ぶし、早いところ食べちゃいましょ。いただきまーす」
合掌。三人揃って食べ始める。
「でね、一夏。次のクラス対抗戦なんだけど、出るんでしょ?」
「ああ」
鈴音が豪快にラーメンを啜りながら言った。食べながら言っているせいか声がもごもごとしていた。俺はちまちまと洋食を食っていた。オムライス定食。レンゲでガツガツ食いたいところだが、ここはスプーンでがんばるしかない。
ごくん。スープを飲み干した鈴音が顔を上げた。若いっていいね。塩分は控えめにしとけよな。
「あんたを負かす」
妙に迫力のある声で鈴音が言った。手紙を破ってたりはしない。
「そうか」
クールフェイスな一夏。かっこいいぞ。もっと見せてくれ。
「でセシリアにその手助けをしてもらいたいのよね」
「えっわたくしですか!?」
突然話を振られた俺は食事を喉に詰まらせるところだった。これは好都合。話に入るきっかけになる。しかし、他のクラスに手を貸していることがばれたら何を言われるかわからないし、断ったほうがよさそうだ。
俺は食事を横にやるとポケットからハンカチを取り出して口元を拭った。
「これでもわたくしは一年一組ですので手を貸すことはできません」
当然の理屈である。稽古をつけるならまだしも、手助けはさすがにまずいぞ。
「というと思ったわ。独力でやらせてもらうわ。絶対に勝つ。宣言しておくからねっ!!」
すると一夏は頷いて魚の最後の一口を平らげたのだった。
その後、鈴音は制服に着替えていた。私服もあるそうだが、まだ用事があるらしい。ISの調整だろうか?
「ガタイよくなったなーあいつ。ちょっとみなかっただけなのに」
「男子は特に体の伸び方が早いといいますし」
「うん……」
鈴音が神妙な顔つきで自分の胸元に視線を落とす。すとーんという音が聞こえた。
諦めんなよ! まだ成長の余地はあるよ! 胸は大きさじゃない形だよ!
あ、でも胸は遺伝によるものが大きいとかなんとかかんとかって話を聞いたことがあるな。悲しいなあ。いや待て原作より大分ムチムチなセシリアボディからすると運動をしまくれば……?
「あいつとんでもなく強いって言うしがんばって鍛えなきゃなあカッコがつかない………絶対に
鈴音が拳を固めて両手をがばっと挙げる。腋出し制服ってすごい………白い腋が見えた。つるつるでとても艶かしい。
一方俺の制服はごくごく普通である。スカートはロング。改造する気が起こらなかったんだよなあ。原作セシリアがつけてる髪飾りもつけてないし。付けるべきかなぁ。
「ふふっ。一夏さんは手ごわいですから、ご注意を」
俺は口元を押さえて笑った。
オとすか。やっぱり気があるんだろうか。普通に考えれば撃墜ってことだろうけど、もし惚れていたらライバル出現と同じ意味だ。これ以上は勘弁願いたいところだが。
俺と鈴音は廊下を歩いていた。ああでもない、こうでもない、やれ流行のあれこれが、ニュースがーと話をしながら寮に向かっていたのだ。
「セシリアお風呂ってもう入った? せっかく大浴場あるみたいだし一緒に入ってみない? というか入ろ」
「いえ、肌を見せるという文化はまだ慣れなくて……そのぉ………」
「平気平気。女同士だし恥ずかしがるもんもないじゃん」
鈴音が上目遣いで見つめてきた。凛々しい顔の輪郭線がよくわかる構図だった。
なぜだろう。
寒気がする。
風邪を引いたのかもしれない。
いやだいやだ。肉体は常に健康を保たねば精神もおかしくなるものだ。
「申し訳ありませんが寒気がして………風邪気味らしいので本日は早めに就寝するつもりでしたの」
「そ、わかった。おやすみ」
俺はその場を後にした。
「…………可愛い。絶対一夏を蹴落とす」
「言葉が走った!? ……疲れているのかしら……」
俺は自室にていよいよ風邪をこじらせたのかと体温計を探していた。別にひいてなかった。
また言葉が走った!(シロッコ)
次回、クラス対抗戦!
の前に日常回でもやろうかなと思ってます。
鈴音から一夏への評価は『親友』です。なぜか一夏へは恋心が無い模様。なんでやろなぁ……