セシリアに生まれたオリ主がなんとかして一夏を落とそうとするけど中の人が違う面々のせいでなかなか落とせないIS   作:キサラギ職員

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8話 くろいとり

 試合当日である。

 

 

 朝起きた。

 俺は見知った天井を見つめてぼーっとしていたが、ややあって上半身を起こして伸びをした。

 

 「…………」

 

 別に低血圧だからとか、朝は機嫌が悪いとか、言い訳はしない。今日は月曜日。一夏との対決の日。憂鬱な月曜日(ブルーマンデー)の始まりだ。

 朝起きてすることは、シャワーだ。寝るときは下着一枚と決めているのでスポーツブラをベッドに放って、下着を足に引っ掛けて脱ぎ捨てる。一糸纏わぬ姿でバスルームに行くと、温かいお湯を浴びる。ルームメイトがいないって最高だぜ。体の水気を取って下着を履くと、化粧台の前に行ってドライヤーで髪の毛を乾かす。女の髪の毛は命なのだ。

 一通り終わった後は前日作っておいたご飯を味噌汁で流し込む。原作だとメシマズだったセシリアであるが、計量しない、味見をしない、おいしいかどうかを考えないの三点さえ改善すれば、十二分食べることのできるご飯くらいは作れる。元々一人暮らししていた身で、嫁が体調を崩したときは子供に飯を作っていたのだ、これくらいはこなさないとやっていけない。それも遠い昔のことなので、今は記憶にかすんでよく思い出せない。向こうの世界の嫁は元気にしているだろうか。死んでたりしないだろうか。確かめる術はもはやない。

 結論から言おう。俺は、ブルー・ティアーズを乗りこなせないまま対一夏の戦いに望む。BT兵器は追従させて砲台として使うことはできるようになったが、機動しつつは無理だし、集中が途切れると空中を放浪し始める始末。原作セシリアと比べて、能力が劣っていることが如実に現れていた。強襲離脱用高機動パッケージ『ストライク・ガンナー』をよこすように本国に要請をかけたのだが、結局送られてこなかった。というより開発が間に合っていなかった。

 

 「覚悟を決めるしかないようね」

 

 別に死ぬわけじゃないんだけどね。一夏の中の人がわかっちゃう重要な日だけに緊張してるのさ。

 そんなかんだで俺は第三アリーナへとすぐにでも行きたくなる気持ちを抑えながらも、憂鬱な授業を受けるべく準備を開始するのだった。

 

 

---------------

 

 

 第三ピット。俺は既にIS『ブルー・ティアーズ』を展開し装着していた。

 アリーナはクラスメイトやら別クラスやらその他野次馬でいっぱいになっていた。単に生徒同士が戦うなら注目を浴びることはないだろうが、クラス代表を決定する戦いしかも世界唯一の男性操縦者織斑一夏が戦うのだから、注目を浴びないわけがない。アリーナからはやんややんや歓声が響いていた。

 

 「セシリアさんがんばってー!!」

 「一夏君のやられ顔みたいなー」

 「頬とか赤らめて欲しい」

 「一夏くうううううん!!」

 「愛してるんだ君たちをぉぉぉ!」

 「セシリア様あいしてますぅぅぅ!!」

 

 ………ついこの前知ったことなんだが、いつの間にか妙なファンクラブもできてるんだよなぁ……ファンクラブってなんだよセシリーファンクラブって。俺がやられるのがそんなに楽しいのか。俺の美貌のせいなのか。これもうわかんねぇな。

 集中集中。俺は首を振ると、緩やかに機体を上昇させて、滑るようにゲート前までやってきた。

 

 「世界唯一の男性操縦者……織斑一夏か………入試の時はたいしたことがないように思えたが……お手並み拝見といくか。いけるな、セシリア・オルコット」

 「はい。そのつもりです」

 

 何か敗北フラグを踏んだような気がするが俺は気にしないぜ。逆流しそうとか言うな。

 こちらのピットにいるのは、ダークスーツに身を包んだ山田女史その方だった。何でも俺の様子が心配だったからという理由できてくれたらしく、スパルタな訓練は決して邪険な意味でやっていたわけでもないらしい。まあ原作からしてツンデレだからね、仕方ないね。

 山田先生は腕を組み、ゲートの奥を見つめていた。この先に“敵”がいるのだ。倒すべき敵。同時に、知るべき敵。愛しい人。確信が持てるまでは、なんでもやる! それが、セシリアになった俺の仕事だ!

 

 「ゲートを開放する。ハイパーセンサーは問題ないな?」

 「ええ」

 

 山田先生の睫の先まで見える。ハイパーセンサーって無駄に性能が高いと思う。そんなとこ見てどうすんだよ。

 

 「武装は大丈夫か」

 「もちろん」

 「PICは」

 「十全ですわ」

 「スラスタは」

 「大丈夫ですって。ご心配には及びませんわ」

 

 俺はしつこくしつこく聞いてくる山田先生に思わず笑ってしまっていた。心配性な人だなぁ。

 すると山田先生はムッと唇を結んでそっぽを向いてしまった。後でごめんなさいしなくては。

 ゲート開放。速力、微速で前進。

 

 ――――そこに、『黒』が、いた。

 

 「あ………」

 

 中量二脚。KE防御を重視した頭部パーツもとい頭部防御装甲。一ツ目のセンサーアイを挟み込む形で装甲がおりていた。ハンガーユニットには何一つ搭載されていない。両腕に握るのは、実体剣『MURAKUMO mdl.1』のみ。

 実弾兵器への防護を重視した装甲。非固定浮遊部位がほとんど存在しない無骨な形状は、まるで前世紀の主力戦車(MBT)を彷彿とさせた。

 何より俺を震撼させたのは肩部装甲にあるエンブレムだった。赤い瞳をした不吉な渡り鴉(レイヴン)が、誇らしげにペイントされていた。

 黒い鳥。それが意味するのは、あらゆる計画を破壊する唯一にして最強という名の称号以外にありえない。

 

 『戦闘待機状態のISを感知。操縦者 織斑一夏。該当データなし。戦闘タイプ近距離特化型。敵は近接用ブレードを装備。距離を取った中距離遠距離攻撃が有効』

 

 ブルー・ティアーズのOSからの警告が脳内に響き渡る。『敵』は既に空中で静止した状態で待っていた。ハイパーセンサーが観客たちの様子を拾う。考えるまでもない。観客たちは興奮していて、織斑一夏は血が凍るような冷静さを保ち続けていた。

 俺は唖然として六七口径レーザーライフル『スターライトmkⅢ』を降ろして、一夏を指差していた。

 

 「黒い鳥(ブラックバード)……!?」

 

 黒い鳥。

 レイヴン。

 全てを焼き尽くす暴力。ここで俺は理解した。あのエンブレムをつけている者など、一人しかありえない。あるいは、一人という意味ではなくて、イレギュラー(主人公)そのものを意味しているのかもしれない。

 

 「……ブラックバード。いいや、こいつはダークレイヴンだ」

 

 一夏が口を聞いた。イケメンの風貌にわずかな殺意をにじませて。友になりたいのかと口元を緩ませた男の表情ではなかった。無数の戦場を真っ黒に焼いてきた傭兵の表情だった。

 俺は、ついに、主人公(イレギュラー)と対峙した。

 一夏が緩やかにスラスタに火を灯し高度を上げながら言った。

 

 「織斑一夏、ダークレイヴン。ターゲット確認。排除開始」

 

 オイオイオイ。死んだぞ俺。

 しかもラスボスのセリフ付きって……いいさ、俺がかませかお前がかませか試してみようぜ。パルスガンとか速射してこないだろうな。ブレード縛りプレイでいてくれるんだよな。頼むよ。

 俺はブルー・ティアーズ四基をバインダーから射出して滞空させると、スターライトmkⅢを構えスコープを覗き込んだ。その綺麗な頭を吹っ飛ばしてやるぜ。

 

 「ッ! お、お、お行きなさいブルー・ティアーズ! さあ踊りましょう、わたくしセシリア・オルコットとブルー・ティアーズの奏でる音色と共に、激しいタンゴを!」

 

 声が震えていたがしょうがないと思う。怖いからね。あと、一番やりこんだゲームだったからね。熱意がこもるんだね。対戦するのに数時間待機を強いられたあの名作ゲーだからね。皮肉とか文句じゃないです。

 俺はいきなり前触れも無く瞬時加速(イグニッション・ブースト)を使いトップスピードで突っ込んでくる一夏目掛け引き金を引いていた。




ランキング乗ってるだと……たまげたなぁ……まぁゆるりとご覧ください。
完結? 察しろ

ACVDは名作だった……Ⅴは許さないよ。オペレーターをプレイできるなんてほかのゲームじゃなかった……。自分の機体は両腕にカラサワを持ったカラサワ特化型四脚機体でした。追加弾倉まで乗っけているので、ほかの事は一切できないという割り切りっぷり。機動性? ないです。ブレードオンリーの人とかガチタンとかこっちを犬扱いしてくるオペレーターとかチームメイトはとにかく極端な人が多かったのです。

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