インフィニット・ストラトス 光を継ぐ者   作:ichika

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はいどうもで~す!!
長かった・・・、本当に長かった・・・。

5周年を記念して、光の彼方の続編を投稿する事が出来ました。

光の彼方や他の3作品に負けぬ様、こちらも鋭意執筆していきたいと思います。

それでは、お楽しみください!


光を継ぐ者

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インフィニット・ストラトス

 

通称として≪IS≫と呼ばれるそのパワードスーツが登場したのは、30年前に遡る。

 

篠ノ野束が作り出したそれは、当時の現行壁の全てを凌駕する性能を持ちながらも、女性にしか扱えないと言う致命的な欠陥を持っていた。

 

その結果、女の方が優れ、男は何も出来ないと言う女尊男卑という風潮が世界中に蔓延る事となり、冤罪等も増加の一途を辿っていた。

 

それが悪化の一途を辿る中、男性たちの希望とも取れる存在が現れる。

 

彼の名は織斑一夏。

 

当時世界最強と呼ばれた織斑千冬の弟にして、世界初の男性IS操縦者として確認された存在だった。

 

当然、男達は彼を希望と、女達は邪魔者として見做すようになり、世界は再び揺れ動いた。

 

だが、当の彼は弱冠15歳、まだ自分の出来る事もやりたい事も無いまま、彼は流されるままIS学園に入学し、ただ日々を無為に過ごすばかりだった。

 

しかし、その状況はある日を境に一変する事となる。

 

クラスメイトで、一時は同室として生活していたシャルロット・デュノアと紆余曲折の果てに、真実の愛を育み、そして結ばれる事となる。

 

そこから彼は、愛する者を護るために戦い続ける。

 

自身に片思いしていた幼馴染が、嫉妬の果てにその身を墜とし、世界を巻き込む戦争へとその憎しみと悲しみを広げても、彼は彼女を討ち取る事で戦争を終わらせた。

 

そこに、嘗て姉と慕った者との別れがあったとしても、彼は歩みを止める事はなかったのだ。

 

それから3年後、一夏はシャルロットと結婚し、2児を設けて、彼等が幼少の頃に得る事の出来なかった幸せな家庭を築き上げた。

 

そこから更に数年の後、ISコアの情報開示により、男性にもISが動かせる様になってから、世界はその姿を変えていく。

無論、そこに潜む闇も、長く続く憎しみの連鎖もまた、その深さを更に増していくのだった・・・。

 

何度も変わりゆく世界に生まれた新たな光は、その果てに何を見るのか・・・。

 

今、新たなる戦いの幕が開かれたのであった。

 

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春、それは出会いの季節である。

 

会社では入社、学校では入学式等で賑わう季節でもある。

 

それは、世界一のIS操縦者教育施設であるIS学園も例外では無い。

 

今まさに、始まりのセレモニーたる、クラスごとのHRが行われつつあった。

 

「皆さん、ご入学おめでとうございます、私はこの一年一組の担任、

藤堂香里奈と言います、これから一年間、宜しくお願いします。」

 

教壇に立ち、穏やかな微笑みを称えた顔を、

目の前に座している生徒達に向け、自身の自己紹介をしている女性は、この度一年一組の担任を任された女性、藤堂香里奈だ。

 

彼女の自信に満々た自己紹介に、

彼女の言葉を聞いていた生徒達の間から拍手が上がる。

 

その様子に満足した様に頷き、

香里奈は生徒に自己紹介をする様に促していく。

 

「それでは、出席番号順、青樹さんから自己紹介をお願いします。」

 

「はい!」

 

元気よく立ち上がる少女の座席から後方へ数えること三つ、

金髪の少年が窓の外を眺めながらも、何処か物思いに耽っていた・・・。

 

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side一輝

 

ああ、やって来ましたIS学園、

現在、俺は窓際の席に座り、窓の外に広がる海を眺めています。

 

特に何が見える訳でも無いけど、

海を見ていると気分が落ち着くし、何より、海面が太陽の光で照らされて輝いているのを見るのが、俺は好きなんだ。

 

あ、そんな事は別にどうでもいいかな。

 

えー、さて、簡単に今の世界情勢を説明しますと、

今から十年前、コアの量産化によって世界は物量にモノを言わせた、嘗ての大国主義の世界に戻った。

 

だけど、違う点を挙げるとすればこれまでと違い、

国家間の結束が強まり、以前のような会議中のテーブルの下では足の踏み合い、

何て言う表面上の同盟や結束ではなくなった。

 

まぁ、そうだわな、テロとかが異常に発生してる中で、

互いにいがみ合ってる場合じゃ無いしな。

 

ん?お前誰だよって?

あ、自己紹介まだだったな。

それは失礼した、俺の名前は織斑・D・・・、

 

「はい、ありがとうございました、次は織斑君、お願いします。」

 

あらら、自己紹介の前にご指名だよ、まぁ仕方無いか。

 

「はい。」

 

香里奈姉・・・、おっと、違った違った、

藤堂先生に返事を返し、窓に背を向けて立ち上がり、クラス全体を見渡す。

 

おぉっ、視線がすげぇ・・・!!

 

一応、クラスの人間は男女半々といったところだ。

 

けど、聞いた話によると、親父は女だけのところに、

男一人で放り込まれたらしいんだよな。

 

おおぅ、想像しただけで超アウェーな場面が目に浮かぶ・・・。

 

あの人も苦労して来たんだよなぁ、

息子である俺も、そうなるのかねぇ・・・。

 

まあそんなことは今はどうでもいいか。

取り敢えず自己紹介と洒落こみますか。

 

「織斑・D・一輝です、趣味は家事全般、主に料理が好きです。

日本代表候補生やってるんで、何か分からないところがあれば聞きに来てほしい。」

 

うん、我ながら中々の自己紹介だったな・・・、って、

なんだよそのもっと喋れるだろ?って目はよ!?

 

あーもう!分かったよ!言ってやりゃぁ良いんだろ!!

 

「あー、因みに、知ってると思うけど、俺達の親父は日本軍准将、織斑一夏だ、

ついでに言うなら、母親は日本軍大佐、織斑・D・シャルロットだ、

正直、こんな事言っといてなんだけど、色眼鏡で見られんのは嫌いなんで、あんまりそう言うことに触れ無いで欲しい、以上です。」

 

やれやれ、言わなきゃいけないこととは言えど、結構辛いな。

 

俺の名字から判別出来ると思うけど、

俺の親父は、男性としては世界で最初にISを動かし、その後、世界を救った英雄、織斑一夏だ。

 

彼はIS学園卒業後、軍に所属しながらも、

ISの量産化や宇宙進出計画の推進、他にも数えきれない程の偉業を残している。

 

正直、身内贔屓無しで見ても一人の人間が為せる行為じゃ無いことなんて一目瞭然だ。

 

だとしても、俺は俺として、織斑・D・一輝として見られたい。

 

織斑一夏の息子としてではなく、

俺自身として・・・。

 

そんな事を思いながら、俺は次に呼ばれるであろう、

双子の姉、ルキアの方を向いた。

 

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sideルキア

 

ど、どうしよう・・・!?

 

私は廊下側の席でかなりテンパっていた、

だってそうでしょう!?

なんで言おうとしてる事を全部言っちゃうのよ!

バカ一輝!!

 

お父さんの事もお母さんの事も全部言っちゃうなんてアンタバカァ!?

 

ああぁぁぁぁ!!ヤバイ!!

順番が回って来ちゃったよ!!

ええい!こうなりゃ自棄よ!!

 

香里奈姉さん・・・、あぁ、今は藤堂先生だったわね、

先生に名前を呼ばれたから、私はゆっくりと立ち上がり、クラスメイトの皆へと目を向けた。

 

「織斑・D・ルキアです、そこにいる一輝の双子の姉です、

趣味は裁縫、一応日本代表候補生やってます、

皆と一年間、同じクラスで頑張りたいと思います。」

 

エセスマイル(作り笑い)でなんとか自己紹介をする。

 

作り笑いとかにはもう慣れっこだから、別に面倒でも何でもない。

 

あぁ、そうそう、言い忘れてたわね、

代表候補生と言っても、昔みたいに代表の座につけるのはたった一人、

なんて訳じゃなく、五人位が代表の座に就く方式に変わったの。

 

勿論、やらなきゃならない訓練の質も向上したし、代表候補生という肩書きに付随する宣伝とかプロパガンダには必ずと言って良いほど参加しないといけないとかの縛りは増えた。

 

ハッキリ言って、面倒な事この上無い、

特に私と一輝は、日本軍准将の娘と息子だから余計にその頻度が増えてる。

 

お父さんとお母さんの事は誇りに思ってる、

だけど、やっぱりそれなりの期待とかは荷が重く感じる時はあるかな・・・。

 

「はい、ありがとうございました、次はオルコットさん、

自己紹介をお願いします。」

 

「分かりましたわ。」

 

あ、そう言えばリザも居たのね。

そんな事を考えつつ、私は幼馴染みのリザの方を見た。

 

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sideリザ

 

一輝さんの自己紹介は途中までお見事でしたが、

後半とルキアさんの自己紹介はヤケクソでしたわね。

 

まぁ、同じ二世として、その御気持ちはよく分かりますが・・・。

 

それよりも、わたくしはお二人の二の舞にならぬよう、

しっかりと自己紹介をさせて頂きますわ!

 

「リザ・オルコットと申します、イギリス代表候補生を務めております、

趣味はピアノ演奏と音楽観賞、皆様と学友になれました事を嬉しく思いますわ、

一年間宜しくお願いいたします。」

 

我ながら上々ですわね、これぐらいで良いでしょう、

他にお話しする様な事はありませんし。

 

まぁ、オルコットの名を名乗っている以上、

実家の名誉や、それに付随する偉業についてのアレコレからは逃れられない事は事実でしょう・・・。

 

ですが、そんな事は構いません、

何せ、ここに入学出来た事で、私の望みがひとつ、叶いましたもの、

それだけで、今は良しとしましょう。

 

後で、一輝さんに会いに行きませんと、ね・・・♪

 

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一組で一輝、ルキア、リザの三名が自己紹介をしている頃、

一年三組の教室では・・・。

 

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sideエドワード

 

はい、皆さんこんにちは!

 

リク・オルコットの息子、エドワード・オルコットです、

この度、僕はIS学園にイギリス代表候補生として入学しました。

 

さて、一組にはリザをはじめ、一輝にルキアもいるんだよな、

なんか僕だけハブられた感が半端ない。

 

「それではオルコット君、自己紹介をお願いします。」

 

「わかりました。」

 

おっと、ご指名だ、ならやらせてもらいますか。

 

取り敢えず立ち上がり、クラス全体を見渡す。

知った顔は・・・、あれ?

あの水色の髪の子、何処かで会った事がある・・・?

 

そう言えば、数年前に幼馴染同士で会って以来、連絡も殆ど取れなかった彼女に、少し似ている気が・・・。

 

いや、後で聴けば分かる事、かな・・・?

 

だから今は、目の前の自己紹介に気合入れないとね。

 

「エドワード・オルコットです、イギリス代表候補生を務めています、趣味は天体観測です、双子の姉が一組にいるんで、姉弟共々宜しくお願いします。」

 

こんなもんで良いでしょう。

 

そう思って席に着いた。

 

そして次々と自己紹介が終わり、さ行の人の番になった。

 

「ありがとうございました、それでは、更識さん、お願いします。」

 

「はい。」

 

更識ねぇ・・・、って!?

マジですか!?

 

慌ててその人の方を見ると、予想した通り、水色の髪の少女が立ち上がっていた。

 

あぁ、なんで今まで忘れてたんだ・・・、

彼女は僕の・・・、僕の幼馴染みじゃないか・・・。

 

「更識楯無です、趣味は編み物、日本代表候補生を務めています、皆と仲良くなりたいので、色々とヨロシク!!」

 

彼女は輝く太陽の様な笑顔で挨拶をしていた。

元気溌剌、まさにその言葉が似合う笑顔だろう。

 

だけど、僕にはその笑みが、何処か仮面の様に見えて仕方なかった。

 

そう、僕は知ってる、彼女が自分自身を偽っている事も、そして彼女の本当の名前も・・・、

 

(千恵・・・。)

 

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side楯無

 

私は、どうすれば良いんだろう・・・?

 

このクラスには、私の過去を知る、エドがいる。

でも・・・、今の私は・・・、

あの頃の、千恵だった時とは違う・・・。

 

更識家を継いで、楯無の名を名乗ってる・・・。

 

彼の方を見ると、彼と目があった。

エドの目には再会の喜びと、ある種の戸惑いがあった。

 

私だって彼と再会できたことは素直に嬉しい、

でも、私はあの時と随分変わってしまった、だから・・・、

どういう風に彼と向き合えば良いのか分からない。

 

(エド・・・。)

 

私はそんな感情を面に出さず、席に着いた。

 

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日本軍第七特務基地、

日本国内唯一のISの稼働試験場を設けた基地であり、世界最高峰の技術が納められている場所でもある基地だ。

 

その存在は、ISの登場によって作り出され、30年が経過した今でも日本のIS界の中心に位置する場所である。

 

その建物の中にある提督室に、一人の男性が入っていった。

 

「准将、失礼致します。」

 

男性、影山は提督室にいると思われる上官に向けて敬礼しながらも、敬礼、基地提督が振り返るのを待った。

 

「御苦労だったな、影山、今回のIS学園の入学者名簿、持ってきてくれたか?」

 

彼の目の前で、基地提督であり、彼の直属の上官である男性が振り向いた。

 

白い軍服に身を包み、二十代と言われても差し障り無い様な外見を持った男性は、優しげな表情の中にも何処か凄まじいプレッシャーを持っていた。

 

一般人が彼に会えば、間違いなく緊張してしまうだろうが、若い頃から彼の下にいる影山にとっては、それは誤解であるとしか言いようが無かった。

 

何せ、男性の本当の顔を、彼は知っているのだから・・・。

 

「はっ、お持ち致しました、こちらになります。」

 

影山少佐は脇に抱えていた、それなりの分厚さを持ったファイルを、自身の上官に手渡した。

 

手渡された資料に目を通しながらも、男性は何処か考え込む様な表情を見せた。

 

「ふむ・・・、今年は例年よりも入学者が多いんじゃないか?」

 

「留学生が例年よりも多くなっているからかもしれません、准将の御友人の御子息や御令嬢も来られているでしょうし・・・。」

 

彼の疑問に答えつつ、影山は今年度の入学者の中でも特に注目すべき人物達の顔を思い出していた。

 

自分が教官として鍛え、同期がこれから育て上げる事になる、第二世代の者達を。

 

これまで見て来たどんな候補生よりも秘めたる素質を持った、光を継ぐ者達の軌跡を思い描いた。

 

「藤堂少佐・・・、いや、香里奈には迷惑をかける事になりそうだな、アイツもいい加減、こっちに戻って来て欲しいんだけどな・・・。」

 

「それは難しいでしょう、香里奈がそう望んだのならば、我々にはどうする事も出来ません、非常に不本意ですが・・・。」

 

「だよな、すまんな。」

 

彼の言葉に返す副官の言葉に苦笑し、彼は再び窓の外に目を向けた。

 

それはまるで、遠くを見る様でありながらも、彼の大切な者達を案じている様でもあった。

 

「だが、見届けてやろうじゃないか、新たな世代が作る時代と言う物を、な?」

 

「はい。」

 

そう呟きながらも、彼は自分の過去に想いを馳せ、これからの時代を楽しみにする様に笑っていた。

 

それは、自分が抗ってきた荒波に揉まれる新時代の担い手達のこれからを、青春を期待するかのようでもあった・・・。

 

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次回予告

父母が学んだ学び舎に集った新たなる光は、懐旧の想いと共に再会を果たす。
その再会が、各々にとって何を意味するのか、誰も解らぬまま・・・。

次回インフィニット・ストラトス 光を継ぐ者

再会の光達

お楽しみに。

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