デスゲームの半死人   作:サハクィエル

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 どうも。最近エグゼイドを見てはまってしまったので書きました。作者はクロノスが好きですが、書きたかったのはゾンビゲーマーなので、これは書いていて楽しかったです。
 前書きが後書き臭くなってきたので、この辺で前書きはしめておきます。
 では、本編をお楽しみ下さいませ!


I am a ゾンビゲーマー!

 その日、神白 玄(かみしろ くろ)は自分のステータスウィンドウを見て全てを思い出した。

 

 ここは世界初のVRMMOゲームの中で、右手を振ることでウィンドウを顕現させることができるわけだ。ウィンドウーー特に、ステータスウィンドウはゲームにとって重要なものであり、サービス開始から数秒後にこのウィンドウを開くことはごく当たり前。ベータテスター、このゲームを発売前に遊んでいた奴らでなければ特に。

 

 そして、思い出してしまったのだ。ここが、自分の溺愛していたライトノベル、ソードアート・オンラインの世界の中であるということ。そして、自分はその世界で、これからデスゲームと化すVRMMORPG、ソードアートオンラインの中に入ってしまったこと。そして、自分に前世が存在するということ。

 

 彼の前世は標準的なオタクだったーーと本人は記憶している。奇妙な表現だが、そう表現するほか仕方あるまい。

 

 ーーとにかく、彼はオタクだった。だから、このソードアート・オンラインのようなシュチュエーションのライトノベルは大量に読んでいたし、実際に書いていたりもした。だからこそ、彼にとってこの世界は「現実」ではなかった。前世の記憶、という厄介なものは、彼から現実味という大事な感覚を奪っていったのだ。

 

 彼の注意はこの世界がデスゲームである、という事実よりも、自分のステータスウィンドウに注がれていた。

 

 ステータスウィンドウは、二次元的なMMORPGでよく見られた簡素なものだ。しかし、彼にとって、こんな表示を見るのは初めてだった。

 

 レベル表示が「0」になっているのだ。標準的なMMOなら、初期レベルは1の筈だ。だが、玄のレベルは確かに「0」であり、それはこのアカウントがどこかおかしいことを示していた。

 

 どうなっているんだーーと彼は思い、色々模索した。ここはウィンドウのホームメニュー。見るべきところは他にもある。そして、模索を始めて数秒、彼はこのレベル表示が間違っていないことに気づく。

 

 玄が見ていたのは、スキル一覧だった。今はサービス開始直後。スキルにはまだ目立ったものは無い筈だがーーそこには確かに、1つ、スキルがあった。

 

 名前を、「ゾンビアクションゲーマーレベルX-0」といった。これだけで、彼はレベル表記の意味を悟った。

 

 これは今世で中毒的に好きだった特撮のキャラクターの名前で、このキャラクターの能力は、「コンテニュー」だった筈だ。つまり、運営、ヒースクリフもしくはカーディナルが、特撮のファンであったなら、このアカウントはデスゲーム内でコンテニューできることになる。

 

 ーーだが、そんなことはあり得ないのだ。あの特撮が終わったのは5年前で、当時の彼は小学3年生。辛うじて見ることが許される歳だが、ヒースクリフは言わずもがな。あの仏頂面が見ていたら呆れを通り越して尊敬するレベルである。

 

 しかし、この能力がその特撮関連のものだというのは紛れもない事実だ。しかし、特撮に関連しているスキルだとしても、どうしてなのか。このようなユニークスキルがどうして、こんな非凡な自分に宿ったのか。玄は理解に苦しんだ。

 

 それに、だ。誰だって死ぬのは怖い。特に、今まで信頼してきたゲーム機に殺される、というのはバカらしい。そう。このスキルが100%機能するという証拠はどこにもないのだ。そんなものに命をあずけるのはいささか抵抗がある。

 

 これらを踏まえて彼が導きだした結論は1つ。「こんなスキルに頼らずにゲームを生き抜く」だ。

 

 このゲームは、開始してからまだ間もない。つまり、今から森に行き、アニールブレードーーゲーム最初期最強装備ーーのクエストをこなしつつ資金を貯めて、隠居生活をすればいいのだ。ここ、はじまりの町で。

 

 どうせこのゲームはクリアされる。ならば、2年、ここで大した危険も犯さずに生活すれば大丈夫だ。大丈夫。きっと、大丈夫だ。

 

 そう思いつつ、彼はこの世界を駆けた。森に入り、初期装備に皮の鎧というチープな格好で例の村ーー「ホルンカ」を訪れると、最速でクエストフラグを立て、森を駆ける。

 

 一時間ほどして、彼は気付いた。

 

 レベルが全く上がらない、ということに。この森に来るまでに数匹、そして、森でリトルネペントを狩り続けた分の経験値が発生する筈なのに、彼のレベルは1として上がらなかった。

 

 やはり、このアカウントのレベルは上がらない仕様なのだろうか。そんな思考を瞬かせつつ、玄は目の前に出現したリトルペネントーー当然のように花は付いていないーーを片手剣ソードスキル「バーチカル」で葬ると、直ぐに駆け出した。あまり時間を無駄にはしていられない。このデスゲームには、このクエストの存在を知っているプレイヤーが1000人は居る。原作に描写はなかったが、数10人単位で人がこの森に集まることは間違いない。

 

 それまでに何としても、「アニールブレード」を入手しなければいけない。そう決意すると、彼は背後から近付いてきていたモンスター、リトルペネントに剣を向けた。この近距離なら、「ホリゾンダル」が有効打になるだろう。

 

 しかし、直ぐに「ホリゾンダル」を打つ気はなかった。下手をして奴の攻撃を食らってしまってはいけない。落ち着いて、奴の動きを見極めるのだ。

 

 そこで見極めなければ、彼はダメージを食らっていた。そう。リトルペナントは触手での攻撃を放ったのだ。勿論、レベル0と言えど防御力は存在する。だから、一度くらいの攻撃はなんということはないのだがーー彼はこれまでの道で消耗していた。精神的にも、数値的にも。

 

 だからこそ、情緒的にはこの攻撃を回避するべきだった。しかし、ゲーム的には大人しく食らっておくべきだったのだ。

 

 次の瞬間、彼の脇腹を掠めて抜けた触手は背後にいた二匹目のリトルペネントーーあろうことか実付きだったーーに命中した。それも、その実に。

 

 耳をつんざくサウンドエフェクトが森じゅうに響きそうな音量でかき鳴らされ、悪臭と共に緑色の煙が立ち上る。

 

 可能性としては、ゼロではなかった。この世界には、ビーストテイマーという役職が存在する。だから、モンスターがモンスターにダメージを与えることは可能であり、そのうち、このようなことが起こる可能性はあったのだ。

 

 だが、彼はそれでも、狩りを続けた。死の危険があると知りながら、命を縮めると知りながら。

 

 これは報いなのだろうか。十分すぎる恩恵を受けた自分への天罰か。彼は最後にそんなことを思い、目の前に現れた数匹のリトルペネントを睨んだ。

 

 勝てない。そう、彼は直感した。リトルペネントを一匹葬るのはわりと簡単だ。しかし、数匹となると話は変わってくる。

 

 だが、それでも、彼は戦いを放棄しなかった。剣を必死に振り、リトルペネントのHPバーを貪るように削っていく。

 

 ーーそうして、1分ほど戦ったところで、ついに玄のHPバーが赤の危険域に突入した。さっきから、攻撃は絶え間なくヒットしていたのだ。いつかこうなってもおかしくはない。

 

 目の前では、3匹のリトルペネントが唸っている。さっきから比べると減っているように見えるが、不利な状況に変わりはない。

 

 玄は唸り、バーチカルを目の前のリトルペネントの頭部に打ち込んだ。リトルペネントのユニット的に、バーチカルよりもホリゾンダルの方が有効打になりやすいのだが、そんなこと、ベータテスターではない、まして、原作でも重要な扱いをされていなかったために忘れていた彼には分からなかった。

 

 リトルペネントの頭部と剣が衝突し、3センチほど食い込んだところでーーー

 

 真横から、リトルペネントの触手が玄の脇腹をどついた。鈍い音が響き、恐怖で瞑目した彼の瞼に火花が散るのと同時に「GAME OVER」という無機質なシステム音声が耳元で響いた。そして、視界に「You are dead」と表示される。

 

 しかし、その表示の真下には、驚くべきメッセージが表示されていた。なんと、蘇生時間と空中に記されているのだ。そして、その表示の真下には猶予時間らしき10という数字が。その数字は秒刻みで減少しているので、恐らくこの「10」は「10秒」の10なのだろう。

 

 そして、その下には即時コンテニューの許可ボタンが存在している。現在は「死んでいる」ので体を動かすことは出来ず、このボタンに触れることはできない。恐らく、一昔前のVRマシンのように、目線で決定をするのだろう。

 

 彼はそう判断すると、許可ボタンに視線を移した。すると、1秒ほどしてから、視線は承認されたらしく、視界がホワイトアウトして全ての表示が消滅する。

 

 ーーと、次の瞬間、彼は軽快なサウンドとともに、死亡地点から少し離れた場所に出現した土管から復活を果たした。そこで、彼の真横には100という数字が表示され、2秒と経たないうちにその数字は99に変わる。

 

 残機か、と彼は思った。これはあの特撮で見慣れた表示に酷似しているーーいや、完全に同一のものだ。それは暗に、このスキルが間違いなく「ゾンビアクションゲーマーレベルX-0」を模したものであることを示していた。

 

 ヒースクリフは、10数個のユニークスキルに特撮のキャラクターを模した能力を設定したのだ。

 

 その事実に驚愕とわずかばかりの歓喜と入り交じらせた、ひきつった笑みを浮かべると、彼はリトルペネントに向き直った。

 

 さて、こいつらを殺すか。

 

「コンテニューしてでも、クリアする......ッ!」

 

 そう叫び、玄は駆け出した。

 




 他ライダーの能力やら武器やらも出したいですが難しそうです。

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