IS VS Build   作:シュイム

10 / 33
皆様、感想やお気に入りして下さり、本当にありがとうございましす!
作者もとても励みになります!
多くの人に楽しんで頂けるよう、頑張ります!
あと第1話でご指摘のあった誤字を修正しました。
では、最新話どうぞ!


第5話 平和主義なヒーロー

ビルドのお披露目から少しして、俺は今郵便局に向かっていた。

ハガキを出しに行くついでに切手を買って来てと父さんに頼まれたからだ

家から郵便局は歩いて10数分の距離にあるためそんなに大したお使いではない

 

とは言え...やばい、筋肉痛が...

 

実はビルドに変身するようになってから、

「変身して戦うようになったら強くなってないとね!」

という束姉さんの意向で束姉さんが用意した全身装甲(フルスキン)のIS、ゴーレムとの擬似戦闘を行うようになった。

最初こそビビりまくってボッコボコにやられていたが、途中から感覚を掴み回避やそれに合わせてカウンターを叩き込むなど、何とか様になった。

それに神様の恩恵だろうか、身体能力や頭の良さ以外にも目や耳が良くなった気がする。

慣れてくるとゴーレムの動きが先に読めた事もあった

改善したい所はビルドに変身する事によって元々の身長を優に超える身体になるため、動かしづらい事か。

 

ようやく着いた。

ハガキをポストに入れ郵便局で用事を済ませた後、ドーナツ屋でプレーンシュガーを買い、帰り道ふと家電量販店のテレビを見る。

 

『フランスの企業、デュノア社が第二世代機、ラファール・リヴァイブの量産に成功。』

 

『電車内で男性に痴漢行為をされたと嘘の供述をした30代女性が逮捕されました。 調べによるとその女性は『ISを動かせる私達女の方が偉い。 男は女に従うべきだ』と供述しているということです。』

 

...こんなことばかりだ。

ニュースを見れば大抵ISか女性権利団体の事ばかり。

束姉さんのISはこんな事もたらしたかったんじゃないのに...。

 

そんな折、パトカーや救急車のサイレンがけたたましく鳴り響いた。

音の大きさからだいぶ近いと思われる。

 

何かあったのか? 気になるしついて行ってみよ

ラビットフルボトルを振り、人目につかない場所を駆け抜ける

 

パトカーの後を追い、たどり着いた先は銀行であった。

たくさんの人だかりが出来ており、入口は封鎖されている。

これはもしや...銀行強盗!?

こんな事原作にはなかった。 ましてや原作が始まる前のこのタイミングで!

 

『ドォン!!』

 

「「「キャアアア!!」」」

 

「おらおら、警察ども!! この銃が見えねぇか!? 少しでもおかしな動きしたら人質の命はねぇからな!!」

 

突如銃声が聞こえたかと思えば中からたくさんの悲鳴が。

犯人がイライラしている。それは顔を見ずとも声だけで充分分かった。

 

これは...行くしかない。

中に突入して強盗を捕えられるのは(ビルド)だけだ。

 

そう思ってはいるが足がすくむ。

体が震えるし、心臓の鼓動が早まる。

訓練の時のゴーレムとは違い、相手は銃を持ち人を殺すことに躊躇なく襲いかかってくる大の大人だ。

いくらビルドを纏って戦う力があっても怖いものは怖い。

前世でもこんな経験なかったしな

 

超怖いな、中がどうなってるかも分からんしもしかしたら俺が何もしなくても上手く行くかもしれない。

そうだ、もっと詳しく状況を確認しよう! 犯人が何人だとかどれだけの人が人質になってるか分からない内はどうしようm『助けて...ヒーロー...』

 

耳が良くなったからか、気のせいか、フルボトルの能力なのか分からない。

だが、声が聞こえた。

困ってる、怖がってる、助けて欲しいと願ってる。

俺の腹を括らせるにはそれだけで充分だった。

 

「手が届くのに、手を伸ばさなかったら死ぬほど後悔する。だから手を伸ばす。なんて言葉あったっけな...!!」

 

『ラビット!!』

 

『タァンク!!』

 

『ベストマッチ!!』

 

「変身...!」

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

???Side

怖い...怖い...!!

今日はたまたまお姉ちゃん達とお出かけしてて銀行に入っただけだったのになんでこんな事に...。

 

周りには私と同じように銃を持ったおじさんを怖がってる人達が何人も居て、泣いてる人もいた。

おじさん3人は笑いながらお金を袋に詰めている。

どうして? どうして、おじさんの悪いことに私達が怖い思いしないといけないの?

お姉ちゃんは私の手を取って「大丈夫」と言ってくれている。

そんなお姉ちゃんも泣いてはいないけど凄く怖い顔してた。

きっと私の事を守るために強がってるんだと思う...

 

こんな時、私の大好きなヒーローは颯爽と駆けつけてくれる。

悪い奴らを懲らしめて、皆を守ってくれる。

ヒーローなんて来ないかもしれない、居ないのかもしれない。

けど、言わずにはいられなかった。

 

「助けて...ヒーロー...」

 

そんな私の声に皆が一斉にこちらを見る。

おじさん達は笑いながら私の顔をのぞき込む。

 

「ヒーロー? 無理無理! テレビの見過ぎだ。 警察の奴も入ってこねぇ所に現れる奴なんかいねぇーよ!!」

 

「違いねぇ! ぎゃははははは!」

 

おじさんの気持ち悪い笑いが響く。

そういうとお姉ちゃんはおじさんを睨んだ。

周りの人たちもまるでこの世の終わりみたいな顔をしてしまっている。

 

もうダメ...。そう思っていた。

 

突如、ドアの壊れる音が聞こえた。

皆がドアの方を見るとそこには赤と青で出来た、仮面を着けた見たことのないヒーローが立っていた。

 

???Side out

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

建兎Side

ビルド ラビットタンクフォームで銀行内に突入。

中には3人のマスクを被ったおっさん、10数人もの人質がいた。

その中には見覚えのある人達がいた。

水色の髪に整った顔立ち。片や手を握りこちらを驚きの眼差しで見ており、片やメガネをかけて手を握られこちらも驚きの表情をしている。

間違いない、更識姉妹だ。 まさかこんなことに巻き込まれてるとはな...

 

「だ、誰だテメェは!!」

 

「人質の命はねぇと言ったはずだぞ!!」

 

おっさん達は銃を構えそんな事を口走ってたがそんな事気にならなかった。

落ち着いてるのではない、分かってたとは言えこんな状況になってて心臓バックバクなのだ。怖いし震えるし吐きそ...。

 

「無視してんじゃねぇ!!」

 

おっさんAが銃を発砲した!

ビルドの回避!

おっさんAの銃撃は当たらなかった!

 

いやなんでポ〇モン風なの? それだったらエグゼイドの方が適任だろ

 

「なにィ!?」

 

「落ち着け、3人で撃ちゃ当たる!!」

 

「無駄だよ」

 

3人での一斉射撃も難なく躱していく。

身体はまだ震えているが、ゴーレムに搭載されていたレーザーに比べれば可愛いもんだ。

まあそもそもそんなちゃちな銃で撃たれてもタンクハーフボディなら効かない可能性もあるが。

 

とりあえず俺は銃弾を躱しながら強盗の周りを走り抜け弾が無くなったと同時に、チェーンでおっさん達2人を捕らえた。

1人は格闘技か何かやってたのだろうか咄嗟に伏せ、躱していた。

敵ながらその身のこなしはアッパレである。

 

「おいコラテメェ! こいつが見えねぇか! こいつを死なせたくなきゃ今すぐ仲間を離せ!」

 

「いや、やめて!」

 

「簪ちゃん!!」

 

しまった! 簪が捕まった!

簪はおっさんの太い腕に捕まり、こめかみに銃を突きつけられ今にも泣き出しそうだ。

このままじゃあ楯無が脇目もふらずに突っ込んでいってしまう!

 

「ほらほら、どうした? 早くしないとこのガキが死んじまうぞ!!」

 

「痛い、怖いよ、お姉ちゃん...!」

 

「簪ちゃんを離しなさい!!」

 

「うるせえぞこのガキ!」

 

「キャア!!」

 

「お姉ちゃん!」

 

不味い、おっさんがキレ始めた!

俺が介入してきた事でイライラが爆発したんだろうか。

楯無の足元に発砲、怪我はなかったが楯無も動けなくなってしまった。

 

くそ! 簪が捕まってるからドリルクラッシャーで無理やり捕まえる事も出来ないし、こんな室内で本気のジャンプとかしたら他の人質に危険だし どうすれば... ...!!

 

俺は懐からビルドフォンを取り出した。

 

「へへへ...、そんなもん出してどうする気だ? 助けでも呼ぶか?」

 

「ううん、勝利の法則はこれで決まりだ。」

 

「あぁ? 何言って...!」

 

『ビルドチェンジ!!』

 

ビルドフォンにライオンフルボトルを装填、するとビルドフォンが巨大化し前方に歯車の付いたバイク、マシンビルダーになった。

 

「な、何しやがった!!」

 

「さあね、とりあえず喰らえ!」

 

マシンビルダーにエンジンを駆け、おっさんへ突撃する!

 

「うわぁぁぁぁ!!」

 

思わずおっさんと簪は目を瞑る。

すると、何も起こらない。

恐る恐る目を開けると...

 

「悪いね、俺こう見えて平和主義者なんだよ。はい、おやすみ。」

 

目の前にはビルドが。 思いっきりおっさんにデコピンをして気絶させる。簪をちゃんと抱きかかえながら。

いや、そりゃそうでしょ。こんな室内でバイクぶっぱなす訳ないじゃん。俺免許持ってないし。

マシンビルダーはビルドフォンへと戻っており、無事に銀行強盗は御用となった。

 

警察が突入し人質が解放される中、俺は銀行の裏へ回り見つからないようにしていた。

さて、帰るとするk...「あの...!」

裏路地を通っていたはずだがついてきてたのか、後ろから声をかけられ振り向くと簪と楯無が居た。楯無は少しこちらを警戒しながら見ていた。無理もないか

 

「えっと...その...助けてくれて...ありがとう。とってもかっこよかった。」

 

「どう、いたしまして。」

 

クールに決めたいが無理だ。顔を赤くし、羨望の眼差しで見てくる簪は可愛かったし褒められて嬉しかったし

 

「私も少しいいかしら。 ...あなたは一体、何者なの?」

 

楯無が警戒しながら俺に聞いてくる。

彼女達は暗部の一族である更識家にいる。

裏社会に詳しく、亡国企業などテロリストについての事も知っている

例え小学生であっても更識家の当主である「楯無」という名前を襲名するために訓練を受けているのだ。

とても今の俺と1歳違いとは思えない。

 

「俺? 俺はビルド。 建築する、構成するって言う意味のビルドだ。」

 

「ビルド...」

 

「ビルド...ね。 じゃあ質問を変えるわ。 あなたは敵なの?味方なの?」

 

「どうだろう、全人類の為に戦えって言われたら無理だな。」

 

「...それはつまり「赤と青のコスプレヒーローはどこいった!?」「まだ遠くには行ってないはずよ! 探し出して情報を聞き出してきて!」...!!」

 

やべっ! もう勘付かれた! これ以上ここにいて捕まったりなんかしたら最悪だ。 ドライバーやボトル没収された挙句連行される未来しか見えない!

 

「悪いね2人とも! そろそろ行かなきゃ!」

 

「あっ...」

 

「!! ま、待ちなさい!」

 

「何!? 急いでるんだけど!」

 

焦りながら後ろを向く。 これ以上聞かれても答えられないと思うんだ

が...

すると楯無は少し顔を赤らめ、少し間を置きゆっくり口を開いた。

 

「その...簪ちゃんや私を、助けてくれて...ありがとう。 あなたが居なかったら私達死んでたかもしれない、から...」

 

「お姉ちゃん...」

 

「...!?」

 

驚いた。原作ではイタズラ好きの飄々とした人だと思ってたけどこんな一面もあったのか。 素直な楯無も悪くないな。

 

「...うん、どういたしまして。 2人とも気をつけてね」

 

俺はラビットの能力で飛び上がり、建物の上から逃げて行った。

残された2人はいなくなってからもビルドの後を目で追っていた...。

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

あー、疲れた。とりあえずここまで来りゃあ撒けただろう。

銀行から少し離れた所の建物の陰で壁に背中を預け座り込む。

まさかこんな時期に原作キャラ、しかも更識姉妹に遭遇するとはなぁ...

原作でだって結構後だったはずなのに

 

変身解除しようとしたらまたもや見たことのある顔が見えた。

茶色っぽい髪にメガネ、ポニーテールをした女性。

布仏虚さんだった。

彼女は更識家に代々使える使用人の家出身で彼女の妹である布仏本音、通称のほほんさんと共に楯無と簪に仕えている。

ん? 本音は? てかなんか焦ってないか?

 

「本音! 早く! お嬢様達を追わないと! 恐らく駅の方に行ってしまわれたはずです!」

 

「待ってよう、お姉ちゃん! そんなに早く走れ きゃん!」

 

「本音!?」

 

何と横断歩道を渡っている途中、虚さんの後ろで走ってたのであろう本音が道の真ん中で転んでしまった。しかも間の悪いことに目の前には信号無視した車がフラフラと突っ込んできた。

 

「あ、あ...」

 

「本音ー!!」

 

ちぃ! トラブルは続くって言うけどなんでこんな危ないことばっかり!

 

俺はラビットの能力をフルで使用。まだ慣れてないためフルで使うとめっちゃ反動が来るがそんな事今は気にしてられない!

建物の陰から大きくジャンプ、少し地面がめり込み俺の周りに風が生まれた。

そのまま車の上を飛び越え、横断歩道の真ん中、本音のいる前に着地。

本音を抱きしめ、車をタンクのキャタピラで受け止めながら停止させた。

 

数メートル進み、ようやく止まった。

 

「本音、本音!」

 

「お姉ちゃん、お姉ちゃ〜ん! 怖かったよ〜う!」

 

姉妹ともが泣きながら抱き合う。 本当に良かった、間にあって。

ふとこの世界に来た理由も子供を庇ったためということを思い出し、少し考えさせられるものがあった。

 

「ぐすっ、あの! 本当に、本当にありがとうございます! おかげで本音は助かりました!」

 

「ぐすっ、うぅ、うえぇ〜ん!」

 

虚さんが泣きながら俺に感謝してきた。この人も原作では凄い冷静沈着って言うか、クールな感じだったはずだけど...。

妹の事、凄い大切にしてるんだな。

 

「えく、えっく。 ありがとう〜」

 

そういう本音は抱きついてきた。 はは、俺と同い年とは言えこの光景は可愛いな。なんてこと思ってると

 

『ぐ〜』

 

本音のお腹が鳴った。 姉妹が赤くなる。

 

「もう、本音! こんな状況で!」

 

「私も恥ずかしいよ〜! でもこんな時でも体は正直だもん〜」

 

やれやれ、こんな所も本音らしいっちゃらしいんだけど。

俺は懐からプレーンシュガーを取り出し、

 

「良かったらこれ食べる?」

 

「いいの〜? やった〜」

 

「はぁ... 本当にすみません。何から何まで...」

 

嬉しそうにドーナツを食べる本音、呆れてはいるが笑みを浮かべながら本音を見る虚さん。

更識姉妹にも劣らない、素晴らしい家族だと思う。

 

「そういえば、あなたは何者なのですか? その不思議な装甲はもしかしてIS?」

 

「あー、申し遅れたね。 俺はビルド。 建築する、 構成するっていう意味のビルドだ。」

 

「ビルド...。 分かりました。 覚えておきます。」

 

「じゃあビルルンだね〜」

 

「び、ビルルン?」

 

「気にしないでください。本音はいつも他人をこうやって呼ぶんです。」

 

まあ知っては居たがまさかビルドにまでそんなニックネームつけるとは。

 

「では、私達はこれで。 ビルドさん、今日は本当にありがとうございました。」

 

「ビルルン〜、バイバ〜イ!」

 

「うん、じゃあ()()()()

 

またね、という言葉に疑問符を浮かべながらも2人は更識姉妹の元へ向かった。

 

あ、忘れてたけど車の運転手って...あ、居眠りしてる。

じゃあ気にしなくていいや。

俺は足に痛みを覚えながら人目につかない所で変身解除、帰宅した。

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

その夜、テレビをつけるとニュースはビルドの事でいっぱいだった。

どこで撮ったのか写真も多く出回っており、

「束博士が作り出した新しいIS」だったり

「ISに対抗して作られた、欠陥品」だったりと

参議を醸し出していた。

ちなみに後者は女尊男卑派のコメンテーターの意見である。

 

「やっちまったなァ、建兎。」

 

「やっちゃったねぇ、けんくん。」

 

そんな事をニヤニヤ笑いながら言ってくる2人。言葉とは裏腹に凄く嬉しそうだ。

 

「...なんでそんな顔してる訳?」

 

「「んー、べっつにー?」」

 

うっぜぇー... そんなにも俺が人助けした事が意外かよ。

 

「まあとにかくだ。 これでそれぞれ意見に違いはあれど世間にビルドが認められたってわけだ。 きっとお前は人類の運命を変えることになるぞ」

 

「よーし! けんくん! IS使って悪いことしてる女尊男卑の奴らをぶっ潰せー!」

 

「いや、やんないよ!? そんな事!」

 

日本で初めてビルドが世間に広まった日、俺が束姉さん以外の原作キャラと出会った日。今日は激動の日であった。

しかし、今日も今日とて変わらず3人はドタバタして、俺もそんな光景に笑みを零していた。

 

 

 

 

 

 

 




なっげえ... 書いてて何となく思ってたけど凄い長い。
こんな文字数を毎度の如く書いてしかも面白い人たちって一体俺と何が違うんだ?
俺はただ... 文才が欲しかっただけなのに...
次回もよろしくお願いします。

Next→第6話 救出のランナウェイ

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。