PERSONA XANADU / Ex   作:撥黒 灯

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7月22~23日──【マイルーム】祐騎とゲーム

 

 

 7月22日、日曜日。

 いくら夏休みに決行された講習でも、流石に今日は休みだった。

 というわけで、今日は朝から晩までバイトをしよう。

 

 

────>旅館【神山温泉】。

 

 

 ちょうど大学がテスト期間に入ったとのことで、バイトの人員が足りていないようだった。

 だがもともと正規雇用者の方が多い職場だ。回らないなんてことはない。ただ細かい場所の手入れがしづらくなったというのが、仲居さんの愚痴。

 

「そうか、夏期講習……それはそっちを優先した方が良いな」

「すみません、力になれそうもなくて」

「いいや、幸い何とかなっているから気にしないでくれ。ただ、どこか時間を見つけられそうなら是非来て欲しい」

「勿論です」

 

 バイトの先輩が、少しでも纏まって出られないか、と質問してきた。夏期講習がなければそのつもりだったが、毎朝数時間入っている以上はそちらを優先するほかない。ただ、午後空いている日なんかは来た方が良いだろう。

 

「先輩は高校3年生でしたよね。先輩も学校で講習とかあるんじゃないですか? 予備校とかも」

「一応、行きたい大学の推薦を受けられることになっているんだ。合格できるかは分からないけど、その為の努力はしている。勿論、駄目だった時の為に勉強はしているけどな。予備校には数日通う程度で、後は自主学習で追い込んでいくつもりだ」

「推薦……」

 

 大学入試にはあまり詳しくないが、もしかしてこの先輩、凄い人なのだろうか。

 確かに仕事はとてもよくできる人だし、気配りも気立ても良いと評判。学業や運動が出来るのかどうかは分からないけれど、学校でもこの調子なら、信頼は厚いだろう。

 

 ……進路か。そうだ、来年になれば、必ずそれを決めなくてはならない時が来る。

 自分の進む先に自由はないだろう。あったとしても、かくあるべしと定められた道の中から、自分に適したものを選ぶと言ったもの。それを別に苦だとは感じない。自由がないとはいえ、望まぬ道を進むとは限らないから。

 自分の将来を買った北都グループが求める力が何か。それは未だに分からない。けれども会社に着いていけば、もしかしたらより“異界”という現象に立ち向かう機会が増え、助けられる人が増えるかもしれない。そう考えたら、悪い将来とも思えなかった。

 取り敢えず、どんな無茶振りが来ても応えられるよう、自分を高めることに専念しなければならない。

 

「今の期間は難しいですけれど、夏休み中なら比較的自由なので、予定は開けられると思います」

「そうだな……多分、夏休みから9月にかけては比較的応援を頼むかもしれない。事前に言えるようにするから、出来るだけ参加してくれ」

「はい」

 

 さて。休憩も終わりだ。仕事に戻ろう。

 

 

 

 一日バイトをした!

 バイト終わりに温泉を頂く。疲れがすべて吹っ飛ぶような幸福感に包まれる。

 魅力が上がったような気がした。

 ……家に帰ろう。

 

 

 

──7月23日(月) 朝──

 

 

『おっすー。ハクノセンパイ、今日ヒマだよね。ゲームしない?』

 

 朝目が覚めると、そんな内容のメッセージが届いていた。

 送り主は祐騎。自分のことをセンパイと呼び、かつゲームに誘ってくるは彼くらいなものだ。

 それにしても確かめるより先に暇だと断定されるのは、少し傷つく。まあ確かに講習終了後は予定が入っていない。正直に言えば暇だ。暇なのだが、何とも釈然としないこの気持ちは何なのだろうか。

 

 

 

──午後──

 

 

────>【マイルーム】。

 

 

「ハァ……ぜんっぜんダメだね!」

 

 

 数回のゲームを終え、不機嫌そうに祐騎は言う。

 手元にあるコントローラーを置き、彼の持参した対戦型ゲームを一時中断。祐騎は床に寝転がった。

 

「センスは悪くないけど、圧倒的にスキル不足かな。これじゃまだ相手にならないよ」

 

──Select──

 >すまない。

  なんだと。

  もう一回やるか。

──────

 

「……まあ、やる気があるのは分かるし、付き合ってくれるのには感謝してるけどさ。せめて練習台くらいにはなって欲しいんだよね」

 

 不機嫌さは少し減少したが、未だ若干不満そうではある。口を尖らせる彼を満足させるにはどうしたらいいか。

 簡単だ。自分が上手くなればいい。

 ならば上手くなるためにはどうしたらいいか。

 ……?

 

──Select──

  祐騎にコツを教わる。

 >ゲームを買いに行こう。

  他の上手い人のプレイを見る。

──────

 

 

「……え、買いに行くの? ……ふーん、良い心がけなんじゃない? じゃ、行こっか」

「? 一緒に行ってくれるのか?」

「ハクノセンパイだけじゃ、色々分かんないのもあるでしょ。手伝ってあげるよ」

 

 などと言いながら、荷物を纏める祐騎。とはいえ彼が持っていくものは、道中のお供(サイフォン)くらいなのだが。

 少しだけ、意外だった。そこまで付き合ってくれるとは思えなかったからである。どうやら自分はまだ彼のことを理解しきれていないらしい。

 

 もっと理解する為にも、自分はゲームを巧くなろう。

 ……なにかが違うような気はするが、気のせいだろう。

 

 祐騎のことをまた少しだけ理解できた気がする。

 

 

 その後、自分たちはスターカメラへと赴き、祐騎の勧めでゲーム機と数本のソフトを見積もった。

 彼の期待を裏切らないためにも、少し頑張ってみよう。

 

 

──夜──

 

 

 というわけで、さっそくゲーム機を開封。テレビに接続してみることに。

 だが、初期設定が色々とややこしい。説明書を見ながらだが、結構な時間が経ってしまう。

 

 ……どうやら後日再度設定を組む必要がありそうだ。

 

 




 

 コミュ・運命“四宮 祐騎”のレベルが2に上がった。
 
 
────


 優しさ +2。
 魅力  +2。
 根気  +2。


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