PERSONA XANADU / Ex   作:撥黒 灯

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 原作を難易度カラミティ+インフィニティモードで周回してたら、Afterラスボスで詰みました。
 第3段階強すぎじゃないですか。
 あるぇー? と気づいたら終わってる。




4月14日──【レンガ小路】違和感

 

 

 杜宮高校を後にした自分は、取り敢えず昼食を取るために町を歩いていた。

 帰り道ということもあり、なるべく帰路から逸れない範囲での店探し。無難な所で、今朝案内されたレンガ小路に。

 丁度目に入った珈琲店へと入る。

 

 

 ──>カフェ【壱七珈琲店】

 

 

「いらっしゃいませ」

 

 接客として出迎えてくれたのは、同い年くらいの若い女性。茶髪のロングヘアに蒼の瞳をした美少女だ。

 カウンターには白髪の男性が立っている。彼がここのマスターだろうか。

 取り敢えずそのままカウンターへ。

 メニューを取り、眺める。

 ホットとアイスの珈琲、紅茶がずらりと並んでいた。食べ物は……セットがあるのか。

 

「すみません、ランチセットAを1つ」

「お客様、お飲み物は如何されますか?」

「それじゃあ……この、壱七珈琲で」

「畏まりました」

 

 休日というのも相まってか、店内には多くの人が居た。

 奥の方でパソコンを弄る人、読書をする人。普通に料理を楽しんでいる人。年齢層も様々だ。

 だが、店全体が落ち着いている。煩わしさ等は感じない辺り、良いお店なのだろう。

 店員の女子も世話しなく動き回るということはなく、状況をみつつ、冷静にかつ迅速な動きをしていた。

 

 そうして店内を観察すること数分、ランチセットが運ばれてくる。

 最初に来たのはサンドイッチと珈琲。漂う匂いがすでに美味しそうであった。

 

「いただきます」

 

 食べる。飲む。……不思議だ、もっと食べたいし、飲みたいが、たくさん詰め込もうという気には一切ならない。

 惹き付ける魅力は確かにある。特にこの珈琲、淹れたての香りも相乗しているのだろう、こんなに美味しいのは初めて飲んだ。

 そもそも珈琲自体そこまで飲んだことがないが。記憶は言わずとも魂が叫んでいる、これは今まで飲んだ中で一番の美味だ、と。

 

「如何ですかな?」

「すごく美味しいです」

「それは良かった」

 

 老人は微笑んで、次のお皿を出してくる。

 

 気が付けば結構な時間が経っており、お皿もすべて空になっていた。

 

「とても美味しかったです。これはすべて貴方が?」

「ええ、お恥ずかしながら。私、店主のヤマオカと申します」

 

 恥ずかしいなんてとんでもない。何処に出しても誇れる味だろう、きっと。

 

「ふふっ、良かったですね、ヤマオカさん」

「ありがとうございますアスカさん」

 

 どうやら女性店員はアスカという名前らしい。

 マスターが、ヤマオカさん。覚えた。

 是非また来たい。落ち着きたい時や、勉強したい時に良さそうだ。

 

「御馳走様です、お会計を」

「はい、650円になります」

 

 料金を支払い、店を後にする。

 困った、いきなり行きつけになってしまいそうだ。

 

 

────

 

 ──>レンガ小路【メイン通路】

 

 

 

 ──それは、突然のことだった。

 

「やばっ……きゃッ!?」

 

 身体に衝撃が走る。

 何かの反動でよろめきつつ、なんとか体勢を維持。

 ぶつかってきた何か……というよりは、誰かに視線を向ける。

 

「痛たた……」

 

 近くで尻餅を付いているのは、薄紫の髪を白リボンでまとめた、ポニーテールの美少女だった。

 また美少女か。美月、珈琲店のアスカさん、この少女と、会う少女全員の区別が美少女になっている。

 寧ろ自分の基準が甘いのだろうか。そもそも同年代との交流なんて記憶にないから直感で表現しているだけだが。

 ……おっと。

 

「すみません。大丈夫ですか?」

「あー、こっちこそゴメンナサイ、それと、アリガト!」

 

 腰を地につけたままの彼女を引っ張りあげる。

 ……そう重くなくてよかった。自分程度の筋力では、あまり重いものは支えられない。

 とはいえ大事がなさそうで何よりである。感謝とともに返ってきた笑顔がとても眩しい。

 少し顔から視線を外すと、見覚えのある服装が目に入った。

 

「あれ、その制服……杜宮高校の?」

「え? あー、はい、その、そうですけど……」

「そうですか、自分は来週転入する2年の岸波白野です。ご縁があったらよろしくお願いします」

「これはどうもご丁寧に……? 2年の玖我山 璃音です、こちらこそよろしくお願いします……うん?」

「はい、それでは」

「あーはい、それでは……って、ちょっと待って!!」

 

 スムーズに挨拶が進んでいたと思ったが、呼び止められた。

 何か問題でもあっただろうか。

 

「ほ、ほら、他にもっとこう……ないの!?」

「他に……あ」

「うんうん!」

「お怪我はありませんでしたか?」

「ああいえ、大丈夫です……じゃないわよっ!?」

 

 腕をぶんぶんと振りながら否定される。

 求められたのは違う言葉だったようだ。

 しかし、本格的に思い付かない。どうしたものだろう。

 

「……」

「……はあぁぁぁぁぁ」

 

 首を傾げていると、重い溜め息を吐かれた。本当に申し訳ない。

 

「わ、私の名前に聞き覚えとかない? 特にほら、下の名前とか!」

「璃音……? いや、特に」

「そ、そんな……」

 

 がくりと膝を付ける彼女。

 せっかく起こしたのに……と再度手を差し伸べつつ、思考する。

 自分の名前に聞き覚えがないか、と彼女は訊いた。

 ということはつまり。

 

──select──

  以前に会ったことがある。

  逆ナンだな。

 >ヤバい人間だな。

────

 

 もしかしたらすぐに立ち去った方が良いかもしれない。

 とはいえ手を差し出した以上は引っ込められないだろう。

 

 

 でも、なんとも言えないが彼女からは──

 ──そう、“とても嫌な予感がする”のだ。

 

 

 出会った時から何となく悪寒が神経を巡り回っている。

 

「まさか、同年代にも知られていないなんて……そりゃ、全国誰もが知ってるとは思ってなかったけど……まさか地元の同年代に知られてないって思いもしなかった……いいわ、ちょっと待って」

 

 自分の手を借りずに、瞳に炎を灯した彼女は立ち上がった。

 そして何かを決意したように、勢いよく自身の鞄をがさがさと漁り出す。

 

「あの……?」

「あった、はいこれっ!」

 

 差し出してきたのは、一枚のCD。

 表面には、目前に居る女子に似た女の子を初めとする5人の女子アイドルが写っている。

 そういえば昨日、タクシーの運転手とアイドルグループについての話をした。

 その中の1人が杜宮の高校生だということも。

 確かそのグループ名は……

 

──select──

 >スピア。

  セピア。

  スピカ。

────

 

「あ、そうだ、スピアだっけ」

「スピカよ、S・Pi・KA☆! どこの世界に、武器の名前を付けるアイドルグループとかいるのよ!」

「……いや、居るだろう。カタナとかハンマーとか、居そうじゃない?」

「……ぐぬぬ」

 

 反論ないみたいだった。しかしスピカという単語も語源は攻撃的な意味だと思うが。

 とはいえ間違えたのはこちらの失態。許してもらえないかもしれないが、誠心誠意謝罪をする。

 

「申し訳なかった。このCDは責任を持って聴いてくる」

「わ、分かれば良いのよ」

 

 良いみたいだった。

 

「じゃ、絶対聞いてよねっ! 私はあんまり学校行かないケド、同じクラスになったらよろしく‼」

 

 そう告げ残して立ち去──らない。踏み出した足を止め、振り返る。

 大きくて綺麗な眼を困惑気味に揺らしながら、彼女は口を開いた。

 

「……ねえ、どっかで会ったこととか……ないよね?」

 

 

「……やっぱり逆ナンだったか」

「やっぱりってナニ!? いや、真面目な話さ、なんかこう……キミを見てるとよく分からない気持ちが起き上がってくるのよ」

 

 それはやはり逆ナンなのでは。

 まあそれはないだろう。彼女はアイドルらしいし、何より自分を逆ナンなんてしないだろうから。

 

「初対面だと思う」

「……実は隠れファンでライブ見に来てたりとか?」

「ごめん、グループ名ですら昨日初めて聞いた」

「恐るべき無関心度!?」

 

 もういいわ、と肩を落とす。

 自分自身、結構申し訳ないことをしている自覚はあった。

 

「なんか気持ちが昂るような──何かを感じたんだけどなぁ」

「……恋?」

「遠慮なく聞くね!? アイドルに恋する暇なんてないんだから。……どっちかって言うと、言い表し様のない不快感かな? 焦燥感とか、嫌悪感とか」

「第一印象から、か」

 

 自分も久我山のことは言えない程、悪寒を感じてはいる。

 それを面と向かって言葉にはしないが。

 何よりこうやって話していて、嫌な感覚は付きまとうものの、彼女自身が嫌いだったりとか、そういったことはまったくないのだから。

 

「あっ、大丈夫大丈夫。見た目普通なわりに話してみた感じいい人そうだし、面白いもん。嫌いじゃないよ、キミのこと。同じクラスになったらよろしく。って、補習終わっちゃう、バイバイ!」

 

 今度こそ立ち去るアイドル少女を見送る。

 思ったより気の良い子だった。あれなら人気沸騰中と言われてもわかる。とはいえ若干押し付けがましい気もしたけれど、まあそうでもなければ業界でやっていけないだろう。

 

 玖我山 璃音のことは気になるが、それはアイドルだからとかいう理由からでは決してない。

 彼女が感じたという違和感。不快感。嫌悪感。

 お互いがお互いに突拍子もなく同種の悪感情を得ることは、あるのだろうか。

 

 

────

 

 

 






 この約2週間後に玖我山璃音は、アイドルへの興味が欠片もない同校同学年生徒が存在することに落ち込むことになるが、またそれは別の話。


選択肢です!

 ケース5ー1。
──select──
 >以前に会ったことがある。
  逆ナンだな。
  ヤバい人間だな。
────

 とはいえ記憶もなにもない。
 知り合いというには他人行儀な気もするが。
 いや、結構な時間離れていたらこんなものかのか?

 →あることないこと話します。結論的には逆ナンされている感覚に陥ると思うので棄却。


ケース5ー2。
──select──
  以前に会ったことがある。
 >逆ナンだな。
  ヤバい人間だな。
────

 逆ナンだな。しまった、もう少し面白い自己紹介でも考えておくべきだったか。
 まあ、この反省は次に活かせば良い。幸いにして自分にはまだ、
 戦うべき場所(挨拶の機会)があるのだから。

 →ザビ
────

ケース6ー2。
──select──
  スピア。
 >セピア。
  スピカ。
────

「だ、誰が色褪せてるって!? まだピチピチの十代だってば! 同い年!」
「……?」
「首を傾げないでよ!」

 →みたいな。

ケース6ー3。
──select──
  スピア。
  セピア。
 >スピカ。
────

「そうそう、なんだ、知ってるじゃない!」
「そのCDに書いてあるし」
「ぐっ……」
「そもそもメンバーの名前も知らない。5人組だったのか」
「うううう……はぁ~」

 →まあそういうのは原作主人公にでも任せておけば。ここまで言わないにしてもね。



 誤字脱字等ありましたらご報告ください。



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