PERSONA XANADU / Ex   作:撥黒 灯

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 閲覧ありがとうございます。
 書こうと思ったらできました。
 短いですけど。


6月14~17日──【杜宮記念公園】璃音「あれ、いない……? もう帰ったのかな」

 

 

「スケボー体験?」

「そうなんです。この前コウ先輩と行って……岸波先輩も良かったら一度行ってみてください!」

 

 

 登校中に偶然出会った空からそんな話を聞き、少し興味があったので放課後さっそく来てみた。寧ろ急いで来てしまった為、周囲に高校生らしき人影はない。息を切らしている自分の姿が、少しおかしく思えてしまう。

 ……まあ、いいか。

 杜宮記念公園の売店の前を右折した広場。そこに専用のコースがいくつも広がっている。存在自体は、来訪初日から知っていたのだが、こうしてきちんと覗くのは初めて。

 いったいどんな感じなのだろう、楽しみだ。

 さて、何にせよまずは受付を済ませなければ。

 

「お、いらっしゃい。見ない顔だな、初めてかい?」

 

 事務所のような建物に入ると、男性が出迎えてくれた。

 レジが併設されたカウンターらしき場所と、ボードやその他よく分からない道具が多く飾られたスペースと、の2領域に室内は分かれている。

 取り敢えず、マスターらしきこの人物に指示を仰ごう。

 

「はい、初心者なんですけど、レンタルとかってできますか?」

「出来るよ、ほれ。そこにあるものの中から好きなのを選びなさい。フリータイムで1回800円だ」

 

 借り受ける前に怪我についての注意書などを渡され、サインをしてからまずプロテクターを付ける。その上で複数あるボードの中から1つを選ぶらしい。

 取り敢えず手を伸ばした先には、真っ黒なボードがあった。

 ……いや、ここでこういった無難に見えるものを選ぶから、平凡だとか言われるんじゃないか?

 迷った末1つ隣の、黒いボードに白丸で目と口が書かれたものを手に取る。

 

「……うん、我ながら良いセンスかもしれない」

 

 何よりも、これで誰から見ても平凡そうとは思われないだろう。

 心晴れやかに、初心者コースへと向かった。

 

 

 初心者コースには小さな台と反った坂があるくらい。遠目に見える中級者コースなどにある谷やバーなどは存在しなかった。少しだけ安心する。

 さて…………1人だと心細いな。

 

「サクラ、少し良いか」

『はい、異界探索ですか?』

「いや、スケボー」

『……はい?』

「良いから、見ていてくれ」

 

 サイフォンを、カメラだけきちんと出るように胸ポケットに入れる。

 そのまま、取り敢えず片足を板に乗せて蹴って見ることにした。軽く。

 数回繰り返してみて、何となく両足を乗せても大丈夫なくらいにはなってきた。

 

「どうだ?」

『え? いきなりどうだと言われましても……』

「きちんと漕げているかなって」

『……動画サイトに上がっている動画を提示しますね』

 

 すぐさま、初めて見る男性が凄い技を繰り広げる動画が再生され始める。

 まあこれはこれで凄いのだが、今の自分にとってはまったく参考にならない。

 

「そういうのじゃなくて、漕ぎ方とかどう感じるかとか」

『申し訳ございません、私は感情を搭載していませんので、お答え仕兼ねます』

「……そうか」

 

 高機能AIとはいえ、感想を聞くのは難しいみたいだ。

 ならば、どうしたものか。

 

「こういうのはどうだ。実際のレクチャー動画と見比べて、動きが変なところがあるか検証する、とか」

『あ、そういうことでしたら可能ですね。では準備をしますので、サイフォンを先輩が見えるような位置に立て掛けてください』

「ああ」

 

 近くの坂に、カメラが全身を捉えられるように置く。

 周囲に人は……よし、居ないな。

 

「行くぞ……っ」

 

 先程掴んだ感覚で、少しだけ速度を出した状態で乗ってみる。

 少しぐらついた。

 

「何か変な所あったか?」

『変、というかは分からないですけど、その、乗った時の膝が伸びっぱなしの所とか、姿勢とかは動画との間に差異がありました』

「うん、それを変って言うんだ」

『……覚えておきますね』

 

 しかし、膝か。伸びていておかしいと言うなら本来は曲げるべきなのだろう。

 やってみるか……

 

『あと、1つだけ良いですか、先輩』

「?」

『初心者はいきなり漕ぐよりも、乗り方などを別で練習した方が良いそうです』

「……そうなのか」

『あの、不必要な情報でしたか?』

「いや、サクラが居てくれて助かった。もう少しだけ付き合ってくれ」

『……はい。私で、良いのでしたら』

 

 その後もしばらく練習したが、そんなに劇的に上手くなる、なんてことはなかった。

 今後も何度か通ってみよう。お金に余裕があれば、だが。せめて今日の体験を忘れない内に。

 

 

──夜──

 

 

 

 

 ピンと来た。

 

 

 

 

──6月15日(金) 放課後──

 

 

────>コスプレショップ【ピクシス】。

 

 

「えっと……これ、作るの?」

 

 コスプレショップの店主さんは、自分の書いたデザイン案を見て尋ねてきた。

 昨晩思いついた傑作である。あのスケボーから着想が得られたのだ。

 やはり色々なものに挑戦する、ということは大事だと痛感した。こんな発見があるなんて、一昨日までの自分は思いもしていなかっただろう。今度話を聞かせてくれた空にはお礼をしなければ。

 

「はい。お願いしてもいいですか?」

「え、ええ……これくらいなら5日もあればできる、はず」

「じゃあお願いします」

「……あの、本当に良いの?」

 

 値段的な話だろうか。

 だとしたら問題ない。服に関しては必要経費だ。

 

「はい、できたら2枚ください」

「……分かったわ、腕に縒りをかけて作るから」

 

 それは嬉しい。期待できる。

 初のデザインTシャツだ。良いものになると良いな。

 

 さて、時間も余ったしバイトでもしていこうか。

 今日なら確か、ゲームセンターのバイトができるはずだ。

 

 

 

──夜──

 

 

「……そろそろ、安物のテレビくらいなら買えるかもしれない」

 

 バイト上がりに貰った給料袋の中身を取り出し、財布の中身と合わせて机に並べる。

 安物のテレビを買ってお釣りがくるところまで、ようやくたどり着いた。

 もう少し余裕を持てれば、あとは機を伺うだけだろう。これからは色々な情報に注意していかないといけない。お買い得情報を一度見逃すだけで、首が閉まると思わなければ。

 まあ、もっと余裕は持っておきたい。これからも積極的にバイトを続けていこう。

 

 今日は……昼にアルバイトをしたし、勉強しよう。

 明日と明後日、つまり今週の土日は神山温泉に向かうつもりだ。学校もない純粋な連休に、がっつり働かないという選択肢もない。問題があるとすれば、人手が余っていて雇ってもらえない可能性があることくらいか。

 ……まあ、仮に雇ってもらえなかったとしたら、別の事をすればいいだけの話か。

 気楽に行こう。

 

 

 




  

 度胸  +2
 優しさ +4。
 >優しさが“かなり鈍感”から“ふつうに優しい”にランクアップした。
 根気  +2。  
 
 
────


 多めに優しさが上がっているのは、土日分の温泉バイトのおかげ。
 バイトしているだけなので、描写は省きます。

 次回更新はまた五日後、日曜日で。

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