PERSONA XANADU / Ex   作:撥黒 灯

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 ザナドゥは料理音痴がいないから、某竜の娘的なデスコースやP4のムドオンカレーみたいなものは出せないのである。
 フラグではない。
 ただし麻婆は除く。暫く出番ないですけどね。


4月14日──【杜宮記念公園】やりたいこと

 

 

「せっかくですし、時間まで杜宮を案内しましょうか?」

 

 朝食を済ませ、部屋に戻ろうとしたときに出された提案。美月の好意に甘え、一通り案内してもらうことになった。

 車は使わず、歩いて移動ということになる。

 申し訳なさそうに言われたが、寧ろ当然だと思っていたことに申し訳なくなった。

 

「それでは岸波くんは編入試験まで、ずっと勉強漬けで?」

「幸い、本を読むのは好きだったみたいで。入院中はリハビリのない時間ずっと本を読んでいたくらい。時たま普通の勉強もしたが」

 

 特に、伝記や創作の類いが面白い。正直半分以上それらを読むのに時間を割いたと思う。

 

「普通、逆では……?」

「…………」

 

 聴かなかったことにしよう。

 

「……一応、成績にもノルマは設けられると思いますから、勉強はしておいてください。可能な限り手伝いますから」

 

 結構です、と言えないことが辛かった。

 存外に自分はやることが多いらしい。

 勉強をしつつアルバイトをこなし、グループの手伝いもするのだ。

 ……表現してみると案外大したことのない事柄な気がする。そこら辺は手応えを得たこともないので、手掴みでやっていくしかない。

 そうこうしているうちに、最初のスポットへ着いたようだ。

 

────

 

 ──>【杜宮商店街】

 

 南側から一周して杜宮記念公園へと戻り、少し休んで学校へ行くという本日の流れ。

 おおまかに主要な場所。特に買い物をするのに大切な場所を順に当たってくれるらしい。

 こういう時、現地住人の協力は大きいなと感じた。

 

「ここは杜宮一大きい商店街です。八百屋や精肉店、駄菓子屋にスポーツショップなどが並んでいます。他にも文房具屋、金物屋、新聞社……奥には老舗のお蕎麦屋さんなんかもありますね」

「そうか。美月はよくここに?」

「最近はあまり。以前はよく来ていたんですけどね。そもそも私が杜宮に来たのも、5年程前のことですから」

「5年前……」

 

 事情は、聞かないでおこう。

 今後仲良くなってからでも良い。彼女の立場も少なからず関係しているだろうし、信用を得てからの方が美月も話しやすいはずだ。

 

 商店街は朝早いにも関わらず活気に溢れていた。特に八百屋の男性が声を張り上げている。通りを歩く小学生に精肉店の女性店員が声を掛けていたりと、どれも日常的な光景で、暖かく感じる。

 

「良い場所だね」

「ええ、本当に……少し見て回ったら、次の場所へ行きましょう」

 

 美月自身が久しぶりと言っていたものの、実際に歩くと声を掛けられていた。結構な知名度……という訳ではない。きっと彼女自身ここを好きだったからこそ、受け入れられた結果なのだろう。

 流れで自分の名も紹介される。初対面だが笑顔で会話を続けてくれ、何人かはサービスということで色々持たせてくれた。

 マイルームからは位置的に結構離れているものの、ここを訪れる機会は多くなりそうな気がする。

 

────

 

 ──>【七星(ナナホシ)モール】

 

 駅前広場を経由し、次に訪れたのは七星モールという名の大型ショッピングモール。新装開店のポスターが張られており、『個性派ショップ七つ星☆』というキャッチコピーも書かれている。

 

「この時間帯はまだ開いていませんが、内部には輸入雑貨店やジュエリーショップなどを始めとし、ミリタリーショップ、ジャンクショップ、模型屋、コスプレ屋にアニメグッズ専門店など、趣味関係の道具を揃えるのに向いた店舗が揃っていますね」

「趣味……」

 

 自分は以前、何が趣味だったのだろうか。

 色々と趣味を持てば、息抜きができるのは勿論、人間関係の構築にも役立つだろう。金銭的にも時間的にも余裕が出てきたら、色々と取り組んでみたい。

 

「ちなみに美月の趣味は?」

「私ですか。うーん、残念ながら趣味と呼べる程のものはないかもしれません。強いて挙げるのなら、誰かとお茶をするのは好きですね。岸波くんも、宜しければ今度またご一緒に」

「喜んで」

 

 お茶か……やはり彼女程の人間が飲むお茶やお菓子は、どこかの国の有名なやつだったりするのだろうか。

 そういえば、そこら辺の知識にはそこまで明るくない。

 他国の郷土料理なら通じていることには、通じているが。これも、彼女の側で過ごすなら得ておきたい所。

 

 

「さて、次の場所に行きましょうか」

 

 

────

 

 ──>【レンガ小路】

 

 道中の分かれ道を直進し、レンガ小路の方へと足を伸ばした。そこで右折すると自分の通う【杜宮学園】に辿り着くらしいが、そこは後に改めて、という方針らしい。

 

 それはさておき、レンガ小路について。

 小綺麗な町並み。なるほど、床にレンガが敷き詰められているのか。故にレンガ小路。名称としてはとても分かりやすい。店や家などの外装も基本的にレンガで構成されているようだ。統一感があり、かつ色とりどり。お洒落で落ち着いた感じが魅力的に感じる。

 

「ここにはフラワーショップやブティック……アンティークショップや珈琲店などもありますね」

 

 色々な意味で商店街とは客層が分断されていそうだ。

 落ち着いて軽食をとったり、たまの贅沢をするのにここは使えるかもしれない。

 

「さて、ここまでで何か質問などはありますか?」

「いや、大丈夫だ。本当に助かった、ありがとう」

「礼には及びませんよ。では戻りましょう」

 

 ちょうど良い時間ですし、と笑う美月。

 確かに、約束の時間まで残すところ1時間強と言ったところだった。

 彼女自身も学園に赴くだろうし、身支度を踏まえるならばそろそろ戻り時だろう。

 

 ついに学校か。

 帰路に着きながら、予想も付かない今後のことについて、色々な思いを巡らせてみた。

 たった数時間の探索だったが、自分にないものの確認には充分すぎる刻だろう。

 だが、今感じ取ったのは“やりたいこと”。“やるべきこと”については、これから思い知っていくはずだ。

 その2つを照らし合わせて、今後の指針を考えよう。

 

 

 





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