PERSONA XANADU / Ex   作:撥黒 灯

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 ペルソナの1週目の1学期中間前って、無駄だとわかっても直前に沢山勉強させますよね。




5月10~13日──【杜宮高校】試験前スパート。~白野は誓う。次は普段からもっと勉強しよう。と~

 

 

 

 今日も勉強しようかと思ったが、本日が木曜日ということに気付いた。

 木曜日。つまり、水泳部の活動日。今日出ないとテスト前の禁止期間に被り、暫くの間参加が出来なくなる。そうなると禁止期間が明けても参加しづらくなりそうだ。

 なので、今日の放課後は部活に費やそう。確か新入生は部室に寄った後、先輩の指示を仰ぐように言われていたはず。

 ……部室棟へ向かおう。

 

 

 ──>杜宮高校【クラブハウス】。

 

 クラブハウスの2階を尋ねる。基本的に各運動部はここに部室を設けられているらしい。水泳部の部室もそこに漏れず存在するらしく、階段を昇って比較的すぐの場所にあった。

 ……どうやって入ろうか。

 

 

──Select──

  暫く様子を見る。

 >挨拶をして入る。

  今日は帰る。

──────

 

「おはようございます」

 

 なんとなく、バイトの経験からこの挨拶を選んだ。

 

「おう、早いな……」

 

 中には1人の青年しか居なかった。どこか見覚えのある顔のような気がする。

 

「って、岸波じゃないか。水泳部に入ってくれたんだな!」

「ああ。えっと……」

「ハハ、流石に覚えてないか。俺はハヤト。一応部活見学の時にも話したんだが……」

「……あ!」

 

 何となく思い出した。あの時、プールが寒いと言っていた人だ。

 短く切られた黒髪、しっかりと制服を着込むガタイの良い身体。まさしく運動部と言うべき真面目で礼儀正しそうな、同学年の男子生徒──ハヤト。これからは同じ部活の同士。忘れないようにしなくては。

 

「ひょっとして今日が初参加か?」

「走り込みに、だけどな」

「おお、頑張れよ。一緒に泳げる日を楽しみにしてるぜ」

 

 これからよろしく。と握手を交わす。

 

「岸波は泳げるんだったか?」

「……多分」

「多分ってなんだよ」

 

 まさか泳いだことがないとは言えない。言っても良いが、説明するのに時間が掛かるからだ。

 

「殆ど初心者だと思ってくれて構わない」

「へえ。まあ全員最初は初心者だから、周りが泳げても気にするなよ。部活を機に、岸波が水泳を好きになってくれるよう、俺たちも手伝うからさ」

「ああ、ありがとう」

 

 

 ハヤト、か。以前も熱心に説明してくれたが、本当に水泳が好きらしい。

 部活で困ったことがあれば、彼に相談してみるとしよう。

 

 

 ……部活という新たなコミュニティを通じて、新たな縁の息吹を感じる。

 

────

 我は汝……汝は我……

 汝、新たなる縁を紡ぎたり……

 

 縁とは即ち、

 停滞を許さぬ、前進の意思なり。

 

 我、“剛毅” のペルソナの誕生に、

 更なる力の祝福を得たり……

──── 

 

 

「じゃあ俺は行くから。走り込み、頑張れよ。体力や肺活量なんかは地道に身に付けていくしかないからな」

「……頑張る」

 

 結局、日が暮れるまで黙々と走った。

 少しだけ、“根気”が身に付いた気がする。

 ……家に帰ろう。

 

 

 

──夜──

 

 

 さて、今日は出来るだけ休憩を挟まずに勉強をしよう。

 

「……」

 

 

 昨日までは本を読んでいた分の時間を、しっかりとテスト対策に費やせた。

 まだまだ勉強した内容は多いが、今日はもう寝よう……

 

 

 

 

 

 

 

──5月11日(金) 昼──

 

 

「クク……ついに来週の月曜日から試験だねェ。準備は順調かい?」

 

 化学の授業。教壇に立つのはマトウ先生。眼鏡を掛けていて白髪、ひょろっとした痩せ型の化学教師だ。生徒たちからはマッドサイエンティストとも呼ばれて親しまれている。

 どの辺りがマッドなのかは、一か月経っても分からない。やはり見た目だろうか。

 

「諸君は試験を面倒と思うかもしれないが、これも成長を確かめる機会だと思って頑張ってくれ。今回ともう1回、期末考査が終われば、ご褒美とも言える長期休暇が待っているからねェ。無論、頑張っていなければ補習という形で報酬から引かれていくが」

 

 夏休みか……まだまだ先の話のように思える。

 自分はやはり、バイト中心の生活になるだろうか。

 稼げる時に稼いでおかなければいけない。

 

「そうだ、夏休みといえば杜宮高校でも夏祭りがあるねェ。毎年花火の音が遠くまで響いているよ。……クク、そうだな……そこで暗い目をしている岸波」

 

 ! いきなり指名された。

 目立つほど暗い目をしていただろうか……?

 まあ、指されたことは仕方ない。何だろう。

 

「花火についての出題だ。開いた後、色が時間経過で変わる打ち上げ花火を見たことがあるかい?」

 

 ない。

 が、ここでないと答えると少し雰囲気が悪そうだ。

 花火……花火か。去年病院の備え付きテレビで祭りの中継を眺めたことはある。

 ……そう考えると、見たことあるな。

 取り敢えず頷きを返した。

 

「フム、では、どうしてこれらの花火は、空中で、他の何からも影響を受けずに、色を変えていけるのかは知っているかい?」

 

 ……花火が、打ち上げられた後に色を変えられる理由?

 それは、恐らく。

 

 

──Select──

 >中心から離れるにつれて温度が下がるから。

  違う材料の火薬を数種類使っているから。

  最初から変わるように色付けされているから。

──────

 

 光は温度によって変わるという。星の色が違って見えるのも、その星々の表面温度の違いだと言うし。

 きっと中心から燃えていくが、遮熱材か何かを挟むことで一定以上の火薬が同じ温度で燃えないようにしているのだろう。

 

「残念、不正解だねェ」

 

 …………違ったらしい。

 周囲から無知を嘲笑うような声や、同情のような囁きが聞こえてくる。

 

「正しくは“違う材料の火薬を数種類使っているから”。材料を変えると色が変わるのは、炎色反応の応用だよ。火を付けた時にリチウムなら赤色、ナトリウムなら黄色になるのと同じ反応だ」

 

 確かにその内容は既知のものだ。成る程、炎色反応という技術はそういった活かされ方をしているのか。

 そういえば、炎色反応とはどういった覚え方だっただろう。

 ……要確認だな。気付けて良かった。

 

「クク……化学は、いや、理科は身の回りの有り触れたものに活かされている。ぜひとも見つけてくれ」

 

 そう言われてみると、がぜん興味が沸く。

 見付けられるかどうかはまた別問題なので、モチベーションは続かないが。

 

 

 

 

──放課後──

 

──>杜宮高校【図書室】

 

 

 今日は曇り空だが、運よく席も確保できたので、図書室で勉強していくことにした。

 

 テスト前独特の緊張感で、いつもより勉強が捗った気がする。

 

 

 

──夜──

 

 

 勉強、勉強……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──5月12日(土) 昼──

 

 

────>杜宮商店街【蕎麦処≪玄≫】

 

 

 今日は璃音、時坂と勉強をすることになった。

 勉強回の開催場所となったこの蕎麦屋は、どうやらかなりの有名店らしく、ピーク時の客数が多い。

 しかしながら、窓から離れたテーブルの奥側の座席だと、机間にある衝立にも守られ、他客の視線を集めづらいという利点があり、璃音が集中して取り組める環境を考慮して、ここに決定。

 ちなみに柊さんは都合が合わず断念。またの機会に、との返答をもらっている。

 とはいえ全教科に渡って詳しい解説ができる柊さんが居ないと、出来る内容も少ない。

 自分の歴史系知識と、時坂の数学系知識を使って、その2教科──璃音は強いて言えば現代文が得意らしいが、教え方がいまいちだった──を勉強していく。

 数学の理解が深まった気がする。

 

 合間合間に休憩を取り、夕食も済ませ、完全に日が暮れるまで勉強した後、お互いを励まし合って解散した。

 

 

 

──夜──

 

 

 ……勉強、勉強を、しないと。

 何故、やればやるほど勉強しなければいけないことに気付くのだろうか。気付いてしまうのだろうか。

 一向にゴールが見えてこない。

 ……いや、案外ゴールなんてないのかもな。

 でも、止まる訳にはいかない。

 諦めないことは無駄ではなく、戦い続けることに意味があると知っているから。

 さあ、あと1日だ。

 

 

 

 

 

 

 

──5月13日(日) 昼──

 

 

 ………………まだ、だ。まだ勉強を……!

 

 

──夜──

 

 

「………………──ああ、もうこんな時間か」

 

 

 

 明日から試験だ。

 今日は早く寝よう。

 

 

 

 




 

 コミュ・剛毅“水泳部”のレベルが上がった。
 アルカナ・剛毅のペルソナを産み出す際、ボーナスがつくようになった。


────


 知識 +11。
 根気 +2。

────


 巻いて巻いて。
 もうすぐ次の章入ります。
 
 

 ペルソナ主人公らしい決め台詞が欲しい。
 「どうでもいい」とか「そっとしておこう」とか「頂戴する!」とか。
 最期以外決め台詞じゃねえな……
 雨宮くんの決め台詞は「ショータイム!」なのか「〇〇を頂戴する!」なのか。
 
 

 選択肢回収。
 
────
41-1-1。
──Select──
 >暫く様子を見る。
  挨拶をして入る。
  今日は帰る。
──────

「……」

 …………入るタイミングを完全に逃してしまった。今日はいったん帰って出直そうか……

「ん、どうした、入らないのか?」
「あ、いえ、入ります」

 見知らぬ先輩が声を掛けてくれたので中に入ることができた。
 その後、気まずさから急いで着替えて、めちゃくちゃ走った。

 
→ハヤトとの会話を逃し、コミュ発生ならず。発生までこの選択肢の繰り返し。

────
41-1-3。
──Select──
  暫く様子を見る。
  挨拶をして入る。
 >今日は帰る。
──────


 ……そういう日もある、よな。


→ねえよ。

────
41-2-2。
──Select──
  中心から離れるにつれて温度が下がるから。
 >違う材料の火薬を数種類使っているから。
  最初から変わるように色付けされているから。
──────


 火薬が違えば、燃えた時の色も違うだろう。多分。
 含まれる原子によって生ずる炎の色が変わるといった内容も以前授業でやったし。
 
「クク、正解だ。これは炎色反応の応用だな」

→以後だいたい同じ。

────
41-2-3。
──Select──
  中心から離れるにつれて温度が下がるから。
  違う材料の火薬を数種類使っているから。
 >最初から変わるように色付けされているから。
──────

「……暗闇の中でそんな小さい物質の色の違いが見て取れるのかい? それとも中身は色付きの電球か何かなのかい?」
「……きっと見たらわかると思います」
「すごいねェ、今度解剖させてもらいたいぐらいだ」
「……せ、先生の専門は化学のなのでは?」
「化学が好きと言うだけで、物理も生物も興味はあるからねェ」
「ごめんなさい。考えなしでした」

→肉眼で見たことがないなら仕方ないネ。ね?

────

 こんな感じで。
 ……選択肢回収、面白そうなの思いついたときだけやろうかな。
 つまらなかったら読み飛ばしてください。選ばなかった選択肢が大事になってくることは(そうそう)ないので。


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