PERSONA XANADU / Ex   作:撥黒 灯

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 サブタイですが、基本開始場所かメイン舞台を入れた後に、その話の主題を置いてる感じです。
 ペルソナってほら、場所が変わると毎回注釈? 入るじゃないですか。
 そんな感じで。


4月14日──【マイルーム】実年齢と上下関係

 

 目が覚めた。

 馴染みのない匂いがして、次いで天井の模様に疑問を覚える。

 

「知らない天井だ……」

 

 言っておいて何だが、そこまでのことでもなかった。

 意識がはっきりしてくれば、昨日のことも思い出す。

 新居、新しいマイルーム。

 自分は新天地へとやって来たのだと。

 

 ──さて。

 まずやることは、身支度を整えて朝食を取りに外へ赴くことだ。

 当然だが、退院したての自分に自炊するスキルはなく、そもそも食材の1つも買い込んでいない。

 幸いにして、昨日の移動中、隣接する公園に売店のようなものがあったことを確認している。

 ……近所だし、軽く着替えて向かえば良いか。

 取り敢えず顔を洗い、鏡をみて違和感がないことを確認したらジャージに着替え、そのまま玄関へと向かう。

 

 ──ピンポーンっと。

 初めて響いた来客音は、このタイミングで奏でられた。

 

「……」

 

 出ないという選択肢はない。

 そもそもまだ室内だ。どのような格好をしていようが、見栄を張るようなことではないだろう。

 少しだけ間を置いて、扉を開ける。

 部屋の前には、美女が立っていた。

 

「……」

「こんにちは」

「こんにちは」

 

 柔らかい微笑みを浮かべて挨拶してきた、綺麗な水色の長髪と紫の瞳、豊かなプロポーションを特徴とする女性は、数秒観察するように自分を眺め、再度口を開く。

 

「初めましてですね。北都(ホクト) 美月(ミツキ)です。今お時間大丈夫ですか?」

「あ、はい」

 

 北都美月、数度聞いた名前だ。主に昨日だけだが。

 

「岸波さん、昨日こちらに来たばかりのようですし、朝食に困っているようでしたらとお誘いに来たんですけど」

 

──select──

  断る。

 >受ける。

  ナンパですか?

─────

 

 その申し出は願ってもない。

 ちょうど自分も外食へ赴こうとしていたところだ。

 その旨を伝えると、彼女はよかったと胸を撫で下ろした。

 

 ただ、流石にジャージ姿で美女の相手は務められない。

 

 

「身支度を整えるので、時間をください。よろしければ、上がっていきますか?」

「良いのですか?」

「まだなにもありませんけど」

「いえいえ、それではお言葉に甘えて、お邪魔します」

 

 適当に寛いでください、と座布団を指し、その場所を後にする。

 扉1枚を隔てた空間で、他愛もない雑談をしながら服を引っ張り出し、着替えていく。

 

 ……掃除しておいて良かったが、こういうことになるならお茶の1つでも準備しておくべきだった。

 

────

 

 ──>杜宮記念公園【杜のオープンカフェ】。

 

 

 身支度を整えた自分と美月さんはそのままマンションを出て、売店へと足を伸ばした。

 何でもこの時間帯から空いているお店は少ないらしく、それならば先に朝食を取ってから町を軽く案内するのはどうか、と提案されたからだ。

 売店横のテラスで、買ったサンドイッチとブレンド珈琲を広げる。

 見栄を張って奢ろうとしたが、相手の方が歳上とのことで断られてしまった。それにそもそもこのお金自体北都からの借り物。謂わば借金。

 別に気にしなくても良いと彼女は言ってくれたが、そうはいかない。そもそも借金があること自体精神的によくないということもある。早くお金を稼ぎ始めたいところだ。

 

「そういえば、お祝いがまだでしたね。退院、おめでとうございます」

「ありがとうございます、お陰さまでリハビリも終わりました」

「いいえ。……言い方は悪いですが、これも取引ですので」

 

 

 

 

 北都グループとの“取引”。それは云わずもがな、自分の病気に関するもの。

 冷凍睡眠(コールドスリープ)。生きていた時代で完治不可能な病に陥った時、肉体を保存することで、未来、治療法が確立した時代へ再度降り立つ為の技術。

 その処置もあり1年半ほど前、自分は再び、足を進めることを許された。

 眠った期間はおおよそ10年。出地や経歴などは一通り資料として残っていたものの、自分自身は、名前以外の記憶がない。

 叶うならば、取り戻したいと思う。

 しかし、願っても努力しても、何とかなることではない。

 だからせめて、生まれ育ったというこの町に、戻って来たと言うわけだ。

 

 ──岸波白野、16歳。

 

 そう、まだ自分は16歳らしい。

 何かを諦めるには、早すぎる。

 せっかく早い期間で目覚めることが出来たのだ。ここでなら、何かを培ったはずのこの町でなら、失ったものを、取り返せるかもしれない。誰かと会って話して仲良くなって。記憶が取り戻せなくても、いつかの自分を知っておくことが、当面の目標だ。

 

 

 

 

 朝食時に出す話題でもありませんが、と悲しげに眉を寄せて、北都さんは話し始める。

 

「……1人の高校生として。生徒会長として、先輩として言うなら、あの契約は、貴方の未来を強引に奪ったようなもの。恨まれても仕方のないことだと思います。それでも、貴方が最大限幸せな日々を送れるよう、尽力させていただきますから」

 

 目を伏せる北都さん。

 彼女が何をそこまで気負うのかは分からないが、きっとそこで罪の意識を感じさせるのは、間違いなのだろう。

 

「北都さん……」

「……」

「高校生だったんですか」

「……そこですか?」

 

 だって驚いたし、と笑って見せる。

 つられて彼女も、少しだが上場から固さが取れた。

 ……実際、そこら辺は良いように誘導されていたのかも、と思う。

  立場ある人って聞いていたし。競い合い、高め合う関係を築くなら、それなりに近い歳かもと考えてはいたものの、風貌や雰囲気もあり、20歳程度を想定していた。

 

 

「恨むなんてことはありません。冷凍睡眠にリハビリ、新生活の準備や学費関係の金額はすべて、北都グループが負担して下さったことじゃないですか。自分はその恩を返すだけです」

 

 支払った対価は、将来。

 自分はこれからの学校生活で一定以上の成績を修めて、北都グループへと入社、働くことになっている。目覚めた際に与えられた、援助の条件だった。

 

 確かに、それ以外選択肢がない状態で突きつけられた時点で、脅迫に等しいという見方もできる。

 だが、そもそも選択肢が与えられなかった場合を考えれば、感謝する以外のことはないのだ。

 前に進むことができる。それだけのことが、どれだけ重要で、重大だったか。

 

「そう、ですか……」

 

 自分の返事を聞いた彼女は、数秒考え込んだ後、鞄を漁り始めた。

 

「岸波さん、サイフォンは今お持ちですか?」

 

 サイフォン。通信端末の名前が、確かそんな名前だったか。

 コーヒー抽出機やダムなどに使われる原理と同様の名前。初めて説明を受けたときはややこしいなと思ったものだ。

 

「はい、退院の際に戴きました」

「では、連絡先の交換をお願いできますか? 困ったことなど、気軽に相談してもらえれば」

「いえ、いくらなんでもそこまで……」

「いいえ、私個人がしたいことですから。それに、近い未来で同僚となる方と仲良くしておきたい、というのは普通のことでしょう?」

 

 ……それは、まあ。

 

 >同僚 北都美月の連絡先を入手した!

 

 初めて連絡先を交換する人が会ったばかりの女性というのは、なかなか可笑しい気がする。

 

「改めて、よろしくお願いします、岸波さん」

「……仲良くする次いでに敬語は止してください。北都さんの方が先輩なんですから」

「申し訳ありませんが、これが素の喋り方なんです」

「じゃあ、岸波さんという呼び方だけでも」

「と言いますけど、実際は眠っていた分、岸波さんの方が歳上なんですけどね……分かりました。では岸波くん、と。代わりに岸波くんは敬語を止めて、好きな風に呼んでみてください」

 

 好きな風に、と来たか。

 本当に良いのだろうか。

 

「別に、躊躇うことありませんよ? どんな呼び方でも良いですから」

 

 じゃあ、遠慮なく。

 

──select──

  ミツキ。

 >みーちゃん。

  ハニー。

─────

 

 

「みーちゃん」

 

 度胸を問われている気がしたので、いっそのことあだ名を付けてみることにした。

 

 笑顔のまま固まるみーちゃん。

 流石に大財閥のご令嬢を初対面であだ名呼びする人間なんて居ないだろう。

 

 ……なにを、しているんだ、自分は?

 

 

「……ま、まさかそんな可愛い名前で呼ばれるとは。……不意打ちでした。コホン、やっぱりミツキさんと呼んで頂いても?」

 

 取り繕うような苦笑いを浮かべているけれども、顔はうっすらと赤みを帯びている。

 ……これは、少し面白いかもしれない。

 

「残念だけど断るよ、みーちゃん。みーちゃんたってのお願いだから呼んだのに、撤回なんて酷いじゃないか。みーちゃん、可愛いみーちゃんにぴったりなあだ名だと思う」

「で、では、私も岸波くんのことを白野くん……い、いえ、はくくんと呼んでも?」

「どうぞ。これで両者あだ名が付いたね」

「……すみません、本当に、普通に呼び合いませんか?」

「……ですね」

 

 まあ、この辺までがからかえる限度かもしれない。

 

「それじゃあ自分は美月と呼ぶ。噂に聞いた配属的に自分は部下となるみたいだが、本当に敬語を取って良いのか?」

「流石に公的な場なら付けてもらいますけど、私たちはまだ学生ですし、プライベートで歳上の友人に敬語を使われるのは嫌ですからね。では、私は岸波くん、と」

「……学校では先輩後輩あるが?」

「ええ、僭越ながら生徒会長でもあります」

「じゃあ学内でも敬語で」

「そうした方が良いかもしれませんね……それにしても、岸波くんがここまで良い性格をしているとは思いませんでした」

 

 初対面からこんな姿を見せるなんて……と苦笑する彼女から目を離す。

 続けて呟かれた、今回の件は忘れませんからね、という発言は聴こえなかったことにして、サンドイッチを頬張る。

 朝食そろそろ食べて場所移動したいが故の行為。そこに他意はない。

 

 

 





 ミツキがキャラ崩壊しているように見えるのは、彼女自身、複雑な立場にある白野に遠慮したり、その他もろもろの理由が重なって距離を取りあぐねてた、みたいな感じで。

 それでは選択肢を回収。


────
ケース3ー1。
──select──
 >断る。
  受ける。
  ナンパですか?
─────

「そうですか……失礼しました。それではまた後で」

 少し残念そうに歩いていく彼女の背を見送った。
 後、どこからか殺意を感じた気もしたが……気のせいだろう。



 →と、バッドエンドルートへの1歩目を踏み出した感じで。
  殺意を向けたのはミツキじゃないです。お前、親しくしろって言ったじゃん的なアレでした。
────
ケース3ー3。
──select──
  断る。
  受ける。
 >ナンパですか?
─────

「……ふふっ、面白いことを仰るんですね、岸波さん。ええ、そういう側面がないこともありませんね」

 マジか。
 マジでか。

「ちょっと着飾ってきます」
「あ、どうぞお構い無く」

 とはいえ一張羅のようなものを持ち合わせてはいない。
 ……なら全裸か。
 褌一丁なら男の一張羅と言えるだろう。


→言わずもがなのバッドエンド(ギャグ寄り)。

────
ケース4ー1。
──select──
 >ミツキ。
  みーちゃん。
  ハニー。
─────

「ええ、ではそれで。……ふふっ、呼び捨てにされたことはあまりありませんけれど、新鮮でいいですね」


→普通。

────
ケース4ー3。
──select──
  ミツキ。
  みーちゃん。
 >ハニー(要度胸3)。
─────

「……」

 言葉もでないみたいだ。
 ふふっ、驚いただろう。

「ハニーも、自分のことはダーリンと呼んでくれて構わない」

 どうだ、と胸を張る。
 もう自分でも何を言ってるのかわからなくなってきた。
 だが、退けない。
 踏み出した足を戻すなんて、できないからだ。


→ハーレムルートの可能性増し。言葉巧みに無自覚攻略を進めていくでしょう。2週目イケ魂ザビ子がきっとやります。
 


────
 こんな感じで。
 2週目……?
 だって東ザナもペルソナも、2週以上やるゲームじゃないですか……ですよね?

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