PERSONA XANADU / Ex   作:撥黒 灯

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 ここから、朝時間と夜時間を解放。

 基本、ニュースの確認だったり世間話を聞いたりが朝。
 家でなんか色んなことができるのが夜。
 みたいな。





4月25日──【九重神社】聞き込み調査 3

 

 

 

 ──>九重神社【境内】。

 

 

 

 

 

 

 立ち入った瞬間、ナニかを感じ取った。

 自然と背筋が伸びる。この感情は、何だろうか。

 

「道場は左側だ。さっさと行こうぜ」

「あ、ああ……」

 

 歴史を感じる神社の左側には、古風な民家が建っていた。

 いや、道場なんだっけか。

 表札には、九重と書いてある。

 

「……九重?」

 

 何処かで聞いた名のような気がする。

 そんな風に考えていると、家の戸がひとりでに開いた。

 

「それじゃあ行ってきまーす!」

「げっ」

 

 出てきたのは、どこか見覚えのある、中学生くらいの女子。

 それに対して、とても失礼な反応をする時坂。

 二人の目が合う。

 

「あ、コー君! いらっしゃい!」

「よ、よおトワ姉、さっきぶり」

「どうしたの? お爺ちゃんに用事?」

「まあ、そうだな」

「……んー?」

 

 怪しい……と首を傾げる女性。

 しかし時坂の呼び方で、漸く自分の記憶と結び付いた。

 

 

 九重(ココノエ) 永遠(トワ)。杜宮高校の数学教師。2年B組の担任も勤めている。

 編入日に職員室の前で会ったのが初めてで、以降数学の授業で顔を合わせていた。

 見た目とは裏腹に、その指導能力、学力は高い。人気教師の一人だ。

 そんな彼女の大きな瞳が、自分の姿を捉える。

 

「あれ、岸波君?」

「こんにちは、九重先生」

「こんにちは。あれ、コー君と一緒なんて珍しいね」

 

 コー君。やはり、時坂のことなのだろうか。

 

「……」

「見られたくなかったって顔してるな、時坂」

「……別に」

「……あ、ご、ごめんね、コー君!」

「だからコー君呼びは止めてくれって……!」

 

 どうやら、その呼び名が知られることに抵抗があるらしい。

 良いと思うが、コー君。呼びやすそうだ。

 

「あっ。ごめんね、そろそろ行かないと。どうやって仲良くなったとか、また今度聞かせてね!」

「いや、言わねえよ」

「むぅ、コー君のいじわる。じゃあ、またね! 岸波君も、コー君のことよろしくね!」

 

 元気な先生だ。

 こうしてプライベートの姿を見ていると、少し子どもっぽい所もあるのかもしれない。

 しかし仲が良さそうだ。コー君に、トワ姉。互いの愛称が少し幼気な気もする。

 ……そういえば、ここは時坂の祖父がやっている道場と言っていたか。

 表札は九重。先生の名字も九重。

 

「つまり、師範代は九重先生? でも祖父と言っていたか……はっ、女装!」

「ねえよ」

 

 無いらしかった。当然だろう。

 まあ順当に言うなら、つまり2人は従姉弟なのか。

 

「……ここが九重道場だ。ジッちゃんも中に居るみてえだし、とっとと行こうぜ」

「特に何も言わないんだな」

「何のことだ?」

「何もなかった体か。分かった分かった」

 

 まあ、相当に恥ずかしかったのだろう。

 取り敢えず、触れないのも優しさな気がするので放っておく。

 

 

 ──>九重神社《九重道場》。

 

 道場。踏み入れてもいないが、入り口に立っただけでも重みを感じる。

 空手部が活動していた部道場とは、また違った雰囲気。

 その中に、胴着を纏った男性が座していた。

 

「……コウか」

「邪魔するぜ、ジッちゃん」

 

 この人が、時坂の祖父。

 白髪の、還暦は超えていそうな男性。

 しかし、老人というには十分すぎるほど力を秘めている。

 そこにいるだけで、只者ではない感じが伝わってきた。

 これが武術を極め、道場を背負った者の姿なのか。

 

「そちらの者は?」

「岸波 白野。時坂くんの友人です」

「岸波……そうか。岸波くん、というのか。初めまして、九重 宗介(ソウスケ)という。愚息が世話になっているようじゃな」

「オイ、愚息って……」

「ふん、親孝行の1つでもしたら撤回してやるわい」

 

 何て言うか、仲良さそうだな。

 

「それで、何用じゃ?」

「ああ、今から説明する」

 

 要所要所は誤魔化しつつ、郁島さんの置かれている状況、それを心配して動いていることを伝えた。

 宗介さんは、少し厳しい顔をして頷きながら聞いている。

 時坂が言える範囲での全てを語り終えると、彼もゆっくり口を開いた。

 

「そう、か。では、わしも知っていることを話そう」

「「!」」

 

 彼が語ってくれた内容は、時坂の考えを裏付けるものだった。

 郁島さんの様子が変わったのは、新学期が始まり、部活への自主参加を積極的にするようになってから、おおよそ二週間後のこと。丁度馴染み始めたかに思えてきた頃らしい。

 深く聞いてみたことはないが一度だけ、部活はどんな感じか聞いてみたと言う。彼女は少し困ったように笑いながら答えたそうだ。

 『今は少しアレなんですけど、大丈夫です。優しい人ばっかりですから!』

 と。

 結果として、その答えを聞いた宗介さんは、嘘でないと判断し、経過を見守ることにした。

 

「……コウ、しっかり向き合い、支えてやるのじゃぞ」

「分かってる」

「岸波くんも、どうか、頼む」

「……はい」

 

 それは、征十郎さんが美月についてお願いしてきた時と、同じような瞳だった。

 孫を案じ、誰かを頼る目。

 この人にとっても、郁島さんは大切な教え子なのだろう。

 

 自分と時坂は道場を後にした。

 必ず解決してみせます、という誓いを立てて。

 

 サイフォンを起動する。

 結構な数のメッセージが貯まっていた。送り主は、璃音と柊さん。

 学校に残った2人も、色々な情報を収穫できたようだ。

 下校時刻が迫ってきたこともあって、2人は既に解散、それぞれ帰路についている。

 自分たちも、聞き取りが終わったこと、分かったことの報告を纏め、送信。

 最後に一言。

 

『明日の放課後話し合って、動くか動かないかを決めよう』

 

 

 全員から、了解の返事が返ってきた。

 

 

 

「一刻も早く、何とかしないと」

「だな。……待ってろよ、ソラ」

 

 道を別れ、帰路に付く。

 詳しくは明日の検証次第だ。原因が突き詰められたと思ったなら、物的準備を済ませ次第、もう異界へ乗り込める。

 頼むから、進展しますように、と夕焼けに願った。

 

 

──夜──

 

 ──>【マイルーム】。

 

 さて、調査も大事だが、寝る前に勉強を少し進めておこう、と教科書とノートを開く。

 一科目分だけ、教科書の内容とノートの中身を擦り合わせた。

 まずはこれから毎日、全教科分のやってる内容を理解していかないと。

 使えるのは、3から4時間程度。決して多くはないが、無駄にできるものでもない。

 ……効率的に、頑張ろう。

 




 知識+1。



 ゲームみたいに音符出ませんので、パラメータ・好感度推移は上のようにして表記していこうかな、と。
 各章の終わりにでも現状の人格パラメータを纏めていきましょうかね。
 上のような表現が気に入らない、というご意見があったら、章末の経過確認だけにすると思います。



 そろそろ佳境。


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