PERSONA XANADU / Ex   作:撥黒 灯

208 / 213
 

 閲覧ありがとうございます。





第7話ーB 大事なのは、強さではなく(Shooting Star)
11月1日──【部室】文化祭前日


 

「改めて、みんな、昨日はありがとう」

 

 1日休みをもらったお礼を、みんなに伝える。

 璃音も、自分に続いて頭を下げた。

 

「ホントに助かったよ。迷惑掛けてゴメンね」

「いや、事前に色々打ち合わせした甲斐もあってなんとかなったし、大丈夫だ。そうだな、進捗の共有しとくか」

 

 割り振った仕事の経過を聞く。本来は自分たちの仕事だったから、今日からはこちらでしっかりと行わなければならない。

 ……まったく考えてはいなかったけれど、みんなしっかりと取り組んでくれたんだな。思った以上に作業が進んでいる。

 

「本当にありがとう」

「気にしないで。困ったときはお互い様でしょう」

「ええ。それに、お2人も自身のご都合で休まれたのではないですし、そこまで気にされなくても良いかと」

 

 美月と明日香が気を使ってそう言ってくれた。

 ……これ以上なにか言っても、また気を遣わせるだけかもしれない。

 

「それにしても、画像見たよ。昨日はお愉しみだったみたいじゃん」

「ああ、楽しかったぞ。なあ璃音」

「……まあ、終わってみれば悪くなかった、かな」

「ユウキ、なんだその画像って」

「うん? 見てないの? 遅れてるなぁ。今転送してあげるからちょっと待って」

 

 大方、昨日のステージの写真だろう。

 仮装ステージということもあり、ある程度は期間を設けて撮影していいことになっていた。

 案の定、祐騎から全員に送られてきたのは、各々が思い通りのポーズをとっている集合写真だ。

 

「あー……これ、岸波か」

「よく見ると、こちらはリオンさんですね」

「わぁ、お2人とも、すっごく似合っています!」

「……アリガト、ソラちゃん」

「あ。久我山センパイ、その微妙な顔も写真撮っていい?」

「事務所NGで」

 

 まだ褒められることは嬉しくないらしい。

 とはいえ、空によって口から出されたその言葉が、本心であることを理解しているからこそ、何とも言えない表情をしているのだろう。

 祐騎や洸、自分が言っていたら怒られていた気すらしてくる。

 

「へえ、SPiKAの人たちもいたんだな」

「あ、ウン。その関係であたしも呼ばれたみたい」

「……1人だけ男装してんのに?」

「……言わないで」

 

 メンバー全員が仮装しているならまだしも、1人だけということはなかなかどうしてとなるだろう。

 けれど、集まったファンの方々にとっては嬉しいサプライズになったらしい。

 SPiKAのメンバーと仮装した璃音の絡みは、色々な歓声によって受け入れられていた。

 やはり、ファンも璃音の復帰を心待ちにしているのだろう。

 あの歓声を受けて、彼女がどう思っているかが気になるところだけれど。

 

「……さて、そろそろ行くか」

「明日が本番だし、正真正銘のラストスパートだな」

「確か今日は夜まで残れるんですよね?」

「ええ。あくまでも、“残っていい”としているのだと理解してください。本来であれば、早く帰ってほしいんですからね」

「でも僕以外の僕らは都合上、帰るの遅くなりそうだね」

「四宮も残っていいんだぞ」

「冗談。指示なんて本来であれば家からでもできるんだ。前日だからって、無理をする所じゃないよ」

 

 ならどうして今は部室にいるのか、という質問はおそらく野暮なのだろう。

 

 

 

 そうしてそのまま各自の作業のため解散。夕方の時間を過ぎ、やがて本来の下校時間を超えて、夜へと差し掛かる。

 夕食はみんなで部室で取った。

 各々のやるべき場所での作業を一通り終えた自分たちは、部室に戻ってそれぞれ本番に向けた作業へと取り組むことに。

 

 しかしその作業も数時間で終わる。

 いや、終わってはいないけれども、時間的な終わりが来てしまったというべきか。

 

「ここから先は明日、か」

 

 部室に掛けられた時計を見上げ、洸が呟く。

 その言葉には、若干の疲労が込められていた。

 彼の言葉を皮切りに、数人が伸びをしたりと疲れを露にする。

 

「最終的な出番は明後日だから、明日はまた作業だな」

 

 自分たちのこの作業が日の目を浴びるのは、文化祭後半になる予定だった。

 つまりは、まだ時間がかけられるということ。

 まだ妥協の2文字は見なくて良さそうだ。

 

「とはいえ、皆さんが回る時間もしっかり取らないとですね」

「あ、そうですね! ミツキ先輩や高幡先輩は最後ですし、しっかり楽しんでもらわないと!」

 

 美月の気を使ったような発言に、空が同意する。

 いや、空が言いたいのは、3年生コンビがしっかりと思い出を作れるように、自分たちで時間を捻出しようということか。

 ……とてもいいことだと思うけれど、それに大人しく同意するような先輩たちではないことを、自分たちはよく知っている。

 

「いや、俺たちは去年まで2回も楽しんだからな。逆に1年のお前たちが、来年のためにも今年楽しんでおけ」

「そうですね。生徒会長としても、皆さんには精いっぱい楽しんで頂きたいです」

 

 まあ予想通りの反応だった。

 

「そうね。来年の主軸はソラちゃんや四宮君たち現1年生だから、しっかりと学んで欲しいわ」

「いやいや、来年はコウセンパイたちの代でしょ。そんな無駄な期待かけないでもらっていいかな」

「いや、新1年生以外は皆さんが作り上げるんですからね?」

 

 生徒会長として真面目な注意が入る。

 まあ、明日香も祐騎も、こういう全体お祭りみたいな行事ではしゃぐ性格ではないのだろう。

 明日香はどちらかと言えば、一線を引いて他人と接するタイプ。祐騎はそもそも他人とコミュニケーションを取ろうとしないタイプだ。

 両者が他人事として学園祭を捉えているのは、まあ分からなくもない。

 それでも、彼らが文化祭の準備に取り組む姿は真剣で、楽しそうだった。

 なら何かキッカケでもあれば、本番ももっと楽しめそうだけれど。

 少なくとも、仲いいみんな……というか、自分たちX.R.Cで文化祭を回るのは、現実的じゃないからな。

 

「あのさ、誰かとかじゃなくて、別にみんなで回って一緒に回って、一緒に楽しめば良くないカナ?」

「残念だけれども、そこまでの余裕はないと思う。誰かしらは残って作業を進めないとだし」

「それにまあ、もしかしたら他の部活の連中から助っ人を頼まれる可能性もあるからな」

 

 洸の言う通りだ。

 全員席を外してしまっては、それこそX.R.Cとしてはよろしくないと思う。

 

 

「なるほどな。まあここまで散々あちこちに手を出してきたんだ。頼りたくなった時、真っ先に頭には出てくるかもしれねえ」

「じゃあわたし達も、X.R.Cの活動として、しっかりと応えないとですね!」

「そうね。だから交代で休憩を取る以外に手はないわ。一緒に回るとしたら、2人か3人が限度でしょう」

 

 なるほどな。

 まあ、洸や空などはX.R.C以外にも交流の幅が広い。

 休憩を取っても一緒に回らない可能性もあるか。

 自分も誰かと回る約束をしようか……

 

 

 ……文化祭、誰と回ろう。

 

 

──Select──

  柊 明日香。

 >久我山 璃音。

  フウカ先輩。

  ヒトミとマリエ。

  誰とも約束をしない。

──────

 

 

 ……後で連絡しておくとしよう。

 

 そうして、完全下校時間の少し前に、自分たちは荷物をまとめてそれぞれの帰路についた。 

 明日はついに初めての文化祭。

 楽しみだ。

 

 

 

 




 

 ……ソラとミツキは……どうしてコミュ5まで到達してないの……?

 一応個人的に大事なことなので明言しておきますと、今回は誰でもよかったのでルーレットを回しました。
 当然1/5の確率で、誰とも約束をしない(男共で回る)はあり得ました。
 本当です。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。