PERSONA XANADU / Ex   作:撥黒 灯

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 ペルソナっぽく章タイを付けるなら、英語。
 ルビ機能のおかげでふれるようになりました! やったね。

 本当なら我は汝……をやるのが一話の鉄板サブタイですが、私は英語ができないのでやめときます。

 あ、今作品ではRPG原作らしく、選択肢のような表記をしてたりします。
 選ばなかったものは没ネタとして後書きか今後に回収していく感じで。




4月13日──【駅前広場】杜宮という土地

 

 

「──ん」

 

 伝わってきた振動に、ふと目を覚ました。

 ……長い夢を見ていた気がする。

 冴えない頭とぼやけた視界で、窓の外で移り行く景色を捉えた。

 続いてもっと手前の情報──腰掛けるシートや自分の服装、前の座席と座る人を認識。同じ空間にいるのはその中年男性1人きり。彼の両手はハンドルに掛けられている。

 ……車の中?

 

「おう、お客さん、目が覚めたかい?」

 

 運転手がバックミラー越しに尋ねてくる。

 

──select──

  ここは……どこだ。

 >あとどれくらいですか?

  降ろせ誘拐犯!

──────

 

「ん? 杜宮駅まではあと5分くらいだよ」

 

 ──杜宮。

 

 聞いて思い出した。自分の目的地にして、新しい移住地である。

 

「お客さんはアレかい? アクロスタワーのコンサートに?」

「コンサート? アクロスタワー?」

「ありゃ、違ったか。今日はSPiKA☆ってアイドルグループのコンサートでね。アクロスタワーっていう……ああ、左側の窓から見えるだろう? あのでっかい塔で今夜、コンサートをやるんだ」

 

 覗いてみると、確かに立派な塔が建っていた。アクロスタワー……初めて聞く名前である。

 やはり、もっと調べてから来るべきだったか。こんなに立派な建造物があるなんて。流石、都会。

 きっとそこでコンサートをやるという……ス、スピア? も人気なのだろう。

 

「人気があるんですね」

「おうよ、杜宮市民はもちろん、遠くからもけっこう集まるんでっせ」

「もちろんってことは、この周辺で根強く活動されていたんですか?」

「おう。って言っても、メンバーの1人が杜宮市民、それも現役の高校生ってのが大きいんだろう。地元の星ってやつかね。噂を聞いて調べていくうちに気付けばファンになっちまったよ。とても元気の出る歌を歌うから、お客さんも1度聴いてみてくれ」

 

 熱く語る運転手。

 杜宮の高校生。学年は分からないが、そうだとしたら同じ学校になるかもしれない。

 

 自分がこの街に来たのは、一身上の都合で転校という措置を取ったから。

 杜宮高等学校。自分が通うことになる高校の名前だ。

 正直、杜宮の高校と言えばここくらいしか存在しない。

 その子が地元の高校に通っているならば、会う可能性も出てくるだろう。

 

「……よし、着きましたぜ」

 

 世間話の終了とともにタクシーが止まる。

 目的地である杜宮駅に到着。電車の走る音が確かに聴こえてきた。とはいえここからではホームを覗けないようだ。見た感じ、駅前ロータリーは車用の1階と歩行者用の2階に別れているらしい。

 ここら辺は流石都会だと言うべきだろう。東亰に来るまで幾つかの駅を経由したが、ロータリーから2階建てなんてそうなかったから。

 

「料金は10540円だ」

「はい。……あ、領収書ください」

「あいよ、宛名はどうするんで?」

「えっと、確かメモした紙が……少し待ってください」

 

 鞄の中を漁る。

 引っ越しの際詰められなかった小物に埋もれているが、確か費用申請用の書類があったはず……あった。

 

「えっと、“北都グループ”で」

「……お、おう、了解でさぁ」

 

 字の説明は要らなかったようで、スラスラと宛名欄を埋められた。

 ……一流企業とは聞いているが、そんなに驚かれる程の大企業なのだろうか。

 今回の移動費は北都グループから捻出される。契約のアフターサポートのようなものだったが、少し躊躇いを感じてしまう。

 

 ……よくよく見ればこの申請書類、自分の名前を書く欄が儲けられている。精算の合間に書いてしまおうか。

 

────Write your name!!

 

  性:岸波(きしなみ)

  名:白野(はくの)

 

 この名前で良いですか?

  →yes

   no

──────

 

「おう、お釣りと領収書だ」

「ありがとうございました」

 

 差し出された分を受け取り、挨拶してタクシーを下車。手を振ってくれた運転手に一礼し、走り去るのを見送る。

 ……最後まで愛想のいい運転手だったな。

 新天地で出会う第1の人間として、これ以上ない程ありがたい歓迎をされた気がする。

 

 

 

 

──>杜宮駅【駅前広場】

 

 

 降りてまず思ったことは、栄えている。ということ。

 駅は何階建てになっているのか分からないくらいに大きく、かつ、なんかテレビが付いている。連続して何かしらのコマーシャルを流していることから、録画なのだろうことは推測できた。実物を見るのは初めてだが、これがデジタルサイネージというものだろうか。

 テレビのようなそれは、駅とは逆側のデパート【MiSETAN】にも設置されている。

 その映像音声も含め、平日昼前という時間帯にも関わらず、結構な活気が生まれていた。

 

「さて」

 

 電化製品屋に正午。それが“待ち合わせ時間”である。

 現在時刻が11時12分。余裕を持つにしても、早く着きすぎていた。少し時間を潰す必要がある。

 と、いうことで。

 

──select──

 >ナンパをしよう。

  探索しよう。

  昼寝だ。

──────

 

 ……その選択には相応の“度胸”が必要だ。

 例えばそう、周囲から“英雄”と呼ばれるくらいな。

 

──select──

  ナンパをしよう。

 >探索しよう。

  昼寝だ。

──────

 

 時間的な都合でこの付近から出ればしないが、幸い駅前ということで多くの販売店がある。

 どこから回ろうか……?

 

──select──

 >ドラッグストア。

  本屋。

  電化製品店。

  宝くじ売り場。

──────

 

 ──>ドラッグストア【さくらドラッグ】。

 

「いらっしゃいませ」

 

 入店すると、奥にレジが見えた。

 癖の強そうな銀髪の優男が、白衣姿で立っている。

 

「おや? 見ない顔ですね、コンサートですか? それとも温泉旅行? 酔い止めなら左側にありますよ」

「お気遣いなく。冷やかしなので」

「素直だね!? まあ良いけどさ。なんでまたここに? 薬が好きなのかい?」

 

 薬が好きと言ったら、ヤバい人ではないだろうか。

 だが、複数ある選択肢から1番に選んだのは実際ここ。

 自分が知らない嗜好なのかもしれない……!

 

「いや、そんな熱心に考えることでもないと思うけど」

 

 嗜められてしまった。

 

「でも、時間潰したいなら本屋とかもあっただろう?」

「それは……目に入った場所から順に回ろうとしたたまけです。自分、ここに引っ越すことになったので、何があるのか見て回ろうと」

「……なるほど、じゃあもし何か病気に掛かったら【さくらドラッグ】まで。って、病気に掛からないのが1番だけどね!」

 

 

────

 

 

 さて、次はどこへ行こう。

 

──select──

 >本屋。

  電化製品店。

  宝くじ売り場。

────── 

 

 

 ──>本屋【オリオン書房】。

 明るい本屋だ。照明の話ではない。騒がしいという訳でもない。しかしレジに立つ店員の出迎え笑顔がとても自然で、明るいものだっただけ。

 それだけで、良い本屋だということを肌で感じ取れる。

 小説コーナーでは、小学生低学年くらいの女児が年不相応な本を読んでいる。学校はどうしたのだろうか。

 その他にも大人たちは、趣味など雑誌のコーナーに。その反面で漫画コーナーに集まる人は大学生が主だった。

 平日昼間だというのに、客が多い。とはいえ流石に高校生くらいの人間はいない。

 ……ドラッグストアと違い、ここに居るのは悪目立ちしそうだ。他所に移るとしよう。

 

────

 

 さて、次はどこへ行こうか。

 

──select──

 >電化製品店。

  宝くじ売り場

──────

 

 ──>電化製品店【スターカメラ】。

 中には入ると、強烈な冷房と多彩な液晶、鳴り響く宣伝に出迎えられた。

 【スターカメラ】。全国に展開する店舗らしい。自分にも聞き覚えがある程の知名度。とても品揃えが豊富そうだ。

 ここにも人が多くいる。加えてこの店内スピーカーから流れる宣伝に、展示テレビから流れるCM。とてもではないが、落ち着いて長居はできないだろう。

 

 

 こうして回っているだけで結構な時間が過ぎていたみたいだ。

 余った時間は残り少し。

 最後の1ヶ所。宝くじ売り場に行こう。

 

 

 ──宝くじ売り場【ウィークリーくじ】

 

「いらっしゃい! 学生さんかい? 始めて見る顔だね!」

 

 出迎えてくれたのは、愛想のいいお婆さん。

 

 他の店と違って、ここはテナントなどではなく、ボックスを構えているような形。そもそもの話、時間潰しには向いていない。

 ここに来ようと考えたのは、聞いてみたいことがあったから。

 

「学生にも買えるくじってあるんですか?」

「ああ、1枚100円のウィークリーくじなら買えるよ。最大5枚、運試しと思って、どうだい?」

 

 試してみようか?

 

──select──

  試す

 >試さない

──────

 

 ……よくよく考えると、今のこれは自分のお金ではない。余裕ができた時にでも買いに来よう。

 

「そうかい、また来ておくれよ」

 

 軽く会釈して、その場を去ることにした。

 

────

 

 駅前広場に戻ると、待ち合わせの時間まで残り10分程となっていた。それくらいなら、ここで待っていても不自然ではないだろう。

 早く着きすぎたのは誤算だったが、お陰で町の雰囲気を知れたような気もする。

 

「……?」

 

 相変わらず屋外ビジョンから流れてくる宣伝の音が強いが、耳に届く音のなかに、少し穏やかな音色が含まれた。

 音の出所を探すと、少し離れた所にギターを持ったアロハシャツの男性がいる。路上ライブのようだ。……時間帯のせいか、足を止めて聴き入る観客は居ないが。

 何となく、惹かれるままに近付く。

 陽気な声と朗らかな笑顔。これが夕方や夜なら、足を止めて聞く人も多いだろう。

 それだけに、何故この時間に弾いているのかが分からない。

 

 ということで、尋ねてみた。

 

「なんや自分、ド直球やな! 理由かぁ……単にワイの音楽で笑うてくれんのが1人でも増えればな、と思っとるだけや!」

 

 人を笑顔に。

 素敵な言葉だ。少なくとも今の自分には、できそうにない。

 青年に別れを告げ、待ち合わせ場所へと戻る。少しだけ時間があるから、考えてみることにした。

 

 自分は、何のために生きているのだろうか──

 

 

 





 ケース1ー1。
──select──
 >ここは……どこだ。
  あとどれくらいですか?
  降ろせ誘拐犯!
──────

「何処って……タクシーの中ですよ、お客さん」
「タクシー……?」
「杜宮に向かってくださいって言った後に、お客さんすぐ寝ちまいましたからなぁ、疲れていたんでしょう」

 杜宮……? そうだ、それは自分が今日から暮らす土地の名だ。

 →みたいな感じで、普通です。
────
 ケース1ー3。
──select──
  ここは……どこだ。
  あとどれくらいですか?
 >降ろせ誘拐犯!
──────

「おいおい、まだ寝ぼけてるんですかい、お客さん。ここはタクシーの中で、お客さんは杜宮に向かっている所でしょう」
「……知らない」

 →ちなみにこの後代金払わず逃げようとして刑務所行きのバットエンドがあったりなかったり。

────
ケース2ー1。
──select──
 >ナンパをしよう。
  探索しよう。
  昼寝だ。
──────

 →2週目があればザビ子がいろんなフラグを踏んでifエンドルートになります。たぶん。

────
 ケース2ー3。
──select──
  ナンパをしよう。
  探索しよう。
 >昼寝だ。
──────

 →待ち合わせ相手に遠回しな攻撃を受けます。
 パワプロだったら、『やる気が下がった』『体力が上がった』『監督の評価が下がった』的なイベントです。


 とまあ、こんな感じで今後とも進めていこうかな、と。
 残りの選択肢は次回以降で。
 また、白野の人間パラメータですが、こちらは今後、後書きかどこかで紹介するかと思います。

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