PERSONA XANADU / Ex   作:撥黒 灯

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 閲覧ありがとうございます。
 またしても遅くなりました。

 女教皇コミュ 前回までのあらすじ。

 柊 明日香は、色々な人に支えられている実感を持てと言っておきながらも、自身は人と距離を置きたがっている。
 その内容には触れられなかったが、近頃の彼女は敬遠していた友人づきあいにも精力的らしい。


10月17日──【ファミレス】明日香の戦う理由 1

 

 今日からテスト前期間で、部活動が全面的に禁止になる。

 普段誘えないような人も一緒に勉強できるというわけだ。

 当然、勉強は1人で、という人もいるだろうけれど、今日は取りあえず、水泳部のハヤトと一緒に勉強することにした。

 

 ……かなりはかどった気がする!

 そろそろ仲が深まりそうだ。

 

 

──夜──

 

 

────>【駅前広場】。

 

 

 放課後から夕食までの時間をしっかり勉強に打ち込めたので、気分転換がてら外出することに。

 散歩すること暫く。駅前広場にたどり着くと、見覚えのある少女がドラックストア前に立っていた。

 

「明日香」

「あら、こんばんは」

「こんばんは。買い物か?」

「ええ、少し見回りのついでの買い出しにね。ハクノは?」

「散歩」

「そう」

 

 会話が途切れる。

 切り上げるならここだろうけれど……どうしようか。

 

 

──Select──

 >話を続ける。

  切り上げる。

──────

 

 

「せっかくだし、話をしないか?」

「ええ、良いわよ」

 

 明日香と少し話していくことにした。

 

 

────

 

 

「そういえばお泊り会以降、女子会みたいなのはやってるのか?」

「全員が集まるということはあまりないけれど、2人か3人でなら数回あったわね」

「そうか」

 

 本当に距離が縮まったようで何よりだ。

 少し前からすると、全然考えられない関係性だろう。

 

「そのメンバーで何を話しているのか想像がつかないな」

「あら。なんだと思う?」

「そうだな……」

 

 

──Select──

 >面白エピソード?

  将来の話?

  コイバナ?

──────

 

「ふふ、リオンあたりは話題に事欠かないでしょうね」

「空も明日香も美月も、色々な経験してるだろうし、探せば無限にありそう」

「そうかしら。……私はそうでもないけれど、皆はそうかもね」

 

 

 明日香は楽しそうに微笑んでいる。

 

「残念だけれど、そんなテーマを決めて話しているわけではないわ。その日あったこととか、それこそ面白かったこととか、勉強の話も部活の話も、色々としているの」

「他愛もない話ってこと?」

「ええ。他愛も取り留めもない話よ」

 

 その内容で、何度も何度も集まれるのは、本当に仲が良いということだろう。

 あんなに、人と距離を詰めることを躊躇っていた明日香がそんなことをするようになるなんて、本当に考えづらくて、嬉しい変化だ。

 

「変わったな、明日香」

「……皆のお陰でね」 

「もう関係性に悩むことはなくなったか?」

「それは……」

 

 言い淀んだ彼女。

 どうやら、そこに関してはまだらしい。

 前回は彼女の悩みに全然手を伸ばせなかったが、今日は、聞いて大丈夫だろうか。

 ……あの時からさらに距離を詰めることのできた今なら、大丈夫だろう。

 

「前に、なれ合いになってしまうのが怖いって言っていたとも思うけれど、あれは結局どういう意味なんだ?」

「……ああ、そういえばそんな話をしてしまったわね」

 

 失言だったわ。と過去の自身に呆れる明日香。

 確かに、彼女はあの時も、途中ではっとして言葉を止めたっけ。

 その反応から察するに、あれは漏らすつもりのない本音だった、と捉えて良いだろう。

 

「なれ合いになるのは確かに怖いわ。けれど、本当に私が避けたかったのは、また別のことよ」

「それは?」

「一言で言うのであれば、掲げたはずの志を、見失ってしまうことかしら」

 

 掲げたはずの、志。

 言い換えるのであれば、当初の目標だったり、夢だったりということだろうか。

 彼女は、何を掲げたのだろう。

 

「その志が何か聞いても?」

「……」

 

 目を伏せる明日香。

 言いづらいことなのだろうか。

 

「ハクノの志は、悲劇から目を逸らさないで、できることをする。だったわね?」

「? ああ、そうだ」

 

 まあ今では色々と増えてはいるけれど、当初に掲げたものは、自分の戦う理由は、紛れもなく彼女が今言ったそれ。

 しかし、なぜ今急にそれを確認されたのか。

 思い付くとすれば、比較対照……彼女が自分のと比べて、語りたくない理由がある時、だろうけれど……分からないな。耳を傾け続けるしかない。

 

「コウも確か、似たようなもの……というか、貴方のを聞いて明確に定まったようなものだった。貴方もコウも、手の届く範囲は助けたいという思いを共有している」

「そうだな」

「そして、リオンは元々、夢のため。ソラちゃんは確か、何かを諦めることを是としないため。四宮君は知らないものを知るため。高幡先輩は過去に掲げたものを裏切らないため」

「……すまない、つまり、何が言いたいんだ?」

「ミツキさんは一旦置いておくとして、ここまで上げたみんなの共通点、分かるかしら?」

 

 共通点?

 聞いた感じ、ばらばらのように思えるけれど、しかし彼女には何かが見えているのだろうか。

 だとしたら、何だろう。 

 

──Select──

  自分が主体である。

 >未来をより良くしようとしている。

  今の自身に足りないものを求めている。

──────

 

 

「上手く言えないけれど、自身の思い描く未来へ近づけようとしている、と思う」

「そうね。未来を見据えている。まっすぐ前を見て、自分をより輝かせるためのことを考え、他者に気を配ってさえいるわ」

「……」

「でも、私は違う」

 

 目を細めた彼女は、小さく否定の言葉を零した。

 ……聞き返さなくてはならない。聞かれたくなくて、小声にした内容だとしても。

 

「何が違うんだ?」

「私の掲げたものなんて、そんな輝きに満ちたものじゃない。誰もが見て、聞いて、心惹かれるようなものでは、決してないのよ」

「……そうまで言うなら、教えてくれ。明日香の志とは、何だ?」

 

 自分の問いに、すっと息を吸い込んだ彼女は、ただ1言、零した。

 

「復讐」

 

 いつから周りの音がこんなになかったのか、と言わんばかりに、彼女の声がよく脳内へ響く。

 

 復讐。

 それが彼女の、したかったこと?

 戦う理由?

 

「10年前の東亰冥災の時、私は目の前で両親を亡くしたの。現実世界に浸食した、シャドウたちによって」

「冥災……そうか」

「私はあの時、決めた。そして誓ったのよ、あの剣に。すべてのシャドウを滅ぼし、異界をすべて取り除いて、両親の敵をとることを。……他でもない、両親の遺品である、ソウルデヴァイス《エクセリオンハーツ》にね」

 

 ……?

 ソウルデヴァイスが、両親の遺品?

 どういうことだ? ソウルデヴァイスは、個人が覚醒する際に顕現する武器。受け継ぐとか、そういったことが可能だと?

 ましてや受け継ぎができないとしたら、両親が使っていた武器と、まったく同じものが彼女に目覚めたということだろうか。

 そうなると、自分の知っている知識と、食い違いが起こる。

 

「……長く話過ぎたかしら」

「え?」

「時間、結構経ってしまったでしょう。明日もあるし、今日はもう寒いわ。解散にしましょう」

 

 有無を言わさず、会話を切る明日香。

 ……次に話すまでに、色々と確認しておくことがありそうだ。

 とりあえず、色々と彼女の深いところまで知ることができ、縁はより強固なものになった気がする。

 ……自分も勉強しなくてはだし、今日はそろそろ帰るとしよう。

 

 

 




 

 コミュ・女教皇“柊 明日香”のレベルが6に上がった。


────


 知識  +2。

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