PERSONA XANADU / Ex   作:撥黒 灯

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 閲覧ありがとうございます。
 いつも誤字脱字の報告を頂きまして、ありがとうございます。
 作品に関する愚痴は出来るだけ避けてますが、1つだけ。
 自分が書いているのは果たして九重先生なのか、トワ会長なのか、トワ教官なのか……ふと気づくと違和感が酷いんですよね。
 どこか九重先生としての違和感があれば教えてください。





9月21日──【教室】九重先生の心配

 

 

 どうやら、同じ生徒の立場のみんなからは情報が得られないみたいだ。もしかしたら、流行の年代層が異なっているのかもしれない。

 ということで、今回は先生たちに聞き込んでいくことにしよう。

 

 

 ────>杜宮高校【職員室前】。

 

 

「そうですか……失礼しました」

 

 思った情報を得ることはできなかった。

 最初に特別棟一階のマトウ先生、本校舎3階にいたシオカワ教頭、屋上にいたサキ先生、保健室前で出会ったタナベ先生に、保険医のケイコ先生。5人の大人に確認したけれど、全然心当たりはないらしい。

 そもそも流行を聞いてみたは良いのだけれど、タナベ先生やマトウ先生は自分の好きなことを語ってくれて、シオカワ教頭はそんなことよりすることがあるだろうと怒り、サキ先生とケイコ先生は首を傾げていた。

 ……これからどうしようか。

 他に関わり合いのある先生といえば……あ。

 

「九重先生!」

「! ……あ、っとと、き、岸波君」

 

 小柄な女性が角を曲がってくるのが見えて、駆け寄る。

 眼鏡を掛けて、書類をたくさん抱えた茶髪──九重 永遠先生が、驚いたようにこちらを向いた。その拍子に手に持っていたものが崩れかけたけれど、彼女はすんでのところで止めた。

 彼女の手に再び収まった書類を見て、2人でほっと息を吐く。

 その後、彼女は照れたように笑った。

 

「えへへ、ごめんね」

「いえ、自分は何も」

「……えっと、それでどうしたのかな?」

「あ、えっとですね」

 

 聞きたいのは、今彼女の周囲で流行っていることだ。

 それを尋ねてみると、九重先生は困ったように眉を寄せる。

 

「うーん……ごめんね。それはちょっと力になれないかも……」

「そうですか……」

「特に最近話題が偏っているとかもないし、みんなまばらな方向に興味が向いているのかも」

「……何か他に、気になることとかってありますか? 以前と比べて、ここが違うっていうのとか」

「うーん……気になった、っていうベクトルは違うかもだけど、朝、サイフォンを見ながら登校してくる生徒が増えたかも。最近職員室でも話題になってたから。岸波君も気を付けてね」

「……はい」

 

 朝か。明日から少し意識して見てみようか。

 

 

「あ、そうだ。話は変わるけれど、岸波君。今日って時間あるかな?」

「? はい、大丈夫ですけれども」

「じゃあこの前の続き、しない?」

「続きというと……」

 

 ……プログラミングの特別授業のこと、だろうか。

 だとしたら、願ってもない申し出だ。

 

「是非、よろしくお願いします」

「うん。じゃあ、先に教室へ行っててもらえるかな? わたしも準備したらすぐに行くから!」

「はい」

 

 ……視聴覚室へ行こう。

 

 

────>杜宮高校【視聴覚室】。

 

 

 前回の反省を活かし、あらかじめパソコンは立ちあげておくことにした。

 そして、先生が来るまでの間に準備が完了したので、復習がてらに前回貰った資料をぱらぱらと捲っていく。

 中盤以降は、自分の力で読み進めることはできない。理由は、圧倒的な経験不足。それは今後の彼女との授業で埋めていくとして、後必要になりそうなのは、“知識”くらいだろうか。 ……とはいえ、自分も伊達に“秀才級”と呼ばれているわけではない。このくらいであれば、コツさえつかめば何とかできる、はず。

 まあやってみないことには変わりないのだけれど。

 

 ……それにしても、遅いな。

 

 彼女の来訪を待って、もうすぐ15分が経つ。

 もしかしなくても、忙しかったのではないだろうか。

 もしそうであるならば、彼女の好意を無碍にする形になってでも、断るべきだろう。そう思い、席を立とうとしたところで、廊下からパタパタと音が聴こえてきた。

 

「ごめん! 待ったよね、本当にごめんね!」

 

 視聴覚室の扉が開かれ、息を若干切らせた

 

「ごめんなさい、走ってまで来てくれて」

「うっ……ううん、申し訳ないんだけど、早歩きだよ? 流石に先生が校舎を走っちゃうと、ね?」

 

 困ったように微笑む先生。

 確かに、注意し、諫める立場の彼女が、自ら進んで規律を破ることもないか。

 

「もうちょっと足が長ければ、もっと早く着いたんだけどなぁ」

 

 

──Select──

 >気にしていたんですか?

  もう大丈夫なんですか?

  何かあったんですか?

──────

 

 

「それは……少し、少しだけ、ね! こういう時に、ちょっと羨ましく思ったりもするくらいかな。いつもはそこまでじゃないんだよ? ほんとだよ!?」

「そうですか」

「……むぅ。絶対信じてないよね?」

「まさか」

「微笑ましいものを見る目をしてる」

「……まさか」

 

 サイフォンのカメラをインサイドモードに切り替える。

 ……いつも通りの顔だ。

 

「いつも通りでした」

「自分の顔を見たからじゃないかな?」

「なるほど」

 

 ……なるほど。

 まあ一理ある。

 

「と、取り敢えず、自分は九重先生が今の見た目で良かったと思いますよ」

「……ふふっ、コーくんも、同じこと言ってくれそう」

「同じこと?」

「うん。えーと……『トワ姉はトワ姉だろ』とか、『それもトワ姉“らしさ”じゃねえの』って言ってくれるそうだなって」

「……確かに、洸なら言うかもですね」

 

 言いそうな気がする。分からないけれど。

 しかしよく見てるなと思ったけれど、九重先生と洸は確か従姉で、付き合いが長いんだったか。

 

「洸って昔から変わらないんですか?」

「昔からって、何が?」

「真っすぐというか、誰かの為の労力を惜しまない感じというか」

「そうだね、そうかも。元々すごい優しかったっていうのはあるけど、その上でお爺ちゃんの教えと言うか、武術を習う上での心構えがあったからかな。推測だけどね」

「なるほど」

「……でも、昔はあんなに……」

「はい?」

「う、ううん! なんでもないよっ」

 

 ……昔はあんなに?

 ということは、前はそこまでではなかったということか。

 そういえばどこかで、九重先生に心配をかけているという話を聞いたような気も。

 

「九重先生は、洸が心配ですか?」

「……うん。なんというか、今のコー君は、なんか無理している気がするから」

「無理を?」

 

 確かにどこか張り詰めている気はする。

 無理をしているかどうかは分からないけれど、何と言うか、生活に余裕はないよな。常日頃から皆のお願いを聞いている関係で、常に忙しそうだし。

 

「まあそうですね。彼に救われている人は多いですけれど、彼自身はどうなのかって思います」

「うん。本当はちゃんと話した方が良いとは思っているんだけど……でも、コー君が頼ってくれるまでは、出来るだけ見守るって決めてるんだ。」

「それはどうして?」

「多分、自分で気付いた方が、良いと思うから」

 

 それは、そうかもしれない。

 だけれど、ただ見守るというのは、案外難しいことだろう。今まで異界攻略を終えた後に、

 特に距離が近い相手ならば、一層。

 姉弟のように昔から接してきた相手ならば、特に口を出したいことでいっぱいなのではないだろうか。いや、洸がなにか悪いというわけではないのだけれど。

 しかし、そう考えると。

 

「九重先生は」

 

 

──Select──

  良い先生なんですね。

  良いお母さんなんですね。

 >良いお姉さんなんですね。

──────

 

 

「お姉ちゃん……そうだね。コー君がトワ姉って呼んでくれる限りは、そうでありたいかな」

 

 一見するとその慈愛は母性のようにも見えるけれども、流石に若い九重先生を母親呼びするのは躊躇われた。

 まあ、母の何たるかを実際には知らない自分が、それは母性ですね。だなんて口が裂けても言えないけれども。

 しかし姉か。

 姉と言って一番に思い出すのは、祐騎の姉である葵さんだろうか。

 彼女は何と言うか、可愛い弟の為に世話を焼きすぎているイメージがある。

 弟……いや、九重先生にとって洸は弟分だろうけれど、そんな弟たちを愛しているのは同じのように見えても、やはり環境によって違うんだな。

 

「……そろそろ、勉強を始めよっか」

「あ、はい。よろしくお願いします」

「分からないことがあったら、何でも聞いてね」

 

 優しく微笑む九重先生。

 少しだけれど、彼女の思いやりに触れることで、彼女に対する理解が深まった気がする。

 

 そのまま、プログラミングの勉強を始めた。

 一時間半ほどは行っただろうか。

 理解が深まったような気がする。

 

 ……今日はもう帰ろう。

 

 

──夜──

 

 

 今日は読書をしよう。

 『水泳・入門編』はもう2回読んでいる。そろそろ読み終わりそうだ。

 序盤では基本的な泳ぎ方の一覧や遊泳に必要な筋力について。中盤ではその筋力を育成する方法や、、水がなくてもできるトレーニング方法などを学んだ。

 終盤では、水に対する心構えなどが書かれている。

 

 ──水とは感情を映すもの。恐れを持って挑めば、彼らはきっと諸君を呑み込むだろう。故に水と向き合う際は、関心と好奇心のような良好なものを持って挑むべきだ──

 

 ……ふむ。失敗を恐れていては成功はない、ということだろうか。

 確かに溺れるイメージを持って泳いでいたら、一向に浮かぶ泳ぎをできないだろう。

 よし。さっそく試してみたい……けれども、次の練習日は来週になるのか。随分と先の話のように感じるけれど、楽しみだ。

 

 

 




 

 コミュ・法王“九重 永遠”のレベルが3に上がった。



────
 

 知識  +1。
 根気  +2。


────


 選択肢回収150-2-2。

──Select──
  気にしていたんですか?
 >もう大丈夫なんですか?
  何かあったんですか?
──────


「うん、ゴメンね、ちょっと急ぎの相談があって」
「相談、ですか?」
「うん。その、詳しいことは言えないけど、受験生の子が困ってるみたいだったから、ちょっと。ゴメンね?」
「いえ、そういうことなら」

 元より、彼女の好意で特別授業を施してもらっている身。文句なんてあるはずもない。
 ……というより、その困った人を放っておけない性質。やはり血筋なのだろうか。

「九重先生は、やっぱり洸の親族ですね」
「ふぇ?」

 可愛らしく首を傾げる彼女。
 
「そういえば、洸って昔から変わらないんですか?」

→ここから合流ですね。好感度♪はなし。



 選択肢回収150-2-3。

──Select──
  気にしていたんですか?
  もう大丈夫なんですか?
 >何かあったんですか?
──────


「うーん。何かあった、という訳じゃないんだけど、ちょっと困っている子が居たみたいだったから、声を掛けたんだ。ゴメンね、遅れちゃって」
「いえ、ぜんぜん他の方を優先していただいて構いません。自分の要件は約束をしている訳ではないですし、緊急性もないので」
「……ううん、そういう訳にはいかないよ。せっかく頼ってくれたんだもん。しっかりやらなきゃ。とにかく今回はゴメンね!」

→特にコメントもなくこの後選択肢合流。こちらは♪1。



 選択肢回収150-3ー1。
──Select──
 >良い先生なんですね。
  良いお母さんなんですね。
  良いお姉さんなんですね。
──────


「良い先生……そっか。ありがとう!」

 花が咲くような笑顔を見せてくれる。

「えへへ、そう言ってくれると、本当に嬉しいなぁ。頑張って教えるねっ」

 身体の前で握りこぶしを作る彼女。気合いを入れてくれるのは嬉しいのだけれど、何がそこまで彼女のやる気に繋がったのだろうか。
 “良い先生”という単語。これに九重先生が反応したというのなら、彼女は良いと認められたい“理想の先生像”があるのかもしれない。その姿勢を誉められたと思い、嬉しくなった、とか?
 あくまで推測でしかないけれど。
 ……何はともあれ、彼女がやる気に答えられるよう、頑張らなければ。


→♪3。


 選択肢回収150-3ー2。
──Select──
  良い先生なんですね。
 >良いお母さんなんですね。
  良いお姉さんなんですね。
──────

「お、お母さん……!」

 言うと、少しショックを受けたように彼女は後ずさった。
 ……確かに、彼女の年齢を考えると、少し失礼だったかもしれない。

「お母さん……あはは、そう、見えるかな……」
「ごめんなさい、忘れてください」


→少しどころではなく失礼。♪なしですね。 

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