タイトル通りでございます。どうぞ。
──サイフォンのアラームに目を覚ます。
まだ3日目ではあるが、見慣れた景色だ。
整理がある程度終わり、しかし特徴のないままのマイルームを、寝ぼけた視界で眺める。
目が冴えてきた。
……今日は編入日だ。学校へ急ごう。
────
「おはようございます!」
「おう、おはよう」
黒の学ランに袖を通し、しっかりと着込んだ自分は、少し妙なテンションになりながらも杜宮学園に到着した。
校門に立っていた教職員らしきジャージ姿の女性に挨拶をする。
そのまま校舎内へと入ろうとするが……下駄箱がない。土足で踏み行っても良いものか。
というかそもそも、自分はどこへ行けば良いのだろう。
──困った。事前に登校日の流れについて聞いておくべきだった。
誰かに聞きたい所だが、周囲に人影がない。
仕方ない、校門まで戻り、教員らしき女性に話を聞こう。
「あん? 転入生……? ああ、アンタか。まずは職員室へ行きな」
「土足のままですか?」
「ん? ああ、そうだが」
下駄箱がない時点でそうじゃないかとは思っていたが。
しかし、学校内は上履きじゃなく土足とは……都会の学校とはそういうものなのだろうか。
一旦自分の中で疑問を保留にして、校内へと入る。
土足で移動する割りに床はきれいだった。
きっと生徒たちが丁寧に掃除しているのだろう。入口に敷かれたカーペットも大きかったし、入る前に汚れを落とそうという意識が結構高いのかもしれない。
そのまま目の前の階段を上がって3階突き当たり。3年A組横の職員室の前に立つ。
「……」
どのタイミングで入ろう。
「あれ、キミは……?」
声が、掛けられた。少女の声だ。
振り返る。
しかし視線の先には誰もいない…ように思えたが、少し視線を斜め下に下げると、その人は居た。
「えっと、違ったらごめんね、新入生の子かな?」
「あ、はい」
「ホント? ふふっ、良かったぁ。じゃあ君が岸波くんだね!」
自分のことを知っていたということは、教員なのか、この人。
背丈は150cmあるかないか。いやないだろう。ないと思う。
自分の首ほどしかない身長に細い手足。大きい瞳に眼鏡。髪は水色のリボンで一房に纏められている。
……うーん、確かに、なんとなく自分より年上な気が、しなくも、ない……?
「担当の先生を呼んでくるから、ちょっと待ってて!」
そう自分に告げた小柄な女性は、職員室の中へと入っていく。
やはり教職員だったらしい。
「お、来たか、岸波」
交代で出てきたのは、佐伯先生。以前に受けた説明では、自分が所属するクラスの担当教師らしいが。
「ああ、改めて自己紹介をしておこう。佐伯 吾朗だ。岸波が編入する2年D組の担任で、かつ2学年の英語を受け持っている。以後、見知りおき願おう」
────
──杜宮学園【2ーD教室】
佐伯先生と再会した後、校長にも改めて挨拶をし、数十分の時間を過ごした。
その後、彼の誘導で、教室前へと連れてこられる。
「1階の中央階段を昇った場合、2階に上がって左手奥にあるのがこの教室だ。この校舎は教室が少ないから迷うことはない思うが、他所の教室に入ると恥ずかしいだろうからな、最初のうちは気を付けてくれ」
頷きを返す。
そう難しい構造もしていない為、彼のいう通り間違いはないだろう。
自分のクラスさえ忘れなければ、だが。
「では呼んだら入ってきてくれ。そうだ。自己紹介は考えておけよ?」
「何を言った方が良いんですか?」
「ふむ……名前、趣味、意気込みくらいか。言いたいことがあったら言っていいぞ。多く情報を渡せばコミュニティが出来やすい反面、多すぎると相手も受け止めきれないからな」
「難しそうですね」
「はは、そう悩ましげな顔をするな。気楽に、ありのまま行けばいい。だがそうだな……1つ助言するなら、インパクトはあった方が良いぞ」
時間はないが少し考えておけよ。と言って、教室の扉を開ける佐伯先生。
インパクト……インパクトなぁ。
いきなり、「記憶喪失です」ってやればインパクト強いだろうか。
……強いだろうが、引かれるだけな気がする。数年眠ってました。も、やはり同様だろう。
やはり己の状態でインパクトをとるのは間違っている気がする。
だとしたらどうするべきか。
趣味……趣味の所でなにか言うべきか?
なにもないから、募集でもしてみれば良い案が出るかもしれない。
……自己紹介ではないな。
そもそも趣味はありません。なんて無個性の代表のような弁だろう。それは少し嫌だ。
それを打ち消せるような何か……何かないか!
「おーい、入ってくれ!」
佐伯先生の声が聞こえる。
もう、なるようになれ、だ。
「失礼します」
教室に入る。
同じ服……まあ学校だから当然だが、同じ制服を着た少年たちの視線が集まる。
見られている。不思議な感じだ。こんなにも多くの視線を集めたことはない。
「それじゃあ、自己紹介を」
「自分は岸──」
待て。普通に名乗って良いのか?
趣味はなく、意気込みも無難。そんな自分がインパクトをとれるとしたら、此処しかない。
今、インパクトのあることを言わずに、いつ言う──!
「自分は──ッ、フランシスコ・ザビ「ちょ、ちょぉっと待ったぁ!!」」
乾坤一擲、すべてを賭した挨拶が掻き消された。
扉が大きな音をたてて開く。
音の主は、見覚えのある少女。
「玖我山 璃音、間に合ってます!」
教室には、なんとも言えない間が空いた。
次第に、ざわ、ざわ……とざわめきが起こる。
生徒たちの内緒話の対象は、
「え、なに、この空気……」
遅れてきた少女、玖我山 璃音が再起動する。
自分が一昨日会った、違和感を覚えた彼女。
参った、本当にアイドルとクラスメイトになるとは。
「ってキミ確か……そう、岸波……岸波 白野くん!?」
「どうも」
取り敢えず、自分の挨拶は遮られてしまったものの、アイドルに自己紹介される、というインパクトは及第点……なはず。
鉄板ネタ(?)回。
P3……キタロー
P4……番長
P5……ジョーカー
Fate/Extraシリーズ兼今作……ザビ
Fgo……ぐだ
自由名系主人公は分かりやすいあだ名が多くて良いですね。
原作をやってて思ったこと。
職員室と校長室どこじゃい……そもそも校長誰じゃい……
あと下駄箱も……まあ校内でローファというのも可笑しくない……のか?
それにしては廊下きれいすぎィ!
……ふぅ。
誤字脱字報告、感想お待ちしています!