とある世界の魔獣図鑑   作:名無しの権左衛門
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9:常盤學区――脈動

 にらみ合う新城とデンリュウ。


 戦闘は刹那だ。
十全にチャージし充電し終えたデンリュウは、新城に『チャージビーム』を放つ。
 ポケモンバトルではない。そのためトレーナーを消しに来るデンリュウ。
 さすがにわかっていたとはいえ、行動が遅くなってしまう新城。
 あともう少しで当たる。

 そんな時、新城は足をすくわれ尻もちをつくことになった。これにより最大チャージの光線にあたることがなくなった。

「どわっ!?上山!?」
「旅は道連れ世は情け、かな?手伝うよ!」

 そういって二人は宝石「ボール」から、小さなポケモンを出す。

「来い!旧ポケモン、ディグダ!」
「出てきて!旧ポケモン、サイホーン!」

 宝石[ボール]から、赤い光線が出てくる。その光線が地面につくのと同時に、ポケモンの形を作る。そして光をまとうポケモンは、徐々に光を消していき本体を出現させる。

「ディグ!」
「ホーン!」

「リュァァアアウ!」

 二匹のポケモンを前に、旧ポケモンデンリュウは威嚇する。サイホーンのみ一瞬だけびくっとする。ディグダは全く動じない。

「デゥアア!!」

 デンリュウは、『ほうでん』を繰り出した。サイホーンのひらいしんで、無効化される。

「リュウッ!?」

「流石サイホーン!電気タイプは完封だなぁーあ!」
「いいから攻めてほしいかな?かな?」
「っしゃあ!いったるぜ!ディグダ、穴を掘れ!かく乱するんだ!」
「ディグ!」

 ディグダは地面に潜って、デンリュウの集中力を無駄に使わせ精神力を切らせようとする。
結果動きが鈍くなって、雷や放電を繰り出して暴れまくる。
だが全てサイホーンの避雷針によって、完封される。

「今だ、ディグダ!」
「ディグ!」

 ディグダはデンリュウの真下から、突きあげるように攻撃を加える。
デンリュウはそのまま盛り上がる地面にしがみついてしまい、攻撃をまともに受け空中に身を放り投げてしまう。この好機を逃すほど、トレーナーである上山は逃さなかった。
 すぐにサイホーンに、『いわおとし』を指示。

「ホオオオオン!!」

 足元にある瓦礫を巧みに打ち上げる。それらは上手くデンリュウに直撃し、爆発を巻き起こす。
爆煙に巻かれ尾を引く塊が、地面に落ちてくる。真下にはディグダがいる。ディグダはすぐに退避しようと行動する。


 しかし煙の中から見える光が、ディグダを襲う。

 床を木っ端みじんに破壊し、陥没どころか下の階にまで達してしまう。

「ディグダ!」
「新城、ここはサイホーンに任せて!」
「何を―――」


 新城の反応等お構いなしに、上山はサイホーンに指示する。

「サイホーン、『マグニチュード』!」
「ホオオオオン!!」

 前足を地面にたたきつける。

想定威力、マグニチュード7!!

 これにより搭乗口がある二階の床が、サイホーンを中心に直径500Mほど崩れ落ちてしまう。すでに飛行場館内は、警察により退避が完了しているので人的被害がなかったが、新城達全員が一階の受付[フロント]に墜落する。

「ディグ!?」
「リュウッ!!」

 ディグダが驚く中、赤眼を紅蓮の炎のように燃やすデンリュウが『ほうでん』を放ち、落下してきた瓦礫全てを圧倒的電力量から発生する熱量で溶解させた。さすがにこれは予想外な展開なので、新城は痛む腕と足を引きずって上山を担いで分厚い鉄筋の後ろに隠れる。

「リュゥ……リュゥ……」

 そして恐ろしいほどの雷撃を発生させたデンリュウは、息切れも同然で体を上下に揺さぶっていた。そんな集中力も体力も、すべてがずさんなデンリュウにディグダが泥かけをしたため、戦闘不能に陥る。

 さすがに命中率が最低になり、6回も浴びせられれば倒れるだろう。もちろんデンリュウも、怒る気力すらなく気絶するようにぶっ倒れた。

 溶解し冷え固まった鉄筋や瓦礫の影から、新城と上山が頭を出して周辺を確認。何もドッキリがないことを、再確認できたので表に出てくる。

「えーと……逃げるかぁー」
「その意見に、賛成かな?」

 二人はこの惨劇の責任を取りたくないので、デンリュウを置いたまま逃げようとしたらサイホーンが何か吠えている。

「どうしたのかな、サイホーン」
「ホンッ、ホンッ、サイッホーン!」

 角を見せつけてくる。するとなにやらストリーマーのようなものが出てきて……。

「やっべ!」
「きゃっ!?」

 新城は上山を担いだままざっと引き下がる。痛みから顔がゆがむが、それすらも無視して回避した。直後、ある方向から雷撃が落ちてきた。

「新城、ちょっと放して!」
「お、おう」

 解放された上山が、ポケナビを起動しマップを確認。そこから雷撃が来た方角と電波塔、ラジオ塔の位置を確認する。何かを思い至ったのか、上山はサイホーンを戻して走り出す。

「上山っ!どこへいくんだっ!」
「犯人がわかったかも!」
「ちょ。待て!俺様も行くぞおー!」
「だったら、電波塔のところに行ってくれない?」
「は?」



 
 新城はディグダを戻しながら、自分の手足に上山と一緒にテーピングを行って補強をする。
これで痛みがきても、患部の炎症が増すだけで被害の拡大が行われなくなるはずだ。

 新城は上山に飛行場を抜け出している道すがら、その推理っぽいのを聞く。どう考えても判断材料が少ないように思えるが……。

「今回の事件だけど、ピカチュウが暴走したのは常盤の森で三番目に標高が低い山にある電波塔のせいよ」
「は?」
「さっき私達は子供たちの憩いの場にいたけど、偶然にもチューナーセットを成功していたよね。それでデンリュウが暴走。 でも、その混乱の時、最も近くにいたのはデンリュウじゃなかった。
新城の近くに、私の近くにもほかのタイプのポケモンもいた。 正直、ありえないかな。
だって、そのラジオ……すっごくうるさいし、もしそれで暴走とか色々状況があるけど、出来過ぎてるよ」
「やっぱりかぁー。 戦闘中ずっと結構な音量でながしてたからなぁー。 ということは、この発生源である電波塔とラジオ塔の占拠だな! だがあの雷撃がよくわからんぞ!」
「でしょうね! でも、ポケギアと私が以前ここに来たおかげで、答えはわかったかな!」
「それは!?」

「あの雷撃は、地下からのもの!避雷針は直線的に受けるから、圧倒的な上昇ベクトルを持つ雷撃が、避雷針によって拾われて吸収したんだと思う。だってあの放電とかも、放たれる瞬間からじゃなくて放たれた少しあとから、避雷針効果が出始めたんだよ!」
「ちょっと待て、『圧倒的な上昇ベクトル』?何を言ってんだ!?」
「あのね、あの先には常盤學区一の自然公園があるんだよ!そして唯一の地下からの穴で、あの威力の雷撃が出てこれるのは、『地下鉄の通気口』かな!!」

 マンホールは電気を通しても、雷撃による進行で押し上げられることはない。押し上げられたとしても、それは着地した瞬間の爆発くらいだ。

地下以外の考え方をしてみよう。空中。まず晴れで、飛行機が飛んでおり待機状態または、他の空港へ進路変更中。いろんな意味で上空からの雷撃は危ないし、目視されている。
他からの雷撃は? まずそんなものを放つと、町中が停電するか回路が焼き切れる。また戦闘はポケモンセンター周辺でないと、治安維持の名目から『路上決闘』『公共の場での私的戦闘』は違反とされているので、まずありえない。
 そして最大の理由は。街中でピカチュウたちが暴れているのにその電気が、避雷針によって呼び集められていない事。
 これらを考慮すれば、地下くらいしかありえない。
 このように結論を言っていると、電波塔とラジオ塔へ向かう最後の分岐点にくる。

「壊すだけでいいから、絶対に死なないように」
「わかってるさ。 上山も気を付けろよぉーお?」
「また、生きてたら会えるかな?」
「おう、俺様と逢える事を楽しみにしとけよ?」
「うん、楽しみかな?かな?」

 二人は手を振って、お互いの攻略先へ向かう。もちろん通信媒体はもっているので、この後の合流も容易だ。 
 
 そして上山は『常盤學区中央放送局』に、新城はピカチュウを蹴散らしながら『第三電波塔』に来る。さあ、大詰めだ。







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