とある世界の魔獣図鑑   作:名無しの権左衛門

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8:常盤學区――回動

常盤學区がピカチュウの攻撃によって混乱する中、その影響を受ける人は常盤の住人だけじゃない。例えば、公共交通機関とか、お客様第一主義を掲げている団体ほど動きに制限がかかりやすい。

その為常盤の森のふもとの街が襲撃されただけで、運航が中止になってしまう場合なんて簡単に訪れてしまうのだ。

 

「あーもー!なんでこんな時に事件が起こるのかなー!」

「仕方ねぇーさ。このまま待機するのも面倒だ。俺たちでぱぱっと調査して、解決してやろぉーぜ!」

「いやいやいや、そういうのはよくないかな!ここで待ってた方が、安全だと思う……かな?」

「やっぱ、疑問形じゃねぇーか!大丈夫だ!俺様についてこい!」

 

 チャーター便がピカチュウ襲撃によって止まってしまった。この便だけでなく、ほかの場所も大概止まってしまっている。

 そんな中上山と新城は、今回の異常事態で搭乗口にて足止めを食らっていた。おかげで解決まで待機を、外国組を引率する先生に命ぜられてしまった。そのためなかなか動けない……なんてことは、毛頭存在しない。

 もともと授業では『情けは人の為ならず』ということで、相互協力・救助を積極的に行う事を教えている。だから二人の考えが合致した後、先生に事件解決の幇助をするというとにこやかな顔で見送られた。一応ポケモン図鑑やポケナビ・ポケギア等が携帯の役割を担っているので、行先GPSや電話を確認と共に行う事ができる。

 

「さて。今回のピカチュウなんだけど、なんで暴走したんだろうね?」

「ピカチュウは電気タイプだからなぁー。電気系の見えないもので制御されているとか」

「ということは、電波とかかな?」

「それはありそうだぜぇーい」

 

 新城はポケギアを使って、ラジオのチューナーをいじっていく。そこから、謎の電波っぽいのを探す。もしこれで分からなかったら、別の方法を取らないといけない。

 

「電気タイプのそばでやらないと、効果がわからないんじゃないかな?」

「それもそうだなぁー。よし、その案乗った!」

 

 二人は人のごみをよけて行って、電気タイプが集まる場所に立ち寄る。

 その間にも新城はチューナーをいじっていた。

 

「ここ、デンリュウとかいるけど、ピチューとかいないかな?」

「いないようだなぁー」

 

 二人してポケモンと子連れの家族が休憩所として活用している子供広場に立ち寄る。意外に電気タイプは一匹しかいなかった。ほかのタイプはまんべんなくいるのにだ。

そんなに電力費用がかさんでいないのか。なんとも裕福な事である。

 とにかくここにいる人たちは、外の喧騒を完全な他人ごととして無視しており我関せずと今の状況を楽しんでいる。

 

 

子供たちのキャッキャと遊ぶ最中飛んできたプラスチックボールが、新城にあたる。

 

 

――ピッ――ガガガガッ――――ブオオォォォン―――

 

 

当たった時偶然にも指を離した新城。突然の雑音に「ん?」と彼が頭をかしげているとき、子供と一緒に遊んでいたデンリュウが上山に近づいて頭を下げた。このデンリュウは、この遊び場唯一の電気タイプである。

上山はそんな律儀で丁寧なデンリュウを見て、「いいのいいの」と笑顔で許した。そもそも怒っていない。デンリュウはほっとしたようで、子供たちのところに戻ろうと踵を返した。

 

――――キィィィィィ――――キュァァァァァァ――――

 

 突然の音質変化。これに新城が、頭をひねっているといつの間にか、上山のすぐ隣にデンリュウがいて電気をまといだした。

 

「え?」

「まずっ―――!」

 

「ッリュウウウウウウゥゥゥゥ!!!」

 

 

 黄色い閃光と爆発音。

 それはただの閃光ではない。高威力の『かみなり』だ。

 

 その『かみなり』は、先ほど上山達がいたブロックソファに着弾していた。爆発後。そこには無残にはじけ飛んだソファと融解した地面が、赤く焼けすさまじい熱量を放ちすさまじい光景を周囲にみせつけた。

 

「デンリュウ!戻れっ!」

「……」

 

 豹変したデンリュウは持ち主に呼ばれ、その者の方へ振り向く。

 周囲がパニックになり、混乱している中持ち主は果敢にも立ち向かう。

 

「リュウウウウッ!!」

「ヒイッ!?」

 

 怒り狂うデンリュウは『ほうでん』を放ち、周囲を無差別に攻撃する。これにより、空港内は完全なパニックに陥った。

 阿鼻叫喚と化した中、新城は上山をかばって地面に伏せていた。

 

 

「ぅぐぅ……痛ぁ……っ! 新城!」

 

 新城は上山に体をゆすぶられることで、意識を回復し上山の無事を目に焼き付け安心する。

だが周囲の混乱を背景に見て、微睡から一気に覚醒、起床する。

 

「上山、無事か!?」

「私はいいから!新城こそ、大丈夫かな?!」

「俺様は頑丈だから、だいじょぉーぶだ!それより、何がどうなって……うぐっ……」

「ああっ、いわんこっちゃない」

 

 新城は上山をかばったとき、デンリュウの雷を掠りであってもぶつけたようで被害を受けた腕を抑える。上山は彼を支えるが、その場にいてはいつあの赤目のデンリュウに攻撃されるかわかったもんじゃない。

 

「上山っ、あいつを止めるぞ……っ」

「駄目だよ!逃げないと「逃げるな!それでも、ポケモントレーナーか!俺様はいく!」な、なんで行けるの!?おかしいでしょ!?」

「だったら上山だけでも逃げとけ。俺様がしりぬぐいをする!」

 

 二人が問答をしている間に、対ポケモン特殊警察部隊が出動。旧ポケモン、ガーディをポケモンボールから出して、デンリュウを制圧しようと必死になる。

 しかしデンリュウのおかしなくらいに強い雷撃により、ガーディや警察部隊を殲滅・鎮圧していく。また『ほうでん』により、割れたガラスや落ちる照明により、未曽有の大惨事が繰り広げられる。

 

「こうなったのは、俺様が『正解』を当てたからだ。だから、上山は逃げとけ」

「……なんで、こんなことでまじになってるのかな。おかしいよ。何で逃げないのかな?かな?」

「何でって……」

 

 上山の追及に苦しみながらも新城は不敵に笑う。

 

「『正解』を見つけたら、この『問題』を『解答』しにいったほうがかっこいいからだろぉーが!!」

 

 新城は上山を置いて、暴れるデンリュウのところへ行く。彼は右腕にある宝石[ボール]をいじって、自身が出そうと思っているポケモンを選択する。例のラジオ電波を流しながら、周囲を殲滅し終え新城を威嚇するデンリュウに至近距離まで近づく。

 

 

 

「真白学区[マサラタウン]の新城鉄也だ!かかってこいやぁーデンリュウゥーウ!」

 

 

 電流を充分に溜めた電龍は、憤怒を隠し切れぬほど燃え上がる赤眼で新城を睨め付けた。

 

 


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