上条達はポケモンセンターにて、怪我や色々な部位を治していた。
ピカチュウは腕輪の宝石[ボール]に入れず、そのまま預けた。
そのあとは、抽選で豪華な食事券をもらって困惑していた信濃[しんのう]という少年と共に、大量の晩御飯を食らいつくした。主にインデックスのおかげで、なんとかなった。
「なあ、信濃。受付横のあれ、なんなんだ?」
「アレ?あー、アレ。アレはだね、昨今出没しているポケモン宝石泥棒ニダ」
「泥棒だと?」
「そうアルよ。宝石が一元化されちゃったから、捕まえることが難しくなっちゃったニダ」
「まじか。ということは、まだ逃げているってことだよな?」
「そうアルよ」
「犯人の特徴を保存。データに一時記録完了」
インデックスは万が一のため、犯人の特徴を保存し今後に備えた。
翌日。
元気になったピカチュウ、通信で予備のパーツを持ってきてもらったオーキド博士の助手に直してもらったインデックス、学校から支給されている旅行制服7番を貰って着替えた上条。
皆ほぼ回復して、出発できるようになった。
「インデックス、次はどこなんだ?」
「常盤学区です。通称、トキワシティと呼ばれています。また、学園都市有数の有名校、常盤台中学校があることで有名です」
「あー、ビリビリの母校ね」
「ピカ?」
首をかしげるピカチュウ。
上条はその反応で、覚えていない事を確認する。
「なあ、インデックス。図鑑機能で、ピカチュウとオニスズメのステータスとか分からねぇか?」
「解析します――――――できました」
「すげえ!!」
というわけで、歩きながらステータスを確認した。
ピカチュウ:レア度4
オニスズメ:レア度2
「レア度ってなんだ?」
「熟練度[自分だけの現実{パーソナルリアリティ}]を溜めて、一定の条件を満たすと次のレア度に行きます。近年あるゲームでいうと、上限突破[リミットオーバー]ですね。
ただこれらは資質も関係ありますので、初期レア度が高いほど成長率や成長限界、すべてに於いて高いです。しかしこのような個体は珍しく、なかなかお目にかかれません。
実をいうとあの雷雨の中の放電ですが、アレを受けたことでピカチュウのレア度が1上昇しました」
「ということは、もともとレア度3だったんだなー。すげぇな、ビリビリ」
次に確認するのは技だ。技は基準とするものがあって、そこから派生が発生するので攻撃感知はできるが予知は不可能に近いとくぎを刺される。
「たしかあれも、電気ショックだよな?自然界の雷って、相当だよな」
「むしろあれを、自身の力にできるのが不思議でたまりません」
図鑑も真っ青なピカチュウの素質。
そんなこんなで、トキワシティに到着した。
「すぐにポケモンセンターで、登録しましょう」
「登録?」
「ポケモントレーナーたるもの、事務戦をするのは当然です」
「事務……まさか、ポケモンリーグに行けるのか!?」
「はい。ですが、期間は一年です。それとトウマの資料によると、出発から半年までにはタマムシシティに来るよう通達があります」
「半年!?」
マサラタウンからトキワシティまで、一週間足らずの距離だ。意外と世界は狭いのかもしれない。
「それじゃ、行こ。とうま!」
「お、おう!」
インデックスは上条とピカチュウの腕を握って、ポケモンセンターへ向かった。
ポケモンセンターは人でごった返していた。
さすがにこのポケモンセンターは、以前に泊まったポケモンセンターとは違って巨大だ。
最新器具やらハイテク化が推進されているようで、一種の空港に見えた。
「なんだこれ、すげぇ」
上条が驚いていると、突然後ろから声がかかる。
「そこにいるのは上やんかにゃー?」
「この声は……土御門!」
「やっぱりにゃー、ここに来ると思ってたぜい!」
お互いに顔を合わせて、健闘を称えあっているとそこに割り込む人物がいる。
「あれ?そこのイケメンは誰なのかな?かな?」
「おぉー、あいつはたしか、フラグメイカァーな上条さんではないですか!」
「すまん、土御門。昨日雷に打たれたから、だれか分からねぇんだ」
「上やん……。よく生きてたな」
「俺もびっくりだって」
とにかく紹介を始めた。
「私は上山よ。よろしくかな?」
「俺様は新城だぜぇーい」
二人ともクラスメートであり、上条と同じ遅刻組である。
そのため、これから外国に行かされるらしい。
「はあ!?外国!?」
「そうだよ。いやー、困っちゃうかな?でも、中々体験できないから、逆に嬉しいかな!」
「俺様も同意見だぜぇーい!こんな未体験こそ、若人な時にやらねばならんといけねぇーんだ!」
赤緑しかしらない上条が愕然とする。
確かにCMでは金銀等が発売されていた。しかし経済的余裕のない上条にとって、それはつゆ知らずな事だった。
「ポケモンバトルやってみたかったが、そろそろチャーター便がくるからまた会ったとき頼むぜぇーい!」
「お、応!またな!」
「行っちまったにゃー」
「嵐のような奴らだったな。ところで土御門。ポケモンバトルやらないか?」
「いいぜよ?」
というわけで、ポケモンリーグ挑戦権を得てから、ポケモンセンターに常設されているバトル広場へ向かった。
そこではすでに何組か戦闘していて、残り一つ空いていた。
「私が審判をしますので、両者お立合いを」
「よっしゃ!」
「いくぜよ」
両者トレーナーの立ち合い場に立ち、ポケモンを出す。
「まずは先手必勝だ、ピカチュウ!」
「行けっ!ビリリダマ!」
戦闘が始まった。
「ピカチュウ、電気ショック!」
「ビリリダマ、ソニックブーム!」
ビリリダマには効果はいま一つのようだ。
ピカチュウは固定ダメージを受けた。
「は!?なんで、ピカチュウがこんなボロボロに」
「チュゥ……」
「ソニックブーム。その方法は先ほどみただろ?あれのおかげで、俺っちたちは常勝無敗ですたい」
「ピカチュウ、しっぽをふる!」
ピカチュウにしっぽはないが、突っ込んではいけない。
だがビリリダマの防御を一段階下げた。
「ビリリダマ、直接ソニックブームだ!」
「ビリリ!」
ビリリダマは一円硬貨を10枚取り出し、圧縮させたものをピカチュウに投げつける。
ピカチュウは回避できず、一円玉の物理ダメージに加えそれが爆発。
爆炎と爆風[ソニックブーム]により、ピカチュウは戦闘不能になる。
「ピカチュウ!」
「ピカチュウ戦闘不能!勝者、マサラタウンの土御門!」
「ふぅ、上やん。初めてのトレーナーバトルはどうだ?」
ピカチュウの下へ向かい、介抱する上条。
普通のポケモンなら普通に悔しがる場面だが、どうみても普通の人間なポケモン。
現実[元の世界]と同じあの戦闘が、簡略化され血を見なくなっただけで全く同じことであることに上条は腹を立てた。
しかしこの世界のルールなので、むなしさだけが募る。
「ああ。どんなにレア度が高くても、ポケモンを理解しなきゃ手も足も出ないことがわかったよ」
「そうですたい。あの爆風も、ビリリダマの特徴を利用したものだ。
つまり、ビリリダマの得意技ですたい。だから、流れるように攻撃をした。
そしてそこのピカチュウ。しっぽをふる攻撃だったが、動作が微妙で次の行動へ移るのが非常に遅かった。初めてにしては……というより、そのレア度を看板に張り付けただけの戦闘だった。
次はピカチュウをよく理解してやったほうがいい。しっぽを振るだけでも、抵抗するポケモンもいたりするからな」
「ああ、ありがとうな、土御門」
そういってお互い、剣呑な雰囲気をやめにして、和解の握手をする。
しかし、そう言っていられるのも束の間で、すぐに厄介ごと[事件]が舞い込んできた。
突然インデックスの背後から、ボロボロになったポケモンが出現する。
そのポケモンは体中に火傷を負っていて、今にも倒れそうだった。
<お願いです、どうか……どうか、仲間を救ってください……>
「テレパシーだと……?」
普通のポケモンはしゃべることができない。
故にこの高等であり高位であるかもしれないポケモンが、何を求めて都会まで赴いたのか。
それはまだわからない。