とある世界の魔獣図鑑   作:名無しの権左衛門

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10:常盤學区

 

 とある地下。地上から吹きこむ風が気持ちいいここは、埃っぽさと共に悪だくみのにおいがプンプンする。

 

「あらぁ、かわいいネズミちゃんたちね。おとなしくしときなさい?さもないと、ちょっと痛くするかもね?」

「ピカ?ピカピカチュウ!<ああ?邪魔すんじゃないわよ>」

「ラーイライチューウ!<こんな時に敵とは、全く面倒ですね!/Enter>」

 

 上条のピカチュウと森のピカチュウの長であるライチュウ二匹が、ロケット団と対峙している。

ロケット団は旧ポケモンであるコラッタやニドラン♀を繰り出しており、通すより足止めする気満々だ。

 

「全く可愛くないわねぇ。ボスのために捕獲しなきゃいけないけど、これは倒した方が効率はよさそうね」

「ピカピカ、チュウピッカ!<やれるもんなら、やってみなさいよ!>」

 

 ピカチュウは指を立てて、『Come On』のしぐさをする。このしぐさにライチュウはぎょっとする。

 

「ふん!強がっていられるのも、今のうちよ!コラッタ『電光石火』、ニドラン『すなかけ』!」

 

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 さて……。何故上条のピカチュウとライチュウが、地下にいるのか。

 それは少々時間が遡ることになる。

 

 森の中で上条達のために仁王立ちしたピカチュウは、ライチュウを強力な電撃と磁場で制圧した。その直後山を登ってきた方向にある出立地の街で、彼女以上の雷撃が目視できるレベルで暴れまわっていた。

それを目撃したピカチュウは、森のピカチュウがさらに狂暴になっているだろうと思って長らしいライチュウをつれて下山した。

 下山してポケモンセンター付近になると、強力な雷撃を放っている正体である『メカニャース1世』を発見。これを撃破し、中身のロケット団をふっとばした。

 解放された森のピカチュウとライチュウは、雷撃の使い過ぎで衰弱していたので近所のポケモンセンターに一般人達と協力して運び込む。

 

 ピカチュウはともかくライチュウは軽症で、包帯とけがの手当てでなんとか済んだ。この時ピカチュウはライチュウと話し合って、諸悪の根源がどこにあるか聞いた。

 

「<地下にありますが、戻る気ですか?/Escape>」

「<当たり前でしょ!トウマは今も困ってるはずよ。相棒である私が行かないといけないの!>」

「<そうですか、わかりました。ならば私もとことん付き合ってやりましょう/Insert>」

「<よっしゃ、きまりね!――ところで、場所は?>」

 

 包帯や湿布を体中につけているライチュウは、ばんそうこう等を肌につけているピカチュウと共に巨大な『常盤第一中央公園』に来た。

コンクリートジャングルの中にある、清涼感溢れる森だ。

 

「<ここです/Enter>」

「<これ?これが何なのよ>」

「<地下鉄の空気入れ替えと気圧調整の通気口です。/Enter>」

 

 鉄格子から覗く暗黒の地下への穴。上に立ったピカチュウとライチュウは、スカートがめくれる中二人が手を組み合わせて巨大な電子回路を作り上げる。

これにより巨大な磁界と電界が発生する。

 

「<私が拾ったゲームコインに通電し、磁力で素粒子まで加速させ一気に放ちます/Shift>」

「<これって確か、『電磁砲』っていうものだったわよね?>」

「<はい。ですが、純粋なポケモンの技ではないってもんですので、『レールガン』が正しいと思われます/Scroll Lock>」

「<じゃあ、合体技ってことでいってみますか!>」

「<はい!一気にぶちかまします!/Delete>」

 

「「<<『超・電磁砲』[レールガン]!!>>」」

 

 二人が両手で作り上げた電磁界に浮くコインは、作られるレールにより一気に加速し足元にある通気口の合金鉄格子を溶かし、一気にそのまま貫通する。威力は十分なようで、格子の融解・地上部分で磁気嵐発生、地下深くで発射数秒後爆発音が発生。

 

 

「<やっちまいましたね/Break>」

「<でもしゃーないわよ。 それにあたしたちの脳波や電界を操作する不快な電波が、異常に強くなったわ。いきましょ>」

「<もちろん!/Insert>」

 

 そして二人が地下に降りて意気揚々と進もうとしたとき、ロケット団が出現したのである。

 

 コラッタはでんこうせっかで、ニドランはすなかけを行うとしている。遠近の攻防は、今のところ問題ではないが、ピカチュウたちの方に問題がある。

 

「<あんたは下がってて。体力が落ちてんだから、元気な私がやるわ>」

「<……わかった/Enter>」

 

 コラッタがピカチュウに接触する瞬間、気合の声を発して周囲に『ほうでん』する。

これによりロケット団一味全て撃破。ライチュウはこの雷撃で回復したが、ピカチュウは少々消耗してしまった。

 

「<ほかにやり方があったのでは?/Alternate>」

「<あ……>」

 

 ライチュウは真上を指す。

 電界のおかげで微粒子が発光しているため、トンネル内部がある程度確認できる。そんななか、ライチュウの指の先、真上にある通気口を見る。その通気口は真っ白なコンクリートが、真っ黒なすすだらけの煙突になってしまっていた。

 

「<もし子供が居たら、非常にやばかったですね/Back Space>」

「<さ、さあ行こう!>」

 

 ごまかしたな、という意味でジト目をピカチュウに向けるライチュウ。

そんなことは気にせず、電波が強く発せられている方向へとにかく前進した。

 迷路のような地下鉄網であっても、マスコットでありドブネズミでもあるライチュウにとって庭である。進行途中でこの場所の壁に、いかにも怪しい場所がありピカチュウを案内する。入口は『R』と書かれており、ご丁寧にも認証ID読み取り機があった。

 こんな精密機械は、ピカチュウのような粗暴さではなく慣れたライチュウの緻密さ正確さで、安全に壊すことができた。

 

 おかげで変な通報もなく、進むことができる。

 

 そんな進む過程で、ライチュウは口元まで我慢していた言葉をピカチュウになげかける。

 

「<ピカチュウ/Home>」

「<何?>」

 

 

「<『G-Monsters計画』って知ってますか?/Enter>」

 

 

「<は?>」

 

 振り返りつつも、決して歩みは止めなかった。

 

 

 

 




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