破壊された家屋の天井。そこから無数の羽が舞い降りている。
彼はそんな景色を皆目無視して、後方の男女に背を向け前方にいる修道服の少女に向かっていった。
―――その幻想をぶち壊す―――
彼の救済の拳は、少女と後方にいる男女をまとめて救い上げた。
そして彼は助けられた事に安堵していると、脳天に何かを受け気絶してしまう。彼は何が起こったのかを把握できずそのまま、意識の闇に埋もれた。
「……知らない天井だ……」
彼は目を覚ます。痛む頭を抑えながら、そこから起き上がる。
起き上がるのと同時に、その世界を見渡す。
「俺の部屋?っつ……。インデックスは……あいつらはどこにいったんだ?」
彼の自室。学生寮でありながら、彼を襲った悲劇により悲惨なことになってしまったはずなのだ。しかし彼の目の前にあるのは、至って普通の日常を謳歌していた頃の自室である。
幸いあのすっぱい焼きそばパンは存在しないことに、少しばかりの安心を彼にもたらす。
「って、なんでカーテン閉めてんだよ。暑いじゃねぇか」
彼はひとまずカーテンを開けて、そのちょっとした風に当たりながら思考にふける。
そんな暇はないと思っているが、本人たちがいない今こうやって解決策を模索した方が変に動き回るよりいいだろう。
そんな風に思っていると、ふいにインターホンがなる。
「!?」
彼は突然の呼び鈴に驚き、すぐに玄関を開く。その先に彼が助けられた修道服の少女とあの男女が居ると信じて、期待を胸にその先へ進む。
しかしそれは簡単に打ち破られることになる。
「どうしたにゃー上やん」
逆立った金髪、サングラスに眼鏡……。土御門元春が、玄関口にいた。
「あ、いや。なんでもねぇよ。それよりどうしたんだ?」
「どうしたって……。上やん何いってんですたい」
「へ?」
その一言は、彼に衝撃を与えることになる。
「今日は旅立ちの日だぜ?」
「旅立ち?」
「あーまたうたたねで聞いてなかったんだな?まぁーったく、夢の中でも美少女を助けてやってたのかー」
彼―――上条当麻は、とある高校の同級生である土御門に説明を求めた。しかしその説明はプリントでちゃんと渡されているという。
だがそんな時間も惜しいということで、土御門は彼に説明する。
「上やん、ちゃんと聞けよ?俺たちはこれから―――」
これから今学期に入学した生徒は、この学区の学生寮に住むことになる。
更にそこから高校で一年間授業を受け、この世界を知りとある生物の扱い方を学ぶ。
一年間の授業の末、この学生寮に住む生徒たちは研究所でその生物を受け取り、道行く旅の中共に切磋琢磨する。一年後にとある学区に集合し、その生物の取り扱いを競い合うのだ。
「その生物の名前ってなんなんだ?」
「げ、上やん頭でもぶつけちまったのかにゃー?」
この世界で扱うその生物は、新旧共にポケットモンスター――縮めてポケモンだ。
「ポケ……モン……?」
「そうですたい」
上条は青天の霹靂を受けた。彼の経験上ポケモンというものを知ったのは、学園都市に来る幼少の時だ。その時に出ていたのは、ポケモン赤緑である。
既知の存在が現実にいるということで、若干興奮してくる上条。
しかしまだインデックス達と出会えていない事に、少々焦りを感じてしまう。
「それで俺が上やんのところに来た理由、わかるかにゃー?」
「は?一緒に行くためだろ?」
「いんや。俺はもう貰ったぜ?」
は?と呆ける彼に、土御門は右腕に光る腕輪を見せる。
この腕輪がポケモンボールの役割をするのだろう。腕輪にはボールという収納物代わりとして、宝石のようなものがついている。
「上やんがいまだにポケモンを受け取ってないってことで、ここに来たってことですたい」
「えーとつまり……」
「遅刻だ」
「不幸だ!!!」
そう、すでにお天道様はほぼ天頂にきている。彼が起床した時暑さを感じたのは、すでに正午または真昼間にあたる時間帯だったからである。
「まーまー旅は規定の中継地点を渡っていけば、目的地まで行けるぜよ。
一応プリントを探してみな。みつからなかったら、俺っちが連れてってやるさ」
「あ、ありがとな、土御門」
「いいってことよ」
上条当麻はプリントを探すと、旅に関してのプリントやポケモンに関しての教科書を見つけることができた。
「あ、あったぜ。とにかく、インデックス達の事は後回しにして、この授業はやらねぇと……」
この世界になる前の学園都市でも、彼は高校生であり高校に行っていた。
その高校の先生が、優しくも厳しい。約束を違えると、圧倒的補習の嵐で貴重な休日がつぶれてしまうことがある。いや、潰れる。
ポケモンの世界での補習はなんなのか。全く見当がつかないので、彼は焦ってしまう。
そう、約束を守らなければ、貴重な時間を失いインデックス達を探すための自由時間がなくなってしまうのだ。
「上やん、準備できたかにゃー?」
「ああ!リュックサックに、その他もろもろできたぜ!」
「そんじゃ、行くぜよ―――研究所に……!」
こっちの方が飽きにくいので、ちゃっちゃと書ければいいかな?